遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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ハッピーバースデー!! 高嶋友奈さん!!



番外編
高嶋友奈誕生日回


 

 僕は爺ちゃんっ子であり、婆ちゃんっ子だ。そして爺ちゃんと婆ちゃんは、爺ちゃんと婆ちゃんであると同時に僕の父と母だ。難しいことじゃないよ。僕の両親は僕が幼い頃に亡くなったらしいから。らしいっていうのも、その記憶が僕にはないんだ。一緒にいたわけじゃないからね。家で留守番していた時に亡くなっちゃったんだってさ。僕は相当荒れたみたい。辛すぎるから防衛本能でも働いたのかその事の記憶もない。

 そんな暗い話はやめるとして、僕は爺ちゃんと婆ちゃんに育てられてる。僕の爺ちゃんは神主さんだ。なんか伝統のあるすんごい神社がここの神社なんだってー。祀ってるのは誰かの祖先なんだとか。結構有名らしいよ。あとなんか荒ぶってるのを鎮めているらしい。僕は興味ないから調べてないけど。

 

「攻めが甘いぞ勝希!」

「僕もう疲れたよ爺ちゃん」

「天に召されるには早いわい!」

「フランダースの犬のことじゃなくてね。体力的に限界なの」

「なんじゃダラシない。まぁ同年代の子よりは動けておるから構わんがな」

 

 僕の爺ちゃんは神主なのに武道とか剣道とかが達人レベルの化物。たしか弓道もできるし、柔道もできるとか。なんでそんなハイスペックなのか聞いたら、己の心を鍛えるためなんだとか。普通そんな掛け持ちしないと思うんだけど、いろんなのを学んだほうが刺激的で(しょう)にあってるんだとか。本音は強い方が女の子に持てるって思ったかららしいよ。真面目にしてる人たちに謝れってツッコんだもんだよ。

 それでも神主の仕事は真面目にしてる。一応って言ったほうがいい気がするんだけど、本人からしたら大真面目らしい。

 

「ワシは仕事には真面目じゃろうが」

「心読まないでね。それと真面目ならあんな神楽(・・・・・)しないと思うよ」

「何を言っとるんじゃ。おかしな所などなかろう」

「境内をバイクでウィリーしながらやる神楽は日本全国探してもここだけだよね。というかあれはもう神楽と呼べないと思うし、神様にも失礼だと思うよ」

「現代風の神楽じゃ!」

「えぇ……」

 

 現代風の神楽ってバイクでウィリーするもんなのかなー。そもそも現代風の神楽なんて存在しない気もするよ。やったとしてもプロジェクションマッピングだよね。相変わらず爺ちゃんは普通じゃないなって思いながら鍛錬をしていた道場の時計を見る。電子時計だ。あ、爺ちゃんは神主で、神社の敷地のすぐ横に家を持ってる。この道場はその家の敷地内にあるよ。

 

「1月11日……」

「休憩は終わりじゃ。ボサッとしとらんでかかってこんかい!」

「ヤバ!!」

「あぁん? 何がじゃ」

「爺ちゃん! 今日友奈の誕生日だよ(・・・・・・・・)!」

「……な、なな、なんじゃとぉー!! こんなことしとる場合じゃないの! 急いで準備じゃ!」

 

 友奈の家は超家族の仲がいい。だから友奈の誕生日になると、夕飯は絶対に家族団欒で過ごす。でも僕も友奈の誕生日をお祝いしたい。そんなわけで決まったのが、高嶋家の夕飯まで友奈と遊べるという決まりだ。時間になったら電話がかかってきて、それを合図に僕は友奈を家まで送り届ける。歩いて10分とかだね。平日だと学校があって、遊べる時間が少ない。でも土日とかだと遊べる時間が多い。お昼も高嶋家で済ませるから、その後にこっちから連絡するという決まりだ。

 そして今の時間は15時。土日の時で高嶋家に電話するのはたいてい13時過ぎ。言い訳もできないほどの遅刻だ。爺ちゃんも婆ちゃんも友奈のことを可愛がってるから、誕生日会は絶対にする。ちなみに電話するのは僕の役割。これだけは譲らないと言い張ったから、婆ちゃんが今日に限って電話をしてくれている、なんてことにはならない。

 

「飾り付けもしてないのに!」

「婆さんがやってくれてたらいいのぉ!」

「説教は絶対あるね! 主に爺ちゃんに!」

「ぬぁー! いやじゃあー!!」

 

 家に帰らないと準備ができない。でも家に帰ったら婆ちゃんの説教は確実。背に腹は替えられぬとは正にこの事だね! 僕は注意ぐらいで済むけども!

