遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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 一週間ぶりぐらいですかね


9話 世の中には不思議がいっぱい

 

 少し肌寒い時期になってきましたね。なんせ11月ですからね。そういえばイチョウ並木なんてどこか幻想的だと思うんだ。自分の景色が黄色一色に染まるのだから。だが銀杏お前は駄目だ。理由は単純。僕が銀杏を好きじゃないから。銀杏が大量に落ちててその上を車が走ってみなさいな。大量に銀杏が潰れてその場に臭いが広がるのだから。

 あれ? この理由だと銀杏が駄目なのか、その上を走る車が駄目なのか分からないね。そもそもそんな所に並んで植えた人が駄目なのかもしれない。でもまぁこう考えても銀杏は好きになれない。味も好きじゃないんだよ。

 

──そんなことよりも!

 

「あぁぁ!」

「うおっ! 佐天がいきなり叫びやがった! さっきまで机に突っ伏して寝てたくせに!」

「たまっち先輩。いつものことじゃん」

「そうなんだが、慣れなくてなー。杏は慣れたのか?」

「うん」

 

 突然叫び出す人に慣れるってどういうことなんだろう。タマみたいに慣れないでいてほしい。僕のほうが困るんだから。叫ばなければいいって思うのかもしれないけど、叫ばないといけない案件なのだから叫ぶのさ。そしてお二人さん、叫んだ人間を放置して二人だけで会話するのはやめてほしい。寂しさと虚しさで僕のSAN値がフォールダウン。

 

「マーくんどうしたの?」

「そうやって声をかけてくれるから友奈のこと好きー!」

「わわっ! 嬉しいけど、恥ずかしいからいきなりこういうのはやめてね?」

「うん。ごめん」

 

 こういうのっていうのがどういうのかって言うと、固まってた僕が声をかけてくれた友奈にババッと抱きついたことだね。見事な通報案件だ。友奈じゃなかったら許されない。そしてそれが分かってるから友奈にしかしない。そもそも友奈以外に抱きつくこともない。たぶん。

 みんなの冷たい視線なぞ何のその。っていきたいところだけど、友奈に注意されたからね。大人しくすぐさま離れるよ。

 

「それでどうしたの?」

「今って11月でしょ?」

「そうだね」

「ハロウィンのこと忘れてた!」

「あーハロウィン。……えぇー! どうするの!?」

「待て友奈! 佐天に乗せられるな! そこまでの一大事じゃないぞ!?」

 

 分かっていない。リーダー様は何一つ分かっていない。イベント自体は年に何度もある。だがしかし、同じイベントは一年の間に一回しかないのだ。誕生日が一回しか訪れないのと同じ。つまりイベントを逃すということは、誕生日を祝わないことと同義なのだ!

 

「佐天先輩って、なんだかんだでイベント事忘れてますよね。本当に大切にされてます?」

「ガハッ! お、のれ……ヨッシー……」

「あんちゃん駄目だよそんなこと言ったら。マーくんが忘れちゃうのはいつものことなんだから!」

「ゲハッ! 獅子身中の虫とはこのこと、か……」

 

 味方がまさか味方ではなかったとは。いや分かってるよ。友奈に悪意があってそんなことを言ってるわけじゃないってことは。それでもダメージは入るのさ。そしてダメージが入った僕を心配するのも友奈。優しさが傷に染み入るよ。

 今回は前の誕生日会みたいに、やり直しってことにはならなかった。さすがに連続で忘れてたってやると付き合ってもらえないよね。仕方ないし、うどんを食べるとしよう。

 

 

「タマちゃんとあんちゃんって本当の姉妹みたいに仲いいよね」

「二人ってたしか勇者になった日からの付き合いだよね」

「そうだぞー。あんずはこんなに可愛いんだ。タマが守ってやらないとな!」

「わぉ、タマは男前だねー」

「佐天と違ってな!」

「表出ろこのドチビ!」

 

 うどんなんて食ってる場合じゃねぇ。僕は全力を持ってタマに理解させてあげないといけないのだ。僕という人間がどういう人間なのかってことを。そんなわけでタマを連れて外に行こうとしたんだけど、ひなに止められた。めっちゃ怖い笑顔で。

 

「今は食事中ですよ? 賑やかなのはいいですが、騒ぐのは行儀が悪いです。しかも席を立つ理由が喧嘩だなんて。私どうかと思うのですけど?」

 

