風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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口数は少ないけど、心の中では色々と考えてる滝見春の巻


第18局 神楽

――滝見春(永水女子1年生)

 

「ようこそ」

 

「えっと、君は?」

 

「永水女子の1年で滝見春と言います」

 

「ああ、戒能プロの従姉妹の」

 

「そうです」

 

「よろしく、依頼を受けた読川尊月だ」

 

 霧島神境と俗世の境で、良子姉さん(戒能プロ)に紹介された男性を迎える。

 

 姫様に降ろした神が天岩戸に引き篭もり、私達の力だけでは助け出すことが困難となった。

 当初は良子姉さんにお願いして、ウェウェコヨトル(音楽・ダンスの神)の力を借りる予定だった。

 

 ただ残念なことに良子姉さんはアジアカップで日本を離れていた。

 そこで紹介されたのが長野の強豪校で麻雀部の監督を務める目の前の彼だ。

 

 姫様をプロ雀士でもない方に任せてしまうのは、荷が重いのではないだろうか。

 長野は昨年のインハイと春の大会で活躍した龍門渕が有名だが全国的には激戦区とはいえない。

 実業団リーグの中堅プロ程度の雀力では、神に返り討ちにされてしまうことだろう。

 

「どうやら人選に不満の様子だが?」

 

 表情の変化に乏しいと言われてますが、感情が表に出ていたみたいです。

 

「いえ、案内します」

 

「この空気……なかなかの神が降りてるみたいだね」

 

「ええ」

 

 おかげで化生の類は寄り付かず、部外者が何か悪いものに憑かれたりする心配をせずにすむ。

 どうやら神を降ろした神域から放たれる圧力に怯んだり飲まれたりもせず付いては来れる様子。

 

 

 

「きましたかー。風越女子の監督さん。

 元インハイ男子団体戦の三冠、噂は聞いてますよー」

 

 応接間に案内すると、いつものハダケた巫女服姿で初美さんが声をかけて来る。

 他に中にいるのは霞さんだけ。巴さんは憑かれた姫様に付きっきりだ。

 

「遠い所から、よく来て下さいました。永水女子、3年の石戸霞と申します」

 

「同じく3年の薄墨初美ですよー。よろしくおねがいします」

 

「読川尊月です。今は風越女子の麻雀部で監督をやっています」

 

 六女仙を代表して霞さんが挨拶を行う。黒糖分が足りないけど少し我慢をする。

 初美さんのように、殿方の前ではしたない姿を晒すことはできない。ポリポリ

 

「はるる、どうだった?」

 

「わからない」

 

 迎えに行くついで雀力(神力)があるか見て来て欲しいと頼まれたが私に分かるはずがない。

 

「ふんふむ……なるほどなるほど。頼りになりそうな方ですね」

 

「霞さんが言うならまちがいありませんねー 」

 

 巫女としての年季の違いだろうか、私には分からないけど霞さんには何かが分かるらしい。

 

「しかし……」

 

「何か問題が?」

 

「ただ稲苗月ということもあって神域の力も増しておりますので――」

 

 稲苗月は五月の異名だ。古来において日本には、男が戸外に出払い、女だけが家の中に閉じこもって、田植えの前に穢れを祓い身を清める儀式を行う風習があった。これが中国から伝わった端午と結び付けられ、5月5日(こどもの日)に行わる端午の節句となった。すなわち、端午は元々女性の節句であり、この霧島神境の中において女性の神力が高まる時期でもある。

 

 そのことを霞さんが説明する。ポリポリ

 

「なるほど…‥。まあ夜中の試合であれば拮抗できるでしょう。

 あと儀式の巫女服は戒能プロに頼んでおいたものでお願いします」

 

「ええ、理由は聞いておりませんが、全て整えています」

 

「神払いにおける対局のルールをお聞きしても?」

 

「はい。インハイの団体戦を準拠で降ろしていますので持ち点は10万点です。

 半荘2回の間に姫様の持ち点を5万点以上減らしていただければ、天岩屋戸が開きます」

 

「開いた後は?」

 

「同じ卓に着く二人の巫女が神を封じます。

 ただ巫女は備えのため置物になりますので、実質は神との一対一になります」

 

「その条件なら春の大会で見た薄墨さんの裏鬼門があれば何とかなりそうだけど?」

 

 通常のトラブルであれば、霞さんか初美さんで対処し、私と巴さんで神封じを行う。

 だけど天岩屋戸に引き篭った神に対して高火力を誇る初美さんの力との相性が悪い。

 

「北家でも牌が集まらないんですよー」

 

