BLEACHの世界に最強になって転生 番外編   作:アニメ大好き

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どうもアニメ大好きです。

前回投稿した時に全く感想やお気に入りがなかったので落ち込んでしまいましたが、まだ前編なので大丈夫と気持ちを切り替えて中編をやり遂げました。
今回の話では今話題になっているあのアニメ作品にちょっとだけ登場したキャラが従属官として登場します。そして今回登場の死刃の階級も明かされます。

それではどうぞ。


12話 死者を従えし者 中編

突如現れた新種と思われるノイズとの戦闘中謎の人物が現れマリアと交戦。しかし戦いの最中その人物がフードを取るとその顔は自身の妹のセレナと酷似していた。

最愛の妹が生きていたことに喜びを覚えたが、次の瞬間「死んで」と口ずさみ自身を本気で殺そうとする。それを翼が防ぎ呆気に囚われてるマリアに「目の前のセレナは偽物だ」と呼びかける。

しかしそんな彼女の前にも戦死した嘗ての友である天羽奏が黒いガングニールを纏い現れたのであった。

 

 

 

「奏…どうして…だって貴方は「待て翼!」エッ?」

 

「絶対にアタシを偽者だなんて考えるな!そう思った瞬間にお前は「余計なことを言わないで頂戴」ッ!」

 

 自分達の頭上から声が聞こえ、その声を聞いた奏は身体がビクッと震えるとまるで金縛りにあったように硬直してしまう。見上げるとオカッパ頭の少女が蜷局を巻いた黒い靄に包まれながら浮遊していた。

 

「余計なことを言ういけない子達にはちょっとお仕置きをしなくちゃ」

 

少女は指をパチンっと鳴らすと奏の身体に黒い電流が流れ出し苦しみだす。

 

「奏!!」

 

「奏さん!!」

 

「全く、誰のお陰で生き返ったと思ってるの?自分達の身の程を弁えなさい」

 

少女は浮遊しながらまるで塵を見るかのように奏を見下していた。

 

「アァ…クッ」

 

「奏!!貴様、今すぐ辞めろ!!」

 

「あら?私は恩を仇で返すような礼儀知らずな子に躾をしているだけよ。躾直すのってイケないことなのかしら?」

 

「躾?躾だと?巫山戯るな!それじゃあまるで奴隷じゃないか!奏はお前の奴隷なんかじゃない!」

 

「ハァ…バカには何を言っても無駄のようね。…一応自己紹介はしておくわ。私はメラスキュラ。デストロイヤー軍所属の魔神族で死刃(エスパーダ)の1人。よろしくね、人間のお嬢ちゃん達」

 

少女────メラスキュラは笑顔で自己紹介をする。だがその目は笑っておらず、瞳からはとてつもない悪意を感じた。

 

「でも変ね。セレナ(そこの子)と違って親友と出会ったのに、何故殺そうとしないのかしら?」

 

  その言葉に奏とセレナ意外の装者達はメラスキュラに視線を向ける。まるでセレナがマリアを殺そうとした理由を知っているかのような口振りに。

 

「どう言う事だ?」

 

「私の【怨反魂の法(おんはんごんのほう)】は死者の未練を増幅させ、その負の感情を糧として蘇らせる術なの。今暴れてる人間やあのノイズ(生物達)も含めて、奏とセレナ(その子達)も何かしらの怒りによって今この世に存在しているのよ。そして蘇った亡者達は自身の怒りの元を取り除こうとするの」

 

「…じゃあセレナが私を殺そうとしたのは…」

 

「その通り。セレナ(その子)にとっての怒りの元はマリア(アンタ)だったと言うことよ。だから(その子)も同じで友人である(アンタ)に怒りを抱えているのだと思っていたんだけど何故かしら?」

 

