風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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第21局 憧憬

 福路との個別面談で分かったことは、自分のインハイにおける活躍が想像してる以上に影響を与えていたということだ。

 たしかに麻雀のスタイルが似てるなと思ってはいたが、まさか僕に憧れてスタイルを真似たなどとは考えてもいなかった。

 

 やたら就任当初から好意的なのも、原作で初対面のタコスに弁当をあげるような優しい性格だからだと思っていた。

 今まで話す切っ掛けや機会を伺っていたのだろう。彼女から姫松男子の「全員麻雀」に感動したこと、団体戦で三冠を達成した姫松の中堅(エース)だった僕をずっと尊敬していたことなどを伝えられた。少々こそばゆいというか、かなり恥ずかしい。

 

 なにしろ当時の姫松の男子麻雀部は強豪であった女子麻雀部に比べて、ずっと弱かった。部員も片手で数えるほどで、部員数の多い女子麻雀部には相手にもされていなかった。たしか前世の記憶で「男子のインハイチャンプは二条泉ちゃんと同じくらいの強さ」というアナウンスがあった記憶がある。原作において二条泉は1年生で千里山女子の次鋒を務めてはいるが、インターミドル個人戦では原村和と対戦して惜敗。特別な能力などもなく「日本で最強の高1」を自負してはいたが、宮永咲や高鴨穏乃、大星淡といった1年の「何かヤバイ奴ら(異能持ち)」と比べると1枚も2枚も劣るといった感じだった。

 

 転生して実際に麻雀界に関わると、常識では考えられない異能を持った選手の割合は女性が圧倒的に多い。インハイ女子では毎年1人か2人は「牌に愛された子」というのが出てくる。しかしインハイ男子となれば、その割合が十年に1人か2人となる。ちなみに原作の『咲-Saki-』のインハイ世代は、この十数年の間で間違いなく「大当たりの年」だ。

 

 男子の麻雀は異能持ちが極めて少ないので派手さに欠けると言われている。競技人口の男女差が大きく開いているわけではないが、実力面で女性の方が平均レベル・トップレベル共に高いのが実情だ。男女混合の実業団リーグも女性プロの比率が高い。

 つまりインハイ男子は風越女子でいうと池田レベルであれば全国トップの実力者で、深堀、吉留、文堂レベルの雀力があれば全国クラスで個人戦代表にも十分なれるといった感じだ。

 

 姫松の男子麻雀部メンバーが気持ちを一つにして「全員麻雀」ができたのは「全国で活躍して女の子と打ちたい」という共通の「熱い想い」があったからだ。男子は弱い。全国出場レベルでは、共学にも関わらず強豪女子の練習には交ぜて貰えないほどだ。

 けど全国優勝できたらなら立場が変わる。環境が変わる。強豪女子の練習に交ざっても不自然ではないし、女子の練習に参加できれば……姫松に合同練習に来る千里山の女の子たちともお近づきになれる!(なりたい!)と誰もが強く願っていた。

 

 隣の芝は青く見えるというが、コテコテの南大阪(ミナミ)に比べて北大阪(キタ)の方が都会的な印象があるのだ。ほら原作の方でもそんな感じがせーへん?(※あくまで個人的なイメージです)

 とにかく全国優勝することで女子麻雀部員からの評価が大きく変わったのは事実だ。また僕が「双璧」の一人として名が売れると、他校が姫松の女子に練習を申し込む際に「ついでに男子とも打ちたい」とか言われて他県の女子とお近づきになれる機会まで増えたのだ。

 

 そして姫松の男子麻雀部メンバーは「この女の子と毎日のように麻雀ができる青春」を守るために必死になって団体戦を勝ち抜き、インハイ三冠という栄光を掴んだのだ。もちろん、そんな裏事情をわざわざ福路に伝える必要はない。

 

 キャプテンの福路が原作と少し違うのは出会ったときから気付いてたし、気になってはいた。原作だと、たしか大将戦の池田の回想で「同級生の友達がいない」とか「うざいとか言われたりする」といった女子高の闇が描かれていた。(※記憶はあいまいです)

 だが福路は同学年の弓野とは美穂子・奈津美の仲だし、1年時からの団体戦スタメン、個人戦代表の別格(スター)扱いで多少は浮いてるとはいえ、別に疎外されてたりはしない。推測だけど「団体戦で全国優勝したい」という気持ちが、原作よりも周囲との距離を縮めたのではないかと思う。そして福路とのエピソードがなくても図々しい池田の性格は、単なるデフォルトに違いない。

 

 福路が中堅を望むのは「監督がインハイ時代に選手として活躍したポジションに付きたい」という強い想いがあるからだ。俺の嫁(※じゃないです)に慕われて悪い気はしない。そんな彼女に上目遣いで「駄目でしょうか?」と問われて「否」と言える男がいるだろうか。いや、いない。

 

 姫松の伝統といえる中堅に置くエースというのは、他校の先鋒や大将に選ばれるエースと求められる能力が違う。基本的に先鋒のエースに求められる能力は第一に得点力(高火力)だし、大将にエースを据える際に求められるのは安定した総合力だ。しかし姫松の中堅(エース)は、それらよりも柔軟な対応力が何よりも求められる。

