風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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まだ前半戦の東場が終わってないとか……。


第29局 反撃

――宮永咲

 

 ひゃぅッ!!

 

 もしかして久保コーチが怒ってるのかなァ。そうだよね。まだ一回も和了れてないもん。

 

「チー」 {横七索 六索 赤五索}

 

 また清澄の先鋒さんが鳴いてきた。分析班のレポートよりも聴牌(テンパイ)までの速度がかなり早い。

 龍門渕と鶴賀が現物でオリた。さっきからの勢いもあるから1副露(フーロ)でも怖い。

 まだスピード勝負をするのは難しい。私も直撃を避けてオリる。

 

「ツモ 1500ALL」(タンヤオ、ドラ1 30符2翻の5本場で1000+500ALL)

 

{四萬 五萬 六萬 二筒 二筒 四筒 五筒 六筒 八索 八索} {横七索 六索 赤五索} {二筒}

 

 五連続和了(ホーラ)とか、お姉ちゃんを相手にしてるときみたいだよ。

 けどお姉ちゃんのように段々と打点が高くなっていったりはしない。

 何か理由があって打点より速度を優先してるみたいだ。ようやく火力も落ちてきた。

 

 速度があっても、火力がないなら、こっちから攻めてもいいよね。

 

 

「チー」 {横八索 六索 七索}

 

「ポン」 {中 中 横中}

 

 相手にスピード勝負をしかける。

 

 片岡さんも清澄の先鋒(エース)だけど同じ一年生だ。

 私だって福路キャプテンから託された名門校の先鋒(エース)だ。

 無名校だからって侮る気なんてないけど、ここで負けるわけにはいかない。

 

 全力で捻り潰す!!

 

「カン!!」 {三萬 三萬 三萬 横三萬}

 

「ツモ嶺上開花(リンシャンカイホウ) 満貫の9800です」(嶺上開花、役牌1、ドラ2 40符5翻の6本場で4000+600/2000+600点)

 

{一萬 一萬 七筒 七筒 七筒 四索 五索}  {中 中 横中}  {三萬 三萬 三萬 横三萬} {三索} ドラ表示牌:{九萬}{北}

 

 麻雀部のみんなが私の麻雀を見てる。だからこそ――。

 

 

 

――読川尊月(監督)

 

 ようやく宮永が得意のリンシャン拳でタコスの東一局を止めた。清澄との点差は59100点。

 もしも宮永のリンシャン拳に自在にカンドラを乗せることができたら、ドラゴンボールZの界王拳のように「リンシャン拳○倍だっ!!」とか言って戦闘力得点力を倍に増やす技になるんだが……無理っぽい。

 

『龍門渕、高めで倍満の3面張(メンチャン)黙聴(ダマテン)! 最下位からの浮上なるか!!』

 

「宮永さんも聴牌(テンパイ)したけど、{五萬}{八萬}は龍門渕の当たり牌です」

 

「これは振り込んじゃうんじゃないでしょうか……」

 

{七索 八索 五萬 六萬 七萬 八萬 八萬 八萬 三筒 五筒 七筒 八筒 九筒} {四筒}(in)

 

『リーチ!』

 

「は……?」

 

「{八索}の単騎リーチですか」

 

『風越女子・宮永咲、両面(リャンメン)に取らず! しかも{八索}はすでに河に2枚出ております!!』

 

「宮永の奴、ようやく集中してきたし」

 

「監督、宮永さんは龍門渕の待ち気配を察知したんでしょうか?」

 

「キャプテンみたいっすね」

 

「福路とは違うな。宮永は相手の手牌を読んだわけじゃない」

 

「たぶん……おかわり」チラッ

 

『カン』 {八萬 裏 裏 八萬}

 

「対木の言う通りだ。宮永はカンのできる待ちを選んだだけだ」

 

「はー、普通ならありえないけっすど、咲っちなら、それがありえるんっすよねー」

 

『門前ツモ、嶺上開花(リンシャンカイホー) 5200です』(リーチ、門前ツモ、嶺上開花 40符3翻で2600/1300点)

 

{八索 五萬 六萬 七萬 三筒 四筒 五筒 七筒 八筒 九筒} {八萬 裏 裏 八萬} {八索}(in)

 

『3連続Wリーチの次は、なんと2連続で嶺上開花――ッ!! とんでもないことが長野で起こっているぞーー!!』

 

「わりと……いつものこと」ボソッ

 

「清澄の先鋒も東場の魔物かもしれんが、うちの先鋒だって負けてはいない」

 

「先鋒戦の卓にいる魔物は……二人ですか」

 

「このまま魔物が二人で終われば良いけどな……」

 

 原作の副将戦では微妙に力を発揮できなかったとはいえ、先鋒となった龍門渕の透華が最下位のままで終わるとは思えない。

 そして普段(デジタル)の彼女に異能持ち(オカルト)が下手な刺激を与え続けるのは……明らかに拙い。

 