「それが天岩屋戸の前で神は風牌(カゼハイ)が他家に集い騒ぐことを許さないのです」

 

「それだと四喜和で和了るのは無理そうですね」

 

「はい。それで、ご助力を願うこととなったのです」

 

「事情は分かりました。精一杯努めさせてもらいます」

 

「それでは客間を用意しておりますので、お時間まではそちらでお休み下さい」

 

 ふう、ようやく黒糖分が補給できる。ポリポリ

 あれ、いつの間にか黒糖が半分くらい減ってる。

 

 

 

 日も深く沈み対局の場となる主殿に足を運ぶ。

 畳を敷き詰めた座敷の中央に儀式に用いる麻雀卓が用意されている。

 正面には深い眠りにつく姫様が巴さんの介護を受けて座る。

 

 左右には霞さんと初美さん、姫様との対面に風越女子の監督。私はその後ろで対局を見守る。

 

 霧島神境の姫君――神代小蒔。

 

 強力な神を身に宿した状態ならば、最大瞬間風速でチャンピオンの宮永照を超えるだろうと私たちは信じている。

 けど神降ろしには事前の準備が必要で、夏のインターハイに合わせて儀式のローテションを考えていたところだった。

 

 そこで予期せぬトラブルが起きた。試しに呼び出した神が、姫様の身体を天岩屋戸とし、その中に閉じこもったのだ。

 その日から眠りについたまま、目を覚ますことのない姫様が、まるで夢遊病者のように麻雀を打っている。

 

「ポン」 {西 西 横西}

 

 他家に集まらない風牌を姫様が鳴いて集める。

 

「ポン」 {中 横中 中}

 

 また姫様が鳴く、風牌ではなく中牌?

 

 まさか……。

 

「ツモ、混一色(ホンイツ)」 {一筒 二筒 三筒 四筒 五筒 六筒 北 北 北 白}{西 横西 西}{中 横中 中} {白}

 

 まずい。これは、それこそインターハイ決勝に合わせて降ろすような神の力だ。

 

 風牌{東 南 西 北}を分散させるだけでなく、三元牌(サンゲンパイ){白 發 中}を手元に集めている。

 

 これでは大三元や字一色(ツウイーソウ)を警戒しなければならず、風牌や三元牌を安易に捨てることもでない。そのような身動きが取りづらい縛りの中で5万点を削るなど不可能に近い。

 

 ジッと姫様を視ていた風越の監督が、左右に瞳を向けた。

 何故か左右の二人が、顔を赤らめている。

 

 ……そして室内の熱が増した。

 

 

 

「ツモ、九蓮宝燈(チューレンポウトウ)」ドン!!

 

{一萬 一萬 一萬 二萬 三萬 四萬 五萬 六萬 七萬 八萬 九萬 九萬 九萬} {三萬}

 

 ()()()()()()()()。しかも、あがった者は死ぬと言われるほどのレジェンドレア役である純正九蓮宝燈。

 

 場が異常な熱気と興奮に包まれ、見学者の私でさえ、身体の芯が火照っているのを感じる。

 

 いつの間にか左右に座る二人の巫女服が少しずつはだけていた。

 

 神話において天岩戸の外で、神々がアマテラスの気を引こうと破廉恥騒ぎを起こした。

 有名なのは芸能の女神であり、日本最古の踊り子アメノウズメによる裸踊り(ストリップ)だ。

 

 胸をはだけ、腰巻を下ろした状態で踊り狂う天宇受売命に男の神様たちが大喜びする。

 

 これは、きっと夢だ。神話が目の前で再現され、私は黒糖を食べることも忘れて魅入る。

 

 狂乱の宴は、ダブルやトリプル役満の無いインハイ準拠のルールで姫様がトブまで続いた――。

 

 

 

 私にも分かった。風越女子の監督はマジでヤバイ。ポリポリ

 




一回くらいはチート能力によるオリ主の無双がやりたかったんや!!

などと供述しており……。

純正九蓮宝燈ネタは感想から頂いたアイデアですが、元ネタであるR-18設定のプロットで永水女子×天岩屋戸で乱痴気さわぎというネタがありました。これは酷い。

第三者から見た「夜のツクヨミ(意味深)」&「白銅鏡」チートの威力です。

ベガスの大会でも緑一色を連発させた為に周囲からは「プロになれよ」と思われてます。
特に三尋木、佐之海、小鍛治の三人は読川のプロ入りを強く願ってます。
裏事情を知らないので、異能が当初は不安定なのはよくあること、諦めるのは早い。プロになってから練度を高めれば良いという考えです。
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