冬休み中にもう一話できたらいいですけど、冬休みが終わると大学のレポートとテスト勉強に追われます。
目を瞑ってる状態で城を降りて学校に向かうのって超難しい。城の中なら壁伝いに歩けるし、風が強いとおかげで出口の方向がわかる。要領さえつかめばこっちのもんってわけです。
でも外に出たら難しい!!
丸亀城を知ってる人なら分かってくれるだろう。知らない人でもどこかの城を知っていればわかる。城を見たことがない人のために言いますと、本丸を出れば広間があるって思ってほしい。ただの広間だ。あ、そうそう。天守閣っていうのは、『天守』がある階のこと。こういうと語弊があるかもだけどね。とりあえず建物そのものを天守とか天守閣って呼ぶわけじゃないよ。これは本丸だよ。
それはさておき、目を瞑ってる状態で広間に出てどうやって学校に行こうか。この城の地図は頭に入ってるから、どう行けば教室に入れるかは分かる。でも自分が今『どこ』にいて『どれだけ進めば』教室にたどり着くかは分からない。
そこで僕が考えついたのは、石垣や草木を頼りに進むってこと。だって詳細は頭に入っててゴール地点も分かってるんだから。
「いざゆかん! 我らの学び舎へ!」
勇者を一般人と分けるために敷地内に学び舎がある。だからこの作戦はわりと使える。城は現代用に舗装されてる道とそうじゃないところがあるしね。
──あ、そういえば坂の勾配が超キツイんだった
「おはよーございまーす! 間に合ったー!」
「おはよう……高嶋さん。遅かったわね」
「あはは、昨日の格闘番組見てていっぱい練習してたからね〜。それにマーくんを呼びに行ってたし」
「そう。夜ふかしは程々にね。それより彼は?」
「いろいろあって置いてきちゃった! それより昨日ので凄いのがあってね! こんな感じで廻し蹴りとかしてて!」
「た、高嶋さん……! スカートだからそんなに足上げると……!」
「ぁ……!」
「むむっ! 何やらラッキースケベを逃してしまった予感が!」
目を瞑ってても地図が頭に入ってると案外なんとかなるらしい。何個か特徴的な目印もあるからさらに難易度が下がってたし。何も見えてないけど、触った感触と形状でどこにいるのかが分かるんだ。ちなみに坂道は転げました。体の節々が痛いのです。
我慢して歩き続けて、学校になんとかたどり着いて、ここでも壁伝いに進んでいく。学校は真っ直ぐな作りだから、城の時よりも難易度が低い。遅刻するなって友奈に言われてることだし、廊下を走って教室に駆け込む。廊下を走るなって言う堅物リーダーは見てないしな!
「ここかー!」
「あ、マーくん間に合ったんだ」
「うん、なんとかね。教室着いたから目を開けるね」
「いいよ〜」
「……朝から何してるのよ」
目を開けて教室を見渡すと、やっぱり僕が最後だったみたいで、友奈を含む他のみんなは席に座ってた。また変なことしてるなって思われてるのが分かるぐらい呆れ顔だけどね。そんな風に思われても仕方ないものは仕方ない。僕がやらかして友奈に罰を言い渡されたんだから。
僕を含めて教室にいる生徒は7人。席は縦に2列で前列に4席。後列に3席ある。僕の席は後列の窓側で、通路側に友奈がいる。真ん中にはみんなの気持ちを代表して言った子がいる。
この子の名前は
無いなら作ればいいのさ!
話が逸れちゃった。ちーちゃんだけが最高学年の中学3年生。世界が変わらなかったら高校受験に向けて勉強とかする学年だね。ちーちゃんの趣味はゲームをすることで、僕もゲームをするからすっごい気が合う。でも対戦して勝ったことはない。ゲームのプロだよ。あとサラサラで綺麗な長い黒髪をしてる子。お胸は残念。
「鏖殺するわよ?」
「なんで!?」
「胸に手を当てて考えなさい。……何してるのかしら?」
「え? だってちーちゃんが胸に手を当てて考えろって。……やっぱり僕の考えは間違ってないとおもゔふぁ!!」
「最低ね」
おかしい。正直に話しただけなのに腹パンされた。ちーちゃんはインドアな人だけど、勇者としてしっかり動けるように訓練を積んでる。その細腕からは考えられないほど重たい拳は、僕に容易く膝をつけさせる程だ。僕は一般ピーポーだからね! こういうことをやられることが多いから復帰は早いんだけどね。慣れってやつかな。嫌な慣れだ。
それはそうと、殴られた原因を考えても心当たりがない。いや、まぁ言ってないとはいえ、女性に対して胸が小さいなんてのは失礼なんだろうけどさ。ここまでやられる程なのかな。……個人差はあるか。
「佐天くんの考えもだけど、行動にも原因があるわよ?」
「なんでちーちゃんも思考を読むの!? ……って行動? 言われたとおり胸に手を当てて考えただけなんだけど……」
「そうね。
「違うの!? じゃあ誰の胸に手を当てたらよかったのさ!」
「自分の胸よ!」
「えぇ!?」
珍しく声を大にしたちーちゃんの言葉は衝撃的だった。だって自分の胸に手を当てて考えろって言うんだよ。男の胸に手を当てて何が嬉しいのさ。むしろショックを受けるよ。自分のならなんとも思わないけど。
「お前はなぜそういう思考ばかりするんだ……」
「若葉ちゃん。今さら彼に真っ当さを期待するのは損かと」
「ひなって実は僕のこと嫌いなの!?」
ショックを受けて打ちひしがれながら席に着いた僕に言ってきたのは、前の席に座る
