遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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 人生初のアニサマに行ってきました。アニサマの存在を知ったのは、兄が初めて行った6年前ですね。話を聞いた時から行きたいなって思っていたんですけど、ようやく行くことができました。マジ最高! 来年も行きたい! 


21話 華やかな約束

 

 佐天勝希さん、高嶋友奈さん。二人は初めて会った時からすでに仲良しだった。小学校も一緒だったみたいで、仲が良いのも納得できた。あまりにも仲がいいし、私たちは二人が交際してるものだとずっと思ってた。真相はその逆で、でも二人の想いは確かなもので。なんだかもどかしくなった私は、優勝した命令権を行使して、二人に本音で想いを語り合ってもらった。その結果──

 

「友奈、このかき揚げ食べる?」

「いいの? じゃあ私のきつねさん分けてあげるね!」

 

 ──特に変わることはなかった

 

 だって元からこんなやり取りしてたし。初々しさが見えたりするのかなっていう僅かな期待は叶わなくて、それと同時にそうだろうなって納得もできた。

 

「あんず〜、何をしょぼくれてるんだ?」

「別にしょぼくれてないよー」

「いいや! タマには分かるぞ! あんずがちょっとガックリしてることがな!」

「……友奈さんたちのやり取り」

「それは諦めろ」

 

 真顔で即答された。これが当たり前だろって言葉を仕舞ってるのが分かる。顔に書いてあるし、目もなんだか憐れむ感じ。まさかタマっち先輩に、そんな目で見られる日が来るなんて思わなかったよ。

 若葉さんとひなたさんは、二人に特に変化がないと分かると普段通りに過ごしてるし。千景さんだって黙って食事を続けてる。たまに二人のやり取りを見て小さく笑ってるくらい。

 

「あれ?」

「んー? 今度はなんだー?」

「……ううん。何でもないよ」

「?」

 

 何かが引っかかった気がした。でも、それが何なのか分からない。改めてみんなを見渡しても、今度は何も引っかからなかった。分からないものを気にし続けても仕方ないし、うどんも伸びちゃう。そう思って食事に戻ろうした時だった。

 

「あっ……」

「ご、ごめん」

「ううん……」

「ゴフッ!」

「あんず!?」

 

 なに……あれ……。ちょんって手が当たっただけなのに……。今まで平然と手を繋いだりしてたのに。今さら手が触れただけでお互い過剰に反応しちゃって。頬を赤らめて目を逸し合って。ずるいよそんなの。不意打ちだよ。

 

「あんずしっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

「タマっち……せんぱい……」

 

 椅子から崩れ落ちて天井を仰ぐ私に、タマっち先輩が寄り添ってくれる。私の手を握りしめて何度も名前を呼んでくれる。

 

「私……駄目かもしれない……」

「何言ってるんだあんず! タマを置いていくな! タマたちはずっと一緒なんだ!」

「うん……。わたし……も……。がくっ」

「あんずー!!」

 

 

「……あなた達、何してるのよ。……授業……遅れるわよ」

 

 

 

 

 

 授業が終わって、放課後の訓練も夕飯も終わった。部屋に戻った私は、お風呂でゆっくり疲れを癒やしてから机に向かって椅子に座った。机の上には数学の教科書とノート。その横には気になっている事柄を落書きのように書き込むノート。今は精霊のことを書き込んでる。

 

 ──精霊が人体に与える影響

 

 その仮説というか、当たってほしくない考察が綴られてる。2回精霊の力を使ったタマっち先輩は、その時から何とも言えない不調を感じてるみたい。体には何もないことから、それは精神に影響すると考えるのが妥当。それなら、他のみんなも影響があるかもしれない。強い精神力の若葉さんや前を向き続ける友奈さんはまだしも、私や千景さんは不安が大きい……。それに──

 

「杏って凄いね。ここまで仮説たてられちゃうんだ?」

「ひゃぁぁ!?」

「あははは! すっごいびっくりしてる! 鍵掛けないなんて珍しいね? インターホン押しても反応無かったし」

 

