遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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3話 シャボン玉大好き

 

 季節はガッツリ夏。でもまだ7月だから気温はこれからどんどん上がるんだろうね。夏にいい思い出なんてあんまりない。だって奈良は海に面してないからね。しかも大阪湾とか泳げたものじゃない。泳ぐとなると京都の方に出るか、和歌山か三重だね。じいちゃんは若い頃に友達と一緒に三重まで行ってたんだとか。しかも自転車で。

 

『奈良は山に囲まれとるからな! 外に出るときは下りばかりで楽じゃわ! 帰り? そんなの知らん! ヒッチハイクでなんとでもなるわい!』

 

 感銘を受ける言葉だったよ。遠いからって諦めてちゃいけないってことだもんね! 遊びに妥協は許されない! 楽しむためならなんだってやる! 10歳の時に肝に銘じたよ。

 

 今は四国にいる。しかも丸亀城から見えるところに海がある。そこで泳げるわけじゃないけどね! 工場が近くにあるせいで泳げたものじゃない! ガッデム!

 そんなわけで夏だけど夏らしい遊びの一つを封じられてしまっている。まぁプールはあるから妥協点だよね。髪が痛まなくていいからプールの方がいいって人もいるぐらいだし。ところがどっこい。今日はプールに行くわけじゃないよ。

 

「ちーちゃーん、あーそーぼー!」

「嫌よ」

「なんで!?」

「暑いじゃない」

「たしかにね!」

 

 ちーちゃんは何もない時にいっつも自分の部屋にいる。何をしているかと言うとゲームをしてる。ちーちゃんはゲーマーだから当然だね。僕もゲームが好きだし、よく一緒にゲームをさせてもらってる。コントローラーとかは大社がくれるよ。極力勇者の機嫌を損ねないようにしてるからねー。ほら、勇者が戦わなかったら人類は全滅待ったなしだからさ。

 それで、たまにはちーちゃんと外で遊ぼうかなって思って呼びに来たんだけど、ちーちゃんは外に出ることを瞬時に理解したみたいで即答で却下してきた。部屋のドアを開けっ放しにするわけにもいかないし、玄関から話すことにしようかな。

 

「外の暑さを忘れる遊びにしようと思うんだけどさー」

「拒否しなかったかしら? 話を聞かないと納得しないだろうから最後まで聞くけども」

「暑さを忘れる遊びってやっぱり見た目も涼むやつがいいじゃん? そこで用意したのが……ジャジャーン! シャボン玉セットー!」

「シャボン玉? 子供じゃないんだから」

「せっかく自作したのに〜。まぁちーちゃんは不参加ってことねー。じゃあ僕は友奈とシャボン玉で遊んどくよ」

「参加しないとはいってないでしょ? 私も行くわ」

 

 チョロいぜ! ちーちゃんは友奈と仲がいいからね。友奈が来るって言えば参加すると思ったよ。友奈を利用してる感が半端ないけど、怒られたら謝ろう。よくないことに変わりはないからね。

 完全にオフモードで部屋着だったちーちゃんが着替えるから、僕は部屋の外に出る。紳士だからね! 覗きとかもしないよ!

 

「お待たせ。場所はどこでするのかしら?」

「決めてないよ! 今から友奈を呼びに行くからさ!」

「……嵌めたわね?」

「ごめんごめん。ちーちゃんと遊びたかったからさ!」

「! ……仕方ないわね」

「あはは! ありがとう!」

 

 ちーちゃんと一緒に友奈の部屋に行く。ちーちゃんと友奈の部屋はすぐ横だからさ、時間は全然かからない。でも今日の最高気温は30度近くあるから、じんわりと少しずつ汗が滲んできちゃう。早くシャボン玉で遊ばなければ!

