風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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第05局 月読

東三局 一本場

 

東 池田華菜(一年) :31000

南 福路美穂子(二年):21000

西 弓野奈津美(二年):21000(起家)

北 読川尊月(監督) :27000

 

 

 福路美穂子の右目が開かれ鮮やかなブルーの瞳が姿を表す。

 漫画やアニメとは違う生身のオッドアイ美しさに魅入られ僅かに息の飲む。

 

 此処からは池田の持つ流れ(ツキ)だけではなく彼女も警戒する必要がある。

 麻雀漫画の世界に転生した僕に与えられたのは「ツクヨミ」の異能(ギフト)だ。

 

 これは使い方次第で「天照大御神」にも匹敵するであろう「月読命」の力。

 月読命はイザナギの右目から生まれたとされる男神で夜を統べる月の神だ。

 

 天江衣の支配力が月の満ち欠けに比例して高まるように、月読の力も夜に近づくほど高まる。

 もし徹マン限定の麻雀大会があれば、今でも世界トップと渡り合うことが可能だろう。

 

 このツクヨミの力は相手の運だったり流れとか呼ばれる「ツキ」というものを自然と察知する。

 一局目から池田に注意を払っていたのは、彼女の持つ強い流れ(ツキ)を読みとったからだ。

 

 また僕の持つ読みの力は、川(河)の流れを読むことにも長ける。

 その支配力は場を流す(流局させる)ことに特に強い力を発揮する。

 この「月読命」の力を持って、インハイの舞台では「須佐之男命」の力を持つ強敵(とも)と戦えた。

 

「にゅぁあああ……やっぱり今日は絶好調だし!! 四連続リーチだし!!」

 

 東家の池田が喜びの嬌声をあげる。少し吃驚するくらい今日の彼女のツキは強い。

 

「ポン」

 

 弓野が捨てた牌に対して、福路が鳴きを入れる。順番が一つズレる。

 

「へぇ……」

 

 山から手にとった白牌を見て声をあげる。この白牌は池田の待つ当たり牌だ。

 彼女は鳴き一つで、一発ツモを消し、こちらに罠を仕掛けた。

 この白牌を捨てれば、池田から倍満クラスの直撃を食らうだろう。

 原作における県大会個人戦優勝の実力を甘く見たつもりはなかったが、瞳を開放した彼女の力は期待以上かもしれない。

 

 覚醒した彼女の力が、池田のツキを手のひらで転がし、こちらの河の支配を破ろうとしていた。

 

 彼女の方を表情を見ると薄っすらと微笑みを浮かべている。

 ただの良い娘ではないとは思っていたが、勝負の場において「良い性格」をしてる。

 普通であれば、新任の監督に対して、このような悪辣な罠は仕掛けないだろう。

 

 今後の麻雀部での影響を考えると初戦で躓くのは印象が悪い。

 やはり第一印象というのは、就職活動の面接に限らず大事だ。

 

 仕方ない。不本意だがアレで彼女も視よう。

 

 

--福路美穂子

 

 読川監督が私をジッと見てくれたので微笑みを返す。

 特徴的オッドアイの瞳を変に思われないかと心配する。

 

「えっ……きゃっ!?」

 

 思わず声をあげる。見られたんじゃない。視られた。いや私の全てを覗きこまれた。

 どうしてか痴漢に触られてしまったような気恥ずかしさを覚えた。

 

 

 

 ダメだ。私の仕掛けは監督に悉く躱されてしまっている。

 奈津美(弓野)は必死にオリに徹している。

 リーチの華菜ちゃん(池田さん)が待つアガリ牌は白。

 監督は私が鳴いたことで贈った白を一枚握っている。

 

 私もテンパイだが、先ほど監督に白を一枚贈られて手放せなくなった。

 残る白牌は後一枚だけ、山の残りは僅かで、最後の白を掴むのは誰か。

 

 

--久保貴子(コーチ)

 

 三連続リーチを軽くいなすか。インハイで「流川」とも呼ばれた力は健在だな。

 とは言っても今日の池田は県予選の決勝でその強運を発揮して欲しかったほどの絶好調だ。

 まさか四連続リーチとは普段であれば調子にノリまくっていただろう。

 

読川 {一萬 二萬 二萬 三萬 二筒 三筒 四筒 五筒 六索 七索 八索 西 北} {白}

 

 握った白牌は先ほどのリーチ時に後ろから確認したので池田の当たり牌で間違いない。

 この白牌を送り込んだのは、先ほどポンと鳴いた福路だ。

 部活で右目を開くことは滅多にない彼女が送り込んだ刺客だ。

 

 彼が福路の方を見つめて「やはり白か……」とつぶやく。

 それが当たり牌なのかを知ってか知らずか、彼は索子を捨て、白牌を手元に置いた。

 

 

 

読川 {一萬 二萬 二萬 三萬 三萬 四萬 三筒 四筒 五筒 六筒 西 西 白}

 

 いつの間にか勝負は彼と福路の凄まじい「読み合い」になっていた。

 互いの捨て牌の意味に気づいたときには、尋常ではない読みの鋭さに恐ろしさを感じた。

 

「ポン」 {西 横西 西}

 

 終盤も間近になろうとしたとき静かに鳴きが入る。

 このタイミングで鳴くことに何の意味が?

