BLEACHの世界に最強になって転生 番外編   作:アニメ大好き

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明けましておめでとうございますございます、どうもアニメ大好きです。
今年一発目の投稿はBLEACHの番外編です。千年血戦編のアニメが今年の10月に放送が決定したので、今年はBLEACHブームになるかもしれませんね。

今回はクロスアンジュの世界の後編です。まず最初に前回の後書きに書いたミスルギ王国での騒動の時のタスクの状況、そして時空の裂け目に突入したピエモンとエンブリヲの戦闘がメインの回です。
果たして最後がどんな結末を迎えるのか?予想したが楽しんでくれたら幸いです。

それではどうぞ。


17話 地獄の道化師による大宴会 後編

ミスルギ王国でアンジュの刑が執行されそうになっていた頃、1人の青年【タスク】がアンジュを助けようとエアバイクを飛ばしミスルギ王国へと向かっていた。しかしその途中現れた存在によって行手を阻まれていた。

それは左手の指が鋭く、身体に鎖を巻き、黒いボンテージのような服を纏った吊り目の女性。それはピエモンの従属官の1人【レディーデビモン】であった。

 

『そんなに急いで何処へに行くのかしら、坊や』

 

「悪いけど構っている暇はないんだ。そこを退いてもらえるかい」

 

『アラ、つれないわね。でもここを通す訳にはいかないの。どうしても通りたいのなら、私を倒してからにしなさい!』

 

左腕を1本槍【ダークネススピア】に変換させ襲いかかって来た。タスクは咄嗟に躱し直ぐにバランスを整える。

 

「僕は君と争っている暇はなんだ!早くそこを退いてくれ!」

 

『坊やにその気がなくても、こっちにはあるのよ』

 

レディーデビモンは聞く耳持たずスピアを突き付け襲い掛かる。

タスクは上手いこと操縦して回避し続ける。しかしこのまま避けてばかりいては埒があかない。一旦距離を取ると、眼を色を変え戦闘態勢をとる。

 

『やっと本気になったようね』

 

「一応ね。でも本当に構っている暇がないから、直ぐに終わらせる!」

 

タスクはバイクの先端部分に付いているバルカン砲を連射して攻撃を開始する。レディーデビモンは素早い動きで右往左往して回避し翻弄。それでも攻撃を続けていると、何とレディーデビモンはその銃弾の中を突き進み始め、スピアでバルカンを突き刺し破壊した。

それならと持っていた手裏剣を近距離で投げ飛ばすが腕で振り払われる。そしてバイクを蹴り飛ばし離れる。

 

『直ぐ終わらせるんじゃなかったの?そんなお遊び程度の攻撃じゃ、アタシには擦りもしないわ』

 

「クッ(もう真面な武器は残っていない。次の一撃で決めるしかない!)」

 

タスクは今出せる最大の力でレビューデビモンを倒そうとエンジンの出力を上げ始める。

対するレビューデビモンは彼のしようとしていることを察したのか、笑みを浮かべスピアを構えた。

 

────このままタスク(坊や)を消してしまうのは簡単だが、折角だからタスク(坊や)の全力を見てから消してあげようと───

 

と言う彼女なりの優しさ(?)であった。

 

そしてバイクの出力が最大値に達そうとしたその時、突如巨大な鳴き声が空全体に響き2人は動きを止めた。

 

「何だ、今のは!?」

 

『…どうやらあの方の計画の第一段階が終わったようね』

 

「あの方?誰のことだ!それに計画って一体!?」

 

『坊やが知る必要はないわ。もうちょっと遊びたかったけど、ココらで終わりにしましょう。【ダークネスウェーブ】!!』

 

レディーデビモンから無数の蝙蝠の群れが放たれ、バイクごと自身に群がり視界を覆うり振り払うとするが、蝙蝠は余計に群がってくる。しかしそれでも彼は諦めない、諦めるわけにはいかなった。

 

「僕は…アンジュを助けるんだ。だからお前達何かに構っている暇はないんだァ!!」

 

アンジュを助ける…その想いを強くさせハンドルを握りしてエンジンの出力を全開し、バイクを回転させる。次第に回転力は増していき高速へとの発展、群がっていた蝙蝠達は遠心力によって吹き飛ばし払い除けることに成功する。

