little Angel story〜1人の少女の物語〜 作:ムーンナイト
アイカツスターズ!10周年イヤーが開幕すると聞いてバタバタと舞い戻ってまいりました白鳥ひな生誕祭2026ここに開催させていただきます(スライディング投稿)
3行で分かったりしなくもない前回のあらすじ
・ローラちゃん帰って来ない(アニメ16話)
・ステージ辞退ひなちゃん
・目逸らし初めてお姉ちゃん
side:ひな
目は閉じたまま、建物の奥まで耳を澄ませる。
少し前まで慌ただしく動いていた廊下の空気は、その揺らめきがまるで嘘だったかのように静まり返っていた。
代わりに流れているのは息を潜めながらも高揚が抑え切れないような束の間の静寂。ステージの主役を迎える前の時間が放つ、懐かしい独特な空気。
…そろそろ劇組のステージが始まるみたい。
「ちょっと?!虹野!」
うん?
聞こえたアンナ先生の声に思わず
勢いよく飛び出してきてそのまま駆け出したのは──
「ゆめちゃん?!」
驚きの感情がそのまま乗った私の声に、今さっきまでお部屋の中で打ち合わせをしていたはずのゆめちゃんが廊下を走りながら振り返る。
「ローラのこと、迎えに行ってくる!」
「!」
ローラちゃん、帰って来られたのかな。今ならリハーサルの時間も取れるだろうし、ステージにだってきっと間に合うはず。
間に合ったらローラちゃんは歌組1年生の代表としてステージに立てる。ひめ先輩とローラちゃんが輝く歌組のステージを、お客様にお見せすることができる。
だけど…走っていったゆめちゃんは眉尻を下げて不安そうな表情を浮かべていた。ローラちゃんが帰って来たのならもっと嬉しそうな雰囲気を
ローラちゃんはまだ戻って来れていないどころか、もしかしたら…。
──「行ってくる!ステージまでには帰ってくるから!」
ステージまでには帰って来ると、そう言っていたローラちゃん。
いってらっしゃいと手を振った数時間前には、劇組のステージが始まる時間にまだおかえりなさいを言えていないと思ってもいなかった。本当だったら、ステージに向かうローラちゃんにまたいってらっしゃいを伝えているはずだったのに。
「どうか、間に合いますように…」
ゆめちゃんが走り去った廊下でそう呟きながら願うように手を握り合わせた私は、もう1度
side:ひめ
ゆめちゃんが控室を出るために開けた扉が閉まる直前、驚いた表情でゆめちゃんに声をかけるひなちゃんが見えた。
「・・ローラちゃんは間に合うでしょうか」
閉まった扉を見つめながら言葉をこぼす。
もうすぐ始まるツバサたちのステージが終わり次第、最終リハーサル。それが終われば私たち歌組のステージが始まってしまう。
それはつまり、これ以上の猶予は許されないタイムリミットがいよいよ訪れようとしているということ。
「五分五分だろうね」
いつも最後まで諦めずに少しでも可能性の天秤が傾いていれば笑みを浮かべるアンナ先生が、真剣な顔で五分と言った。
五分…叶うかもしれない50%よりも叶わないかもしれない50%の方が大きく感じられる言葉。
どうなっても、歌組としてのステージをお見せするために──
「改めて段取りの確認をさせてください」
ゆめちゃんがローラちゃんを迎えに飛び出して行ってしまった以上、どちらかが戻ってくるまでリハーサルをすることもできない。
歌組のトップとして、輝く星として、そして白鳥ひめとして。
「OK、それじゃあまずは──」
私は、今できることを積み重ねる。
☆☆☆☆
「考えられるパターンは以上。質問は?」
ローラちゃんがすぐに帰ってくれば予定通りのリハとステージ。ギリギリの場合は通しを1回のみ。
ローラちゃんが帰って来られなかった場合はゆめちゃんとのステージ。最終リハの時間までにゆめちゃんが戻って来なければアンナ先生に呼び戻してもらう。
…問題なさそうね。
頭に入れたパターンを振り返りながらアンナ先生に対して首を横に振る。
「ラスト30分のリハで全て調整することになる。いけるね?」
30分。私ひとりでは完成しないステージの、最後のピースをはめるための時間。
「はい」
去年も一昨年も立った夏フェスのステージは、今年で3回目。4月から何をするにも“最後の”という言葉がつくようになったけれど、忙しい日々を過ごす中でまだあまり実感はないままだった。
