風越先鋒、宮永咲   作:のぶほし

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第06局 見学

 

--宮永咲

 

 電車とバスを乗り継いで風越女子までやってきた。やっぱり家から通うには少し遠いなぁ。

 

「……」ブツブツ

 

 ぅあ、フリフリの服にリボンの女の子がいるよ。風越女子の制服とは違うし、あの子も見学かな?

 私は中学の制服だけど、あの子はきっと私服だよね。

 

 お姉ちゃんのことを知ってた監督さんに出会った後、数年ぶりに家の麻雀卓を引っ張り出して触った。

 珍しいなと声をかけて来たお父さんに風越女子の麻雀部に誘われたことを話した。

 そこで投げ渡された雑誌「WEEKLY麻雀TODAY」にインターハイ王者となったお姉ちゃんのインタビューが載っていた。

 お父さんは「もー家族で打つこともないだろ」とか言いながら、離れてもちゃんと見てたんだお姉ちゃんのこと……。

 

 私はずっと「あのとき」から家族から麻雀から逃げてたのかもしれない。

 だから入学するかは決めてないけど、見学だけはと思って--。

 

「……した」ボソボソ

 

 さっきの女の子が守衛さんに声をかけている。やっぱり彼女も見学に来た同い年の人みたいだ。

 女子高ということで京ちゃんに同行を断られたから今日は独りぼっち。

 せっかくだから私も一緒に見学させて貰おう。

 

「私も見学に来ました」 「?」

 

 いきなり割り込んだからリボンの子がキョトンとしてる。

 

「二人とも学校見学かい? 予約は入れてる?」

 

「はい。麻雀部の監督の方に連絡しました」「わたしも……まーじゃんぶ……」ポツリ 「……っす」

 

「麻雀部の監督っていうと……新しく入った事務の男の人だね。

 う~ん、今の時間だと図書室かな?」

 

 そう言って守衛さんは内線の電話を手にとった。

 

 

 

--東横桃子

 

「わたしも……まーじゃんぶ……」ポツリ 「わたしも麻雀部の見学にきたっす」

 

 守衛さんに気づいて貰えなかったから目的を同じくする二人の後に着いて行くっすよ。

 わたしは長野市の中学校から通学区にある鶴賀学園に進学する予定だったっす。

 けど駅前のゲームセンターにある麻雀ウォーズで遊んでたときに風越女子の監督さんに出会ったっす。

 

「おっ、三人とも本当に見学に来てくれたんだ!」

 

 まだ授業中ということで二階の客室に案内されたら、そこで待っていた男の人がわたしに気づいてくれたっす。

 

「えっ? 三人?」 「……」キョロキョロ 「お久しぶりっす!」

 

「わっ!」 「……ッ」ビック

 

 わたしは昔から影が薄くて、なかなか他人に気づいて貰えない残念な体質っす。

 

「はは、東横さんは慣れてない人だと、ちょっと気づきにくいからね」

 

 わたしの存在に驚いた二人を軽く笑って流してくれる。

 監督さんは「私を見つけてくれた」貴重な存在っす。

 誰かが見つけてくれば、近くにいる人も、わたしに気づいてくれるっすよ。

 

 風越女子は住んでるところからは遠いっすけど、無理を言ってやってきた甲斐があったっす。

 

 

 

--宮永咲

 

 監督さんに紹介してもらったのは二人の同級生。

 リボンの女の子は対木もこさん。スカウトされて愛知からやってきたらしい。

 ちょっと影の薄い感じの女の子が長野市の公立中学校に通う東横桃子さん。

 元々は鶴賀学園に進学する予定だったけど、風越女子の麻雀部に興味を持ったそうだ。

 わざわざ高速バスに乗ってきたんだって、すごいなぁ。

 

「鶴賀学園には麻雀部はないんですか?」

 

「中等部にはないみたいっす。高等部にはあるみたいですけど、部員は少ないみたいっす」

 

 私の家の近くにある第一志望の清澄高校も麻雀部はあるみたいだけど、調べたらインハイの大会には出ていなかった。

 もしかすると公立の学校だから人数が集まらなくって、名前があるだけの休部状態になっているのかもしれない。

 

「わたしのがっこうも……部員は少ない……」ポツリ

 

「覚王山中学も団体戦には出てないよね」

 

「けど、もこっちはインターミドル個人戦の東海王者っすよね?」

 

「……//」コクリ

 

「それはすごいの?」

 

「麻雀を初めてから、たったの五ヶ月で東海王者とかスゴいっす。尊敬するっすよ!」

 

「……ありがとう」ポツリ

 

「さきっちは大会とか出たことあるの?」

 

「……でたことない」

 

「そうっすか。わたしと一緒っすね」

 

「そうなの?」

 

 話を聞くと東横さんは今までネットやゲームだけで麻雀を遊んでたみたい。

 ゲームセンターで遊んでたところ監督さんに出会ってスカウトされたそうだ。

 

 そんな話を三人で交わしながら監督さんに放課後の部活が始まるまで学内を案内してもらった。

 

「はぐれそう……ここ広い……」ポツリ

 

「食堂のメニューは鶴賀より美味しそうっす」

 

 図書室も公立の清澄より広かった。あと読みたかった本のシリーズが全巻そろってた。

 読書会や文芸部もあるって言ってたから、きっと読書の趣味が似てる人がいるのかもしれない。

 

 私はずっと人見知りで、本ばっかり読んでていて、話しかけてくれる友達も京ちゃんくらいしかいなかった。

 けど見学に来た二人と話しながら、麻雀部に入れば、友達ができるかもしれないと思うようになった。

 新しい環境、新しい友だち、新しい生活。お姉ちゃんと麻雀をするという新しい目標。

 お父さんは出張も多くて、独りにさせてることも多いから、寮に入っても大丈夫だと言ってくれた。

 

 あの日から心はずっと揺れ動いている。

 

 けど、ずっと牌にも触っていなかった私は「ちゃんとした麻雀」が打てるのか自信がなかった。

 

 

「凄いっすね! 旧校舎にも別に部室があるんっすか」

 

 広い校舎を案内してもらっている間に放課後となって廊下に学生が流れていく。

 新校舎の一角にある綺麗な部室練に麻雀部の談話室があるそうだ。

 

 

「さてと風越女子麻雀部にようこそ、お姫様方」

 

「あ、私まだ心の準備が……」 「……」ワクワク 「姫っすか」

 

「よし、来年の入部希望の見学者連れてきたぞー」

 




訂正(2019/01/06)

東横桃子の設定を鶴賀学園の中等部から、公立の中学校に変更しました。
鶴賀学園に進学予定だったけど、風越女子に変更したという形になります。
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