 楽しそうに話しかけてくる勝希先輩は、椅子から落ちかけた私を支えてくれてる。レクリエーションの時も思ったけど、勝希先輩は身体能力が高い方な気がする。

 椅子に座り直した私は、ノートを片付けようとして、数秒考えてからやめた。もう見られたことだし、それならいっそ話した方が頭の中を整理できそうだから。そう思って、部屋にあるタマっち先輩用の椅子に勝希先輩に座ってもらった。察してくれたみたいで、話しやすい雰囲気を作ってくれる。友奈さんが勝希先輩のことを、『バカだけど馬鹿じゃない』って言ってたのも納得がいく。

 

「……勝希先輩は精霊のことをどう思いますか?」

「杏の考えは、人が扱うには危険性が高いってとこだよね?」

「はい」

「僕も同意見だよ。力に反動があるのは当然の話。銃の反動はデカくて、素人が撃てば脱臼の可能性もあるって言われてるし」

 

 分かりやすい例だと思う。人の身に余る力は、それだけ人を傷つけてしまう。それを抑え込めてしまうのが科学の力だとしても、科学はオカルトに使えない。だって、実験を繰り返して実証を重ね続けて、オカルトを否定してきたのが科学の力で、人類の歴史なのだから。

 

「それでも、その力に頼らざるを得ないのも事実」

「……はい」

「そうならずに済むならいいんだけどね。バーテックスが進化を続けちゃうから……。とりあえず、精霊の事を懸念するならそれは明日必ずみんなに話すべきだよ」

「そのつもりです」

 

 精霊の問題は片付かない。分かっていくのは危険性と、それでも頼らないといけないほどバーテックスが脅威であること。今後はさらに使用頻度が増えるかもしれない。それよりも先に対処法が見つかれば……。

 

「あーんず」

「むぎゅ。……?」

「考えるのはいいけど、暗くなり過ぎだよ」

 

 勝希先輩がふにゃっと表情を崩す。不思議なことに、それに釣られて私の頬が緩んでいく。肩の力も抜けて、リラックス状態になれた。友奈さんや千景さんが、勝希先輩と一緒にいると落ち着くというのも分かる。賑やかな人だけど、人懐っこい感じもあるからかな。

 

「僕は何もできないけどさ。みんな一緒だから」

「ふふっ、ありがとうございます勝希先輩。もう大丈夫ですよ」

「よかった。……あ、そうだ──」

『あんずー! 起きてるか〜?』

「ありゃ。うーん、まぁいいか。それじゃあまた明日」

「あ、はい」

 

 何か聞きたいことがあったみたいだけど、勝希先輩は手を振って部屋から出ていった。入れ替わりで来たタマっち先輩には怪訝そうにされたけど、変な誤解もされることなかった。

 

 

 

❀❀❀❀❀

 

 

 

 おかしい。友奈と付き合い始めてから、なぜか距離感がいまいち分からなくなった。彼氏らしいこと、とか全然分かんないし、それなら考えるのをやめようって思ったんだ。今まで通りに友奈と接したらいいって。元から仲は良かったんだし。

 そうしてたんだけど、友奈はどうやら違ったみたい。少し手が触れ合ったりしただけで、友奈が反応して目を泳がせる。ひと目で分かるほど耳まで赤くなることもあったし。ああいう反応を見ていると、僕は接し方を変えたほうがいいのかもしれない。友奈が今まで通りのことに反応してしまうのだし。

 

「そんな感じに考えてみたんだけど、ちーちゃんはどう思う?」

「どう……と言われても。私は恋愛なんてしたことないのだし……」

「恋愛ゲームはしたことないんだっけ?」

「ないわね。それに、そういうゲームを元に考えたら高嶋さんに失礼よ」

 

 ご尤もな意見だ。二次元と三次元は違う。三次元を元に二次元はできるかもしれないけど、その逆はあり得ない。先進的な科学の世界とかならまだしも。

 何よりも、そのキャラと友奈は別の存在なのだから。

 

「……なんで私の部屋に来たの? 恋愛ならそれこそその手の小説を好む伊予島さんがいるじゃない」

「さっき行ってきたよ? 気づいたら別の話しちゃっててさ〜。杏っていろんな本読むし、話しやすいからかな」

「はぁ。仕方のない人ね」

 

