遊び心は大事   作:粗茶Returnees

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5話 勝ち取りたい!

 

 水鉄砲大会が開始される。僕らは箱を台車に乗せて、とりあえず敵チームから距離を取るべく移動を開始した。向こうも考えは同じだったらしく、反対方向に移動していくのが見えた。台車はちゃんと2台持ってきてたからね。向こうも難なく箱を運べてたよ。箱の中にはもちろん水鉄砲と予備のタンク。でもただの水鉄砲だけじゃない。

 

「ジャジャーン! スナイパーライフルVer.!! これはヨッシーが使ってね〜」

「わ、私ですか?」

「そうね。伊予島さんの普段の武器を考えたら適任者ね」

「たしかにそうだね! でもマーくん。どうやってこれ用意したの?」

「爺ちゃんが作ったやつを今年になって再現できたんだよ。再現することに夢中になりすぎて構造はさっぱり」

「普通は構造も理解できるのでは……」

 

 ヨッシーのツッコミは無視するとして、ヨッシーにスナイパーライフルとそれ用の予備のタンクを渡す。まぁこれスナイパーライフルと言っても、この見た目ほど飛距離ないけどね。他の水鉄砲よりはだいぶ飛ぶけど、スナイパーライフルをイメージして撃ってたら届かないよってパターン。ヨッシーは恋愛ゲームぐらいしかしなさそうだから、その辺のイメージもなくて問題ないよね。

 

「伊予島さん。一発だけ……試し撃ちしといたらいいと思うわ」

「あ、そうですね!」

 

 うんうん。先に撃って把握してたほうがいいよね。ちーちゃんはゲーマーだからこういう感覚鋭くてありがたいよ。僕はゲームが好きだけど、ちーちゃんほど細かく設定を把握するわけじゃないから応用もできない。そういえば僕もあのスナイパーライフルの飛距離知らないや。見とこーっと。

 

「それなりに飛びますね」

「水鉄砲なのにねー」

「これはこれで使えるわね。他の銃は?」

「ちーちゃん。これ水鉄砲だからね?」

 

 スナイパーライフル以外に目ぼしい水鉄砲はないんだけどね。市販で売ってるやつを強化したような、パワフルな両手持ちの水鉄砲。速射がしやすいマシンガンもどきの水鉄砲。これはタンクが一番大きいよ。あとは普通のハンドガンタイプの水鉄砲。ハンドガンタイプは5個あるよ。もちろん向こうも同じものが同じだけ用意されてる。

 

「私はこのパワフルなやつにしようかな」

「友奈も試し撃ちして使い方確かめときなよー」

「うん。マーくんはその大きいやつにするの?」

「そうだよ。僕はこれが好きだからね〜」

「私はハンドガンを二つ使うわ」

「だから水鉄砲ね」

 

 これはちーちゃん頑なに水鉄砲と言わないパターンだね。別に通じないわけじゃないからいいんだけどね。訓練を兼ねてるとはいえ、僕としては遊び重視の企画だからなるべく物騒なのはやめてほしい。

 友奈がなにやら扱いを把握してなかったみたいだから、僕とちーちゃんで扱い方を説明した。初めから戦力外なんてことにはさせられないからね。これの企画の意味がなくなるもん。友奈が水鉄砲の扱い方を把握できたところで、僕らは作戦を考える。脅威なのは間違いなく若葉だ。タマも運動神経がいいし、僕に負けず劣らずイベント事が大好きだ。こういう時に限って予想外なことをする。そしてひなたは未知数。怖いよあの子。ある意味一番脅威。

 

「誰が2回行動できるのか……」

「そこが鍵だね。着替えに行くことを考えると、背中を狙われる危険も上がるし挟み撃ちもありえる」

「その時はその時だよ! 大丈夫! 私達なら勝てるから!」

「友奈それ根拠ないでしょ」

「あはは、バレちゃった? でも、勝てるって信じないと勝てないよ」

「まぁね」

 

 笑顔で能天気そうに話すのに、こういうことは核心をついてくるよね。でも、だからこそみんな友奈に惹かれる。ムードメーカーで親しみやすいけど、周りのことをしっかり見ているから。根拠がなくても不思議とそうさせる。この笑顔が素敵な女の子の魅力だよ。

 ちーちゃんとよっしーもやる気に満ちてることだし、さっそくここからも移動しよう。フィールドである丸亀城は広い。待ち伏せは難しい。そもそもエンカウントするかも分からない。だから作戦の成功率を上げるための仕掛けも難易度が上がる。でも、やりがいはある。

