五月の連休が近い。電話の後、数日は経ったが三尋木からの連絡はない。
本人も忙しいだろうし、県予選前に間に合ったらよいかと放置している。
ケータイの音が鳴り響いたので発信先を確認する。登録されていない番号からの電話だ。
「もしもし、どちら様でしょうか?」
『読川センパイお久しぶりです。ディス、いいですか?』
日本語に英語が混じったちょっと怪しい喋り方をする人物の心当たりは一人しかいない。
この世界で僕が
ちなみに姫松高校の後輩たちを中心に彼女のことを「中東の元傭兵でイタコ」だとか「アステカ神の力で役満を和了った」などといった噂を流したのは何を隠そう僕だ。今や尾鰭の付いた噂が広まっているそうだ。まあ異能は事実だし、石油王の依頼で代打ちとして悪魔祓いをしたこともあるそうなので、あながち嘘でもないからな。
「……戒能か。番号は誰に聞いた」
『国際大会でお会いした
アイツぅ!よりにもよって
ちなみに佐之海は世界を舞台に活躍する男性プロ雀士で「双璧」の片割れだ。
ちなみに戒能はセンパイとか言ってるが出身校だとかの関係は一切ない。
年齢が上だから国際大会におけるセンパイというニュアンスらしい。
「で、なんかようか?」(塩対応)
『ワークのリクエストです。ゴッド退治をプリーズしたいのです』
「仕事の依頼? 神退治? 何の話だよ」
『オフコース、
ゴゴゴ、デンジャラスな麻雀とはいったい……。転生して長いが、やはりオカルト麻雀とは前世の常識が相容れない。
「そういうことこそ、おまえや佐之海といった特殊な力を持ったプロの仕事だろ?」
戒能も昨年ルーキーオブザイヤー(新人賞)とシルバーシューターを受賞した変幻自在のプレイを見せるホープだ。
アステカ神話におけるトウモロコシの神である
佐之海は日本の若手男性プロで、唯一の世界の女性トップと対等に戦える世界ランカーだ。
その名の通り「
アマテラスは天、ツクヨミは夜、スサノオは海を治めるように言われたという話もある。
彼なら相性的に満月の天江衣と戦っても
そして宮永照をして「火力不足」とか言っちゃう小鍛治プロさえ認める
「佐之海センパイも私もアジアカップでシンガポールにいるので、ジャパンまでリターンできません」
戒能は実業団リーグのチームに所属しているが、国際大会への参戦を契約条項に加えている。国内リーグだけでは世界ランキングのポイントは増え難いので、世界を主戦とするならば必要な内容だ。ちなみに佐之海は国内リーグのプロ契約は結ばずに、国際大会の賞金のみで生活しているトーナメントプロだ。
「こっちも長野で忙しいからノーセンキュー」
『女子高のヘッドコーチ(監督)やってるんですよね?
鹿児島の永水女子に興味ありませんか?』
「神退治の相手は永水女子の選手か?」
「そうです。神代小蒔にバッドなゴッドがゲットオフしました。
鹿児島に行って天岩屋戸を開いて欲しいのです』
「興味がないとは言わないけど、インハイに向けて大事な仕事もあるし断る」
『イフ……ウェイ(仕方)ありません』
「わるいな」
『三尋木センパイに、
「……ごめんない。ナマ言ってすいません! 許して下さい! 何でもしますから!」(土下座)
このイタコ系の有名な
当時の僕は世界大会のラスベガス東風トーナメントにおいて
そして国内のプロアマ混合の親善試合で彼女に出会った。まさか条件付きとはいえカウンター系の能力まで持っていることなど露知らず、原作キャラじゃないかと出来心で覗いてしまったのだ。
彼女は「秘密」を知っている。何処までの詳細を把握しているかは分からないが、他には誰にも知られてはないプロを断念した異能の秘密を――。
『では、プリーズします。ゴッドはソリッドですので、高い火力がネセサリーです』
「こっちには初手テスカトリポカや
『センパイも“鏡”を持ってますよね』
一体、どこまで知られてるんだ。アステカ神話における主要な神の1柱であるテスカトリポカの名は「煙を吐く鏡」を意味するのだ。後で調べて愕然とした。原作でのエフェクトだと鏡的な要素が無かったからな。麻雀の対局中に黒曜石の鏡が現れて、覗きがバレたときは息が止まったわ。
「……永水女子とは何の繋がりで依頼が?」
『ん? 永水女子のハル(滝見春)とは従姉妹の関係ですが?』
そんなん知らんかったわ。転生してから生きていく上で殆ど必要なかったとはいえ抜けてる原作知識も多いな。
イタコ系だけあって六女仙に連なる家系なのか。おもちのサイズ的にも納得してしまった。
「憑かれた神代小蒔を囲う面子は指定できるのか?」
『ノープロブレムですね。六女仙の補助が必要ですが』
永水女子に対局が見られないのであれば、風越女子の面子に神卸しを相手にする経験を積ませたかったのが難しそうだ。
「相応の報酬が出るならGWを利用して合宿とかしたいな。
永水女子以外で鹿児島県の学校で強いところを紹介できないか?」
『なら、九州赤山高校はどうでしょう? たしか三年生に昨年のインターハイ個人戦代表がいますネ』
「わかった。それと儀式で身につける巫女装束の腰巻と肌襦袢(和服の下着)の色に赤や黒を用意できるか?」
『白が一般的ですが赤や黒が無いわけではありません。ノープロブレムでしょう』
「なら神代に黒を、卓に着く巫女の二人には赤を」
『……なるほど、カラーのルールでしたか』
ヤバイ。色の支配まではバレて無かったのか。自爆した気がしてきたが、もうヤケクソだ。腹を括ろう。
白三枚は、{白}の四枚に加えカンドラもしくは裏ドラが確定するが強い力ではない。色の支配の真価は色付きの下着にある。
黒一枚、赤二枚を実践で試したことはないが、推測通りであれば――。
他にも対局の時間帯を夜中に指定するなどの希望を伝える。
「こちらからの要望は以上だ」
『では、報酬の振込先を教えて下さい。スイスの銀行から振り込みますので』
読川監督と他のプロの関係
藤田靖子 互いに面識がある程度 インカレ時代に対局したこともある
戒能良子 最も警戒し危険視する相手 弱みを握らている
瑞原はやり 面識あり 彼女のマネージャーとアイドル談義をしたことがある
野依理沙 新宮寺女子繋がりで連絡先も知ってる間柄だが親しいほどではない
小鍛治健夜 面識あり 佐之海プロ繋がりで、対局を希望されているが拒否
三尋木咏 インハイ三強時代からの付き合い 飲み友達 プロを避けた負い目がある
佐之海プロ(オリキャラ) 男子インハイの双璧の片割れ 元ライバルであり旧友