 淹れてもらったお茶を飲んで、適当に笑って誤魔化す。チクチク視線が刺さったけど、それもすぐに引っ込んだ。ちーちゃんもだんだん僕への接し方を心得てきたよね。お互いに話しやすい距離感というか、落ち着ける感じを自然に保てちゃう。

 

「こういう事を一番相談しやすいのがちーちゃんなんだよね」

「っ……。大したことは言えないわよ?」

「全然いいよ! 女の子の意見を聞きたいしさ!」

 

 相談に乗ってくれるってことが嬉しくて、僕は身を乗り出す勢いで喜んだ。ちーちゃんが顔を逸らして、毛先を指でくるくる回す。いつもさらさらしてて綺麗な黒髪は、お風呂の後ってことも相まっていつも以上に華やかな香りを放ってる。僕はそれに少し惹かれつつ、姿勢を元に戻して相談を始めた。

 寝るのが遅くなると美容にも悪いし、相談は手短にすることになった。ちーちゃんも要点を纏めて答えてくれたし、鵜呑みにしないようにって注意もしてくれた。あくまでちーちゃんの意見だから。友奈とは違うのだから。

 

 

 翌日になってみたら、なんてことはなかった。友奈とは自然に話すことができたのだから。昨日の時点でも話すことに問題はなかったけども。それはそれとして、どこか余所余所しい感じは消えてた。チラッとひなの方を見たら、にっこりと笑顔だけ返された。どうやらまたお世話になったみたいだ。

 

「まーくん。ひなたちゃんが気になるの?」

「そういうわけじゃないよ」

「ふーん? ひなたちゃん可愛いもんね?」

「僕の話聞いてる!?」

 

 朝から教室でこんなやり取りになって、わざとなんだろうけど拗ねちゃった友奈の対応に終われてた。教室に入ってきたちーちゃんには呆れられて、若葉とひなは微笑ましそうに温かい目をしながらそっと距離を取られた。助けてくれないんですね。

 

「またひなたちゃん見てる!」

「そういう意味で見てたんじゃない!」

「あ〜、こんなやり取りが見られるだなんて……!」

「あんずー。鼻血が出てることに気づいてくれ?」

 

 なんとか授業が始まるまでに友奈の機嫌を治すことができたけど、今日一日友奈のお願いを聞くことになった。よく分からないけど代償が大きいような。でも全然罰とも思えなくて、それぐらいならいつでもやるよって言っちゃった。杏に録音されちゃった。

 そうして昼休みになったところで、タマの口からイベントの話を持ち出された。この季節には持ってこいの。

 

「お花見? いいですね〜。私は賛成ですよ」

「私も異論はない」

「……この状況でお花見?」

 

 タマと杏の提案に、若葉とひなはすぐに賛成した。僕はもちろん賛成だし、こういう事に友奈が賛成しないわけがない。けど、最近ピリピリしちゃってるちーちゃんは渋った。ひなに神託が下って、かつてない事態になると言われてるのもあるからだね。

 

「別にいいじゃん? 楽しみがある方が」

「そうそう! 私も郡ちゃんとお花見したいし!」

「……二人がそう言うなら……」

 

 ちーちゃんの頬を引っ張りながら微笑む友奈に、ちーちゃんはすっと折れた。相変わらず友奈に甘いというか、……本人に言ったら怒られるから黙っとこ。

 

「よーし! 今度の戦いが終わったら祝勝会も兼ねてやるぞー!」

「勝希先輩はタマっち先輩と一緒に釣りをしてきてくださいね?」

「何そのプラン!? お花見で魚釣るって何!? やるけど!」

「やるのか……」

「ふふっ、勝希さんらしいですね。私は料理をしてみましょうか」

「ひなたちゃん料理するの? なら私もやる! 郡ちゃんもやろ?」

「……簡単なものなら」

 

 勢いで決まっていく花見の計画。でも、どういうやり方だろうと楽しめる。みんなとなら。

 

 そうやって話し合ってたこの日の夕方。

 バーテックスの侵攻があった。

 

 そして

 

 

 花見は叶わない約束になった。

 





 タマっち先輩と一緒に寝る時に話した。
 私達って本当に姉妹みたいだよねって。
 私が姉っていうのは合わないから、姉はタマっち先輩。

 また一緒になれたら、今度は本当の姉妹に……。
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