 

 

❀❀❀

 

 

 1月11日は私の誕生日。ゾロ目だから覚えやすい。みんな覚えてくれる。たまに11月11日と間違えられるけど、でもマーくんを始めとしたお友達はみんな覚えてくれてる。……覚えてくれて()

 学校がある時だとみんなお祝いしてくれる。でも土日だと学校では会わない。会わないけれども、電話でお祝いしてくれる。中には午前中にプレゼントを私にわざわざ来てくれる子もいた。みんながそうするのは絶対に午前中。午後からはマーくんのところに行くとみんな知ってるから。いつも電話がかかってくるのは13時を過ぎてから。だから今日も私は電話がかかってくるのを待ってた。

 

 ──でも今年は電話が来なかった

 

「友奈、元気出して。勝希くんもきっと何か事情があるのよ」

「事情って? 事情って何お母さん。それなら先にそうだって電話してくれるんじゃないの?」

「それは……。ね、ねぇ友奈。晩御飯友奈が好きなものにするけど、何か希望ある?」

「ないよ。それよりマーくんは?」

 

 電話の前に椅子をおいて、そこに膝を抱えて座ってる。電話が来ると信じてたからここでずっと待ってた。それなのに電話が来ない。お母さんは私を元気にしようとしてくれるけど、今はマーくんのことで頭がいっぱいだった。そして同時にそのせいで機嫌が悪くなってた。今はあんまりお母さんとも話したくないぐらい。

 

私嫌われちゃったのかな……

「そんなことはないはずよ」

「じゃあなんで何も連絡がないの!!」

「友奈……」 

 

 目が熱くなる。視界が歪む。分かってる。私涙が出てるんだ。これ以上は何もしたくない。私は椅子から飛び降りて、お母さんの静止を無視して自分の部屋に走り込んだ。布団に包まって声を押し殺しながら泣く。我慢しちゃ駄目ってマーくんに言われたから、泣きたい時は泣くようにしてる。マーくんのことを嫌いになりそうなのに、マーくんに言われたことを守ってる。おかしいよね。

 

 それに

 

 もしマーくんに嫌われていたとしても

 

 ──おかしくない(・・・・・・)

 

 私はそれだけのことをしちゃってるから。軽い気持ちでしちゃ駄目だったのに。条件反射でしちゃいけないことだったのに。

 それでもマーくんに祝ってほしかった。マーくんに笑顔で「おめでとう」って言われたかった。今日会いたかった。

 

マーくん……会いたいよ……

 

 身勝手だ。嫌われてもおかしくないことをマーくんにしておきながらこんなことを望むのだから。いっぱいマーくんに望むのだから。

 

 

「ごめん友奈! 呼ぶのが遅くなっちゃった!」

 

 

 だから

 

 マーくんの声がした時は、夢だと思った。

 

 ()現実(本当)か、それは布団から出ないと分からない。怖い。もしかしたら私が自分で望みすぎて、都合よく見てる()かもしれないから。でも、見てみたらそれは夢じゃなかった(現実だった)

 

「ほんとにごめん! 何回謝っても許されないと思ってるけど、でも謝らないといけないから! ごめん友奈!」

マー、くん……マーくん!!」

「わわっ。友奈僕今全力ダッシュしてきたから汗だくだよ!?」

「マーくん、マーくん! よかったぁ! わたし、わたし嫌われちゃったと思ってたぁ!」

「そんなわけないじゃん!? でも、ほんとごめんね。不安にさせて」

 

 マーくんに飛びついた私を、驚きながらしっかり受け止めてくれる。私を抱きしめてくれて頭を優しく撫でてくれる。マーくんが言ったとおりマーくんは汗をいっぱいかいてて、体が熱かった。でも私はそんなの気にならなかった。

 

 ──マーくんが来てくれた

 

 その事実が嬉しかったから。嫌われてないって分かったから。だから私はいっぱい泣いた。さっきとは違って今は嬉し泣き。私が泣いてるからマーくんは慌ててたけど、遅れたことは反省してもらわないとだからこのままだよ。

 私が泣き止むまで頭を撫でてくれて、それでもオロオロしてたマーくんに来てくれたことのお礼をする。マーくんはお礼なんて貰えないって言ってたけど、私が言いたいんだから言わせてもらう。マーくんからの謝罪ももう受け付けない。手を繋いでマーくんの家にまで行くと、お爺さんとお婆さんが笑顔で迎えてくれた。お爺さんの頬が赤くなってたけど、冬なのに蚊がいたのかな。いつもリビングを飾り付けしてくれて、そこでお菓子を貰ったりプレゼントを貰ったりする。

