風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

26 / 36
四校のフラグ合戦が続く……


第26局 快勝

――東横桃子

 

「でばん……なかった」ショボン

 

 2回戦は風越女子の圧勝だったっす!

 大将のもこっちの前に副将の池田先輩が、最下位だった寿台高校を飛ばして終了っす。

 

「池田先輩、流石っす!」

 

「キャプテンが随分と削ってくれてましたし」

 

「中堅戦の時点で寿台高校は46800点だったから。

 これも宮永さんや東横さんが頑張ってくれたおかげね!」

 

 去年3位の城山商業の三年生に負けなかったっす。

 わたしも頑張ったっす。もっと褒めても良いっすよ。

 

「池田ァァッ!!」 「はっ、はい!」

 

「よくやったじゃねえか!」 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 控室では厳しい顔をしながら待ってた久保コーチもご機嫌っす。

 読川監督は「明日が本番だから軽く流せ」とだけ言って、龍門渕の試合を観に行ったっす。

 わざわざ監督が観なくても県予選の決勝に行くのは当たり前、盤石の布陣ってことっすね。

 なんせ県大会六連覇の黄金期を知るコーチが「歴代で最強かもしれん」って呟いてた布陣っす。

 

「そういえば咲っちの幼馴染さんが会場まで観に来てたっすよ」

 

「えっ? 京ちゃんが?」

 

「名前は聞いてないっす。なかなか背の高い金髪の男の子っす。咲っちも隅に置けないっすねー」

 

「あらら、まあまあ」 

 

「さきに……おとこがいたの?」キョトン

 

 キャプテンは温かい目で見てるけど、もこっちは誂ってるんじゃなくて素で聞いてるっすね。

 風越女子の切り込み隊長は池田先輩じゃなくって、もこっちかもしれないっす。

 

「ふぇ~、ちがうよぉ。中学のクラスメイトだよっ」

 

「何をやらせてもダメな咲が……って驚いてたっすよ」

 

「宮永が麻雀以外で抜けてるのは間違ってないし」

 

「もー、池田先輩」

 

 咲っちも試合前は初めての公式戦ってことで緊張してたっすが、取り越し苦労だったみたいっすね。

 

「おー、こっちも飛ばして勝ったのか。ちょろい相手だったから心配してなかったけどな」

 

「監督!」「おつかれっス!!」

 

 監督が他校を観戦してた分析班を引き連れて控室に戻ってきたっす。

 去年まで風越女子の麻雀部では牌譜管理は校内ランキング下位の雑用の仕事だったっす。

 けど監督が牌譜管理とは別に興味ある部員を集めて分析班を作ったっす。分析好きの部員が活躍できる下地を作って新しい伝統ができたらとコーチにも言ってたっす。全国上位の強豪校には、そういうノウハウがあるみたいっすね。

 

「読川監督、他の三校は決まりましたか?」

 

「龍門渕も副将戦で篠ノ井西を飛ばして勝った。お互いに大将は温存だな。

 あと決勝に上がってきたのは、清澄高校と……鶴賀学園というところだな」

 

「良かった――なら監督の読み通りですね」

 

「まあ風越女子が龍門渕にリベンジするのが監督として呼ばれた理由だしな」

 

 それだけじゃないっす。監督は清澄を前から警戒してたっす。

 インターミドル王者の原村和だけじゃなくって、先鋒の一年のインターミドル時代の牌譜まで分析班に集めさせてたっす。

 鶴賀も昨年の個人戦に出場した選手の牌譜を調べてたって分析班の子が驚いてたんだから凄いっす。

 というか私が進学する予定だった鶴賀学園と県予選の決勝で戦うことになるなんて不思議な縁を感じるっすね。

 

「よぉーし、分析班は夕飯食べに行くぞー。近くの居酒屋で部屋空けてもらってる」

 

「監督、酒っすか?」 「えー、分析班だけ祝勝会ですか?」 「ずるいしー」

 

「分析班は徹夜作業で今日の牌譜を入力したり、ビデオ録画した動画を分析したりするんだよ」

 

「どうして居酒屋なんです?」

 

「OGの旦那さんがやってる店で場所が居酒屋なだけだ。ファミレスと違って個室も借りれるしな」

 

「居酒屋会議かー」 「なんだか楽しそう」

 

「コーチも行くんですか?」 「遊びじゃないからな!」

 

「優勝したら焼き肉おごって下さいねー」

 

 これから分析班は徹夜作業っすか。プロの世界にも相手の情報を集めたり、分析を担当する裏方専門のスタッフがいてチームを補佐してるそうっす。集めた牌譜を分析して偏りのあるデータを見つけたり、ビデオ分析で癖を見つけたり、弓野先輩が言うにはハマれば楽しい作業みたいっす。私も攻略wikiとかに書き込む側のゲーマーだから何となくは分かるっす。でも何だか申し訳ないっすね。

 

「ありがとう……ごめんね……私もパソコンとかできればいいんだけど……」グスン

 

「やめて……こわれる」ボソッ

 

「もこちゃん……ごめんね……前にもゲーム機、壊しちゃって」ボロボロ

 

「わぁ……キャプテン」オロオロ

 

「うわっ、相も変わらず涙もろすぎっ」

 

「もこも追い打ちかけるなよ」

 

「キャプテンが機械音痴なのは、みんな知ってますから!」

 

「ま、団体戦は裏方も含めた総力戦だ。

 スタメンの選手は試合で力を発揮して勝つのが役割。

 支える側も好きでやってるんだから気にするな。

 ミーティングは明日の朝一番にするから、選手は帰ってちゃんと休めよ!」

 

