BLEACHの世界に最強になって転生 番外編   作:アニメ大好き

10 / 31
どうもアニメ大好きです。
今回は早く出来ました。

今回から「エスパーダ」の字が「死刃」になります。少し前から思ってたのですが「十一刃」ってなんか変な感じがしたのでどうにかしたいと思っていたのです。
アイディアをくださった肘神さんありがとうございます。
ようやく少し涼しくなり快適になってきましたが、未だにコロナの脅威は晴れません。皆様もお身体には充分注意してください。

それではどうぞ。


8話 誇り高き武人 後編

 セキレイNo.09月海は突如として現れた鎧武者サーガインと互角の戦いを繰り広げていた。

 まず月海が得意技である【水祝】で先制攻撃を仕掛けるが、サーガインはその場でじっと構えて巌流剣で真っ二つに切り裂いた。まさかの出来事に唖然としている月海に容赦なく突っ込んでくるサーガインは剣を振り上げる。刀が振り下ろされる瞬間に月海は右手に水を剣状に纏わせ受け止める。これぞ大家の美哉との修行で習得した技【水劍(みずのつるぎ)】。

 

 しかしパワーはサーガインの方が上のようで次第に月海が押され始め膝が地面に着く。月海は残っていた左手から水を放出、サーガインは水の勢いにより後退するが、踏ん張り払い退ける。

 

「ハァ、ハァ…お主中々やりおるのぉ」

 

「フン、当然だ。剣術に於いて俺の実力はトップクラスだ。貴様等セキレイにも剣を使う奴はいたが大した実力はなかった」

 

 事実サーガインが相手した剣使いのセキレイは手も足もでなかった。恐らく剣術で互角に戦えるのは現懲罰部隊筆頭のNo.04【鴉羽(からすば)】くらいであろう。

つまり月海は懲罰部隊筆頭を相手にしているようなもの。マトモに遣り合えば勝ち目はないが、しかし彼女には勝算があった。

 

「確かに汝の実力は確かじゃ。しかし、汝は我には勝てぬ!」

 

「何!?」

 

「先程から汝の攻撃方を見させてもらったが、汝はその二本の剣を使っての接近戦による攻撃が主流。しかし我は遠距離を得意とする。故にこの勝負は我の方に部がある!違うか!」

 

 月海は自信満々に説明しサーガインを指差す。確かにその説明は絶対とは言い切れないが間違っではない。

例を上げるなら剣士が弓使———直接戦って勝てるか?と言ったところだろうか。

 懲罰部隊筆頭を相手にしているのと同じことだが自身も日々大家(浅野美哉)に鍛えられている。故に隙を作れば勝機はあると踏んでいる。

 

「…確かに俺は武人、刀を使っての攻撃が主だ。だが、誰が刀しか使えんと言った?」

 

 サーガインは持っていた巌流剣を上空へと投げ飛ばすと両手の指を月海に向ける。するとその指先から無数の銃弾と思われるものが飛び出してきた。

 

 月海は腕を前に出し攻撃を防ごうとするがら複数のの銃弾は月海の足や頬を掠った。残りの銃弾は地面に命中にその爆発で煙が舞い視界が奪われる。このままでは先手を取られると思い後退し煙から出るが、直後自分に覆いかぶさる一つの影が。振り向くと投げ飛ばした刀を両手で持ち振りかざしているサーガインの姿があった。

 月海は咄嗟に両手で防ごうとするがサーガインの腕力に重力による重みが加わりその衝撃で吹き飛ばされる。だがなんとか体勢を立て直し踏み止まる。

 

「どうした、この程度でくたばるのか?情報によるとシングルナンバーはセキレイの中でもかなりの強者だと聞いていたが、これでは今までの連中と同じではないか。飛んだ拍子抜けだ」

 

「…ハァ、ハァ。何を言っておるのじゃ」

 

「ン?」

 

「我は葦牙と…皆人と共にセキレイ計画を制覇し最強のセキレイとなるのじゃ。この程度のことでくたばりはせぬ!!」

 

 月海は傷を負い息を荒げながらも、その目に映る闘士の炎は消えていなかった。

 