回転を止め顔を上げる。しかしいつの間にかレディーデビモンの姿はなく、気配も消えていた。

 

「一体何処へ?今はそんなことより、早くアンジュを助けに行かないと」

 

急いでミスルギ王国にへと向かったが、そこは【イビルモン】の集団によって惨状となっていた。それでも必死にアンジュを探したが見つけ出すことは出来なかった。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

そんなことを他所に、ピエモン、アンジュ、モモカはデビドラモンに乗って光のトンネルを進んでいた。周りのキラキラした光景にアンジュとモモカは目を奪われる。

 

穴に入ってから数十秒後、空間の先に一筋の光が見えデビドラモンはその光に向かって加速する。

 

次第に光が強くなっていき、アンジュとモモカは眩しさで腕を前に出し目を瞑る。光が収まり眼を開けると、そこには無数の星々が輝いておりまるで宇宙のようだった。その空間内に1つだけ大きな屋敷が建って浮かんでいる島があった。

デビドラモンはその島に着陸し、腕を下ろしてピエモン達も3人も島にへと上陸させる。

 

「どうやらここがエンブリヲ()の本拠地みたいですね」

 

すると屋敷の入り口の扉が開き1人の男性、エンブリヲが現れる。

 

「まさかここまで来るとは…正直驚いた。取り敢えずは『ようこそ』と言っておくとしよう。──ようこそ、私の世界へ」

 

相変わらずの余裕綽々の態度で出迎える。

 

「しかしこの空間は隔離されて私以外は入ることが不可能なのだが、どうやって入ってこれたんだ?」

 

本来この場所に来るには()()()が必要なのだが、それを無くしてこの空間に入って来たことにエンブリヲは興味があった。

 

「簡単なことです。先程私が使用したあの技は、空間をも捻じ曲げてしまう程の威力を持っているのです」

 

「…成る程。それで無理矢理時空を歪め、隙間を作ったと言うことか。…正にイレギュラーだがこそ成せることだな。しかしここまで来ることが出来た君達に褒美として、昔話をしてあげよう」

 

エンブリヲは自身の過去を語り出した。嘗て自分はオリジナルのアルゼナルの研究員だった。新たな世界を求め、有人次元観測機ラグナメイルを開発し別世界へと進出を図った。しかし最初に創り上げたラグナメイル【ヒステリカ】に機乗の最中、突如発生した局地的インフレーションによってシステムが暴走、オリジナルのアルゼナルと共に次元の狭間にへと飛ばされてしまったのだ。

しかしそこは『時の流れが停止した世界』であったため無限の時間を手に入れ、事実不老不死となった。その後ラグナメイルを使って別世界への干渉、そして自身の理想の妻探しを開始した。

 

「それから1,000年、遂に見つけたのだ。私に相応しい強くて賢い理想の妻、それがアンジュ、君だ!さぁアンジュ、私の愛を受け入れてくれ。そして共に理想の世界を創りあげよう」

 

そう言いながらアンジュにへと手を差し伸べる。しかし当のアンジュは、エンブリヲの変にキザっているセリフや、自分を派手に強調するナルシスト感に鳥肌が立っていた。

 

「冗談じゃないわ!アンタみたいなナルシスト男の女になるなんて気持ち悪いし、生理的に無理!!」

 

エンブリヲのキモさに悪寒が走ったアンジュは、身体を隠すように彼を否定する。モモカはそんなアンジュを守るように彼女を抱きしめる。

 

「アンジュ、ピエモン(そのイレギュラー)に誑かされてしまったのか。仕方ない」

 

指をパチンっと鳴らすと、エンブリヲの後ろに突如パラメイルに似た機体【ラグナメイル】が現れる。更にそのラグナメイル【ヒステリカ】が手を翳すと、3体のラグナメイルが彼等を取り囲むように現れる。

 

「あまり手荒なことはしなくないが、君の目を救うためだ。少し我慢していてくれ、アンジュ」

 

その言葉を合図にエンブリヲは姿を消すと、一瞬でピエモンの前にへと移動し剣を交え、ラグナメイル達も一斉にデビドラモンにへと襲い掛かる。

 