「「はい」」

 

「……監督、少しだけ表情が固かったですね」

 

「そうっすね」

 

 咲っちの言う通りっす。予想してた学校が上がってきたにも関わらず、いつもより表情が暗かったっす。

 

「去年も春も龍門渕の天江衣には魔物が憑いてたからね」

 

 吉留先輩の言う通りっすね。春の大会を観戦に行って見てたから、あの恐ろしさは知ってるっす。

 もこっちは天江衣が大将だと聞いて、池田先輩の敵は討つ(あだうち)って張り切ってるみたいっすけど……。

 

「だいじょぶ……たおすよ」フンス

 

「別に、あたしが大将戦の前に龍門渕を飛ばしてしまっても構わないよな?」

 

 なぜか池田先輩から危険なフラグを感じるっす。

 

「みんなで監督やコーチを安心させるためにも証明しましょうか。

 ()()()()()()()()()()()()()――」

 

 キャプテンの言う通り、明日はやってやるっすよ!!

 

 

 

――加治木ゆみ(鶴賀学園3年生)

 

「……決勝か、今年は葉子が出場してくれて助かったよ」

 

「かまいませんよ。お互いに最後ですからね」

 

 野上葉子。彼女とは中等部の頃からの付き合いだ。

 大阪の中学校から転校して来たが、生まれが東京らしく関西弁で喋ることはない。

 

 小学生のときに友人たちと麻雀で遊んでたと聞いて麻雀部に誘ったが、今までは幽霊部員の一人だった。

 だが二年生の妹尾佳織と、彼女が入ってくれたおかげで団体戦にエントリーすることができた。

 

「まさか、決勝まで来れるとは思わなったけどなー」

 

 同じ三年で部長の蒲原智美が言う通り出れただけで十分という気持ちもある。

 なにせ鶴賀学園の麻雀部で真面目に活動してた三年生は私と智美の二人だけだ。

 昨年に入部して残った二年生は津山睦月の一人だけ。幽霊部員が葉子を含めて三人。

 ついに今年は新入部員の()()()()()()()()()廃部寸前の状態だ。

 それで智美の幼馴染権限で、初心者の佳織を確保してもらった。

 団体戦に出場する人数集めの為に幽霊部員にも頭を下げた。それに応えてくれたのが葉子だ。

 

「ああ、全国を目指すなら最後のチャンスだな」

 

「長野の県予選は、その最後の山が高いですけど……」

 

「この欲張りさん共がー」ワハハ

 

「……そうですね。

 でも私が団体戦に出場した目的は全国で彼女たちに会うことですから」

 

「全国ランキング2位、千里山女子か」

 

「そうですね。今年で11年連続の北大阪代表は間違いないでしょう」

 

「たしか野上先輩は千里山の部長さんと友達なんでしたっけ?」

 

「ええ、竜華とは()()()()()です」

 

「自称じゃないのかー」ワハハ

 

 千里山の清水谷竜華といえば全国にも名を知られた選手だ。

 それに昨年インハイで千里山のエースを務めた江口セーラとも知り合いだったと聞いたこともある。

 

「小学校の麻雀部だったとは聞いてたが、凄い相手と打ってたんだな」

 

「ええ、おかげで中学に上がる頃は自分の才能の無さに気づけましたけど」

 

「葉子は諦めるのが早いと思うけどなー」ワハハ

 

「そうですね。野上さんは2試合とも収支は大きくプラスですし」

 

「津山の言う通りだな。今まで幽霊部員だったのが惜しいと思ったよ」

 

「かもしれませんね。私も怜さんのように諦めずに続けてたら……と思うときもあります」

 

「怜さんっていうのは、昨年の秋に千里山の先鋒(エース)となった園城寺怜か?」

 

「ええ、全国的には無名でしたけど小学生のときから光るものがありましたね」

 

「そんな選手が今まで埋もれていたのか……」

 

「昔から怜さんは諦めるような人では無かったですからね。

 だから彼女に会うと決めた私も簡単に諦めるつもりはありませんよ」

 

「そうだな。まだ戦いもせず全国を諦めるのは早いな」

 

「うむ」

 

 三年が引退すれば残るのは二年の二人。

 新部長となる津山のためにも麻雀部が全国出場したという実績を残さないとな。




鶴賀は新入部員がゼロ……もしかして清澄以上に悲惨?
野上葉子は『怜-Toki-』の設定通り小学校は竜華や怜と同じ麻雀部です。
独自設定として中学校で才能の差を感じ麻雀から離れています。
その後、中学の途中で長野の鶴賀学園中等部に転校。そこで加治木と出会います。
すでに麻雀から離れてたので、全国を目指す気もなく風越女子には行かなかった設定です。

園城寺怜の復活を知り心が揺れてたところ、加治木ゆみからの勧誘を受けた形ですね。
雀力も鶴賀の面子を相手にする分には十分に通用しますが、全国クラスではありません。

あと風越麻雀部のマスコット的存在のもこちゃんが段々と毒舌に(汗)
咲ちゃんも「かわいい」扱いですがマスコットになってないのはエースだからです。

キャプテン=かわいい、やさしい、おもちの三拍子
モモ=うすいけど、おもち
もこ=かわいい、つよい
さき=(涙目が)かわいい、エース、まおう?
いけだ=負け猫キャラなのに先輩ヅラしてる、やさしい

まさしく最強の布陣?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。