 セレナが姉マリアを殺そうとしたのは、彼女に対して何らかの怒りがあると言う驚きの真実が明かされた。

 実の姉に何らかの【怒り】がある、だからこそ奏も親友であった翼に何かしらの【怒り】を抱えているものだとばかり思っていた。しかし対面してもセレナのように襲い掛かかる素振りさえ見せないからメラスキュラは不思議でしょうがなかった。すると奏はその疑問について苦しみながらも口元を釣り上げ「ハハハ」と笑い出した。

 

「…何が可笑しいのかしら?」

 

「翼を殺そうとしない?そんなの当たり前だ。アタシが怒っているのは()()だからさ」

 

「…どう言うことかしら?」

 

「アタシはあの日、そこの立花響(嬢ちゃん)を殺し掛けたんだ。そして絶唱を歌って翼にも涙を流させちまった。アタシはそんな弱い自分に、翼に涙を流させた自分に腹が立った。つまりアタシが怒りを抱えているのは────アタシ自身だ!」

 

 奏は自身が死んだあの日、会場にいた多くの人を救えなかったこと、立花響を危険な目に合わせ殺しかけたこと、親友である翼に涙を流させたこと、死んでも尚、後悔し続けていた。故に彼女の【怒り】の源は弱い自分自身であった。

 

「…弱い自分に対する怒りね。面白いわね貴方。このまま消してしまおうと思ったけど辞めるわ。代わりにその大切な友人を殺してあげる!」

 

メラスキュラは纏わりついていた靄の上の部分を拳の形に変化させ奏諸共翼に殴り掛かる。翼は動けない奏を抱きかかえ自身の身体を盾にする。すると間一髪響が間に入り迫り来る拳に自身の拳を打ち込み弾き返す。

 

「翼さんと奏さんには指一本触れさせない!」

 

「心配しなくてもいいのよ。貴方も一緒に殺してあげるから」

 

「そのままにお前がアタシ等にヤラれちまうかもな」

 

響の後方からクリスが飛び上がり数本の矢を放つ。しかし靄がまるで蛇のように巻き付き全ての絡め取ってしまった。矢はそのまま投げ捨てられ消滅してしまう。

 

「こんな玩具なんかで私を倒せるなんて思ってるのかしら?」

 

「クッ…」

 

思っていたより厄介そうな相手を前にして2人は苦しい顔になる。

 

 

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「…セレナ…私に何か怒りがあるのは…本当なの…」

 

「エェ、マリア姉さん。私が死んだあの日姉さんは私の為に泣いてくれた、悲しんでくれました」

 

その日から数週間経っても自分の死に泣いてくれた。悲しませてしまったことへの罪悪感もあったけど、自分がそれだけ大切な存在だったと思うと嬉しかった。

 

「姉さんが私のことを思ってくれていた、それだけで私は全てが報われる感じがしました。でも立花響、風鳴翼、雪音クリス(あの3人)と出会ってからマリア姉さんは変わってしまった」

 

マリアが調、切歌と共にS.O.N.Gに所属して響達と会話をするようになってからマリアは少しずつ明るくなっていった。でもそれは彼女に心を許せる仲間が増えたと言うこと。それはとても喜ばしいことだと心から喜んだ。()()()()()…。

 

「マリア姉さんは彼女達と触れ合う内に、段々私のことを思わなくなっていった。仲の良い同僚が出来たら私のことは綺麗さっぱり忘れてしまった。そして気づいたの。マリア姉さんは本当は私のことを何とも思っていなかったんだと…」

 

「だから私は姉さんを許さない…私の気持ちを弄んだ姉さんを…ゼッタイニユルサナイ…」

 

セレナは怒りの感情に支配され完全に平常心を失っていた。

 

「待ってセレナ!私は貴方のことを忘れたことなんて一度もないわ!それは全部メラスキュラ(アイツ)が見せた幻よ!だから辞m「煩い!」ッ!」

 

「姉さんには分からないのよ、このアタシの気持ちなんて!」

 

しかしセレナはマリアの言葉に耳も傾けず、無数の短剣を出現させ一斉に放つ。マリアは身体能力で全て回避する。

 

『マリア!』

 