「私のアンジュを誑かした貴様は許さん。苦痛を与え無惨に殺してやる」

 

「誑かすとは人聞きの悪い。私はタダ一緒に来るか、提案しただけです。そして彼女は自らの意思でここに来たのです」

 

互いの剣が弾かれてはぶつかり合う、その度に火花が散る。

 

「何故アンジュを誑かした。他に女は幾らでもいる筈だ」

 

「私も彼女のことが気に入りましてね。彼女の世界に対する憎しみと怒り、実に魅力的でした。それに『他に女はいる』と言いましたが、貴方がそれを言えるセリフですかね?」

 

「…私は多くの女性を見せてきたが、私に相応しい存在はいなかった。そして1,000年の時が経ち、漸く私に相応しい理想の女性を現れたのだ!それを突如現れたイレギュラーに奪われてたまるものか!!」

 

「…成る程。つまり貴方にとってアンジュ(彼女)は妻と言う名のアクセサリーと言う訳ですか。そんな貴方にどうこう言われる筋合いはありませんよ!」

 

ピエモンは空いていた手を振り上げると袖から1本の短剣が飛び出しエンブリヲの肩に刺さる。その痛みに動作が鈍りその隙にピエモンは勢いよく剣を振り下ろした時、 突如エンブリヲの姿が消えた。突然の出来事に流石のピエモンも目を見開き驚いていた。すると後方から「パン、パン」と叩く音が聞こえ振り向くと、少し離れたエンブリヲが刺さっていた短剣を持って手を叩いて立っていた。

あの距離を一瞬で移動した、つまり瞬間移動を使うことが出来ると言うこと。これにはアンジュとモモカも驚きを隠せなかった。

 

「この私に傷を負わせるとは…思っていたよりやるようだ。しかし調律者である私に傷を付けることは万死に値する。アンジュのことと一緒に償ってもらおう」

 

そう言い持っていた短剣を足共に落とし踏み付けた。しかしそんなエンブリヲに、1つだけ今までと違う点があった。

 

「おや、どうしたのですか?肩の傷がそのままですよ。不死の貴方ならそのような傷、直ぐ回復出来るでしょう。何故回復しないのですか?」

 

そう、刺された箇所から血が流れていたのだ。不死の肉体なら直ぐ回復するのが当たり前。しかし傷は一向に治る気配がない。その問いにエンブリヲは答えず、罰の悪そうな表情を浮かべる。

 

「分かっているますよ。回復しないのではなく()()()()と言うことは。詳しくは知りませんが、貴方はこの空間内では不死の力を使うことが出来ない。だからこの空間内で倒されば終わりだと言うこともね」

 

全て図星である。今ここにいるエンブリヲは本体。外の(アンジュのいた)世界に現れたエンブリヲは痛覚を共有した分身のような存在であった。それがエンブリヲの不死のカラクリ。

しかしこの空間内ではそれが出来ない。だからこの空間内で本体と()()()()()()()を倒せばエンブリヲは本当の死を迎えるのだ。

 

「…確かに私はこの空間内では不死の力は使えない。だがそれが見抜いたところで私に勝ったつもりか?」

 

エンブリヲは再び姿を消し後方へ移動する。

 

「不死の力が使えないからと言って全ての力が使えない訳ではない。貴様に私を捉えることが出来るか?」

 

その後何度も瞬間移動を使用し、出たり消えたりを繰り返し翻弄する。しかしピエモンは全く動じていなかった。

 

「…確かに瞬間移動が出来ると言うのは正直驚きました。しかしこの程度私からすればどうてことありませんよ」

 

エンブリヲはその発言を「強がり」と思っていた。何故なら全く動かずその場で立ち尽くしたまま、だから目で追えていないものだと思っており強がりを言っているだけにしか聞こえなかった。

そして隙を付きピエモンの後ろに回り込み剣を振る。「取った」と思った瞬間ピエモンの姿が消える、と同時に背中に激痛が走る。視線を向けると姿を消したピエモンが剣を振るっていた。

 

「言ったでしょ、大したことないと」

 

歯を噛み締め剣を振るうが再び姿を消し、少し離れた後方にへと現れる。

 

