遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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8話 要は気持ちの問題

 

 秋は風物詩が多いよね。星座では夏と冬が有名で、僕も秋の星座にどんなのがあるか分からない。夏と冬が有名なのってやっぱり大三角の影響だよね。三つって覚えやすいし。見つけやすいかはともかくとして。オリオン座は分かりやすい。あれだけはすっごい分かりやすい。三つ星が並んでるからね。

 星から話を逸らそう。無知な僕じゃろくに楽しめない。星を見るのは好きだから、あとでヨッシーにでも教えてもらおう。なんか知ってそう。それで、秋といえばやっぱり紅葉かな。奈良は山ばっかというか山しかないけど、そのおかげか紅葉の名所がいっぱい。京都には負けるけど。それ以外だとやっぱりお月見かな。秋は月がすっごい綺麗だよね。たしか今日は満月だ。お月見をやるしかない。教室にはまだみんないるはずだから誘うとしよう。

 

「そんなわけだから今日はお月見だよ」

「これまた急に言うんだな。タマには先に言ってほしいぞ」

「思いつきだから仕方ないね。お月見しながら、先月と今月忘れてた誕生日パーティーだよ」

「忘れてたのは佐天先輩だけですけどね。パーティーはなかったですけど、私達お祝いしてもらいましたよ」

「……先月と今月忘れてた誕生日パーティーもやろうか!」

「聞かなかったことにしたぞ!?」

 

 ええい、ツッコむんじゃない。諏訪のことがあったり初出撃があったり、友奈が入院したり、ちーちゃんが影分身をするようになったりで完全に忘れてたんだから。忍者セットはちーちゃんに渡そうかな。サイズも問題ないはずだし。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん。首締まってるよ。苦しいよ」

「今何か失礼なことを言われた気がするのだけど」

「そんなことないよ。それより手を離してほしいな」

「仕方ないわね」

 

 ちーちゃんに解放してもらって何事もなかったように今回の予定を説明する。今度はツッコミが飛んでこなくてちょっぴり寂しかったよ。それとちーちゃんに首締められてる間背中に当たってました。何がとは言いません。どうだったかもあえて伏せておきます。

 みんなはこれから訓練があるから、僕は先に食堂に行っておばちゃんの手伝いをしないとね。お月見をするってことは朝のうちにおばちゃんに伝えてある。だから僕はおばちゃんと一緒にお団子を捏ねるのさ。誕生日パーティーのことは伝えてないから、お団子を捏ね終わったらケーキを作らないとね。飾り付けは間に合うか分からない、というか間に合わない気がする。

 

「私も何かお手伝いしましょうか?」

「え、いいの? 助かるなー。ひなは……ひなは主役だから駄目じゃん!」

「いいじゃないですか。球子さんや杏さんのお祝いをしたいのは私も同じなんですし」

「だからひなもお祝いされる側なの! 駄目なものは駄目だよ!」

「頑固ですね〜。それではこれ(・・)で手を打っては貰えませんか?」

「物で釣ろうたってそういわけには……っ!!」

 

 こ、これは! 友奈のお着替え写真!? いやいや犯罪だよ……って下着とかが見えてるわけでもないからセーフなのかな。おへそとかくびれとか見えちゃってるけどこれはセーフなのだろうか。渡る人相手では犯罪とも取れるのではないだろうか。いや盗撮の時点で、でもこれは……。いやいやこれを貰うわけにも、でもこんなチャンス……。駄目だ駄目だ佐天勝希! こんなんで揺らいでちゃ駄目だ! ここは僕が鋼の意思を持って反撃に出るとしよう。こんな秘蔵写真想像てにはいらないけども! ここは自分に鬼になるんだ!

 

「思いの外耐えるんですね〜。それではこちらもつけますよ?」

「ブハッ!!」

「……鼻血出すぎでは?」

 

 こ、これもお着替え写真のグレーゾーン! チラリズムか、チラリズムできたのか! スカートのホックを外してる友奈の写真! 若干見える友奈のパンツ。なんて破壊力なんだ。そしてなんで写真を撮られてることに気が付かないんだ! これは後で注意するとしよう。こんな写真に……こんな写真に……揺らいじゃ駄目なんだ……!

 

「め、目から血が出てますけど、救急車呼ぶかい?」

「Don't worryおばちゃん……。これくらい大丈夫だから」

「理由が理由だものね。本人がそう言うならいいんだけど、お団子に血がつかないようにしなよ」

「うん。ひな……僕は揺るがないよ」

「まさかここまで意思が強いだなんて……ですが私だって……!」

「そんなひなにプレゼント。これで手を打ってほしい」

「まぁっ!? こ、これは若葉ちゃんの写真!? なんて可愛らしい若葉ちゃんなんでしょう!」

 

 ふっふっふ。僕が渡したのはこういう時に備えて取っておいた若の秘蔵写真! それもこの前の超赤面写真を渡した。他にも通信中の若の写真を持っているし、それはまだ渡してない。通信をしている時に側にいられたのは僕だけだからね。希少価値が高いんだよ。ひなにとって。