「貴様のその意気込み…やはり良い。いいだろう、貴様の攻撃全身全霊で受けてやる!来い!!」

 

 この掛け声と共に再び月海の水とサーガインの刀がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 そしてセキレイNo.88結もサーガインの従属官(部下)であるカンガルーレットと激しい戦闘を繰り広げていた。

 

「ハァァー!」

 

「ルゥー!」

 

 お互いの拳による攻撃なため、その拳がぶつかり合ってかなりの衝撃波が2人の周囲に広がる。

 

「貴方物凄く強いですね。ワクワクします」

 

「へへへ、小娘俺様の力がこんなものだと思ったら大間違いだ〜ルー!」

 

 胸の前で腕をクロスさせ広げると胸のルーレットが高速で点滅しながら周りだし、次第に「ピコ、ピコ」と減速すると一箇所に止まる。止まったマスには倒れた建物の絵が描かれていた。

 

「地シィィンー!!」

 

 いきなり地面に拳を叩き込む。その振動で激しい揺れが起こり、結びを含めその近くにいた皆人や草野まで足元立っているのがやっとである。

 さらに連続で拳を叩き込み振動はドンドン大きくなっていき、遂には結の身体はその振動によって上空へと放り出されお尻を軽く打った。打ったお尻を摩っていると…

 

「痛ってて…」

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 …後ろから皆人の草野の声が聞こえ振り向くと、苦痛の表情して横たわって皆人の近くで草野が心配して寄り添っていた。

 先程の振動で2人も上空へと放り出され皆人は草野を守るために、自らの身体を盾にして背中から地面に強打してしまったようだ。

 

「皆人さん大丈夫ですか!?」

 

「うん、平気。少し背中を打っただけだよ」

 

 結は心配しながら急いで掛けより安否を聞くと、皆人はいつものように笑顔で返してくれる。大事に至らなかったので結と草野は一先ず安心した。

 

 結は立ち上がりカンガルーレットへ振り返るとその顔はさっきまでと違い怒りに満ちていた。

 

「皆人さんやくーちゃんまで危ない目に合わせて、私怒っちゃいました!貴方を絶対に許しません!」

 

「フン、だったらやってみろルー」

 

 そして両者ともに駆け出しカンガルーレットは拳を前にへと突き出す。しかしその拳が当たる瞬間、結は身体をズラし脇に入り込み彼の胸に全力の力を込めた一撃を食らわせる。

 

「ハァァア!!」

 

「ルゥーー!!」

 

 その強力な一撃に吹き飛ばされ地面を転がる。ダメージを受けながらも身体を起き上がらせると、カンガルーレットの胸のルーレットが再び高速で回り始める。そして止まったマスには燃える家の絵が描かれていた。

すると右腕をブンブンと振り回し始め…

 

「火ァァーー事ィィーー!」

 

 …その言葉と共に右腕を勢いよく前に突き出すと拳から炎が放たれる。結は腕でカードすると爆炎が舞い上がる。

 皆人は「結ちゃん!」と叫ぶが爆炎の中から服がボロボロになっているがほぼ無傷の結が姿を見せる。

 

「な、何!?」

 

「結ちゃん大丈夫?」

 

「はい!結は大丈夫です!でも凄い威力ですね。ビックリしました」

 

「二〜、ならもう一発お見舞いしてやるルー」

 

 結の平然としている態度にイラついたのか、もう一度食らわせようと攻撃体勢に入ろうとした時、突如両腕に植物の蔦が巻き付いてきた。

 

「な、なんだルー!?」

 

 さらには両脚、身体にまで蔦は絡みついてきて身動きが取れなくなる。この能力に見覚えがある結は皆人の方へ振り返ると、草野が自身の能力で植物を急成長させていた。

 

「くーちゃん!?」

 

「くーも妻だも。だからくーも、むーちゃんのお手伝いするんだも!それに、むーちゃんが怪我したらお兄ちゃんも悲しむも」

 

 まだまだ幼い草野でもみんなの役に立ちたい、助けたいと言う思いは結達に負けないくらい大きい。そして何より皆人が悲しむ姿を見たくないし、自分(草野)大切な人()を失いたくないのである。