「瞬間移動が使えるのが貴方だけだと思ったら大間違いです。因みに言っておきますが、この技を使える者は我が軍には沢山いますよ」

 

フフフっと余裕の笑みを浮かべるピエモン。

「沢山使える者がいる」遠回しで「お前の専売特許じゃない」と侮辱され、エンブリヲは不老不死になって1,000年の間で初めて屈辱を味合わった。

 

一気に攻めようと剣を構えた時、横から自分を覆い尽くす影が現れる。見上げると、ヒステリカが両翼に溜めたエネルギーを放った瞬間が目を入った。

 

 

────────────────────────────

 

 

少し遡りピエモンとエンブリヲが剣を交えていた頃、上空でもう1つの戦いが勃発していた。

デビドラモンはその巨大な腕を振って応戦するが、複数のラグナメイルは身軽な動きで回避し銃弾を連射。ダメージはないようだがウザいと思ったか苛立っているように見える。

 

4つの赤い目が光ると、その先にいた1機のラグナメイルの動きが止まる。デビドラモンはその隙に近づき、その巨大な爪で相手を斬る必殺技【クリムゾンネイル】を繰り出し斬り裂く。そのラグナメイルはたった一振りでバラバラにされ大爆発を起こした。

 

残った3機のラグナメイル達は一旦その場から離れる。先程ラグナメイルが4つの目に睨まれた時に、動けなくなったのを察し出来るだけ目に入らない様に距離を取ることにした。

しかしデビドラモンは4枚の翼を広げると一気のラグナメイルを標的にした。その巨大からは想像も付かない程の速度で、一気に距離を詰め捕まえ一思いに握り潰した。

 

残ったラグナメイルの内1機が両翼を広げると、その中心にエネルギーが凝縮され竜巻状の光線【収斂時空砲(ディスコード・フェイザー)】を放つ。

しかしデビドラモンの目がギラリっと光り口を開けると、口先に紅いエネルギーが凝縮され【虚閃】が放たれ互いの技がぶつかり合う。ピエモンのよりも太い【虚閃】は、【収斂時空砲(ディスコード・フェイザー)】を押し返し、そのままラグナメイルごと飲み込み消滅させた。

 

これで残った機体はヒステリカのみとなる。だが…

 

 

『ドラゴンと同じ獣ふぜいが。私の世界に入り込むことが如何に愚かなことか、その身を持って思い知るがいい』

 

 

…何とヒステリカが機械音が混じったエンブリヲの声で喋った。そしてラグナメイル同様、両翼を広げ【収斂時空砲(ディスコード・フェイザー)】を放つ。

デビドラモンは再び口を開け【虚閃】を放ち互いの技がぶつかる。しかしヒステリカの【収斂時空砲(ディスコード・フェイザー)】は先程のラグナメイルの威力を上回っており、逆に【虚閃】の方が押し返されてしまう。デビドラモンは攻撃を食らい吹き飛ばされて島の外壁にへと打ち付けられ、身体が壁にめり込み気を失う。

 

『どれだけ巨大であろうとも所詮は獣。この私に牙を向けることなど許されないのだ』

 

ヒステリカは気を失ったデビドラモンを汚物を見るような目で見下す。何故ロボットであるラグナメイルが言葉を発することが出来るのか?

 

 

その答え─────このヒステリカは次元跳躍によってエンブリヲの精神と融合した存在、謂わばエンブリヲのもう1つ肉体にして、もう1人のエンブリヲでもある。

 

 

デビドラモンを蹴散らしたヒステリカは自身の本体であるエンブリヲが苦戦している姿が目に入った。「なんて様だ」と呆れるが、それでも殺される訳にはいかないのでエネルギーを溜めながら移動し、上空まで来たところで【収斂時空砲(ディスコード・フェイザー)】を放ったのだ。

 

ピエモンは空いている手でバリアを張り直撃を回避するが、威力を殺すことが出来ず吹き飛ばされ、地面に倒れ動かなくなる。ヒステリカは地面にへと着地し、エンブリヲもその横に立ち倒れているピエモンを見据える。

 

「私にここまで深傷を負わせたのは1,000年の間で貴様が初めてだ。褒めてやるぞ、ピエモン(イレギュラー)。だがそれもここまでだ」

 