 ひなはその写真を受け取った。受け取ってしまった。つまり対価を受け取ったのだ。そんなわけで、ひなにはお手伝いさせません。食堂から離れてもらいます。おばちゃんには手伝ってもらうけど、極力僕が頑張りたいしね。

 

 

❀❀❀

 

 

 晩御飯の時間になった。お月見用のお団子と誕生日パーティー用のケーキ。他にも頑張って色とりどりのメニューを揃えてみました。おばちゃんが。

 だってほら、僕ここまでの料理をできないからね。もちろん手伝ったよ。教えてもらいながら二人で作ったって感じかな。

 

 訓練も終わってお腹をすかせたみんなが入ってくる。このパーティーの主役であるタマ、ヨッシー、ひなもちゃんと来てる。若と友奈とちーちゃんも来てる。さっそく始められそうだ。ちなみにおばちゃんは帰っていったよ。一緒に食べたかったけど、お子さんがいるなら仕方ないね。お礼はちゃんと言いました。

 

「こりゃタマげたぞ! これ佐天が用意した……わけでもないな!」

「おばちゃんに手伝ってもらったから文句を言えないね。でもケーキは僕が頑張ったから」

「凄いです佐天先輩! お料理もできるんですね!」

「ありがとうヨッシー。料理はまだまだだけどね。それじゃあみんなコップに飲み物入れて〜」

 

 せっかくの料理が冷めちゃっても仕方がない。冷めても美味しいやつをおばちゃんが提案してくれて、それを作ったとはいえ温かいうちに食べた方が美味しいのだ。みんなが思い思いにジュースを入れてコップを持ち上げる。こういう時にすることは一つだけだ。

 

「先月誕生日を迎えた球子と杏、今月誕生日を迎えたひなたを祝って〜。カンパーイ!」

『カンパーイ!』

「佐天さんこういう時は名前で言うんですね」

「それは私も思ったな」

「僕だって弁えることがあるんだよ」

 

 みんなでコップをカコンって当て合う。これって勢い良くすると中身溢れるよね。そんな間抜けなことはしないけども。料理はいろいろとあるから、みんな好きなのを取って食べてる。こういう時って性格というか、普段の生活バランスが現れるよね。若とひなとヨッシーは栄養バランスを考えて食べてる。ヨッシーが二人よりも野菜多めかな。逆にタマは一切そんなこと考えないで食べてる。僕もだけど。ちーちゃんと友奈はその間かな。栄養バランスを気にしてるけど、食べたい物の方が割合が多い。

 

 何はともあれ、全員が美味しくいただいてくれてるならそれが一番だよね。

 

「そろそろケーキも切り分けようか」

「あ、マーくん私がやるよ。マーくんはいっぱい準備してくれたから休んでて」

「友奈たちだって訓練で疲れてるでしょ?」

「いいの。私がやりたいから」

 

 やっぱり友奈は引き下がらないね。これは三人の誕生日パーティーだって言ってるけど、勇者として頑張ってくれてるみんなへの感謝の表れでもある。だから僕が最後まで働きたいのに。友奈はそうさせてくれないよね。けど僕も引き下がらないよ。

 

「僕もやりたいから、一緒にやろうよ」

「一緒に? うん、いいよ」

「じゃあここ持って〜。七等分だからまずはここかな」

「それじゃあ切るよ。せーのっと」

「二人でも切れるものだね。……それよりこれ、ケーキ入刀だよね」

「ふぇ!?」

 

 顔を赤くした友奈が何か言おうとしたけど何も言えなくて、目が泳いでいたけどもすぐに顔を伏せてそれも見えなくなった。二人でケーキを切ってるからケーキ入刀。そう言ったんだけど、友奈はそれで結婚式のでも連想したのかな。ケーキ入刀って言われたらそりゃあ結婚式を連想するか。うん、僕が悪いね。ところでヨッシー。目を輝かせて興奮するのはやめようか。恋愛小説好き過ぎて影響出過ぎ。

 結局友奈が復活するまで時間がかかって、僕が一人で七等分しました。七等分って難しいね。若干大きさに違いが出たのは許してほしいよ。

 

「ケーキも美味いな!」

「甘過ぎないのがいいな」

「分量の調整に気を使ったからね〜」

「佐天って細かくするんだな〜。それよりちょっと料理少なかった気もするんだが……。あ、いや文句を言ってるわけじゃなくてだな」

「あはは、分かってるよ。この後お月見もするからね。作り過ぎてもなーってことでちょっと少なくしたんだよ」

 

 パーティーはこれだけで終わらないよ。今日最後のイベントのお月見があるからね。お団子を用意してるって言ったらタマも納得してくれた。ひなとかちーちゃんとかヨッシーはカロリーを気にしてるけど、今日おばちゃんと作ったのはカロリー控えめなのが多かったから大丈夫だと思うな。

 

「ところで佐天くん」

「どしたのちーちゃん?」

「お月見って9月にするものじゃなかったかしら?」

「え? 10月でしょ?」

「たしか9月よ」

「……え?」

「9月ですね。ね? 若葉ちゃん」

「あぁ9月だな」

「…………満月が見えてたらいいんだよ。綺麗な満月が見えてればいつでも」

「……そうね」

 

 やめてちーちゃん! そんな可哀想な人を見るような生温かい目で僕を見ないで! 勘違いしてたんだから仕方ないじゃん! それにお月見だって今日思いついたんだから仕方ないじゃん!