 

「…分かりました。ありがとうございます、くーちゃん」

 

 結は草野にお礼を言う。しかし本音を言えば1人で戦いたいが、草野の言葉を聞いて皆人を悲しませないためにこの一撃で終わらせるために力を貯める。一方のカンガルーレットは何とか振り解こうとするが強く巻き付かれているため時間が掛かって動けずにいた。

 

 その隙に結は駆けだす。その彼女の後方に熊の幻影が見える。

 

「熊ァァッ拳!!」

 

 力を込めた結の拳が当たろうとしたその瞬間…

 

 

 

 

 

 

ブチ、ブチ

 

 

 

 

 

 

…何かがカンガルーレットを縛っていた蔦を撃ち抜き拘束が取れる。しかしそのまま拳が撃ち込まれ後方へと飛び地面を転がる。少しヨロヨロになりながらも立ち上がると、胸のルーレットが回り出し今度は爆弾の絵が描かれたマスに止まる。

 

「バックダァァン!!」←(爆弾)

 

 その言葉の直後結のいた場所がいきなり爆発し吹き飛ばされる。うつ伏せになりながらも顔を上げると、カンガルーレットの前にスリングショットを持った小さな子供くらいの大きさの人ならざす者が現れる。

 

『フフ〜ン。ダメだよ、1人相手に複数で協力して戦うなんてさぁ』

 

 まるでマスクをしているかの様な篭った声が響き渡るが、後ろにいるカンガルーレットが不機嫌な様子で怒鳴り付ける。

 

「オイ!お前、余計なことをするなルー」

 

『何言ってるの?それにさっき助けなかったら君危なかったよ』

 

 その言葉にカンガルーレットは押し黙る。事実あのまま攻撃を食らっていたら、両手、両脚を蔦によって拘束されているため後方に飛ばされる勢いで拘束部分が千切れていたかもしれないのだ。そうなってしまえばい例え生きていても戦闘不能になってしまう(再生が出来なければ)。

 

『それに君にもしものことがあったらサーガイン様が悲しむからね』

 

「…礼は言わないルー」

 

 子供(?)は会話が終わると結の方へ向き直る。

 

『一応自己紹介しておくね。僕は混沌(カオス)No.70(センテタ)、【MA-5】。よろしくね』

 

 その見た目通り子供のように気楽と言うか気の抜けた話し方。しかしあの一瞬で複数の蔦を撃ち抜くほどの早技。警戒しない方が無理と言うもの。流石の結にも緊張が走る。

 

「貴方も戦うですか?」

 

『いんや、僕は戦わないよ。だってこれは元々は()(カンガルーレット)の戦いでしょ。だったら僕が間に入る訳にはいかないよ。だから───僕はそっちの(草野)の相手をすることによるよ』

 

 彼は草野を指名し戦うと宣言する。勿論そんなことを皆人や結が許すはずもない。

 

「そんなのダメだ。くーちゃんが戦うなんて」

 

「そうです。くーちゃんは関係ないはずです」

 

 草野はまだ幼く感情が高ぶると力を制御出来ないこともある。故に戦闘なんて出来るはずもない。しかしそんなこと彼(MA-3)には関係ないこと。

 

『でもさっきその子言ってたよね。「自分も戦う」って。でも戦いは1対1だってさっき向こうの女の人(月海)がそう言ってたからね。だから僕が相手するの。それにセキレイなら一度戦闘に参加したなら途中で抜けるのはダメでしょ?』

 

 確かに殆どのセキレイは1対1の戦いを好む者が多い。月海のその人であり、結もどちらかと言えばそっちである。しかし草野は戦いについて右も左も分からない素人。しかも命の保証が出来ないなら。結は急いで草野の元へ行こうとするが、後ろにいたカンガルーレットが一瞬にして目の前に現れ行く手を阻む。

 

「退いてください!今は貴方の相手をして場合じゃないんです!早くくーちゃんを助けないと」

 

「そうはいかないルー。お前は俺と戦ってる最中だルー。だったらこっちに集中しろルー!」

 

