風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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第14局 引分

[南四局 オーラス] (親) 福路

 

南 池田華菜(二年) :5100

西 対木もこ(一年) :54900

北 宮永咲(一年)  :34400

東 福路美穂子(三年):5600

 

 福路が宮永に意図的に振り込んだ後、河を支配して宮永の親を流した。

 たしかにプラマイゼロを崩せという課題を出した。

 けど明らかに勝ちを捨てたような打ち方はわからない。

 

「まだ、わかりません!」

 

 福路キャプテンの珍しい煽りに宮永が感情的に答える。

 

 プラマイゼロするにはノーテン罰符の調整はできない。

 福路の満貫ツモか、池田か対木の倍満ツモ、3900の差し込みの三つのみ。

 

 場全体を視界に入れながらも二人の様子を確認する。

 

 対木は「……もう役満の直撃でもトバせない」といった感じか。

 ずっと宮永をトバすことに集中してたが、気力が途切れてきている。

 池田は「……まだ諦めてなしい、高い手をつくってやるし」といったところかな。

 与えた課題については、ちゃんと考えてるのか後で確認しよう。

 

 とりあえずは宮永としても他家に安易な差し込みできるような状況ではないことは把握しているだろう。

 

「カン! 勝ちたくない宮永さんと、負けたくない宮永さん――

 この対局が終わったあとに、どちらが本当の貴女なのか教えて頂戴ね」

 

福路 {東 東 東 横東}

 

 福路が明カンを鳴いたことにより海底(ハイテイ)が宮永へとズレた。

 

 王牌がめくられ{西}がドラ表示牌 となる。

 

 

――宮永咲

 

 私は恐る恐る海底牌を手に取る。

 

宮永 {北}(in)

 

 何もしなければ、このまま私がプラスで()()()()()

 

 けどプラスで勝てても……もこちゃんには順位で負けちゃう。

 

 逆に何かをすると、きっと私は()()()()()

 

 親の福路さんに振り込めば、まだ一本場が続くけど……とても不思議な感覚。

 

 私は「勝ち」と「負け」を同時に味わってる。

 

“どうするの? 宮永さん?”

 

 福路キャプテンの声が心の中に響いた気がする。

 

 そうか麻雀を通して心を交わすことができるんだ。今まで忘れてた。

 

 もこちゃんと先輩たちが教えてくれたんだ。

 

 麻雀を通して会話ができるって――。

 

 私が、どうしてお姉ちゃんと全国の舞台で戦いたいと思ったのか。

 

 プラマイゼロの家族麻雀の延長なんて、お姉ちゃんも望んでないよね。

 

 ようやく心の中のもやもやが晴れた。

 

 そうか。勝ちと負けがあるから、勝負なんだ。

 

 私は生まれて初めて「真剣勝負」の麻雀を打ったんだ。

 

 牌を握る手が自然と震える。

 

 カンによって生み出されたキャプテンからの問い(ハイテイ)に私は答える――

 

 

-----読川尊月(監督)

 

宮永 {北}(in)→{九索}(out)

 

 宮永の捨て牌を確認し、福路は静かに手牌を閉じる。

 

「……どうして?」

 

 宮永が福路に問いかける。

 

「なにかしら?」

 

 福路は素知らぬ笑顔で言葉を返す。監督もコーチも口は挟まず、ただ二人の対話を見守る。

 

「福路キャプテン、ロンできましたよね?」

 

「もし、できたとしても……私の課題はプラマイゼロを崩すことだったから」

 

「でも、それは先輩が初める前に言ってた勝利を目指すため麻雀とは違いますよね?」

 

「大会で勝つために行う為の麻雀ではないわね」

 

「だったら……なぜ?」

 

「池田さんは最後まで諦めずに戦ったけど、目指してたトップは取れなかった。

 対木さんはトップで終えたけど、宮永さんをトバすことはできなかった。

 私は貴女のプラマイゼロを崩したけど、アガッて続けるのを避けて勝負からはオリた。

 宮永さんはプラマイゼロにはできなかったけど収支では僅かながらプラス。

 

 だから今日は勝ち負けは無しの引き分けで終わり」

 

「……引き分け」

 

「ひさしぶりに、ほんき……たのしかった」

 

