風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

4 / 36
作品タイトルにもなってる咲さんの登場はまだ先です。しばしお待ちを……


第04局 挨拶

第04局 挨拶

 

 新しい監督としての挨拶が終わり、新キャプテンの就任と校内ランキング制度の変更が告げられる。

 とにかく風越女子は部員数が多い。短い期間での全国大会出場という成果が求められる身としては育成方針はスタメン中心に注力せざる得ない。

 

 そこで校内ランキング制度と併用してリーグ制を採用した。

 上位8人のAクラスを筆頭に、Bクラスが20人、残り全部員がCクラスとなっている。

 インターハイ団体戦のスタメンはAクラスの中から選ばれる。

 僕が監督として面倒を見るのは主にAクラスの部員となる。

 各リーグの下位と上位が校内ランキングに応じて入れ替えとなる。

 

 久保コーチはBクラスとCクラスを掛け持つことになるが、Bクラスからはコーチの個人指導が受けれるようになる。

  OGや保護者会についてもコーチに任せている。表にはしないが監督は短期契約の助っ人という立場だからだ。

 来期に向けての新戦力のスカウトおよびスタメンの育成、各校のデータ収集および分析が麻雀部での主業務となる。

 

「というわけでクラス分けは校内ランキングに応じて行う。

 Aクラスは福路、池田、弓野、深堀、吉留、浅井、大迫ーー」

 

 ちなみに風越女子麻雀部には全自動雀卓が18台(!!)ほどある。

 まず部室は談話室(サロン)みたいになっていて、スペースに余裕を持って雀卓が四台ほど置いてある。

 隣接した小会議室があって、そこを片付ければ雀卓が二台ほど置ける。

 この二部屋をAクラスとBクラスの部員が主に使用することになる。

 この部室から少し離れたところに、狭いながらも12台ほどの雀卓が並べられ雀荘のような雰囲気になっている部屋がある。

 以前は他の部が使っていたという大部屋で、そこをCクラスの部員が使用するといった感じだ。

 現在は三年が引退しているので雀卓にも余裕があるが、部員数が80人を超えるとなると余裕があるわけではない。

 

 部員の大半が大部屋に移動したところで、一年生のエースが声をあげる。

 

「インカレ優勝とかいう監督の実力が知りたいし!」

 

「(池田ァァッ!!)……ならランキング上位の実力も知りたいし、一卓使おうか」

 

「ふむ、それなら福路、池田、弓野。席につけ、あとはせっかくだ見学させて貰おう」

 

 コーチの一声で中央に雀卓が寄せられて三人が席に座り周囲を残りの部員が囲う。

 福路と池田は知ってるキャラだけど、弓野は知らん。う~ん、原作にいた?

 

 さて……どうしよう。本気を出して誰かをトバすなんていうのは大人げない。

 東場は様子をみながら、指導する形で打つつもりだ。問題はアレを使うか……使わないかだ。

 

 

--福路美穂子

 

 新しい監督の名前は読川尊月(よみかわ たつき)

 インターカレッジの個人戦優勝の経歴に多くの部員が驚きの声をあげた。

 そして夏まではコーチ代行として福岡代表の新道寺女子を率いていたという。

 

 挨拶では省略されてたけど、私は監督の高校時代の戦績を知っている。

 彼は大阪の強豪校、姫松高校のエースとして男子団体戦で三連覇を飾っている。

 団体戦において各校のエースは一般的に先鋒か大将を任される。

 しかし姫松は全国常連校では比較的珍しい、中堅にエースを据える伝統がある。

 その伝統を確立したのが読川監督、彼は男子個人戦の王者と並び「双璧」と呼ばれた。

 

 久保コーチと同世代で一つ年上のはずだ。

 だからじゃないけど、他の部員より当時のこともそれなりに知っている。

 当時のインハイ女子には日本代表で先鋒を務める三尋木咏プロがいた。

 男女混合のエキシビジョンマッチは三年連続で「双璧」と三尋木プロが努め「三強」とも言われていた。

 

 三尋木プロの「華」のある打ち筋に憧れる女子は多いだろう。

 けど小さかった私がインターハイ男子のテレビ中継を見て惹き込まれた打ち筋は違った。

 

 男子の麻雀は女子に比べて「派手さに欠ける」と言われている。

 たしかに男子には私たちの世代でいう「宮永照」「天江衣」「神代小蒔」のような存在は殆どいない。

 

 監督の選手時代のスタイルは、他を圧倒する優れた読みと洞察力を利用したものだった。

 捨て牌から他家の打ち筋(待ち牌)を見破り、他家を掌の上で操るが如く場を支配していた。

 それは圧倒的な攻撃力を誇る個人戦王者の鉾に対して唯一対抗できた盾にもなった。

 私が憧れて真似た麻雀。新しく来るという監督の名前を聞いた時には自然と胸が高まった。

 

「立直! 今日も絶好だし!」

 

 華菜ちゃん(池田さん)がリー棒を投げるように置く。あの様子だと打点もかなり高そう。

 私は二向聴の状態だけど、危険牌を避けてオリる方向で進める。

 監督が牌を掴み、華菜ちゃんの方をじっと視る。

 

「にゃーー!!」

 

 なぜか華菜ちゃんが身体をぶるると震わせて猫のような鳴き声をあげる。

 

 監督は手にとった牌を河に捨てる。えっ!?

 まだ場の情報が少ないから確定ではないけど、明らかな危険牌だ。どうして?

 

 華菜ちゃんが捨てられた牌を悔しそうにみながら山に手を伸ばす--

 

 

 

 

「テンパイ」「……またテンパイだし」「ノーテンです」「ノーテン」

 

 東三局が終わる。また華菜ちゃんの場が流された。

 流れ(ツキ)は華菜ちゃんにあった。私と奈津美(弓野)はオリに徹した。

 一回目は倍満の手が流され、二回目は満貫が流された。

 華菜ちゃんのアガリ牌を握って場を支配していたのは監督だ。

 

 三連続の立直にもかかわらず、全てが流局となった。

 華菜ちゃんは直撃を食らったわけでもないにも関わらず、それ以上のショックを受けたような顔をしている。

 

「まだ親だし、一本場だし!」

 

 まだ点数は失っていないのだと思い直し、華菜ちゃんが再び気合を入れる。

 ポジティブな彼女は麻雀部一番のムードメーカーだ。

 監督からも彼女が、何処まで喰らいつけるか試しているような感じを受ける。

 

 ちょっと羨ましい。だってまだ私の麻雀を見てもらってないから。

 新キャプテンとして選んでもらえて嬉しかった。けど大人しいだけの優等生だとは思われたくない。

 

 そう考えて普段閉じている右目をスッと開いた。

 




風越女子の弓野奈津美(原作では三年)はアニメ版でちらっと出てるキャラ。
浅井真澄と大迫昭乃は漫画に出てくるけど学年は不明。こちらでは池田と同学年の設定。
この三人は「名前ありモブ」という感じで活躍するような出番はないです。

タグにある通り風越女子+宮永咲、対木もこ、東横桃子が主役チームとなります。
闘牌シーンは悩んでて、場合によっては牌画像変換ツールも使うつもりです。

オリ主(読川)がインハイで「双璧」として活躍していたことは、風越女子の部員たちは当時小学生だったため知りません。例外的に福路美穂子だけが知っており、何気に好感度の初期値もかなり高い状態です。久保コーチはオリ主のインハイ・インカレ時代を「良くも悪くも」知っており好感度は±0のフラットです。ただ選手としての実力、コーチとしての実績は認めています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。