 正論ですね。ど正論で丸め込められたというか、叩き伏せられた感じが強かったね。僕とタマは華麗にターンして鮮やかに席に戻ったよ。指の先までビシッとしてたから点数が高いと思うんだ。

 

「4点ね」

「ちーちゃん。それは5点満点中かな?」

「100点満点よ」

「ゔぇっ!?」

 

 そんな馬鹿な。僕の今の一連の動きの鮮やかさがなんでそんな点数になるんだ。分からない。全然わからないよ。なんて僕が馬鹿なことをしている間に、ヨッシーがタマとの出会いの話をしていた。

 ヨッシーは勇者になったはいいものの、戦えなかったんだとか。元々体が弱くて気も弱かったから。だからバーテックスに応戦できずにいて、そんな時に守ってくれたのが颯爽と現れたタマなんだとか。

 

「なにそれ。超王子様じゃん」

「やめろー! タマはそんな風におだてられるのが嫌なんだ〜!」

「タマっち先輩は、私の憧れなんです。私に無いものを全部持ってて、引っ張ってくれて。だから私もタマっち先輩を守れたらなってそう思ってるんです」

「あーんーずー! 頼むからもうやめてくれー!」

「えー。まだ話足りないよ」

「そうだぞ。僕もまだ聞きたいないぞ」

「佐天お前だけは許さねぇ!」

 

 なんでさ。僕はただ話を聞きたいだけなのに。僕ってわりと人の話を聞くのも好きなんだからね。知らないことを知るってのが楽しくて仕方ないんだ。それに仲良くなりたい人のことはいっぱい知りたいじゃん。たしかに悪ノリでもあるんだけどさ。

 

「それなら佐天の話もしろー! タマだけなんて卑怯だぞ!」

「卑怯ってなにさ。それに僕らの話は、聞いてても面白くないよ?」

「私もそう思うかな」

「それはタマたちが決めることだ! さぁ話せ!」

 

 需要ってどこにあるか分からないね。僕らの話を聞きたいって思う人がいるとは思ってなかったよ。しかも黙ってた若まで聞きたそうに視線を向けてくるし、ちーちゃんも知りたそうだ。ちーちゃんには言ってた気もするんだけど、話す内容も変える気ないから、聞いても楽しめないはず。だって内容が内容なんだから。

 

「とりあえず僕と友奈の出会いを話せばいいんだよね?」

「そうだぞ。何も隠さずに全てタマたちに話しタマえ」

「えーっと。出会ったのは小学校に入学してからだね。一年生のとき。それで、同じクラスで席が隣だったんだ。それ以来の付き合いだよ」

「そうだね〜。人数も少なかったから名前順でも隣になったんだよね〜」

「……それだけ?」

「それだけ」

 

 僕はこれ以上情報無いよって態度を取る。そしたらみんな友奈に視線を集めたんだけど、結果は同じ。友奈が困ったように笑いながら首を横に振っただけ。また視線が僕に集まったから今度は肩をすくめる。みんな残念だったね。出会いなんてこんなもんなんだよ。そろそろ教室に戻ろうかなって思ったら、タマが肩を震わせ始めて吠えた。吠えるのはどうかと思うよ。

 

「もっとなんかあるだろ!」

「いや、ないってば」

「いいえあるはずです! 佐天先輩も友奈さんもよく思い出してください!」

「え、なんでヨッシーまでそのテンションなってるの? 若どうにかして〜」

「これはどうしようもないだろ……」 

「えー」

 

 リーダーが速攻で投了するのはどうかと思うんだ。熱血若葉ちゃんはいったいどこにいってしまったというんだ。夏と一緒にいなくなったってか。そんなのは高校野球だけでいいんだよ。仕方ない。話を変えるとしよう。

 

「ここは、ひなが取ってる写真を眺める会でも始めるとするかー」

「何言ってるんだ佐天」

「いいんですか!?」

「待てひな! 早まるな!」

「若は観念するんだなーって、あーまたか」

「また、ですね」

 

 会話の途中でみんながいなくなるのは寂しいね。ひながいるからまだいいけどさ。これを一人で味わうのは嫌だな。慣れるものじゃないから。だっていなくなったってことは、戦闘があって、そして終わったってことだから。怪我の心配だってする。バーテックスは進化するわけだしね。

 

「みんなのとこ行こうか」

「そうですね」

 

 ひなと一緒にみんなと合流する。怪我らしい怪我をしたのはタマだった。骨折しちゃったんだ。タマの武器は螺旋盤なんだけど、それは攻撃手段にも盾にもできるものだ。だから骨折したんだろうね。様子を見る限り、ヨッシーを守るための骨折なのかな。ま、勇者は治りも早いから、次の戦いまでには治るんじゃないかな。

