風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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正規雇用の道は遠く険しい……

第01局から第11局までの「宮永咲」と「東横桃子」の設定を一部だけ変更しました。

[変更前]→[変更後]

宮永咲は風越女子で寮生活→自宅から通学
東横桃子は風越女子に自宅から通学→寮生活

活動報告には長々と書きましたが変更点は、それだけです!!


第27局 怪物

――宮永咲

 

「決勝戦は一人半荘2回ずつでトータル半荘10回。やはり点数は引き継ぐ――」

 

 久保コーチが説明してるけど、合宿やミーティングでも聞いた話だから大丈夫。

 分析班がまとめてくれた先鋒の牌譜データを見てるけど、あまり頭に入らない。

 昨日の疲れが残ってるのかなぁ……ふわふわして少し集中できてない感じがするよ。

 

「宮永さん、大丈夫? ちゃんと朝食は食べてきた? お弁当もあるわよ」

 

 福路キャプテンが心配して声をかけてくる。

 朝が早かったから、朝食は軽めだった。栄養が頭に回ってないのかも。

 

『あと10分で先鋒前半戦が始まります。各校の先鋒は――』ピンポーン パンポーン

 

「よっし、行って来いよ! エース」

 

「頑張るっすよ! 咲っち」

 

「……がんばれ」グッ

 

「さっきも説明したけど、清澄の東家は早めに流せよ」

 

「先鋒は任せましたよ。宮永さん」

 

「はい! 行ってきます」

 

 用意された控室はスタメンを含むAクラスの全員と分析班が主に利用している。部員の大半は観客席での応援だ。移動する途中も大勢の部員に「頑張って」と声をかけて貰いながら対局室に移動する。

 昨日も体験したけどOG会や保護者会の応援団なんかも来てて、団体戦は多くの人の期待を背負っているんだと実感する。

 

 私は中学生のときは帰宅部だったから、名門麻雀部の伝統ある先鋒(エース)の重みに戸惑っているのかもしれない。

 

「よろしくだじぇ」

 

 清澄の先鋒、片岡優希ちゃん。同じ一年生だ。監督からは東場、特に東家に警戒するよう注意を受けている。

 分析班がまとめてくれた昨日の試合では不調だったみたいけど……東場を得意とする先行逃げ切り型の選手。

 

「よろしく」

 

 鶴賀の先鋒は、二年生の津山睦月さん。昨年の鶴賀は団体戦に出ておらず、個人戦の牌譜しかなかった。

 

 あっ、優希ちゃんが待ちながら持ってきたタコスを食べている。ちょっと美味しそう。

 私もキャプテンのお弁当を貰ってくれば良かったかなぁ……。

 

 龍門渕の先鋒さんはまだ来ない。名前は確か――そう、二年生の龍門渕透華さんだ!

 昨年の全国大会でも驚異の和了(ホーラ)率を見せた県屈指のデジタル派だと分析班に教えて貰った。

 監督からは、冷えないか注意しろという謎のアドバイスを貰った。

 もしも卓が凍ったらお姉ちゃんが相手だと思って戦えって言われたけど――。

 

「さあ始めましょうか、真の先鋒(アイドル)を決める戦いを!」

 

「東場、最強の先鋒(エース)が誰だか教えてやるじぇ!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 考え事をしてる間に試合が始まる。やっぱり県予選も決勝となると先鋒(エース)は何だか個性的な人が多いなぁ。

 監督がプロになる奴はインターハイの頃から目立ってた。大概の強い奴は濃い。とか言ってたのはホントなんだ。

 そういえば鹿児島代表の藤原利仙さんも私服が平安朝だったし、キャプテンも、もこちゃんも――。

 

「リーチだじぇ!」

 

 えっ、親リー。まだ三巡目めだよ。起家(チーチャ)となったは清澄。仕掛けが早い。

 監督からも東初の起家を担当する確率が高いって言われてたよね。ってことは今日は調子が良いのかな?

 

 龍門渕の透華さんも鶴賀の津山さんも流石にオリるみたい……。

 

 手にとった牌は{二筒} ……なんだか嫌な予感がするよぉ。いきなり当たり牌ってことは無いよね。{八萬}を捨てる。

 

「門前ツモ! 立直、平和、タンヤオ、ドラ1 満貫の4000オールだじぇ!!」

 

{二萬 三萬 四萬 三筒 四筒 赤五筒 六筒 七筒 二索 三索 四索 八索 八索} {五筒} ドラ表示牌:{東}{六索}

 

「うわぁ……」

 

 やっぱり{二筒}を捨ててたら三色が付いて跳満になるところだったよぉ。ぼーっとしてる場合じゃないから私。

 

「やりますわね」

 

「ここからは私の連荘で終わらせる。この試合に東二局は来ない!」ドン!!