 

 弓野を除く三者の待ちは残り一枚の{白}だ。山の残りは四枚。白牌は中にあるのか。

 先ほどのチーの鳴きで順番がズレ、最後の海底牌(ハイテイハイ)を引くのは……。

 

 偶然か?

 

 いや思い返せば、これまで彼の手元には自然と白牌が集まっていたような気もする。

 

 まさか、あの龍門渕の天江衣と同じ--

 

 

--

 

 南四局 オーラス

 

「ツモ、海底撈月(ハイテイラオユエ)

 

「また海底だし!!」「さすがですね」「……スゴい」

 

 

 本日、()()()の海底撈月で締める。

 何とか監督としての力量を見せつけることができたかな?

 大人になって女子高生から感じる眼差しというのは何ともむず痒い。

 

 東四局からは明らかに白牌の占有率が高まったから久保コーチに訝しげに睨まている。

 これはインカレで男女混合リーグを戦うようになってから気づいたツクヨミの力だ。

 

 宮永照の持つ「照魔鏡」に合わせて、勝手に「白銅鏡」(ミラーマン)と呼んでいる。

 対象を(性的な)眼で視ることによって「ツクヨミ」の力を発揮するというふざけた異能だ。

 最初は能力の発動が安定していなかった。

 試行錯誤の末に痴漢が鏡でスカートの中を覗き込むようなイメージで使用するようになって安定した。

 かなり強力な力で、相手の打ち方や能力を読み切るだけでなく、覗き込んだ時点の手牌まで掌握する。

 

 まさに「相手を丸裸」にすることができる恐ろしい力だ。

 

 この力を手に入れてからインハイのとき以上に異能の力に振り回された。

 しかも卓に座った「白銅鏡」(ミラーマン)には覗き込んだ相手(異性)の下着(の色)の牌が集まりやすくなるという馬鹿げた追加効果まである。

 

 ちなみに最初に覗いた池田は白。福路も覗いて「白」だったので、海底に賭けることができた。

 白一枚だと、それほど効果はないが、白が二枚となると、ほぼ確実に白の暗刻が作れるようになる。

 ちなみに白+黒だと風牌が、白+赤だと中と赤ドラが集まりやすくなる。奇跡の緑三枚のときには緑一色を連発できた。

 上下(ブラとパンツ)の色が違う場合、ノーパンの場合など検証したいことが多々ある。

 しかし秘密にするしかないような力なので、実は統計的な検証はできておらず集まる牌は感覚的なところが大きい。 

 この色の効果は白、黒、赤、緑の下着に適応され、対策としては「それ以外の色の下着」を着用するしか無い。

 

 この外的要因による(アホらしい)力はプロ雀士の間でも法則性が分からず対策を見出すことができなかった。

 ただ相手が性的に覗かれているという印象を大なり小なり感じるのは間違いない。

 

 僕が世界大会(ワールドツアー)に参戦した後にプロ雀士の道を諦めたのは……。

 このあまりにも下品な異能を他者に知られるリスクを負ってまで公式戦で活用する覚悟が無かったからだ。

 

 そして同性(男)に対して、この力を用いたことは今の所一度もない。

 もし同性にも適用できたらと考えると恐ろしい。

 だって相手の手配が透けて見えるという誘惑に逆らうのは難しいからだ。

 

 牌に愛された子たちに匹敵するツクヨミの力だが、その闇は深い……。

 

 

1位 読川尊月(監督) :63200 +39800

2位 福路美穂子(二年):19600 -5400

3位 池田華菜(一年) :10400 -14600

4位 弓野奈津美(二年):5200  -19800

 




R-18向け設定 ツクヨミ(白銅鏡)の異能

・対象を(性的に)観察することで相手の打ち筋、能力、手配、弱点を丸裸にする(洞察)
・(異性の)下着(の色)の組み合わせにより、特定の牌が集まりやすくなる(支配)
・夜になるほど力をます(意味深)

インハイ時代は「ツキ」の読み、河の支配、流局の強化をメインで戦う。

この世界では基本的に女性もちゃんとはいてます。(「はいてない」人がいないとは言ってない)
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