 

「友奈ちゃんごめんねー。このお爺さんが勝希を連れて鍛錬をしてたせいなのよ」

「ごめんなさい。じゃが勝希は友奈ちゃんの誕生日のことを後から言いよってじゃな……」

「お爺さん? 大人は子供を笑顔にする人のことではなくて?」

「はい……。ごめんなさい……」

「いえいえ! お祝いしてもらえたらそれで!」

「あ〜。なんていい子なのかしら。ささ、座って座って。すぐにお菓子とお茶を用意するから」

「勝希。プレゼントもじゃぞ」

「分かってるって! 友奈、ちょっと待っててね」

「うん!」

 

 マーくんが部屋から出ていった。プレゼントはマーくんの部屋に置いてるのかな。お爺さんとお婆さんがお菓子とお茶を用意してくれて、私は待ってる間二人と話してた。お婆さんは先に準備してくれてたみたいなんだけど、お婆さんの担当はこのお茶と茶菓子。飾り付けはお爺さんとマーくんの担当。二人は忘れてたから急いで飾り付けしたみたい。だから今までより少し荒いんだね。でもやってくれた事自体は嬉しい。お婆さんに頭をナデナデしてもらって気づいたけど、マーくんの撫で方と似てる。マーくんのはお婆さんの受け売りなんだね。

 

「お待たせー。持ってきたよ!」

「マーくん。ありがとう!」

「まだ渡してないじゃん」

「あ、そうだね。えへへ」

 

 綺麗に梱包された小さな箱を持ってマーくんが私の隣に座る。正方形のテーブルの一面にお爺さん、違う一面にお婆さん、そして私とマーくんは同じ一面に座る。それがお約束。私達も少しは大きくなってるから、広く感じていた一面も少しだけ狭く感じる。その分マーくんとの距離を近く感じられる。近すぎるって友達にはよく言われるけど、でもこれが私は好き。

 

「はい。友奈。お誕生日おめでとう!」

「ありがとうマーくん! さっそく開けてもいい?」

「うん。いいよ」

 

 マーくんから貰ったプレゼントをその場で開ける。これもいつものこと。反対にマーくんに渡した時もマーくんはその場で開けるからね。綺麗に梱包されてると、綺麗に剥がさないといけない気がする。慎重に剥がしていって、中に入ってた箱を取り出す。もう一度目でマーくんに確認したら、マーくんは優しく微笑みながら頷いた。だから私はドキドキしながら箱を開けた。そこに入ってたのは──

 

「髪飾り?」

「そうだよ。友奈髪飾り欲しいって前に言ってたからね」

「覚えててくれたんだ?」

「もっちろん! 友奈のことだもん」

「ありがとうマーくん!」

「うっ。くるし……」

 

 嬉しさのあまりマーくんに抱きついたけど、抱きつき方がいけなかった。マーくんの首を絞めるような抱きつき方になっちゃった。マーくんに肩をポンポン叩かれてから気づいた私は慌ててマーくんから離れた。お爺さんとお婆さんはニコニコ眺めてるだけだったけど、止めなくてよかったのかな。

 

「マーくんごめんね。大丈夫?」

「うん。すぐに気づいてくれたから。ね、それよりもさっそく付けてみてよ!」

「うん! ……」

「? 友奈?」

「マーくんがつけてくれる?」

「ぇ……、わかった。つけてあげるね!」

 

 プレゼントされた髪飾りをマーくんに渡して、マーくんが手際よく私に髪飾りをつけてくれる。マーくんは器用だし、お婆さんにこういうことも教えられてるらしくて、髪を丁寧に触りながらつけてくれた。痛むこともなかったよ。

 

「うん! やっぱり似合ってる! 可愛いよ!」

「ほんと?」

「ほんとじゃよ友奈ちゃん。なぁ婆さん」

「えぇ。とてもお似合いよ。はい手鏡。見てご覧なさいな」

 

 お婆さんに渡された手鏡でマーくんがつけてくれた髪飾りを見る。しっかりと5枚の花びらがある桜の花が全部で3つ。それが私の左側につけられていた。とても可愛くて綺麗な髪飾り。最高のプレゼント。私はこれをずっと使うって決めた。

 

「改めて誕生日おめでとう友奈!」

「おめでとう友奈ちゃん」

「おめでとう」

「えへへ、ありがとう!」

 

 

 これがマーくんの家でお祝いしてもらった最後の誕生日だった。

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