個人戦も行われてはいますが、本作品は団体戦メインため、個人戦については「存在しなかった」かのように一切触れられることはありません。
中学生三人娘の進学については、特待生枠が二つしかないことを正直に伝えた上で話し合った。
まず県外からの入学であり学力に不安のある対木もこが特待生として風越に進学する。
宮永咲と東横桃子は入試を受けて、どちらかが落ちた場合は特待生枠に捻り込むという話になった。
ちなみに宮永咲は推薦入試(特待生枠とは別)で見事に一発合格。
東横桃子は推薦入試には親の説得が間に合わず、一般入試を受けるが不合格。
推薦入試で鶴賀学園に受かっていたが、計算できる戦力は逃せないとストップをかけた。
そこで麻雀部の特待生枠を活用したが、学校側から公式戦での実績がないとの反論があった。
そこは久保コーチの「私が面倒を見る」という力強い後押しがあり、なんとか説得することに成功した。
やはり長期契約の専任コーチと比べて、一年契約の使い捨て監督でしかないなと実感させられた。
なにはともあれ経営陣を「手のひらクルー」させるために必要な戦力を手に入れることができた。
志が低いと言われようとも、安定した生活というのは何よりも大事。目指せ
宮永咲と東横桃子が麻雀部に合格の挨拶に来たり、また二人の親にも会ったりもした。
東横と対木は女子寮に入り、宮永は少し遠いが片道1時間ほどかけて通学することとなった。
そんなこんなで原作開始かと思いきや、現実というのは甘くは無かった。
まず原作では特に描写のなかった春季大会が三月に行われる。
三年生はすでに引退しており、一年と二年の選手が中心となるので団体戦の参加校はインハイに比べて少ない。
とはいえ春季大会の地区代表は、夏の活躍も期待できるためインターハイの前哨戦ともいえる大事な大会だ。
当然ながら数多くの部員を抱える風越女子の麻雀部が参加しないというのはありえない。
春季大会はインハイのような県予選→全国大会という形式ではなくブロック別に分かれた地区予選を行う。
地区予選の優勝者は地区代表と呼ばれ、全国大会は地区代表の集まりとなるのでインハイよりも狭き門となる。
ちなみにインターミドルでは秋季大会が同じ形式で行われており、対木もこは中学三年生の秋に初めて大会の個人戦に出場し地区予選を制し東海王者の称号を得た。
長野は中部ブロック所属で、中部からは甲信越、北陸、東海の三校の地区代表を選出する。
山梨県、長野県、新潟県の三県の学校が一同に集い甲信越代表を決めるのだ。
「さて、団体戦スタメンの組み合わせはどうするかね」
「現在、風越女子の校内ランキング上位5人は福路、池田、弓野、深堀、吉留の順になっているが」
「四月から二年生となる池田をエースとして先鋒にする。
そしてキャプテンの福路を大将として天江衣に当てる」
「たしかにウチの現状で天江衣に対抗できるとしたら福路だけか」
「ああ、インハイにむけて天江衣の対策を進めておく必要がある」
久保コーチも異論はないらしい。先鋒はエースである福路にしろとか言われないか心配して損した。
しかし原作のインハイでは大将に池田を置いていた。もしや考えを変える何かが春季大会であったのだろうか。
「というわけで春季大会の団体戦の組み合わせは以上だ」
「三年が引退して、三人が初スタメンとなるが、校内ランキングの上位五人だ。自信をもってやれ」
「ふふふ、ついに華菜がエースとなる時代がやって来たし!」
「華菜ちゃんに続く次鋒ですね。頑張ります!」
「ついに私も名門風越のスタメン入ですか重責を感じます」
「まさか私が副将……」
「大将ですか、対戦する相手を考えると責任重大ですね」
「そうだな。龍門渕と当たれば福路に天江衣を抑えてもらうことになる。
エースとして得点を稼いでいた先鋒とは役割が違うが、福路なら対応できるはずだ」