 

「伊予島さんはここ(・・)に潜伏しておいて」

「分かりました。皆さん、ご武運を」

「アンちゃんもね!」

「僕らもなる早でここを離れようか。ちょっとしたことでも察しそうな人が二人向こうにいることだし」

「そうね。それじゃあ高嶋さんも……気をつけて」

「ぐんちゃんもね!」

 

 うんうん。開戦前のこういうやり取りもいいよね〜。ところで僕には言ってくれないんだね。ヨッシーには一応言われたけど、ちーちゃんと友奈は僕には無しかー。いいんだけどね。勝利に導くために身を粉にして働くとするよ。

 僕らは三方向に別れた。三人固まって動いていてもいいんだけど、作戦の要はヨッシーの存在だ。それを最大限活用するためなら三人固まるべきじゃない。そんな訳でボッチムーブだよ。……この言い方だと悲しいからソロプレイとでも言っておこうかな。あれ? これ変わらないね!

 

「ここで会ったが100年目ー! タマの餌食になるがいいー!」

「チビっ子対決といこうじゃないか。……誰がチビだ!!」

「自分で言ってキレるなよ! その自虐プレイはさすがのタマもぶっタマげたぜー」 

「獲物も同じか。ふっ、僕の神プレイの前になすすべ無く負けてしまえ!」

 

 このマシンガンもどきタイプは、ゲームで例えると長押しタイプの銃だ。引き金を引き続けるだけでいい。その分消費が早いし、狙い撃ちできるものでもない。今回の戦いにおいてはデメリットの方が大きい。ぶっちゃけ使わなくてもいい水鉄砲だ。

 

 ではなぜ僕がこの水鉄砲を選んだのかと言うと──

 

「ハハハハハ! 蹂躙されろー!」

「ナァー! なんでこの水鉄砲で狙いがいいんだー!」

 

 僕が使い慣れてるから。ただそれだけだよ。

 爺ちゃんと一緒に思考を放棄して考えたこの水鉄砲。タンクに入っている水の量は1.5リットル。はっきり言って重たい。狙いも定めにくい。でも、それも持ち方次第ではなんとかなる。なんとかなるってだけで完全に対応できてるわけじゃないけど、タマの予想を超える精度だったことでそれに気づかれてない。タマも試し撃ちしたんだろうね。だからこれのじゃじゃ馬さを知ってる。知っているからこそ主導権を僕に握られるんだ。

 

「タマもやられっぱなしのタマじゃないぞ!」

「むっ! さすがは勇者!」

 

 走りながら撃つ。当たらないように避ける。射程の限界と自分たちの距離が一致している。気を抜けば簡単に撃たれてしまう。この距離を維持し続けないとそうそうにケリがつく。それはそれでいいけど、負けるのは相手じゃないと。それをどっちも思っているからこの距離は保たれたままだ。

 タマが強引に反撃を始めると思ってなかった僕は、追いかける立場から追いかけられる立場へと反転する。タマの銃口から水の飛び方を予測することで僕は水を回避する。偶に後ろを確認して他に敵がいないことと、後方が行き止まりじゃないことを確認する。行き止まりではなかったよ。行き止まりでは。でも、ここは──

 

「ははは! その坂を後ろ向きで上がりながらタマの攻撃を避けることはできまい!」

「甘い。甘すぎるぞタマ! 後ろ向きじゃなかったらいいだけだ!」

「むっ! 逃さないぞ佐天!」

 

 タマの攻撃を全く無視して坂を駆け上がることだけに集中する。元々距離はあの水鉄砲の飛距離ギリギリ。先に走った僕が後ろから撃たれる水を受けることもない。敵を倒せずに逃がすことを警戒したタマもすぐさま全力ダッシュ。銃口をこっちに向けたまま全力ダッシュできるなんて怖いなぁ。

 

「よっしゃあ! 無事に駆け抜けたぁ!」

「趣旨変わってるぞ!? そして隙だらけだって冷た! い、いったいどこからだ!?」

「ハッハッハ! 僕らの作戦勝ちだね! ヘッドショットされたからタマは脱落だよ!」

「く、くっそー! あんずだな! あんずがタマをやったんだな! 覚えてろよあんずー!」

「あ、そういう私怨の持ち出しは固くお断りしております」

「むぅ……。次だ! 次の機会があればタマがあんずを倒す!」

 