 右腕を振り上げ勢いよく振り下ろす。結は後方へと回避するが、拳を撃ち込まれた箇所は地面に減り込み大穴が開いていた。どうしても草野の元に行かせようとしない彼の行為に、戦い好きな結だが今回ばかりは唇を噛み締める。

 

 

 そんな事を他所にMA-3は少しずつ草野に近づいて行く。自分に近寄ってくる彼(?)に草野は恐怖で震え動けないでいると皆人が2人の間に入る。

 

『何、君?僕はそっちの子に用があるだけど。退いてくれない』

 

「ダメだ!君の言う通りくーちゃんは確かにセキレイだ。けどそれ以上に俺の大切な家族なんだ。だからこれ以上危ない目に合わせたくないんだ!!」

 

『君…煩いね』

 

 MA-3はスリングショットのゴムを引っ張ると照準を皆人に向けて離す。反射的に目を瞑って覚悟するが、一向に痛みが来ない。ゆっくりと目を開くと、無数の太い蔦が目の前にあった。

実は玉が放たれた瞬間、草野は自身の能力で近くの植物を急成長させ、葦牙である皆人を守ったのだ。

 

「く、くーちゃんありがとう」

 

「…」

 

「くーちゃん?」

 

 草野は顔を伏せていたが、暫くして顔を上げると意を決した表情で皆人の目を見て言う。

 

「お兄ちゃん、くーも戦うも!」

 

 それは草野を知る彼にとっては信じられない言葉であった。喧嘩が嫌いでいつも泣きそうになる草野が自分から戦うと宣言したのだ。

 

「ッそんなダメだよ」

 

「くーもセキレイだも。だから大丈夫だも!」

 

「で、でも…」

 

「それに…くーもお兄ちゃんを守りたいも!」

 

 草野は満面の笑顔で言う。いつも結や皆人達に守られているが、本来はセキレイである彼女が葦牙である皆人を守る立場である。それが実現出来た事による喜びで『葦牙である皆人を守りたい』と言う感情がより強くなったようである。

 

 皆人は止めようとするが、草野はそのままMA-3の方へと歩いて行き数メートル離れた地点で止まりお互いを見つめる。

 

『そこのお兄さんとの話は終わったの?』

 

「コクン(頷く)」

 

『それじゃ、始めようか』

 

 その言葉と共に草野が蔦で先手を打つ。MA-3は得意の俊敏な動きで回避後ろにへと回り込みスリングショットで無数の弾を連射、草野は蔦で守りつつ皆人を巻き込まないように戦いを続ける。

 

 

 

 

 

 

皆人は結達の戦いを少し離れた見ていた。

 

月海はサーガインの剣術に、結はカンガルーレットとの拳の撃ち合いに、草野はMA-3の素早い行動力に翻弄されいつの間にか防戦一方となっていた。

 

 彼は苦戦する3人の姿を見てある事を思い出していた。それは結が機能停止になった時の瞬間である。

 

 実は数ヵ月前、結は懲罰部隊の1人「紅翼」と戦い機能停止させられたことがあった。しかしその後何故かは分からないが結は機能再開し紅翼ともう1人の懲罰部隊「灰羽」を撃退した。彼女はそのことを覚えていないが、結が生きていたことによる喜びが大きかった故その事にはあまり気にしてはいなかった。

 

 しかも今回は得体の知れない連中が相手。あの時の、大切な人を失う恐怖が脳内に蘇る。

 

「佐橋」

 

 そこへ全身を黒い服を纏い、口も黒いマスクを付けた篝、基焔と風花が到着して皆人に駆け寄る。

 

「篝さん、風花さん来てくれたんですね」

 

「当然よ。だってェ、愛する皆人君の危機ですもの♪」

 

「それより佐橋、君は無事か?」

 

「俺は大丈夫です。でも結ちゃん達が…」

 

 皆人の向いた方へ視線を向けると、そこには戦闘で息が上がっている3人の姿だった。しかも相手の方は皆殆ど疲れている様子はない、見るからに戦況は明らかに不利である。

 

「…分かった。結君達の方は僕達が何とかする。佐橋、君はこの場を動くな」

 

「で、でも篝さん…」

 