 

 

――井上純(龍門渕2年生)

 

『さあ前半戦も南場に突入です。最下位は鶴賀学園、昨年優勝校の龍門渕が100点差で3位です』

 

 東四局で鶴賀が3900点の直撃を清澄から食らった。最下位を脱出したとはいえ1位との差は85300点。

 東場は清澄高校の独走、それを3連続嶺上開花で止めたのが風越女子。

 鶴賀学園の二年生はともかく、あの透華が手も足も出ず焼き鳥だった。

 

(焼き鳥=終了まで一度も和了れなかったことをさす麻雀用語)

 

「ふぅ……今回だけはオレが先鋒を外れてて良かったと思ったぜ」

 

「純くん、透華付きメイドのボクの前で、今それを言っちゃうかなー」

 

「わるい。けどな、あの東場を見たらな……」

 

 清澄と風越女子の一年生は何者だよ。今までアイツらが無名だったのが不思議でならねーし。

 去年に衣が県予選デビューしたときの衝撃は、他校からしたら今のオレと同じ様な気持ちだったのかね。

 

「牌譜を分析するまでもなく異常」ボソッ

 

「まー、衣みたいなのが全国でもないのに二人も卓にいるなんてね」

 

「予想できねよー。そーいえば、衣は未だ来てないのか?」

 

「会場の近くまでは来てるみたい。ハギヨシさんが呼びに行ってる」

 

「前半戦が終わる前に控室まで来てほしいな」

 

「そうだね。ちょっとボクらでアドバイスできるような相手じゃないよ」

 

「参謀の役目なのにごめんなさい」

 

「ともきーのせいじゃないよ。あれを予想するなんて誰だって無理だよ」

 

「ただ風越女子の先鋒の動きは、最初っから清澄を警戒してたみたいだったけどな」

 

「あそこの監督から指示があったのかな? 透華のスカウトを断った」

 

「顧問の誘いを断って、いつの間にかライバル校の監督になってるとかマジで喧嘩を売ってるよな」

 

「そーだね。お屋敷で噂話を聞いたときはハギヨシさんが静かにキレてたもん」

 

「あのハギヨシさんをキレさせるとかホンモノだな」

 

「……風越女子に高い手が入った」

 

 ちょっと目を離してる会話してる間に試合が動いたみたいだ。

 

「おいおい。満貫かよ」

 

 透華も早い手を作っていたが風越女子が先にツモで和了った。

 

「南一局が流れたから、透華が親」ボソッ

 

「親かぶりで、また最下位かよー」

 

「それと清澄は南場に入ってからは防御優先みたい」

 

 だったら清澄の先鋒は東場のスタートで高めてた集中力を一気に爆発させるタイプか。

 

「透華も何度か聴牌(テンパイ)はできてるんだけどねー」

 

「牌効率は悪くない」ボソッ (※牌効率=聴牌まで最短で手牌を揃えることを目指し、最も効率の良い選択を行うこと)

 

「それでも和了れてないんだけどねー」

 

「きっとイライラしてるだろうな」

 

「そうだね。ボクもさすがに限界だと思うよ」

 

 透華は普段はデジタル打ちに徹してるけど、余裕がなくなってイライラが募るとブレてくる。

 そこが弱いところでもあり……怖いところでもある。

 

「また風越女子の先鋒に鳴かれて流された」

 

「これはキレてもおかしくないな」

 

 透華はストレスが溜まって爆発してキレると、感情が一周して逆に静かになる時がある。

 そうなった時は透華が衣の従姉妹なんだと痛感させられる。

 

 まさか決勝とはいえ県予選で、ここまで透華がヤバくなるなんて思ってもみなかったな。




読川監督「えっ、ハギヨシさんキレるんっすか? マジで!?」

龍門渕は大将に衣が控えているし、透華がこのままで終わるはずがないという信頼もあって、まだ余裕があります。風越女子の方は(監督以外)予想もしてなかった試合展開に驚いてる感じです。監督がヘンに動揺してたのは想定してたゲームプランから外れたからです。

ヤングガンガンの最新話(2019年3号)では、ついに咲の従妹(通称みなもちゃん)の本名が明らかに。対木もこ=みなも説が否定されてホッとしてます。とりあえず残りのインハイの県予選では単行本ベースですので、連載に絡むネタバレはありません。ただ全国大会で風越女子と白糸台がぶつかるときには連載のネタを使うことになりそう。

*謝辞*
お薦めのWeb小説、やる夫スレのまとめを紹介してる「ヴィーナさんのスコップ感想欄」で本作が紹介されました。ヴィーナさん、ありがとうございます!

-追記-
リンシャン拳の箇所に表現の誤りがあったので修正しました。
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