 そんなわけで友奈の部屋に突入。インターホンは押してないよ。いつもこのやり方で突入してる。ちーちゃんに横腹を抓られてわりと痛いけど、気にしない気にしない。友奈を誘う方が優先だよ。鍵が開いてたってことは友奈は部屋にいるということ。そしてどの部屋もシンプルな作りをしてるから玄関から部屋の中をほぼ見渡せる。そんなわけで友奈は簡単に発見できた。

 

「友奈友奈。格闘技の練習するのはいいけどさ、やるならスカートじゃない服装でしてくれないかな。それかスパッツ履いてほしい」

「ぇ……、ま、マーくん!? っ〜〜〜!! 変態!」

「これで僕が怒られるのは理不尽だと思うな! だから殴ろうとしないでぇ!!」

「そもそもインターホンを鳴らさずに入ったからでしょ……。だからあなたの責任よ。甘んじて殴られなさい」

「そんな馬鹿な!! ぐへっ!」

 

 顔を真っ赤にした友奈に全力腹パンされた僕はノックアウト。格闘が戦闘スタイルな友奈のパンチはとてつもなく重たいです。全然立ち上がれそうにないです。そんな僕を無視するちーちゃんは、僕を素通りして友奈を慰めてる。

 痛みは引かないけど、顔だけはなんとか上げられる。今日の目的を伝えなきゃいけない。……あ、ここからなら二人のスカートの中を覗けるや。でもパンツが見れそうで見れない。太ももの際どいところまでが見えるという生殺し! 耐え難いが耐えなければならぬ! おっと血が出た。バレたら追い打ちをかけられてしまうな。

 

「マーくんいつまで蹲ってるの? いつもの調子ならもう動けるよね?」

「いやー今回は打ちどころがねー」

「ちゃんと調整したけど?」

「立ち上がらないと遊ばないわよ」

「それはイカン! ぁ……」

「ぁ」

「鼻血? ……ふーん? マーくんはなんで鼻血が出てるのかなぁ?」

 

 弁明しなければならない。僕の無実を証明するためにも! さぁ頭を回転させろ。選択肢を間違えるな。状況を的確に理解しろ。相手の心情を察するんだ。そうすれば全て丸く収まるはず! ……どう考えても僕が悪いのが現実なんだよなぁ!

 

 そんなわけで僕の弁明は全く意味をなさず、今度は頬に特大の紅葉をつけられましたとさ。男は辛いよ。

 

 ヒリヒリと痛む頬を擦りながら、友奈に今日の用事を伝える。暑さを忘れるためにシャボン玉で遊ぼうって話。それを聞いた友奈は、可愛らしくはにかんでOKを出してくれた。OKを貰えたらすぐに友奈とちーちゃんを連れて外に出た。暑さを忘れるためにって言っても、暑いのは暑いんだから木陰で遊ぶとしよう。木がいっぱい生えてる所がいいよね。

 

「ここらへんかな」

「うん。ここなら木陰で遊べるもんね!」

「シャボン玉の用意って、そんなのだったかしら?」

「市販のやつじゃないからね! 僕の自作シャボン玉で遊ぶんだよ! 針金ハンガーの形を変えたらデッカイの作れるしね!」

「おー! マーくんあったまいい!」

「へへん! もっと褒めてくれていいんだよ!」

 

 もっと調子に乗ってもいいんだけど、ちーちゃんの視線が既に冷たいから準備をするとしよう。大きい桶を用意して、そこに作っておいたシャボン液を流し込む。あとは形をできるだけ丸くしたハンガーをそこに浸して、振り回すだけ。それだけで大きなシャボン玉が完成する。大きいとできた瞬間ポワンポワンするから可愛いよね!

 

「おー! おっきぃー!」

「凄いわね……」

「でしょでしょ! しかもそれだけじゃないよー! 触ってみて!」

「え? 割れちゃうんじゃ……」

「いいからいいから! それにシャボン玉が割れたってまた作ればいいんだしさ!」

 

 シャボン玉って別に一個のを見て楽しむわけじゃないからね。そりゃあ割れないほうが嬉しいって気持ちも分かるけど、僕としてはいっぱいシャボン玉を作って遊びたい。

 そんな気持ちが伝わったわけでもなく、僕に言われた通り友奈はシャボン玉を触る。シャボン玉は脆くて、触るのはもちろんのことながら触らなくても勝手に壊れる。壊れたときに液が若干飛び散るけど、それもまたシャボン玉も醍醐味。

 

 でもこのシャボン玉は違うんだよ!