「大丈夫よ、皆人君。私達があんな連中チョチョイのチョイってやっつけてあげる♪それにライバルがいなくなると張り合いなくてつまらないしね」

 

「風花さん…」

 

 まだ納得が出来ない皆人に焔が目線を同じ高さまで顔を下ろし近づく。

 

「佐橋、君が僕達を心配してくれるのは嬉しい。でもだからこそ僕達を信じてほしんだ」

 

「篝さん」

 

「お願いだよ葦牙(マスター)

 

「…分かりました。でも必ずみんなと一緒に戻ってきてくださいね」

 

「…了解、行くぞ風花」

 

「エェ」

 

 風花と焔は2人の援護に向かおうとしたその時…

 

 

 

『待て』

 

 

 

 …2人の前に2つの影が現れ行く手を阻んだ。1人は2本角に右腕にドリルを装着し、もう1人は頭部に鶏冠があり、両者鋭い赤い眼、背中に赤いマントを付けていた。そして何よりその2人の姿は背丈は高いがMA-3に酷似していた。

 

『お前達セキレイの戦い方は1対1なんだろう。だったら邪魔をするな』

 

『だがそれでも通りたければ俺達を倒してからにしろ』

 

「どうやら簡単には通してくれそうにないようだね」

 

「そうみたいね」

 

 焔と風花は新手の2人と戦闘は避けられないことを確信しセキレイでの自己紹介を始める。

 

 

「セキレイNo.03、風花」

 

「セキレイNo.06、焔」

 

 

混沌(カオス)No.69(セセンタ イ ヌエべ)、【MA-3】』

 

『同じく混沌(カオス)No.72(セテンタ イ ドス)、【MA-9】』

 

 

 焔は鶏冠が付いてるMA-9と、風花は右手にドリルを装着したMA-3とそれぞれ距離をとり対峙する事になった。

 

 

 

 

 

 先ず風花の方は、得意の風を使い突風でMA-3を舞上げ身動きを封じようとする。しかし上空で体勢を立て直し、ドリルを回転させながら自身も回転して突風の中を高速で突き進む。迫りくる敵に対し風花は特に焦る素振りもなく飛んで回避。MA-3はそのまま地面にへと直撃し大穴を開ける。その中から高速で飛び出し空中で静止する。風花はそのまま追撃を掛ける。

 

 

「花旋風!」

 

 その掌からもの凄い威力の竜巻が大量の花弁を舞い上げながら放つ。しかしMA-3は「フン」と鼻(?)で笑うと右腕のドリルが分離し飛ぶ。ドリルはそのまま竜巻の中心部付近まで行くと逆方向に回転し始める。すると竜巻の威力は次第に弱まっていき遂には消滅してしまった。

 

『竜巻は逆方向の回転が加わることで無力化出来る。風使いなら分かりだろう』

 

 ドリルは再び右腕に装着されると同時に、MA-3はドリルを回転させながら一気に距離を詰める。風花は余裕の笑いを浮かべながら右腕に風を纏わせながら振るいドリルを受け止める。これぞ風を刃にして繰り出す技「風ノ太刀」。

 

『ほぉ、お前遠距離攻撃だと思っていたが接近戦も出来るのか』

 

「乙女の嗜みってやつよ。それに恋する乙女に不可能はないのよ」

 

 跳ね除け互いに一旦距離を取る。

 

『フン、思ったよりやるな女。少しは楽しめそうだ』

 

「そう、それは良かったわね。でも私にそんな口を聞いていいのは【No.01】とゲームマスター、そして私の葦牙君だけよ」

 

 MA-3の上からの態度にムッとしたようで少し目を吊り上げ強気の口調になる。突風が荒れる中2人の戦いは次第にエスカレートしていった。

 

 

 

 

 一方焔はMA-9の匠の素早さに翻弄されていた。何処から来るか分からない相手の行動に戦いの経験が多い焔は焦らずその場でジッとしている。すると後方から紫色のブーメランが飛んでくる。それを察知した焔は飛び上がり回避するが、その直後別の方向から赤い光の弾が飛んでくるのが見え咄嗟に炎の弾を放ち相殺する。

 