 

 団体戦の中堅となると、先鋒や次鋒が大きく失点しており、自チームが窮地に陥っている可能性もある。そこで手遅れになる前に点を取り返す、または圧倒するといった役割が求められる。もし有利であっても下位を狙って叩き、中堅や次の副将で弱っている最下位チームを飛ばし、大将戦を前に決着をつけるといった打ち回しも可能となる。自チームの状況、敵チームの作戦や状況を踏まえた上で、行き当たりばったりではなく高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処できる選手こそが姫松式の中堅の理想像だ。

 

 たしかに風越女子のスタメンで、姫松式の中堅を任せられるとしたら福路しかいないだろう。

 そういう意味で全体のバランサーとなる中堅に福路を置くのは悪くない。ただし、そうなると大将を任せられるのは――。

 

 まず「大将、池田」はありえない。なにしろ原作お墨付きの負けフラグだ。

 ステルスモモこと東横も大将となると流石に荷が重い。

 となれば残るは原作知識では実力が未知数の東海王者、対木もこ……となる。

 

 校内ランキング3位の対木にも希望を確認した所、「……つよいひとがいるとこ」という麻雀戦闘民族(サイヤ人)的な返答があった。さすが宮永に「ゴッ倒す!!」オーラを放ってただけはある。というか意外に負けず嫌いなとこもあるよな彼女。

 

 大将のポジションといえば原作では宮永咲がいて、他校の大将には魔王に対する強者が置かれていた。天江衣、石戸霞、姉帯豊音、末原恭子、ネリー・ヴィルサラーゼ、獅子原爽、高鴨穏乃、大星淡、清水谷竜華、鶴田姫子……というか宮永咲が抜けた清澄は原村和が大将になるのだろうか。

 

 対木の持つ異能は天江衣の一向聴地獄や大星淡の絶対安全圏といった別格クラスの異能の支配にも対抗できる力を秘めている。むしろ二人に対しては福路よりも相性は良いだろう。対木は性格的にも能力的にも「わたしはわたし」といったマイペースなところがあって他家の支配を受け難いのだ。(※あくまで麻雀の話をしています)

 高鴨穏乃に対しても、対木の麻雀スタイルだと牌山の奥までは入らないことが多いからな。というか原村和の清澄が全国行けないけど阿知賀の1年生2人のモチベーションとかどうなるんだろ?(他人事)

 

 また対木は大将という立場に特別なプレッシャーを感じるような性格でもない。どんなポジションでも自分のスタイルを貫く性格だ。そういう意味では複雑な役回りを求めるのには向いていない。中堅や副将よりは大将の方が良いだろう。

 

 むしろ精神面は原作で清澄という少人数の仲良しサークル的な麻雀部にいた宮永の方を心配している。原作において大将の立場でも殆どプレッシャーを感じていなかったように思えた宮永が、風越女子では名門麻雀部の重責を一定のレベルで感じているのだ。まあ清澄には補欠なんかいなかったし、スタメン争いもなかった。けど風越女子ではスタメンになれなかった部員、宮永に期待して夢を託す部員が何十人といるのだ。

 

 入部当初の宮永は勝つことのプレッシャーを知らなかった。けど今となっては勝つことのプレッシャーを大なり小なり感じているだろう。良くも悪くも環境や人間関係の違いは、原作との差異に繋がっている。

 

 そういう意味では校内ランキングにおいて1年生2人に遅れを取った池田は、すでに逆境を経験しているし、間違いなく原作よりも精神的なタフさを身に付けている……と思う(まだ少し不安)

 また東横にランキングで抜かれなかったことは、先輩としての意地を見せたと評価してやっても良い。アニメ版の個人戦だと東横に最終順位で負けてた気もするし。原作の風越女子に比べて、1年の三人娘が加わった校内ランキングは間違いなく競争が激化している。少なくとも深堀、吉留、文堂、弓野は、上位5人の強さは別格だからとスタメン入りを諦めたりするようなことは最後まで無かった。

 

 さて残る二つは東横が次鋒で池田が副将というのが学年的にも順位的にも良いだろう。三年が引退すれば次期キャプテンの最有力は池田だ。それが次鋒だと、ちょっと格好がつかないからな。さて来年の風越女子は大丈夫か?(大丈夫だ、問題ない)

 

 校内ランキングおよび選手の希望を加味すると、先鋒:宮永、次鋒:東横、中堅:福路、副将:池田、大将:対木といったオーダーになった。本当にこのオーダーで問題ないのか提出前に少し検討してみたい。




能力の相性とかは、あくまで監督による推測の域を出ないものです。

読川(姫松男子)と佐之海のインハイ団体戦での戦い

1年目 佐之海は大将だったが、学校が中堅の読川に飛ばされて出番の前に終了
2年目 佐之海は先鋒で活躍するも、次鋒、中堅、副将、大将と姫松男子による大逆転
3年目 佐之海は中堅に、読川がマイナス10000点以内に押さえて姫松男子の勝利

インハイ団体戦における双璧の直接対決は1回だけ 佐之海は個人戦で三冠
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