 

「フザケたことを言ってられるのは最初のうちだけですわ」

 

 うぅ……トラッシュトークとかあるんだぁ……なんだか清澄の子が、お姉ちゃん並に怖くなってきたよぉ~。

 

(※トラッシュトーク=試合中に相手を挑発したり混乱させるような言葉を発すること。三味線ともいう)

 

 

 

――読川尊月(監督)

 

『ポン』 {八筒 横八筒 八筒}

 

「また清澄の先鋒(タコス)が、仕掛けてきたし」

 

「二巡目に鳴いて、もう聴牌(テンパイ)ですか」

 

「分析では、たまには鳴いて仕掛けたりするけど、比較的リーチが多い門前のプレイングだったのですが……」

 

「その()()()の鳴きなのか、それとも高校に入ってからプレイングを変えた?」

 

「あ、鶴賀が{一萬}を振り込んだ」

 

『ロン、ドラ2で6100点』(30符3翻の1本場で5800+300点) 

 

{三索 三索 六筒 七筒 八筒 二萬 三萬 中 中 中} {八筒 横八筒 八筒} {一萬} ドラ表示牌:{二索}

 

「私だったら、あの状態で{八筒}を鳴いたりはしませんね……」

 

 控室で中継を観ながら池田、吉留、文堂、深堀たちが言葉を交わしている。

 

「読川監督、清澄の先鋒は速度重視でしょうか?」

 

「速度よりも火力重視と分析してたのですが……どうですか?」

 

 対局に集中していると福路と弓野から質問が飛んできた。

 

「いや一局だけでは分からへん……」

 

 ってか、めっちゃ早いし打点も高いやんけ。原作と違うし、こんなん詐欺や!

 こいつチートやチーターや!なんや転生者ちゃうんか!?そりゃオレやんけ。

 おっと、動揺のあまり関西弁が出てしもうたわ。にしても拙い。宮永咲なら先鋒は安牌とか言ってたの誰や!!

 

 さっきから、ツクヨミが感じる東家(タコス)流れ(ツキ)が一本場ごとに増してるんだけど――。

 

『ダブリリーチだじぇ!!』

 

 こんなん、ありえへんやろ!?

 

「……まさか、分析班の予測を超えてますよ」

 

 文堂が細目を見開いて驚いている。Aクラスでは補欠の文堂や三年の弓野が積極的に分析班に協力してくれていた。

 

「さっき東一局で終わらせるとか言ってましたよね」

 

「みはるん、きっと一年が大舞台で調子にノッてトラッシュかましただけだし」

 

『ツモ、6200オール』ドン!! (Wリーチ、一発、門前ツモ、平和、タンヤオ 跳満の1本場で6000+200ALL)

 

{二索 三索 四索 七索 八索 四筒 五筒 六筒 三萬 四萬 五萬 七萬 七萬} {六索} ドラ表示牌:{發}{八筒}

 

「この試合は10万点持ち点スタートっすよね……」

 

「ああ、もしその10万点を1回の親番で削りきれるとしたら……」

 

「もし……できたら?」ボソッ

 

「インターハイ史上、最強クラスの怪物だな」

 

「久保コーチ……」

 

「今、宮永の顔が一瞬だけ曇ったな」

 

「まじっすか?」

 

「……やばい」

 

「あの、読川監督、その、顔が……真っ青ですよ」

 

 宮永に清澄の東家は早めに流せと伝えたけど、対応できてない。いや、タコスが想定以上だ。

 三巡目、二巡目、ダブルリーチと速度(ツキ)が加速し続けている……マジでヤバくね?

 

 なんで初っ端の県予選決勝から全力全壊(スターライトブレイカー)でぶっ放すの?

 馬鹿なの?死ぬの?やっぱり清澄は魔王(咲-Saki-)がいなくても白い悪魔なのか?

 

 これをやるとしてもさ県予選じゃなくって全国大会の決勝だろ!!

 

 答えろや。竹井久!!

 




寝かせていたR-18ネタを引っ張り出して全年齢向けにして書き始めた理由の一つが、ようやくインハイ決勝が始まったからというのがあります。連載が熱いです!

咲の本編は休載とかもあって途中で読むの止めちゃったって人も多いかと思います。
私は単行本の18巻を読んで、久々に漫画喫茶でヤングガンガンの連載を見ました。
インハイ決勝は読んでない設定の読川の驚きはその時の衝撃みたいなものを詰めてます。

そして立先生が締め切りを相手にした戦いに勝利することを祈ってます。

※次回は咲-Saki- 18巻(最新刊)以降の連載話の一部ネタバレがあります(注意!!)

本日の23時に次を予約投稿しております。
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