「わかりました」
「中堅は臨機応変な立ち回りが求められるので二年の弓野に任せた」
「精一杯、努めます」
「一年生に難しい指示を出すつもりはない。
自分たちのスタイルでやって欲しい」
「先輩たちの代わりに、エースのあたしが先鋒で稼いでみせますよ!」
「調子にノリすぎて相手のエースにトバされたりするなよ」
「団体戦の先鋒でトバされるなんてありえませんよ!」
「咲ちゃんや桃子ちゃんも応援に来てくれるかな?」
「そうですね。メールしましょうか」
「あたしがエースの活躍を見逃すなってメールするし」
「ん、もこには私がメールしとくよ」
選抜高等学校麻雀大会 風越女子スタメン表(+春季大会時点の監督コメント)
先鋒:池田華菜(一年) 打点の高さは風越女子でも随一
次鋒:吉留未春(一年) 眼鏡っ娘だから分析力があるはず
中堅:弓野奈津美(二年) 相応の雀力はあるが、勝負強さに不安あり
副将:深堀純代(一年) 打ち筋も性格も堅実
大将:福路美穂子(二年) 天江衣の支配に対抗できるか勝負
このときの僕は転生してから最も原作というものを強く意識していた。
原作知識チートを使って三人娘のスカウトに成功し気が緩んでいた。
龍門渕のスタメンの組み合わせは「原作通り」になると頭から決めつけていた。
そう原作には推測に足る情報がいくつも出ていた。
天江衣は強者と打ちたがっていた。
その龍門渕はインターハイの準決勝で破れた。
それは臨海女子の副将が冷やし透華に怯み、最下位のチームを狙い撃ちでトバしたからだ。
つまり大将である天江衣は準決勝の舞台で戦うことができなかった。
当然ながらフラストレーションが溜まっていたはずだ。
そしてインハイで各校のエースは「大将」だけでなく「先鋒」に多いことも知った。
少しでも考えていれば……安易にスタメンを決めたりしなかったはずだ。
選抜高等学校麻雀大会 龍門渕スタメン表
先鋒:天江衣(一年) はいていらおゆえ(甲信越に強者はおらぬのか)
次鋒:井上純(一年) 衣と代わったけど、やっぱオレは先鋒がいいな
中堅:沢村智紀(一年) 明日の決勝は満月……
副将:国広一(一年) これってボクの出番はないかな
大将:龍門渕透華(一年)せっかくの大将なのに目立てません
甲信越代表を決める春季大会地区予選の決勝の舞台は、
龍門渕(長野)、風越女子(長野)、小針西(新潟)、硯島(山梨)となった。
池田華菜を含む三校の先鋒が、天江衣に蹂躙される惨劇の場となった。
原作の長野決勝とは違い。卓にいる魔物は一人。後は皆が餌だった。
御戸が開き、海に映る月は撈い取られ、昏鐘鳴の音が響く――諸行無常。
{一索 二索 三索 三索 三索 四索 四索 四索 赤五索 六索 七索 八索 九索} {七索}
「ツモ、立直、一発、清一色、赤1、ドラ1、
「な、な、な、なんと龍門渕の天江選手が、小針西の先鋒をトバしましたー!!
これで甲信越代表は龍門渕だ! 夏のインハイに続いて春も全国の舞台で大暴れか!」
解説のキャスターの声が応援席に響く。誰一人として言葉を発せなかった。
原作並みの戦犯顔になっているとはいえ、四月から入学する後輩たちの前で池田はエースの意地を見せた。
一位との差は圧倒的だが、風越女子は二位だ。
原作の戦犯(-45500)以上の点差をもぎ取られてはいるが怒ったりはしない。
むしろ先鋒を任せてしまたことを謝りたかった。
ただ監督という立場もあり、そんなことはできない……
僕は次から池田に優しく接してあげようと心に誓った。
R-18版プロットでは原作にはなかった福路美穂子vs天江衣も考えてたんですが……
三人娘抜きの風越女子の戦いを長々書くのものもどうかと思いカット。
闘牌のメインは夏のインハイということで物語の進行を優先しました。
池田は犠牲になったのだ……そう魔物の犠牲にな。