切歌と調は援護にしようと駆け寄ろうとするが、マリアは掌を2人にへと向け静止させる。

 

「切歌、調、私は大丈夫よ。貴方は響、クリス(2人)の援護をお願い!」

 

「でも…」

 

「お願い!ここは私一人にやらせてほしいの!」

 

「…分かった。行こう切ちゃん」

 

「エッ!?でも調…」

 

「心配要らないよ切歌ちゃん。だってマリアだもん」

 

「…そうデスね、マリアデスもん。絶対大丈夫に決まっているのデス」

 

「うん。マリア私先に行ってるから」

 

「早く終わらせて手伝いに来るのデス!」

 

「分かったわ。貴方達も無茶しないでね」

 

切歌と調はマリアを信じ、3人の元へと向かう。

 

「姉さん、私よりあの子達の方を心配するなんて…」

 

そのやりとりを見ていたセレナは面白くなったようでさらに怒りが込み上げていた。

 

「セレナ、貴方をそこまで追い詰めてしまったのが私なら、私自身が貴方を止めなきゃいけない責任がある!」

 

短剣を仕舞い、収納していた長身のブレードを取り出しセレナにへと向ける。対するセレナも黒いブレードを構える。

 

「行くわよ、セレナ!」

 

「マリア姉さん、覚悟!」

 

二人同時に駆け出し互いの武器がぶつかり合った。

 

 

──────────────────────────────

 

 

「ウフフフ、どうしたのかしら?さっきまで威勢はどうしたの?」

 

一方此方では戦闘中の響、クリスの2人はメラスキュラに翻弄されていた。響の拳は、拳状に変化した靄と力比べで吹き飛ばされ、クリスの銃弾や矢は、メラスキュラ(本体)に届く前に全て弾かれてしまいダメージを与えることが出来ていなかった。

 

「あれだけ粋がっていたのにこの程度なの?」

 

「クソ、舐めやがって…」

 

「響先輩ィ、クリス先輩ィ〜!」

 

そこへ切歌と調が合流する。

 

「援護に来たデース!」

 

「加勢します」

 

「2人とも…ありがとう」

 

「よォし、こっから本番だ!」

 

2人が加勢に入ったことにより4対1、人数の差で圧倒的に優位に立ったことで勢いづく装者達。しかし突如上空から小さな人影が飛び出しメラスキュラの近くに降り立つ。

 

それは紅い和風の着物を着、草鞋を履いた背の低い少女。しかし顔はアルビノの如く色白で、結膜は血のように真っ赤、そして極め付けは額の左右に生えている小さな2本の角。そして口周りには紅い液体がベットリと付着していた。

 

 

「あら【零余子(むかご)】。もう食事はいいの?」

 

「は、はいメラスキュラ様。もうお腹一杯です」

 

「そう。でも貴方はもっともっと強くなれるはずだから、沢山食べて強くなりなさい。食べ物ならそこに幾らでも転がっているんだから」

 

メラスキュラは零余子と呼んだ少女の頬を素手でなぞる。触れられた本人は「ビクッビク」と震えだす。怯えるその表情にメラスキュラはうっとりとしていた。

 

「何だソイツは」

 

「この子は零余子、私の従属官よ」

 

「従属官?」

 

「私達死刃は支配権としてNo.11以下の数字を持つ者達の中から自身の直属の部下を選ぶ事が出来るの、それが従属官よ。1人しか選ばない死刃もいるし、逆に沢山選ぶ死刃もいるの。ただ私の場合は復活させた連中も入るから一応ノイズ(アイツ等)もそうなんだけど、正式な従属官は零余子(この子)だけよ。まぁでも私の支配下にあるのは違わないけど。そしてこの子は鬼なのよ」

 

「お、鬼!?」

 

「鬼って、あの物語に出てくるあの鬼デスか!?」

 

「まさか実在していたの!?」

 

「マジかよ!」

 