 僕は友奈に泣きついて慰めてもらう。僕が落ち着いたらみんなで片付けをして、お団子を持って場所を移動する。食堂から月を見てお団子食べても風情がないからね。レジャーシートを用意して、月がよく見える位置でみんなとお月見する。お団子もこれまた好評だったよ。おばちゃん様々だ。

 

❀❀❀

 

 

 マーくんが緊急企画した今日の誕生日パーティーとお月見は、みんなに好評だったと思うな。今お団子を食べながら月を見て、月にまつわる逸話なんかをみんなでお話してる。月を見てたらそれが餅つきする兎に見えるとか、蟹に見えるとか、女の人の顔に見えるとかそんな話。たしか月にまつわる神様とかもいたよね。私は神話に詳しくないけど、ぐんちゃんはよく知ってる。マーくんも少しは知ってるんだっけな。

 そのマーくんは今あんちゃんとお話してる。マーくんって本当に多趣味だから、あんちゃんがよく読む系統の本の話もついていける。たしか小説か何かで、月のことを言いながら相手に告白するっていうのがあったよね。あれはたしか──

 

「──月が綺麗ですね」

 

 そう、それだ。……ってあれ? なんで今そんな言葉聞こえてきたんだろ。今の声はマーくんの声だ。マーくんがそんなことをいったい誰に言うの? みんなの顔を順番に見ていく。ぐんちゃんは冷めた顔してるから違うね。若葉ちゃんとタマちゃんはその言葉の意味を分かってないみたいでキョトンとしてる。ひなちゃんは呆れたようにため息をついてる。

 そしてあんちゃんは顔を真っ赤にしてあたふたしてる。

 

 あぁ、あんちゃんにマーくんが言ったんだ。そのことにすごく胸が傷んだ。苦しくて、この場にいたくなくて。でも、マーくんだから、これが本当にその意味として使われてるとは限らない。だから、胸が苦しくなってるのを我慢して、恐る恐るマーくんの顔を見る。

 

──あぁ、やっぱりだ

 

「ヨッシーどうしたの? 大丈夫?」

な、なんで私に? 佐天先輩には友奈さんがいるはずでこんなこと私が言われるわけなくて。でも言う相手を間違えることなんてあるわけなくて。でも、え? いや、もしかしたら。うそ、そんなこと

「おーい。ヨッシー?」

「さ、佐天先輩! お気持ちは嬉しいのですが、その……私にはお応えすることはできません!」

 

 あらら、あんちゃんが言っちゃった。止めに入るのが間に合わなかったね。あんちゃんの誤解を解ければよかったのだけど。あんちゃんにフラレたマーくんは、あんちゃんが何でそんなことを言ってるのか理解してないみたいだった。

 

「いやヨッシー? 僕は『月が綺麗ですね』ってどういう意味で使われるのかを聞きたかったんだけど」

「で、ですから私には……へ? え、そういうことだったんですか!?」

「え? どういうこと?」

「あわわわわ……わ、私勘違いしてあんなこと口走っちゃって……あぅ」

「ヨッシー大丈夫?」

 

 やっぱりそうなんだよね。マーくんがそう言ったのって意味を知りたかったんだよね。でもそれの意味を知ってる人に今の話の振り方は酷いよ。誰だって勘違いするよ。顔を両手で隠して俯いてるあんちゃんをたまちゃんとひなちゃんが慰める。若葉ちゃんはついていけてなくてあたふたしてる。ぐんちゃんは関わらないようにしてるね。そんな中私がやることは一つだけ。

 

「マーくん♪」

 

 努めて軽やかな口調で呼んで肩に手を置く。それだけなのにマーくんが体をビクッてさせてぎこちなく振り向いた。なんでそんな怯えてるんだろうね。

 

「な、何かな友奈」

「お説教だね♪」

「……なんで?」

「それもお説教しながら教えてあげるね」

「……お手柔らかにお願いします」

 

 マーくんを正座させてお説教を始めた。誤解させるような言い方をして、それで相手を辱めるなんて酷いことだからね。お説教の最後にマーくんに『月が綺麗ですね』の意味を教えたら、「もう友奈にしか言わないよ!」って言われた。そういう不意打ちは卑怯だよ。怒ってたのに顔がニヤけちゃうんだもん。




 佐天先輩はムードメーカーというか、話題とかイベント事を用意してくれる。おっちょこちょいな所もあるけど。そんな佐天先輩と友奈さんは仲が良い、というか■■■■。あれで■■■■■■■のが不思議。

勇者御記 二〇一八年十月
  伊予島杏
 大赦史書部・巫女様検閲済み
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