来年もあるから…と考えられなくなったことを実感したのは、さっきひなちゃんが辞退を申し出た時。これが“最後の”私は、どうなっても妹と夏フェスのステージに立つことができない。
「それじゃ、桜庭か虹野が戻ってくるまではブレイクタイム」
思考が深くなりかけたところで“パチン”とならされた指と声かけに意識が浮かぶ。
ブレイクタイム。休憩、よね。
「それなら…」
思わず口から出た言葉に笑ってしまいながら立ち上がった。
「白鳥?」
「少し話がしたくて…良いですか?」
誰とは言わなかったけれど、アンナ先生は私が話したい相手を理解してくれた。
「もちろん」
その言葉を聞いて出入り口となっている扉へ向かう。
もしかしたらいないかもしれない。
でも、ひなちゃんなら…。
確信に近い思いを抱きながら、私は扉を開けた。
side:ひな
ゆめちゃんが走って行ってから少し。私はまだその場から動き出せずにいた。
ローラちゃんならきっと戻って来るはず。その時にちゃんとおかえりなさいと言いたいから。
…言いたい、けれど。
ステージ前に言えるのかな。
手を合わせて願うことしかできないのは、もどかしいな…。
「やっぱり」
え?
聞こえた優しい声にパッと顔を上げると、控え室の扉を開けたお姉ちゃんがこちらを見ていた。
思っていたよりも深いところまで意識が潜ってしまっていたみたい。扉が開いた音にも気づかなかった。
「ずっとここにいたの?」
微笑みながら聞かれたことに頷く。
やっぱり…ということは、お姉ちゃんは私がここにいると思って扉を開けて声をかけてくれたのかな?
もしかしたら、あまり長くここにいてはいけなかったのかもしれない。どうしてレッスンルームですぐに代表を辞退できなかったのか考えて、それからローラちゃんが早く帰って来られることを願っていたら時間が経ってしまっていた。
頷いた流れのまま
扉に手をかけたままニコリと笑顔を浮かべたお姉ちゃん。
「こっちへいらっしゃい」
微笑みながらそう言ってくれた。
行っても、いいのかな。
一瞬だけ迷ったけれど、すぐにお姉ちゃんの元へ向かう。少しだけでもお話ができるかもしれないから。
扉に向かうと、お姉ちゃんは私が控室へ足を踏み入れたことを確認してからソファに戻っていった。
「失礼します」
お部屋に入って扉を閉めて、お辞儀をしてから頭を上げる。
お部屋の中ではアンナ先生が手にしたモバイルで何か確認をしていた。声に気づいてこちらを向いたアンナ先生の目が笑みの形にスイッと細められる。
…お姉ちゃんに言われるまま控室に入ったのは良いものの、少し言葉に詰まってしまった。
まずは推薦を辞退してしまったことを謝らなくちゃ。すぐに辞退できなかったことも、ちゃんとお話できるかな。
スゥッと息を吸い込んで、私に意識を向けてくれていた
「樹神さんからの推薦を辞退してしまって、申し訳ありませんでした」
私の言葉を受けて目を伏せながら頷いてくれた。
じわりと広がる不安を抑えるようにアンナ先生の方を向く。
「アンナ先生、お時間がない中ですぐ言えずに…」
続けようとした言葉は、そっと手で制された。
「いや、理由は分かってる」
私を見つめるアンナ先生の瞳に浮かんでいるのは柔らかな、そっと包んでくれるような優しい色。
「you自身が立ちたくないわけじゃないんだろう?」
!!
「立ちたいです!立ちたい…ひめ先輩とのステージ、お姉ちゃんとのステージ、私、すごく、立ちたかった…!」
ぎゅっと胸を手で押さえても抑えられない言葉がアンナ先生の優しげな声や視線を受けてぽろぽろと溢れていく。
めぐるやゆめちゃん、他の人がいる場所では言えなかった本音。
お姉ちゃんと一緒のステージ、立ちたくないわけがない。真昼ちゃんと夜空先輩のように、私も大好きなお姉ちゃんと一緒に夏フェスのステージに立ちたかった。
「ひなちゃん…」
私の名前を呼んでくれるお姉ちゃんの柔らかな声は、小さい頃から変わっていない。小さな頃からどんな時でも…例えば私がわがままを言ったとしても、嬉しそうに、時には困ったように笑いながら受け止めてくれたお姉ちゃん。
同じステージに立ちたい気持ちは、誰にも負けないけれど。
「でも、私は立てません」
ぎゅっと当てていた手から力を抜いて、改めて胸に手を当てる。
みんなとスタートラインが違うから。だから私は今日、お姉ちゃんと同じステージに立つことができない。
それでも…!