 地面に着地すると先程飛んできたブーメランがMA-9の頭部にへと装着される。先程の鶏冠と思っていたのはブーメランであったようだ。

 

 ブーメランを掴みそのまま振り上げ斬り付けようとすると、多量の炎が出現し焔を包み込む。それはまるで炎の壁が焔を守っているかのよう。MA-9はあまりの熱量に後方へと回避しブーメランを頭部に装着する。視界が晴れると焔は掌に溜めた炎を放つ。するとMA-9も掌にエレルギーの塊を溜め放つ。互いの技が激突し爆煙が上がる。

 

『やるな、流石【シングルナンバー】の中でもトップクラスと言ったところか』

 

 

 【シングルナンバー】────────その名の通り数字が一桁だけのセキレイの事。その戦闘力は他の2桁以降のセキレイよりも上、故に殆どのセキレイからは警戒されている。その中でも焔はトップクラス、しかも羽化前では最強とまで言われていた強者である。

 

 

『ところでお前達のその【No.】はどう言う意味だ?強さか?それとも生まれた順か?』

 

 MA-9は自分達と同じように数字を持つセキレイの番号について興味があるようで質問をする。

 

「…僕も詳しくは知らない。けど、少なくとも強さの順ではないのは確かだよ」

 

 彼等、彼女等は発見された時、1体は成体で、8体が胎児で、残りの99体は受精卵の状態であった。その上位9体が調整を受けシングルナンバーとして生を受けた。実際、現懲罰部隊の3人の内2人の数字は3桁である。

【No.】の意味が『強さ』を表しているのなら、その2人が懲罰部隊に選抜される訳はない。それにNo.02の松は優れた頭脳を持っている代わりに戦闘力は皆無。故に強さの順とは考えにくい。

 

「ところで僕からも君に一つ質問したい。君達も僕達のように【No.】があるみたいだね。君はさっき自分を【セテンタ イ ドス】って言った。それはスペイン語で【72】って意味だ。なら数字の意味は一体なんなんだい?」

 

『…お前達と似たようなものだ。俺達のこの数字は俺が所属している軍、そこに入った順番を意味している──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────だがそれは11()()の連中の話だかな』

 

「ッ!?どう言う意味だ」

 

『冥途の土産に教えてやる。俺達は先ず軍に入った順に11以降の番号が与えられる。そして幹部クラスの中から特に優れた戦闘力を持つ奴らが選ばれ強い者順に10以下の番号が与えられる。そしてその方々は【死刃(エスパーダ)】と呼ばれ自らの身体にその与えられた数字を刻み、俺達11以降の連中を支配する権限が与えられるのだ。だがハッキリ言ってやる。その死刃と俺達の力の差は────────別次元の領域だ』

 

 その言葉に焔は驚愕した。今目の前にいる者とは別次元の領域の強さ。しかもそれが10人*1もいるのだから。

 

「君達を支配する権利を持つと言うことはつまりッ…」

 

『そうだ、今ここにその【死刃】の1人来ている。彼方に居られるサーガイン様がそうだ』

 

 

 

 

 その言葉はその場にいた全員に聞こえていた。勿論サーガインと月海にもしっかりと。

 

「フン、奴め要らんことをペラペラと」

 

「お主が、【死刃】の1人じゃと」

 

 月海は戦っていたサーガインがその最強の1人だと知ったことに対する驚きがあったが、その分喜びもあった。最強を目指す者としてその一角と戦っていたのだから、これ程の喜びはないだろう。

 

「その通りだ。俺が…」

 

 

 

 

カチャ、カチャ

 

 

 

 

『死刃の1人だ!』

 

 

 

 

 しかし彼女は目の前の光景に驚きを隠せなかった。何故ならサーガインの頭部が突如開き、中から蟻のような小さな生物が無数のコードに繋がれた椅子に座っている。そしてその腹の胴体に【9】の刻印が記されていた。

 

 信じられないかもしれないがこの蟻のような小さな生物こそサーガインの本体である。等身大の身体は自身が作り上げた傀儡(クグツ)───ロボットなのである。

 

 そしてまた「カチャ、カチャ」と音を立てながら元に戻る。

 