日本の昔話「桃太郎」や「一寸法師」とかに出てくることで有名である【鬼】が実際していたことに驚く4人。だがメラスキュラの口から、さらに驚愕なことが伝えられる。

 

「そう。そしてこの子は人間を喰らうのよ」

 

何と彼女は人を喰らうとのこと。ノイズとは方向性が違うが人間にとっては危険な存在であると言うことだ。そして先程2人の会話の中で気になる部分があった。『食事は終わったの』────食事、つまり何かを食べていた、そして零余子(目の前にいる鬼)は人を喰らう鬼、ここまでの考察で彼女の口元にベットリ付いている紅い液体の正体が予想される。あれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の血であると言うこと

 

 

 

「じゃあ零余子、食後の運動がてらあそこの切歌、調(おチビちゃん2人)の相手をして頂戴」

 

「わ、分かりました、メラスキュラ様!」

 

ビクビク震えながらも主人の命により口元の液体を拭き取りると、調と切歌の方へ向き直る。

 

「メラスキュラ様の命令でアンタ達チビ共の相手をしてあげる」

 

「チビって、何言ってるデスか!?貴方も私達とそんな大差はないのデス!」

 

「寧ろ、貴方の方が幼く見える」

 

「煩い!私はこう見えても30年以上生きているのよ!」

 

「幼い」と馬鹿にされたことで頭にきた零余子は、地面を蹴るとその見た目から信じられない速度で2人にへと突撃する。鬼なだけあって身体能力も並外れている。

 

2人は飛び上がり後方へ回避すると、切歌は大鎌を振るい斬撃を、調は装備していたヨーヨーを投げ飛ばす。迫り来る攻撃に取り乱す落ち着いた様子で零余子はある言葉を発した。

 

「血鬼術【部位倍化──腕】!」

 

すると突如両腕が、2メートルくらいにまで巨大化し、斬撃は力任せで振り払い、ヨーヨーは片手で受け止める。そしてもう片方の腕で紐を力任せで引っ張り振り回し始める。

このヨーヨーは調のギアと繋がっているので、遠心力によって調も同様に振り回される。次第に回転力は上がっていき、零余子は手を離す。反動で調もそのままヨーヨー同様吹き飛び近くの建物へと激突する。

 

「こぉんのぉぉ!」

 

切歌は鎌を振り上げ斬りかかるが、真剣白刃取りで受け止めてられ調と同じ方向へ投げ飛ばされる。

 

 

 

その光景を見ていたメラスキュラは微笑み、響とクリスは自慢の後輩達が苦戦している姿に驚く。

 

「…アイツ、見た目の割に強ェぞ」

 

「それはそうよ。死刃である私の従属官だもの。強いに決まっているじゃない」

 

「てかそもそもさっきから言ってる【死刃】って何なんだ?」

 

「…そう言えばまだ言ってなかったわね。良いわ、教えてあげる。死刃っていうのは私達の主人であるデストロイヤー様によって選ばれた最強の存在。そして強い順に番号が与えられるの」

 

「…じゃあ、貴方もその内の1人ってこと?」

 

「その通りよ。因みに…」

 

メラスキュラは左腕を上げるとその脇の下に数字が刻まれていた。その数字は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私は第【8】の数字を持つ死刃───《第8死刃(オクターバ・エスパーダ)》、【メラスキュラ】。改めてよろしくね、人間のお嬢ちゃん達」

 

 

 

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 一方マリアとセレナの戦いは激しい攻防戦が行われ、ややマリアの方が追い詰められていた。

 

 

「マリア姉さん、随分息が上がってますよ。少し平和ボケして体力が落ちてるじゃないですか?何にしてもマリア姉さんに私が止めることは出来ませんよ」

 

「ハァ、ハァ。そうかもしれないわね。だけど貴方じゃ私を倒すことは出来ない」

 

「…それはどう言う意味ですか?」

 

「セレナ貴方───私を倒すことに躊躇っているでしょ?」

 

 その言葉にセレナの動きが止まる。

 