 それにしても、タマが骨折したら遊び相手が減ってしまう。こんなのを考えるのは駄目なんだろうけど、僕が言いたいのは、場を和ませる人が一時的に減ったなって。タマのことだからへっちゃらだって言うだろけども、こっちが気を使うからね。こんな僕でも気を使うことはあるんだからね。

 なんて思ってたんだけど──

 

「あんず! タマは一人でも食えるぞ!?」

「駄目! 利き腕じゃないから食べにくいでしょ? だから治るまで私が食べさせてあげる」

「は、恥ずかしいんだよ!」

「いいぞヨッシー! その優しさもまた勇者!」

「佐天! タマの腕が治ったら覚えてろよ!」

「忘れてるかなー」

「ムキーー!」

「タマっち先輩暴れないで!」

 

 ハッハッハ! 利き腕の使えないタマなど恐れるに足らん! 何をしても僕の優位に変わりなどないのだ! それはともかくとして、わりとタマが元気そうにしてるから、腕のことに気をつけとけば場を盛り上げるのはできるね。よかったよかった。それと早く治るといいね〜。

 それにしても、あーやって食べさせてもらうのもいいのかもしれない。うどんの場合だと時間がかかるほど伸びちゃうんだけどね。相手のうどんがそれで伸びたら嫌だね。やるならデザート系がいい。

 

「マーくん」

「なに友奈? アレやる?」

「全部だと伸びちゃうから、ちょこっとだけ。どうかな?」

「いいよ。じゃあまずは僕から」

 

 友奈のうどんを少しお箸で取って、それを友奈の口に運ぶ。可愛らしい口に届いたらお箸を口の中から外す。それから友奈がうどんをすする。これができたからか、それともうどんが美味しいからか、友奈が笑顔を弾けさせる。なるほど。こんな反応されると食べさせるのがクセになるね。

 

「美味しい〜。次は私がやってあげるね!」

「ばっちこい」

 

 今度は僕が友奈に食べさせてもらう。これやってもらって気づいた。自然と距離が近くなるんだね。慣れてるとはいえ、シチュエーションが変わるとやっぱり新鮮な感じがする。

 そんなこんなな晩御飯を済ませて、部屋に戻ろうとしたところでヨッシーに呼び止められた。友奈には先に戻ってもらうように言っといた。ちーちゃんがいるから、ちゃんと先に戻ってくれるだろうね。ところでタマさんや。襟首掴まれてるのはなんでなのかな。

 

「タマっち先輩が勝手にいなくならないように、です」

「あ、はい。それで、僕に何か用なの?」

「用と言いますか、前々から気にしてたことを確かにしようと思いまして」

「んー? ……はっ! まさかヨッシーは僕のこと──」

「それはないです!」

「しょぼん」

 

 そんなに強く否定しなくてもいいじゃないか。僕だって本気で言ってるわけじゃないんだから。言いにくそうにしてるヨッシーが少しでも話しやすくなればってやっただけだよ。タマは笑いすぎ。腕が折れてなかったから表出ろって言ってるとこだよ。

 

「佐天先輩と友奈さんは、その……お付き合いされてるんですよね?」

「え、違うけど?」

「ほらタマが言ったとおりだったろ? 佐天と友奈は付き合って……は? 付き合ってないのか!?」

「うん」

「あんだけイチャイチャしてて!?」

「イチャイチャしてる?」

 

 僕の真面目な返答に、タマとヨッシーは絶句してる。二人の中では間違いないってどこか確信でもあったのかな。たしかに僕と友奈は一番仲がいいけどさ。でもそれで付き合ってるってのは違うんだよね。早とちりだよ。

 

「えっと、じゃあ、告白もされてないってことですよね?」

「告ったよ」

「やっぱりそうで……えぇ!? それでなんで付き合ってないんですか!?」

「だって断られたもん」

「「ええぇぇ!?」」




 佐天には驚かされてばかりだ。それにバーテックスも。あいつはどう見ても■に近かったのに■■■に興味を示さなかった。それを知った佐天がなんか気にしてたな。たしか、■■とか■■■■■■をバーテックスが■■■■どうかを。言われてみるとたしかにどうなんだろうなってなった。

勇者御記 二〇一八年十一月
 土居球子
  大赦史書部・巫女様検閲済み
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