 

 

「改めて名乗っておこう。俺は第【9】の数字を持つ死刃───《第9死刃(ヌベーノ・エスパーダ)》、【サーガイン】!同じ9の数字を持つ者同士、決着を着けるぞ!」

 

 

 

 サーガインは自己紹介を終わらせると再び刀を構え戦闘を開始しようとした時突然動きを止めた。

 

「何だ?俺は今戦闘の真っ最中だぞ……何!?巫山戯るな!俺は今戦闘中だと……デストロイヤー様が!?…分かった」

 

 何やら誰かと話していたようで会話が終わるとサーガインは持っていた刀を両肩に納めた。その行動に月海は戸惑う。

 

「お主、何故刀を納める」

 

「俺達の主人である方からの命令で戻るように言われた。だから惜しいが戦いはここまでだ」

 

「巫山戯でない!戦闘の最中に逃げるなど我は認めぬ!【水龍】!」

 

 折角の戦いを中断することを決して納得しない彼女は咄嗟に水で龍を作り上げ放った。

 しかしその直後、突如上空に裂け目が現れそこから光が漏れ出すとサーガインを包み込む。水龍はその光の壁に阻まれ消滅する。さらに戦っていた従属官や待機していた従属官達全員同じように光に包まれる。

 

「チッ、ここまでかルー」

 

『あぁ、折角盛り上がってきたところだったのに。残念』

 

『だが命令とあれば仕方ない』

 

『俺達はその命令に従うまでだ』

 

 中には戦闘の途中で切り辞めることになり不服な者もいるが、上からの命令と言うことで納得しそのまま吸い込まれるように登っていく。

 

「小娘、貴様との戦い実に良かったぞ。ここまで心躍る戦いは久々だった。だが貴様は自分の力を過信しているところがある。そこを修正すれば貴様はもっと上に行けるだろう。次に会う時までに強くなっていることを願っているぞ」

 

 その言葉を最後にサーガインと従属官達は裂け目に吸い込まれると、穴は塞がり消滅した。

 

 

 

 

 

 戦いが終わったことを見計らうと皆人は結達に近寄る。皆が無事で良かったと笑顔を浮かべるが、彼女達は表情は決して明るいものではなかった。未知なる敵相手に結と月海の衣服はボロボロで身体を無数の怪我があった。途中参加の草野、風花、焔はそこまで外傷はないがもしあのまま戦い続けたらどうなっていたことか。

 今回は上からの命令で撤退したとは言え、ほぼ情けを掛けられたようなもの。それはプライドが高い月海に取っては屈辱でしかないだろう。皆人が慰めようと声をかけようとした時、月海はいきなり顔を上げ鋭い眼で空を見上げ叫ぶ。

 

 

 

「サーガインとやら、今回はお主に勝ちを譲ってやる!じゃが次に会った時は我が勝つ!それまで首を洗って待っておるがいい!!ナーハッハッハッハッハッハ」

 

 

 

 高々に気が狂ったかのように笑い叫ぶ。その光景を見て皆人は「良かった!何時もの月海だ」と安心する。

 

 この戦いを機に結達はセキレイ計画に終止符を打つため、そしていつか再び現れるかもしれない未知なる敵に備えて自分達を鍛え直すのであった。

 

*1
だと思っている




サーガインの階級は9でした。月海と戦わせたのは同じ数字を持っていたからです。

最後の方で気付いたと思いますが今回は侵略はしたけど制圧はしてないので侵略しないのっと思った方々多いと思います。
「セキレイ」は私がお気に入りの作品の上に最後がハッピーエンドで終わったので、それを壊したくなくその結果こうなりました。
因みにセキレイの番号の意味は原作でも明らかになっていないので作者の予想です。

最後にサーガインが呼び戻された理由は後に投稿予定の番外編で明かされます。番外編は全ての死刃の話が終わった後に投降予定です。そちらもお楽しみに。
ここで次の話のアンケートを取ります。ご協力ください。

感想などありましたらどうぞ。

次の話はどちらの世界が先にみたいですか?

  • インフィニット・ストラトス
  • 戦記絶唱シンフォギア

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。