「今は、立てません」
それは今の話。これから私は走って、
2年前のあの日、入院中にお母さんが送ってきてくれた夏フェスの時の写真。そのときお姉ちゃんが着ていた制服を、今は私が着ている。お姉ちゃんが着ていたこの制服が、私に走り出す勇気をくれる。
「早くここまで来てね、小さな
お姉ちゃんがいま
大好きな
☆☆☆☆
劇組のステージが始まってから少し。ローラちゃんが着る予定だったドレスをゆめちゃんに着てもらいたいということをアンナ先生とお話していたお姉ちゃんが、ふと何かに気づいたような表情を浮かべた。
「そういえば、スタートラインで思い出したのだけど…」
そう言いながら私の方を向くお姉ちゃん。
「?」
えっと…?
「組分けオーディションのステージ、学園長から曲を指定されたのよね?」
確認をするように問いかけられた言葉に、コクンと頷きを返す。
私が組分けオーディションで歌ったのはスタートライン!、学園長先生からこの曲と超えるべき観客満足度の指定をされて挑んだ。
ステージが終わった後の結果発表は、ぼんやりとしか覚えられていない。
お姉ちゃんと一緒のステージに立ちたいなら、そのためにももっと体力をつけないと!
「この場合、ホームページにアップされる動画は…」
お姉ちゃんがアンナ先生の方へと顔を向ける。
ホームページにアップされる動画。四ツ星学園のホームページで公開されている、みんなのプロフィールからアクセスすることができるステージ映像のことかな?
入院中に全員分のステージ映像を観たけれど、歌の面ではローラちゃん、ダンスの面ではめぐるやハルカ☆ルカさん、表情や演技の面ではサツキちゃん、美しさの面では真昼ちゃんが目を惹いていた。
そういえば、基本的に1年生はみんなアイカツ☆ステップのステージ映像がアップされていたような…。
「難しいね。そもそも初ステージでスタートラインを歌うなんて前例がないんだ」
アンナ先生が指先を顎を当てながら考え込む。
「「…」」
ふたりとも、なんだか難しい表情。
ふたりのお顔を視線だけ動かして見ていると、お姉ちゃんが私を見てふっと表情をゆるめた。
「ひなちゃん、アイカツ☆ステップの振り写しはしたの?」
振り写し、それなら。
「めぐる…樹神さんに教えてもらいました」
お披露目ステージの課題曲だったしみんなバッチリ覚えてるよ、とめぐるが教えてくれた時は焦ったなぁ。
もう入学して3ヶ月経っているから、他の曲の振りを覚えている人も多いみたいだし…私もたくさんレッスンしてステージでとどけられる曲を増やしていきたい。
「ごめんよベイビー、すっかり忘れてた」
額に手を当てて落ち込むアンナ先生に慌てていえいえと首を振る。
私が学園に来た日からは特に夏フェスに向けての準備が本格的に始まっていたし、アンナ先生もきっとすごくお忙しかったはず。
「アイカツ☆ステップは披露する機会も多いから、レッスンを欠かさずにね♪」
1度振り写しをして覚えたからと言ってレッスンを怠ってしまったら、ステージできっと後悔してしまうよね。
「はい!」
ステージは1日にしてならず。
毎日を積み重ねていったその先に、
それでは、また!
と前話の後書きで言ってから次の話を投稿するまでに4年も経っちゃった人がイルンデスカ?!
ソンナヒトガイルンデスカ?!!!
((((|||°Д°))))
…はい(土下座)
ということで、大変、大ッ変お待たせいたしました!
ムーンナイトは元気でございます!
更新ができていない間もたくさんの方に読んでいただけていて日々幸せが尽きません!みなさま本当にありがとうございますッ!!
ひなちゃんの物語はまだ序盤も序盤、これからは投稿スピードを上げていきたいと切に願っております!
それでは、また!!!