0話 僕らは元気です
四国の1県こと香川県。その中の丸亀市内にある丸亀城は、丸亀市を一望できる場所に建てられている。
「今日も空が綺麗だな〜。バーテックスも見えないし」
「あー! やっぱりここに居たー! 危ないからここに登らないでっていつも言ってるのに!」
「あ、友奈やっほー。今日も許してよ。空見るの好きだからさ」
「さすがに
梯子を固定させて天守閣の上へと登った僕こと
2015年を機に人類の敵『バーテックス』が突如襲来し、人類は絶望寸前にまで追い込まれた。四国は神々の集合体である神樹の結界によって守られており、四国民だけでなく四国へ避難した者が生き残っている。また、情報によると諏訪でも生存者がいるらしい。
バーテックスは空から襲来した。人類の9割以上を食い滅ぼし、科学的な武器が一切通用しない化物。それがバーテックスだ。異形であり異質である存在のバーテックスに恐怖心を植え付けられてもおかしくない。それ故にバーテックスが飛来してきた空を嫌う人間がいるのも道理だ。それは病気という形となり"天空恐怖症"と呼ばれている。何段階かレベル分けされてるけど、細かいことは忘れた。
「普通の男の子ならまずここにいませんー!」
「意地張るとこそこなの!?」
「神樹様が女の子しか認めないからさー。僕戦える気がしないからどっちみち関係ないんだけど!」
「マーくんはどうしたいの?」
「友奈と一緒なら何でもいいよ。それ以外望んでないし」
僕は何ともないようにこんな言葉を放てる。ぶっちゃけ恥ずかしいけど、いつ何があってもおかしくない世界になってしまった以上、素直に気持ちを伝えたいんだ。
彼女もそれを素直に受け取る。小学3年生の時から一緒に遊んでいる仲であるから、お互いのことは一番分かるようになっているってこと。
「とりあえずマーくん降りてきてね。学校があるんだから」
「それもそっか。後で行くよ」
「だめ。一緒に行くの」
「はーい」
先に彼女こと高嶋友奈が梯子を使って屋根から下りていき、それに続いて僕も梯子を使って下りていく。僕たちにとって予想外の展開となったのはこのすぐ後のことだ。相変わらず空を眺めながら梯子で下りていた僕が足を踏み外したのだ。
「しぬぅー!!」
「わわっ! なにしてんのマーくん!」
「その手を離さないでー♪」
「ちょっと楽しんでない?」
「そんなことないです! 落ちたら死んじゃうんだもん!」
高嶋友奈は、バーテックスに対抗できる力を持つ"勇者"の一人である。日頃からバーテックスの侵攻に備えて訓練を積んでいて、その身体能力は一般の同年代の子より高い。突然のことだったけど、先に降りてた友奈は梯子のすぐ横から両手を伸ばして僕の両手を掴むことに成功した。
彼女も上体が手すりから乗り出していて落ちそうになっているけど、足を引っ掛けることで二人分の重さに耐えてくれてる。器用なことだよね。山育ちだからかな。
僕は勇者といった特別な存在でもないただの中学男子で、もちろんこの高さから落ちれば即死である。だから僕も必死に彼女の手を握り返してるんだけど、目線だけは少し違うところに集中していた。
「引っ張りあげるね」
「
「……今変なこと言わなかった?」
「え? 別に変なことを言ってないよ。ただ単に今日の友奈のブラジャーの色がピンクなんだなってだけで、えぇぇー!! 手を離そうとしないで死んじゃう!」
「マーくんのエッチ!!」
彼女の服もまた重力に従っている。逆さになってるから肩の方にブレザーやセーターがずり下がってて、緩くなった襟元から彼女の成長中の胸と下着が見えた。僕の予想では彼女のアレは程よい大きさってやつに育つ。そんな思考まで読まれちゃったのかな。彼女の手の力がだいぶ抜かれてる。これじゃあ本当に落ちちゃうよ!
友奈はこういうことを本気で怒る子だ。さすがに本当に落とそうとしてないはずなんだけど、怒っていることは明白。僕はすぐに彼女に謝って、目を瞑ることにした。こうしとけば彼女の下着どころか何も見えないからね。これで引っ張り上げてもらえるわけだけど、せっかくだしもう少しだけ見ようかな。
「本当に落とすよ? マーくん」
「
「もう、初めからそう言ってよ……」
今度こそ完全に目を瞑って彼女に助けてもらう。茶番を入れてたせいかな。普段から鍛えてる彼女でもちょっと疲れちゃったみたい。僕はもう一度彼女に謝って、それから感謝の言葉を口にした。
『僕がやらかして、彼女に助けてもらう』
──出会った時から変わらない関係で、変えたくない距離感
もちろん彼女に何かお返しできたらなって、力になってあげられたらなって思うことはよくある。でも僕にできることなんて全くない。
彼女──高嶋友奈は"勇者"だ。人類のために戦うことができる選ばれた存在。
僕──佐天勝希は"ただの中学生"だ。戦う力なんて持ってない。システムの解析、研究をするような頭脳も持ち合わせていない。普通の存在。
みんなのために戦う彼女の力になってあげられることなんて一切ない。僕ができることは──
「マーくんなんで目を開けてるの?」
「え? 助けてもらえたからだけど?」
「
「……覚えてないなー」
「私は覚えてるからマーくん目を閉じて。それで教室まで来てね」
「え!? そんなの授業に間に合わな──」
「それが罰ゲーム! 私は先に行くから! ……間に合うって信じてるよ?」
「ははは! 間に合うに決まってるじゃん!」
わりと時間に余裕がないみたいで、彼女は足音をたてて走っていく。音をたてることで案内代わりにしてくれたみたいだけど、生憎と僕には音を聞いて正確に追いかけるなんて器用なことができない。
それにあの子本気で走っていってるよね! 何も見えない状態でそれを追いかけられるわけないじゃん!
……とりあえず言ったからには間に合わないとなぁ。
──僕にできることは彼女の側にいることだけだ。何も変わることなく、彼女が気を休められる場所になる。そうあることを心掛けて日々を過ごす。それだけなんだ。
とりあえず投げときたかったので、導入だけ投げました。
今月はわりとバタバタしてるので、落ち着いたら本格的に取り掛かりたいと思ってます。