 

「あれ? 壊れない?」

「弾力があるわね。さすがに強く触ったら壊れるでしょうけど」

「えっへん! 凄いでしょ!」

「うん! すごいよマーくん! なんでこんなのできるの?」

「シャボン液の作り方を工夫したんだー。わりと簡単だよ? 1回沸騰させて少し冷ましたぬるま湯に、洗濯のり・ガムシロップ・炭酸水・粉ゼラチン・ラム酒をちょいと混ぜて、グリセリンも混ぜてみたんだよ。そしたらこれができたんだ!」

「洗濯のりにガムシ……え?」

「あはは! 友奈は覚えなくてもいいよ! またやりたかったら僕に言ってくれたらいいからさ!」

 

 どうやら僕が作ってみたシャボン玉は友奈とちーちゃんに好評だったみたい。二人もそれぞれハンガーを持って思い思いにシャボン玉を作り出す。ハンガーの大きさは多少なりとも変えとくべきだったね。全部だいたい同じ大きさのシャボン玉がいっぱいになっちゃったし。まぁハンガー自体はまだあるからそっちのを大きさ変えたらいっか。

 そんなわけで僕は残りのハンガーを改造する。ただ大きさを変えてるってだけだけども、改造って言ってる方がカッコイイよね! それに僕はこういうことをするのが好きなんだよ。遊ぶことが好きだし、自分で用意したもので友達が楽しんでくれたら嬉しいし。報酬は友達の笑顔ってね。

 

「おおー! 見ろよあんず! でっかいシャボン玉がいっぱいだぞ!」

「わ、あれは凄いね。タマっち先輩、私達も混ぜてもらう?」

「そうだな! おおーい! タマ達にもやらせてくれー!」

「タマちゃん! アンちゃんも! うん、いいよ! ね、マーくん?」

「もっちろん! 人が多いほうが面白いからね!」

 

 ちーちゃん的には微妙そうだけど、僕と友奈が二人の申し出を快諾したから何も言わなかった。沈黙は肯定ってことで二人にもハンガーを渡す。そしたら二人も思い思いにシャボン玉を作って遊び始める。二人に渡したのはちょうど大きさを変更し終えたハンガー。ちーちゃんと友奈が持ってるのが一番大きいやつ。ヨッシーに渡したのが一回り小さいやつ。タマに渡したのが一番小さいやつ。

 

「タマのだけ小さすぎるだろ!」

「え? 大きさ変えたほうが面白いかなって」

「だ・か・ら! 小さすぎるんだよ! しかもなんでタマがこれなんだよ!」

「タマってちっちゃいじゃん」

「うがー! そんなのタマでも許さんぞー! この平均以下男子め!」

「喧嘩なら買うぞおらぁ!」

 

 誰が平均以下男子だ! 好きでこの身長なわけじゃないわい! それに男子の成長期はまだこれからだもんねー。僕には希望が残ってるのさ。今は若に負け……負けてるけども、来年には僕のほうが身長が高い……はず。高いよね。僕の成長期はまだ終わってないよね。信じていいよね!

 そんなわけで僕のことを馬鹿にするタマを許さないぞ。僕はタマに10cm以上ある。それに女子の方が先に成長期が終わるからね。僕は完全勝利の未来が各停しているということさ。まさに一触即発なんて状況になっている僕たちの間に入ったのは、ヨッシーと友奈だった。

 

「マーくん! せっかく遊んでるのに喧嘩なんて駄目だよ!」

「タマっち先輩もだよ! うどん抜きにするよ!」

「あんず!? それだけはやめてくれ!」

「ははは! タマは敗北者じゃー! 僕はうどん抜きでも気にしないからね!」

「マーくん? いい加減にしようか? ご飯抜きにするよ」

「ごめんなさい!」

 

 腰に手を当てて怒る杏と友奈の前にて土下座する僕とタマ。それを見て呆れながらも片手間にシャボン玉を作るちーちゃん。事情を知らない人が見れば何も分からない状況が出来上がってしまった。そんな状況を見て予想通り反応に困りつつ近づいてくるのが若とひな。みんなが集まってたら二人も来るよね。

 ちーちゃんが二人に事情を話して、「いつものことか」と納得した二人は残ってるハンガーでシャボン玉を作って遊び始めた。いつものことって思われるのは心外だし、僕らを無視して遊び始めるって強かだよね!

 二人からの説教を大人しく聞き続けて、ちゃんと反省した姿勢を見せることで許してもらえた。その後は七人全員でシャボン玉祭り! ちゃんと七人分用意してたあたり、僕も優秀だよね!




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勇者御記 二〇一八年七月
  ■ ■■   大赦史書部・巫女様検閲済み
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