「今までの行動を見ていて分かったの。攻撃が私に当たる直前、貴方無意識に力をセーブしている。つまり私を倒すことに躊躇いがあるってこと」

 

「そ、そんなはずない!絶対にありません!」

 

「いいえ、貴方は迷っている。私を倒すことに。私に分かる。だって貴方は世界の何処を探してもいない、たった1人の私の大切な妹だもの」

 

「そんなこと……アルワケナァァイ!!」

 

 逆上したセレナは短剣を握りしめ、マリアに一目散に突っ込む。対するマリアもブレードを握りしめ構える。2人の間が数メートルになった時、突如マリアは構えを解き両手を広げ無抵抗の姿勢にへとなる。その状況にセレナは一瞬目を見開くが、すぐに立ち直り止まることなくマリアの首目掛けて短剣を振りかざし────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────マリアの首の一歩手前で止まった。

 

「セレナ…貴方やっぱり」

 

「分かっていたんです。姉さんが私を忘れることなんて絶対にないって。でもメラスキュラ(あの人)の言う通り、私は心の奥で私がいないのに楽しそうに笑うマリア姉さんが憎かった。殺したいと思いました。だけどやっぱり、私には出来ない。マリア姉さんを殺すことなんて、私に出来るはずありません。だってマリア姉さんは世界に1人しかいない…私のお姉ちゃんなんですから」

 

 顔を伏せ自身の奥底にあった本当の気持ちを暴露する。そしてその瞳からは涙が溢れ出し、一滴、また一滴と地面に落ちていく。

そんな泣きじゃくる彼女をマリアは両腕で優しく包み込んだ。

 

「セレナ。貴方が私の知る優しい子のままで良かった」

 

「マリア姉さんッ……ゴメンなさい、ゴメンなさい、マリア姉さん!」

 

 泣きながら謝り続けるセレナをマリアは優しく抱きしめる。あの事件の日以降2度と触れ合うことはないと思っていたが、今こうして十数年ぶりに2人は触れ合うことが出来た。例えそれが悪意によってのことであったとしても、今の2人には感謝の気持ちで一杯である。

 

「セレナ、どんなことが起きようとも私は貴方のことを忘れないわ。だから貴方もこれからも私のこと忘れないでね」

 

「はい。勿論です、マリア姉さん…ありがとう」

 

 最後に御礼を言うと透けるように消えていき消滅し、残った人魂も次第に小さくなっていき消滅した。彼女のこの世に対する未練は無くなったと言うことだ。

マリアは妹の想いを無駄にしないために、仲間達の元へと向かうのであった。

 

 

──────────────────────────────────

 

 調と切歌、零余子の戦いでは巨大化した腕を力任せで振り回す零余子に対し、調と切歌はお互い連携の取れたプレイで腕や身体を斬りつける。しかし斬られた箇所が瞬く間に修復され元に戻る。

 

 これこそが鬼の能力の一つ再生力。幾ら身体を斬り刻まれても、バラバラにされようとも()()()()を切断されない限り何度でも復活し続ける。

 次第に2人(調、切歌)はスタミナが切れ始め息が上がっていく。

 

「疲れた?でもアタシの力はまだこんなものじゃないわ」

 

今度は近くにあった少し大きめの瓦礫を掴む。

 

「血鬼術【物質肥大化】!」

 

 すると掴んでいた瓦礫が巨大化していき、バス一台に相当する程の大きさにまでなり勢いよく投げ付け砂煙が舞い上がる。

 

 視界が晴れると2人がいた場所は瓦礫の山と化した。数秒時間が流れるが出てくる気配がない、あのまま押し潰されてしまったのか?そう思っていると背後から1つの人影が。

 振り向くと調の姿があり、その右脚の先には小さな丸ノコが付いていた。するとその丸ノコが巨大化し回転しながら自身にへと急降下してきた。零余子は巨大な腕を使って真剣白刃取りで受け止め、回転を止めようと力を込める。だが忘れていないだろうか?自分が戦っているのは2()()である。

 