「そう! 負けてないし!」

 

 いや池田は点数的にも順位的にも負けだろ……やっぱり課題を増やそう(優しさ)

 

「宮永さん、貴女は最後の捨て牌にどんな気持ちを込めた?」

 

「負けたくない。……いや、勝ちたいって思いました」

 

「意識的にプラマイゼロにできるなら、意識的に勝つこともできるはずよ」

 

「でも、どうしたら……いいか」

 

「そうね……自分は1000点、他の3人は33000点もっている。

 そう思って、次は打ってみたらいいわ」

 

「はぁ、それをプラマイゼロにするように打てば“勝てる”んですよね……大変そうだ」

 

「咲っち、やる気満々っすね」

 

「まだ、やる?」キラキラ

 

 東横と対木が話に加わり場の緊張が解けた。

 

 福路は僕が想定してた以上に見事に課題をこなした。

 点数は大きく削られたけど、南三局一本場から完全に場を支配していた。

 

 宮永咲を対木もこを、あと池田を完全に手のひらで踊らせたのだ。

 そして原作では清澄の竹井久と同じ対処を自らも気付いた。

 いや、彼女に麻雀を通して「負けたくない。勝ちたい」という気持ちを確認させたのだ。

 

 きっと原作よりも上の成果だ。

 

「よし、一年生は全員がCクラスからの校内ランキングに参加だ」

 

「「はい」」

 

「えっ? 咲っちも、もこっちもですか? この二人はヤバイっすよ」

 

「宮永は福路に教わったやりかたでプラマイゼロ克服しながらランキングを駆け上がってこい」

 

「は、はい!」

 

「対木は、Cクラスで対子を集めないで打ってみろ」

 

「……むり」

 

「まあ無理なら、また方法を考えるから一度やってみろ」

 

「……がんばる」

 

「Bクラスの部員は、下から後輩たちが追い上げてくるぞ。気を引き締めろ」

 

「「はい!」」

 

「Aクラスの部員も春季大会の後に出した個別の課題の確認をするぞ。

 とくに池田は、課題を意識して打っているのか?」

 

「……ちゃんと意識してるし」

 

「最後に、福路キャプテン。……よくやってくれた。パーフェクトだ」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 最後に閉じた福路の手配、待ちは{北}と{九索}だった。ドラ表示牌は{七索}{西}。

 

福路 {六索 六索 六索 七索 八索 九索 九索 九索 北 北} {東 東 東 横東}

 

 {九索}で和了れば、海底+混一色+自風+ドラ3で+18000点。

 そして宮永が{北}を捨てたなら、海底+混一色+自風+ドラ4で+24000点。

 

 福路は5600点、24000点を足せば29600点。そのまま終わればプラマイゼロだ。

 彼女は宮永のプラマイゼロを崩すだけでなく、最後まで自らの課題(±0)も達成しようとしていたのだ。

 

 掛け値なしに、いい勝負だった。

 

 宮永咲は、風越女子でも原作通りの実力を発揮した。

 対木もこは、対子場の支配は宮永咲を一時はトビ寸前にまで追い詰めた。

 そしてキャプテンの福路美穂子が、魔物といえる二人を相手に見事な打ち回しを魅せた。

 

 池田華菜は、ほら三人の暴風に最後まで耐えれただけ凄いよ(優しい)

 

 現在の校内ランキングAクラスの上位五人は

 

1位 福路美穂子(3年)

2位 池田華菜(2年)

3位 弓野奈津美(3年)

4位 吉留未春(2年)

5位 深堀純代(2年)

 

 となっており、それに2年の浅井真澄と大迫昭乃が続く。

 後を追う1年は宮永咲、対木もこだけでなく、原作の県予選決勝でスタメンだった東横桃子と文堂星夏もCクラスから必ずあがってくるだろう。

 

 県予選の優勝(けいやくこうしん)全国ベスト8以上の成績(あんていしたせいかつ)に向けて、本日から夏のインターハイ県予選に向けて風越女子麻雀部の新しい日々が始まる。

 

 

(第一部 カン) {東 東 東 横東}

 




投稿後の修正も含めて闘牌シーンで力尽きて「第一部完」って気持ちになりました。
もちろん、まだまだ続きますよ!
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