乃木若葉は勇者たちを束ねるリーダーで、ここ香川県出身の子。同い年なんだけどめちゃくちゃ堅い性格をしていて、実はちょっと苦手。僕って縛られるの嫌いだし。実は不器用なだけで、優しいしいろいろと考えていることは知ってる。でも全然それを出さないし、目的が解せないね。僕とは本当に相容れないよ。
苦手だけども誰とでも仲良くなりたいのが僕だから『若』って呼んでる。若は日本刀を武器にしてて、居合いがめちゃくちゃ上手い。カッコイイし真似したかったんだけど、若も刀を貸してくれなかった。ダンボールじゃ刀は再現できないからどうするかが課題。
そして何よりも大事な情報なんだけど、若は性格が半端なくイケメンだ。こんな世界にならなければ女の子からいっぱいバレンタインデーにチョコを貰っていたに違いない。素を表に出せればの話だけど。
そんな若の隣に座る子が、若の幼馴染でこのメンバー1のお胸を誇る上里ひなた。通称『ひな』。ひなはこの中で唯一の『巫女』で、巫女の中でも一番凄いんだとか。神樹様のお気に入りってやつだね。巫女は神樹様からの
ひなはおっとりしてる子で、若のサポートを優先的にする。若葉ファン第一号にして会員でトップだろうね。そんな会員聞いたことないけど。ひなが若葉をどれぐらい好きかと言うと、『若葉ちゃんコレクション』こと若の写真集があるほどだ。その枚数は数えるのが億劫な程で、メモリースティック何個分かも分からない。数えたらわかるだろうけど、そこまでは興味ない。せいぜいイジるネタが欲しいぐらいだ。
それで、この子は怒るとめちゃくちゃ怖い。静かにオーラを出して怒るタイプなんだけど、それが半端なく怖い。転けそうになったということにして一度胸を触った時はヤバかったです。トラウマレベルです。胸の感触は脳内に永久保存です。ちなみにこの件以降しばらく誰も口を聞いてくれなかったです。ちーちゃんと友奈にまで無視されたのは辛かった。てか泣いた。
「あら、そんなことないですよ? 私はここの誰も嫌いだなんて思いません。順位をつけるとしたら佐天さんが最下位というだけです」
「複雑だなぁ!」
「そんなランキングつけてたのか」
「ちなみに1位は若葉ちゃんですよ!」
「そ、そうか……」
「はいはい。朝からごちそうさま〜」
すーぐにこの二人はこういう会話を始める。ひなが暴走して若が戸惑うってパターンが多いんだけど、ひなの暴走は基本的に計算して行われてる。その時の若の反応をシャッターチャンスとしてるらしくて、若もそうされないように努力はしてる。実らないけどね!
そんな二人の席は僕からして右斜め前と左斜め前だから、目を逸らすとなると必然的にもっと右を見るしかない。窓の外を眺めてもいいけど、人間観察ってやつだよ。
「んんー? はっ! あんずをその目で見るな遅刻しかけた変態め!」
「タ、タマっち。それは失礼すぎるよ」
「ヨッシーの言うとおりだぞタマ。遅刻はしかけただけでしてないから無問題だ。それに変態なんかじゃない。変態紳士だ!」
「な、なに!?」
「なんでそんな反応してるの!? 佐天先輩もふざけないでください!」
変態かどうかは自分で断定できることじゃないし、そもそもヨッシーを見るなって酷い話だよな。見ないように生活するなんて無理だ。そんなわけでふざける方向で有耶無耶にしたかったんだよね。別に僕は何も悪いことしてないけどさ。それにタマもノリがいいから、ぶっちゃけ今のも本気で言ってたのか僕にはわからない。半々な気がする。
僕を変態呼ばわりしたのは
球子の武器は旋刃盤。盾にもなるし、ワイヤーをつけてて刃が仕込まれてるから投擲もできる便利品。ワイヤーが切られたら戦闘力皆無だろうなって思うけど、そこは勇者の力なのかワイヤーが固いんだとか。それならワイヤーでも戦えるのではなかろうか。むしろそっちで戦ってくれたら個人的にカッコイイと思う。
「タマってヨッシーより小さいよなぁ。何がとは言わないけど!」
「小さい言うなー! それに何がって何だよ!」
「あの、わたしヨッシーって呼ばれるのOKって言ってないんですけど……」
憤慨するタマを鎮まらせる『ヨッシー』こと
武器は弩で、完全に遠距離担当。バーテックスに近づかれたら詰みそうだけど、球子が守るんだろうなー。お姫様と王子様だよね。二次元かよって話。ここは三次元だ。……若とひながアレだし僕がおかしいのか。そんな馬鹿な。てかヨッシーってあだ名で認めてよ。もっと仲良くなれたら他の呼び方にするけどさ。
「ところでやっぱりこの空間はハーレムでは!?」
「佐天くん、授業始めるんですけど……。君だけ違う教室に行きましょうか」
「そんな殺生な!!」
自分を含めてたった七人のクラス。田舎ならあるあるだけど、ちょっぴり寂しい。男の子がいないし。でも、これはこれで楽しいと思う。性格も趣味もバラバラだから、いろんなことが楽しめそうだよね!
なんか順番に日記を書くらしくて、順番が回ってきた。この日記の名前は勇者御記。勇者じゃないから書かなくてもよくね!? そりゃあ書けと言われたら書くけどさ。みんなはどんなの書いてるのかなって見てみたけど、参考にならないし、面白みもない! 固いんだよ! 楽しいこと書こうぜ! てなわけで次回からそうする。文字数ry
勇者御記 二〇一八年七月
佐天勝希 大赦史書部・巫女様検閲済み