この世界において日本国内で大きな影響力を持つ麻雀団体が四つある。
それが日本麻雀連盟、日本麻雀協会、国際麻雀連盟、世界麻雀協会だ。
前世のプロ団体が乱立した状態に比べると、随分とマシだが、麻雀界は組織的に統一されてはいない。
ボクシングのチャンピオンがWBA、WBC、IBF、WBOとか色々あって門外漢にはよくわからんといった状況に似てる。
「今までのインターミドルやインターハイのシステムは堅実に技術を高めた選手を選りすぐって来ましたよね?」
ちなみにインターミドルからインターカレッジまでの学生大会を主催してるのが日本麻雀連盟。通称、連盟。
学生に限らずアマチュア大会に多大な影響力を持ってて、日本最大の麻雀団体戦、社団戦なんかも行っている。
社団戦はプロではなくアマの会社員が、会社の麻雀部所属で出場する団体戦だ。実力に応じて7クラスに分かれたリーグが存在する。またプロアマの交流戦や親善試合などのオープン大会や過去に小鍛治プロが無双した各種のタイトル戦なんかも主催してる。
かなり手広くやっていて個人的なイメージとしては日本将棋連盟が近い。
「当然だな。技術を競うからこその競技麻雀だ」
「けど、それは年間二千試合以上の試合を行うプロのリーグ戦で戦うプロ雀士に求められる能力です」
そのプロリーグを主催してるのが日本麻雀協会。通称、協会。イメージとしてはサッカーのJリーグだ。
MJリーグという名称でトップリーグのMJ1から3まで100近くのクラブチーム(実業団も含む)が全国に存在する。
藤田プロの所属する「佐久フェレッターズ」は二部リーグ(MJ2)で、藤田プロの知名度はサッカーのJ2所属の選手くらいの感じだ。地元のサッカーファンなら知ってるけど、サッカーに興味ない人はまず知らないし、サッカーファンでも国内リーグに興味がなければ知らないってレベル。
ちなみに三尋木咏はサッカーの日本代表の常連レベルの知名度。戒能良子は日本代表にも選出された期待の新人ってところ。
サッカーを麻雀に変換すれば、この世界におけるプロ雀士の知名度やイメージが掴みやすいと思う。
三部リーグ(MJ3)に落ちて撤退しかけた「つくばプリージングチキンズ」は未だトップリーグ(MJ1)入りしてない。近年では日本代表に選出されても辞退している。でも恵比寿(MJ1)時代は毎年MVPで、七冠の永世称号を持ってて知名度なら抜群といったところ。
「インターハイで活躍したスター選手が、プロリーグのスカウト対象となるからな」
「そう。おかげで国内リーグの選手層は広がったけど、その間に日本の選手は世界で勝てなくなった」
小鍛治プロが日本代表を辞退できるのは所属団体が違うからだ。日本代表を招集している団体が
「それで国内リーグの強化の次は世界ということか」
「日本の麻雀と世界のマージャンで求められるプロ雀士の違いは分かりますか?」
最後の
プロ雀士というのは、まずは日本麻雀連盟の公認プロ。これは前世のプロ雀士に近い感じでプロテストに合格すればプロという肩書を名乗って活動ができる。主な収入は大会の賞金と指導料。賞金だけで生活するトーナメントプロというのは極小数。兼業してるプロや雀荘や会社や学校の麻雀部と契約したり、麻雀本などの出版物を出したり、テレビやイベントに出たり、指導することで稼ぐティーチングプロが大半。麻雀部のコーチや監督で公認プロのライセンスを持ってる人もそれなりにいる。ライセンスもタイトル戦に出場できる最上位のS級からA級-D級まであり、B級-D級のライセンスは維持費(年会費)も発生するから資格ビジネスに近いところもある。とはいってもS級やA級のプロ雀士は、将棋や囲碁のプロ棋士に近い存在だ。
次に日本麻雀協会に所属する団体と契約しているプロ。クラブチームや実業団に所属する選手で一般的に「プロ選手」といえば、こちらを指すことが多い。収入は年俸+賞金+他色々。まず契約により安定した年俸が貰えることが大きい。そして連盟と協会は相互に提携していて、MJリーグのプロ雀士は協会が主催するタイトル戦やオープン戦にも参加できる。こちらはプロのスポーツ選手に近い。
日本代表なんかも日当や勝利ボーナスを貰えるが、あくまでWMAの興行にも関わらず、金銭云々の前に「代表は名誉」という価値を前面に押し出しており、他団体からプロ雀士を安く使っていると嫌われている。ただ国家対抗戦ということで、WMAの主催する世界ジュニア(U-18)、世界ユース(U-23)、麻雀ワールドカップなどの国際大会は世界中の麻雀ファンの注目を集めている。
IMCの
佐之海のような世界大会に単独参戦してるプロ雀士は、プロテニスプレイヤーのイメージに近い。企業とスポンサー契約を交わして拠点と資金を得る。専属のコーチやトレーナー、マネージャーの他に通訳などを雇う。一人の選手が最高のパフォーマンスを舞台で発揮できるように複数のスタッフがチームを組んで対応する。三尋木や戒能も所属チームの支援を受けてIMCの大会に参加しているが、佐之海ほどのバックアップ体制はない。