「切ちゃん、今だよ!」

 

「OKデース!!」

 

 調の合図と共に彼女の後方から姿を現した切歌は大鎌を手裏剣のように回転させながら投げ飛ばし、零余子の左腕の根元から先を斬り落とした。同時に拘束から解放かれた丸ノコはそのまま零余子の身体を真っ二つに斬り裂いた。

 零余子は口から血を吐きそのまま地面に倒れ伏せた。身体はなんとか再生しようとするが、ダメージが大きい所為か先程よりも治りが遅くなっていた。

 

「やっぱり。幾ら再生が出来ても、これだけの怪我なら治るには少し時間がかかるはず」

 

「流石調デス」

 

 そして2人は自身の武器を零余子にへと向ける。

 

「これで終わり」

 

「観念するデス」

 

「ク、クソッ…」

 

 もうダメだっと思った瞬間、突如街の中心部、響達がいた場所近くに巨大な黒いドーム状の球体が出現する。

 

「あれは一体…」

 

「何デースか!?」

 

 彼女達の視線が自分から逸れた隙に、全ての意識を再生力にへと回し身体を修復させる。2人が視線を戻した時には、身体が縫い合わさり脚のみ再生が完了し、超人的な脚力で飛び上がり逃げて去った。

 

「あっ!コォーラ、逃げる!戻ってくるのデース」

 

「切ちゃん、後にしよ。それよりも響さん達が心配だよ。行こう」

 

「ぬぅ〜…分かったデス!」

 

 敵前逃亡したことに地べたを踏む切歌だが、調の説得で納得がいかないながらも承諾しドームの方へと向かう。

 

 

──────────────────────────────────

 

 少し時間は遡りドーム状の球体が出現する少し前、メラスキュラと対峙してた響とクリスは彼女の靄に四肢が巻き付かれ身動きが取れない状態であった。

 

「フフフ。いくら足掻いたところで所詮は人間、私に勝てるなんて思っているのが大きな間違いなのよ」

 

「クソッ!」

 

「それにしてもここまで運動したのは久しぶりだから少しお腹が減ってきたわ。どうせ殺されるなら私のお腹の足しになって死んでもらうかしら。【暗澹の繭(あんたんのまゆ)】!」

 

 メラスキュラが両手を合わせると背後から黒い霧、いや闇とも言えるべき物が飛び出し瞬く間に3人を覆い尽くす。そして周りは光なんてない、一面真っ暗闇の世界となった。

 

「何だ、此処は?」

 

『此処は私の能力で創り出した闇の中。この中からは誰も出られないし、入ることも出来ない。つまり貴方達を助ける者はいないわ』

 

「クッ、何とかして脱出しないとッ」

 

『足掻いても無駄よ、大人しく私の餌となりなさい』

 

 2人の背中に手が触れらると突如苦しみだし、それぞれの口から人魂が飛び出しメラスキュラの前にまで移動する。

 

「じゃあ頂こうかしら」

 

 不気味に笑うと人間とは思えない程の長い舌を出し、2つの人魂に伸びる。舌が絡みつこうとした時、空間が斬り裂かれ光が差し込む。

 自身の技が斬られたことに驚くメラスキュラが光の射した方に視線を向けると、繭を斬り裂く風鳴翼の姿があった。

 




と言うわけで「鬼滅の刃」のパワハラ会議に登場した下弦の鬼の1人【零余子】を登場させました。※十二鬼月ではないので眼球に数字はありません。

零余子の血鬼術はオリジナルです。
設定で下弦の鬼の名前の由来は能力からきているとのことで、調べてみたら零余子と言うのは「わき芽が肥大化したもの」とのことだったのでそれに因んだ能力にしました。

そしてメラスキュラは8番です。原作でもメラスキュラは「魔力」は高いけど、【武力】が低いので純粋な力関係ではこの階級が妥当だと思いまして8にしました。
次回は後編、どのような結末になるのか楽しみにしていてください。

感想などあればどうぞ。

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