 二人って仲良しのはずだったよね? なんでメラメラと闘志燃やしてるんだろ。ツッコんじゃいけない気もするし、放置するけども。ところでタマが全然移動する素振りがないから、タマが2回行動できるって役割じゃなさそうだね。そうなると、その権利は若かひなが持ってるってわけだ。王道で考えれば若。そしてその方が断然脅威だ。ひなならこっちにとって好都合。その真相は本丸の2階から飛び降りてきた若に聞くとしよう。

 ……ん? 本丸から(・・・・)

 

「伊予島の得意分野を活用するなら、身を隠しやすく狙撃しやすい場所。そう考えると妥当なのがここだ。狙撃に集中していた伊予島を討つのは簡単だったぞ。……土居が先にやられてしまったがな」

「おのれ若!! 正面突破ばかり考えると思ったのになかなかどうして賢しい!」

「ひなたの考えだがな」

「若じゃないのかよ!」

 

 それにしても、うん。そっかー。ひながそんな考えしたのかー。まぁでも若とひなとタマの三人でそうやって見破れるのはひなだよね。ひなもこういう事に慣れてないと思ったのに、戦略ゲームとかやらせたら強いのかな。

 

「いやはや、恐ろしいね」

「あぁ。私もひなたの予測が当たったことに驚いている」

「だろうね。でも、僕が言ってるのはそっちじゃない(ヨッシーの方だ)よ」

「なにっ! !? 後ろから!?」

「背後に誰もいないなんて思い込まないことね」

 

 僕がジリジリと後退することで、若も僕を逃すまいと意識を集中させてゆっくりと距離を詰めてきていた。これで少しは意識を向けさせられるし、若の親友を賞賛することで周りへの注意を逸らさせた。そして決定的なチャンスが来たら、若が止まる瞬間を作るように発言する。そしてその瞬間ができたことで、若の後ろから忍び寄ってたちーちゃんが若の後頭部と背中の中心を精確に撃ち抜いた。これで若が脱落だ。

 この作戦を考えたのがヨッシー。見破られる前提であの作戦を利用したんだから。ちーちゃんに本丸の中で別の箇所に隠れさせる。ヨッシーがやられたらちーちゃんの出番ってわけ。

 

「若も1回だけってとこかな?」

「あとはひなたに任せるさ」

「それなら僕らの勝ちだね」

「えぇ。見たところ高嶋さんがやってくれたようよ」

「なんだと!?」

 

 ちーちゃんが見てる方向を若が勢い良く見る。そこには笑顔で手を振ってる友奈と全く(・・)濡れていないひなたがいた。作戦成功ってことだよ。若とタマはどういうことか分かってないみたいだけど。

 

「友奈に買収させた」

「買収しました!」

「されちゃいました!」

「「はあ!?」」

 

 ひなを買収した手段は簡単だよ。僕が撮っていた若の写真を友奈に渡しておいて、あとはそれを条件にひなに降伏と言わせる。マヌケだけど的確な作戦だ。しかもこの写真はひなが持っていない写真。通信している時の若をひなは見たことがない。うどん蕎麦論争の様子を録音した墓イスレコーダー付きをチラつかせればこの通りってわけ。ちなみにちーちゃんにも渡してあるし、僕も持ってる。ひなに会った人が作戦を実行するって手はずだったのさ。

 

「思いの外時間が余ったし、あとは好き勝手に水鉄砲で撃ち合いしますか」

「よーっし! マーくんを狙い撃ちするね!」

「なんで!?」

「だってこの遊びって、水で濡れて下着が透けるのを見るために始めたやつでしょ?」

「そ、そうなんですか佐天先輩?」

「さ、さぁーねぇー。僕は撤収させてもらうよ!」

「逃すか! 全員で佐天を捕まえろ!」

 

 水鉄砲を持ちながらの鬼ごっこが開始されました。なお鬼は6人です。鬼畜なゲームだね。捕まったら何されるか分かったものじゃないし。

 

 そうそう。今回の水鉄砲大会の勝利チームには、僕が頑張って用意した最高級のうどん玉を使ったうどんが贈呈されます。美味しかったです。鬼ごっこで捕らえられた僕の分は没収されたけど、友奈が食べさせてくれました。あーんってやってくれた。可愛さで殺されたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんな楽しい時間を過ごした数日後

 

 

 ──諏訪が落ちた

 




 僕が考えた水鉄砲大会は好評だった。またみんなで遊ぶのを考えたいところだね。どういうのを次にしようかな。遊びだけじゃなくてもいいかもしれない。みんなで料理を作るとかでも。そうだね。たまには蕎麦もいいかもしれない。

勇者御記 二〇一八年 九月
  佐天勝希  
 大赦史書部・巫女様検閲済み
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