有名選手が移籍してMLBが公共放送で見れたように、IMCの
21世紀に1億人を突破した世界の麻雀競技人口は今や数億人を超える。とは言っても日本国内における麻雀競技人口が前世(500万)の十数倍もあるのかというとそうでもない。麻雀の市場規模は世界の方が大きい。
そして日本の麻雀と世界のマージャンはプロの価値観に大きな違いがある。
麻雀には運の要素がある。日本のプロ麻雀は、競技麻雀から運の要素を取り除く為に対局数(試合数)を増やしている。国内リーグでは選手は毎週、半荘4回×4日間の計16回の対局を行う。対局数を増やせば、プレイヤーの運は平均化していくので、運要素の強い麻雀も実力勝負の世界に入るという考えだ。この「実力」の考え方は運の要素がほとんど介在しない将棋や囲碁のプロに通じるところがある。
これは実際には異能持ちの対策にも繋がっている。異能の力には条件や回数制限がある。またRPGゲームではないが、精神力や集中力といったMPを大なり小なり消費するし、体力を削るものもある。例えばツクヨミの力でも半荘4回を全て流せというのは無理だ。
逆に世界のマージャンは「プロならば運の要素を操って当然」と考える。「そんなオカルトありえません」とか言ってるインターミドルチャンピオンがいる日本とは違って、オカルトの存在が大前提なのだ。オカルト麻雀が出来る奴がプロ。できない奴がアマチュア。オカルトは、あります!
「なるほど。今年のインハイのルールはまるで、1万人の中から特殊な子供を選り分けるシステムみたいにも見えたのはそうか」
小鍛治プロが銀メダルを獲得したリオデジャネイロ東風フリースタイル戦(南米式の麻雀)や僕が入賞した世界大会のラスベガス東風トーナメント(アメリカ麻雀)など、IMCが主催する国際大会は東風戦や東南戦1回のトーナメント形式が多い。
これは意図的に偶然性を高め試合時間を短くし、ショービジネスとしての完成度を高めている。様々なローカル役の採用も同様だ。実際にダイジェストで放送される国内リーグに比べ、生放送される世界大会の方が劇的な試合が多い。
「藤田先輩は、国内リーグで戦うプロ選手ですからね。
違った実力が求められるようなルール変更に疑問を持つのは当然ですよ」
「おまえは気付いてたのか?」
「ええ、インカレの頃に佐之海から日本は世界の流れから取り残されると聞かされてました」
「あいつはニーマンやブルーメンタール姉妹を相手にしてるからな」
「国内リーグを無視して、一足飛びに世界大会に参加したのも?」
「まあ、それ……もあります。あと熊倉先生が東北くんだりまで足を運んでいるのも、そうでしょ?」
それは世界大会の方が試合数が少ないのに、国内リーグより賞金額が多かったからだ。それに白銅鏡ほど具現化されていなくても「女性を性的に視る」ことで効果を発揮する異能は、試合数の多い国内リーグでは使い難い。むしろ同じ相手と何度も戦うことが少ない世界大会の方が向いてると思ったのだ。とりあえず熊倉先生の話を振って誤魔化す。
「地縁の無い長野の風越女子麻雀部の監督に就任してから、すぐに三人も特殊な力を持つ新入生を集めてきたと思ったが……なるほどな」
「インターハイ女子のルール変更を、世界の流れから読み取っていたということか。流石だな」
久保コーチと藤田プロが勝手に勘違いしてるけど、笑ってごまかしておこう。選手の情報は、あくまで原作知識だけどな!
インハイを戦う選手sideには直接の関係ありませんが、監督sideの世界観を深めるための独自設定です。
ニーマンやブルーメンタール姉妹の設定は、ニーマンが大人として『シノハユ』に登場したので、世界ジュニア世代ではなく、世界で活躍するトッププロとして扱っています。
『シノハユ』は咲本編より十数年前なのですが、普通に小学生がスマホとか家庭でクラウドサービス使っててビックリでした。90年代から10年代の情報機器の進化は凄まじい。
だって女子高生がポケベル使ってたのは、昭和じゃなくって平成なんだよ!!
私の中では、すこやんの学生時代はポケベルのイメージ。けど赤土晴絵が小学校の頃には皆がスマホのグループトークで連絡取ってるんだもなー。そりゃあアラフォーとか言われるわ。(アラサーだよ!って10年くらい言ってるよ)
ただ今の若い読者がスマホの無い学生生活とか描かれてもイメージし難いのは何となく分かる。咲本編の連載時は初代iPhoneすら出てない携帯電話の時代だったのですが……。
あと作中の設定では読川監督は『シノハユ』と『怜-Toki-』は読んでなかったことにしています。また雑誌でインハイ決勝が始まる前に亡くなってます。