「親を説得して風越女子を受けるっす!」
「わたしも……ここがいい」
勧誘に不安はあったけど二人には好印象を与えたようで良かった。
「楽しんで貰えたみたいでよかったです」
これもステルスモモを素で発見してくれた上に、東海王者にトバされた部員のメンタルをフォローしてくれた福路キャプテンのお陰だな。あと見た目が肝っ玉お母さんな深堀も後輩が場に馴染むように面倒をよくみてくれた。
「私もミドルの東海王者と打ってて為になった」「また打とうね」
「‥‥うん//」コクリ
原作スタメンの深堀と吉留だけは上級生の意地もあってか何とか勝負しようとしてたのは評価できる。
夏のインハイの前に、三月には夏の前哨戦である春季大会があるからだ。
「もこちゃんが入ってくれたら、インハイの県予選で龍門渕にも勝てるかも」
「あれが全国区で通用する実力ですか」「一年のときに全国で戦ってたキャプテンは凄いよね」
ただ福路と同学年の弓野はAクラスにいるにも関わらず、どこか他力本願というか向上心が低い。
原作でスタメンを奪われていたのも仕方ないといった感じだ。浅井や大迫といった原作モブも似たようなところがある。
福路は一年時に並み居る先輩を押しのけてスタメンとなり、全国の舞台で戦い好成績を残した。
二年生で押しも押されぬ麻雀部のエースとなり先鋒を努めた。団体戦で風越女子は龍門渕に破れはしたものの先鋒のみ収支でいえば四万点近くのプラスを勝ち取っている。また長野県予選の一試合平均獲得点数は天江衣に次ぐ成績を残している。
だからなのか福路の同学年が彼女の才能に萎縮してしまっているのだ。おかげで全国区の実力を肌で知っているのが、キャプテンの福路だけだというのも痛い。
また競争心を煽るはずの校内ランキングという格付けが、上位に勝てないのは仕方ないといった好ましくない状況になっている。とは言っても部全体のレベルの低下についてはインハイ後に久保コーチが担当する案件だな。
「入部したら先輩として面倒みてやるし」
そして池田は中学生二人を相手に勝ち越したわけでもないのに、先輩ヅラを吹かせれる図太さが凄い。
精神的な図太さがなくってプロの道を諦めた身としては、むしろ見習いたい気持ちにさえなる。
とにかく対木もこと東横桃子は風越女子への入学を前向きに考えてくれている。
ただ一人、浮かない顔をしているのが……宮永咲だ。
「三連続プラマイゼロは狙ってやったのかな?」
「……いえ、私が打つといつもあんな風になっちゃうんです」
「なんで、そんな打ち方を?」
やはり気になっていたのか久保コーチが話に割って入る。
「家族麻雀で、お年玉を巻き上げられないように、負けないことを覚えて……。
勝っても怒られたから、勝たないことを覚えました」
「……それは」
何とも言えない表情で久保コーチは言葉を濁す。
小さい頃の宮永照がお転婆だったのか、それとも両親が畜生(それとも雀畜?)だったのか。
漫画のインハイ編が完結して四作目がアニメ化する前に死んだからな。詳しい事情は知らない。
「まだ麻雀のこと、あんまり好きにはなれないかい?」
対木もこと東横桃子だけだと、龍門渕や清澄を相手に確実に勝てるとはいえない。
なぜなら原作知識でインハイ長野予選は魔境とも呼ばれる激戦区となることを知っているからだ。
もしも彼女に断られたら、もう一局は無理をしてでも打つ必要があると感じていた。
ただ中学生の三人娘には
入部前に(性的な)嫌悪感を抱かれてしまってはスカウトに失敗する可能性が高いからだ。
それにツクヨミの力だけでも、プラマイゼロを打ち破ることはできるはずだ。
「……わかりません。けど好きになりたいと思ってます。
お姉ちゃんと
「インハイ出場校に姉がいるのか?」
「
「なっ、私は聞いてないぞ!」
「インターミドルの東海王者のような公式の実績でもなんでもないからな」
「たしかにそうだが……」
「あのー、監督いいですか?」
話が途切れそうになったところで宮永咲が決意を込めた瞳で見つめてくる。
「なんだい?」
「私が風越女子に入ったら、ちゃんとした麻雀が打てるように教えてもらえますか?」
「もちろん。そのつもりだ」
「風越女子なら全国の舞台で、お姉ちゃんと戦えますか?」
「ああ、戦える」
「約束、できますか?」
「約束する」
「ぉい! 長野には龍門渕がいるんだぞ。無責任な約束は――」
「私が監督として風越女子に招かれたのは龍門渕を倒して全国に行くためだ。
そのためには全力を尽くすし、無責任な約束のつもりはない」
「そうか……わかった」
「龍門渕ですか?」
「今夏のインターハイ長野代表校だ」
「強いんですか?」
「初出場で全国ベスト8となった強敵だ。
龍門渕を倒さなければ、全国への道はない。
そして長野で龍門渕に対抗できるのは風越女子だけだ(清澄は除く)」
そう。宮永咲が抜けた清澄が対抗できるとは思えない。だから嘘はついてない。
というか東横桃子が抜ける鶴賀学園はどうなるのだろうか……気持ちだけ謝罪しておく。
「……わかりました。私も風越女子を受けます」
「ありがとう」
魔境長野で戦う上で最強の
「咲っちも決めたっすか?」
「いっしょ……うれしい」
「麻雀部は三人を歓迎するわ。けど勉強の方は大丈夫かしら?」
「私は先生に今の成績なら大丈夫だって言われてます」
「……すごい」
「まじっすか? 咲っちは賢いんっすね。わたしはピンチかもしれないっす」
「わからないところがあったら、先輩が教えてあげるし」
「先輩たちを頼ったりしても、いいんっすか?」
「もちろんだし、キャプテンやみはるんは賢いし!」
「香菜」「香菜ちゃん」「池田ァ」
「春の選抜大会もありますけど、来てくれるなら勉強くらいは教えますよ」
「あー、残念っす。あたしは北部だから気軽に来るには遠いんっすよ」
「そう、残念ね。なら入学したら附属寮に入るのかしら」
「そのつもりっす」
「あのー、私は少し遠くて……それに対木さんも愛知だし」
「自分一人だけ通うのはずるく感じちゃうっすか?」
「……だいじょうぶ」フルフル
「でも、悪いよ」
「もこっちも成績いいっすか?」
「わるい……だから……とくたいせいになる」
「そういえば香菜も特待生だもんね」
「当然だし、インターミドルでもブイブイ言わせてたし!」
「まったく未春は受験で頑張りすぎて視力を落としたっていうのに」
「みはるんの努力は、また大学進学のときに役立つし!」
「そういえば特待生にならないかって誘われたっす」
「女子寮に入るなら特待生じゃないと厳しいわよ」
「私も女子寮のこととか聞いてこいってお父さんに言われてました」
さて麻雀部には特待生の枠が二つしかないことを、どうやって説明しようか……。
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