『神であり調律者である私に歯向かったことが如何に愚かで浅はかだったか、その身を持って思い知るがいい』

 

ヒステリカは右腕のブレードを振り上げトドメを刺そうとする。しかし、その行動…『直接的に手を下す』と言う判断は間違いであった。

 

 

「【エンディングスペル】!」

 

ピエモンの口がニヤケた瞬間、倒れたままの状態で両手を合わせ指鉄砲を作ると、指先から衝撃波が放たれヒステリカのブレードを破壊する。反射的にヒステリカは後方に数歩下がり、エンブリヲも予想外の攻撃に隙が生まれる。

 

その間に起き上がったピエモンは、両手を前に突き出し衝撃波でエンブリヲを吹き飛ばす。そしてハンカチ程度の大きさの白い布を1枚取り出し後方にいるヒステリカにへと投げる。

布はヒラヒラと宙を舞うとその大きさは次第に大きくなっていき、ヒステリカの身体に覆い被さり包み込む。何とか抜け出そうとバタバタと踠くが振り払えない。

 

バチバチと紫色の電撃が走ると、ヒステリカが消失し布が崩れ落ちる。ピエモンは布に近付き取り上げると、そこにはヒステリカの姿はどこにもなかった。

 

「き、貴様。ヒステリカを何処へやった!?」

 

「何処って居るじゃない此処に、ほら」

 

ピエモンが右掌を開くと、そこには人形となったヒステリカが収められていた。

 

「あのロボットがこの空間を維持しているのも知っていました。破壊してしまうとこの空間が崩壊してしまうのも。…隔離され世界を監視することが出来る空間、実に素晴らしい。消えてしまうのは勿体ない、是非とも私の物にしたい。だから人形として私のコレクションにすることにしたんですよ」

 

ヒステリカこそ、この空間を操っている存在、謂わば核との言える。もしヒステリカが倒されてしまったらこの空間は崩壊してしまう。それを防ぐために敢えて人形にして無力化した上で生かされた。

 

だがどちらにしてもエンブリヲには非常に不味い状況であった。

 

ヒステリカはエンブリヲのもう1つの肉体、つまり本体のエンブリヲとヒステリカを同時に倒されなければ『エンブリヲ』と言う存在は滅びはしない。だから最悪の場合本体が倒されてもヒステリカが無事ならまだ何とかなると思っていた。そもそもヒステリカが負けるなど思っていなかった。

しかしそのヒステリカが人形にされてしまっている今、残った本体が倒されれば無事でいられる保証はないのだから。

 

「心配せずとも貴方も殺しはしませんよ。貴方もこのヒステリカ(ロボット)と同じように人形にして生かしてあげますよ」

 

『生かす』から安心しろと言うが、人形にされれば動くことも出来なければ意識もない。それは【死】と殆ど変わりない。いや【死】以上に恐ろしいモノかもしれない。

 

エンブリヲは【屈辱】同様に1,000年間で味わったことがない【恐怖】と言う感情が湧き上がってくる。

 

「そもそも()()()で苦戦するような奴が世界を支配するなど不可能ですよ」

 

「と、どう言うことだ!?」

 

アンジュのいた地球(向こうの世界)で私はある軍に所属していると言いましたよね。私はその中の組織の1つ【死刃】の1人なのです」

 

【死刃】と言う聞いたことがない単語に「?」を浮かべるエンブリヲ。それでもピエモンはお構いなしに淡々と説明をする。

 

「【死刃】とは我が主人によって選抜された、最強の幹部格によって構成された組織の名称です。その証として強い者順に10以下の数字を身体に刻むことが出来るのです。因みに私は…」

 

ピエモンは右の頭部に手を翳すと数字が浮き上がる。そこに刻まれていた数字は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…第【3】の数字を持つ死刃─────《第3死刃(トレス・エスパーダ)》、【ピエモン】と申します。改めてお見知り置きを」

 

ピエモン(コイツ)でさえ3番、つまり【死刃】と言う集団には、彼より強い奴がまだ2人()()居ることになる。それに彼はさっき『死刃は組織の1つ』と言っていた。つまり【死刃】に似た組織がまだあると言うことになる。その事実にエンブリヲは【恐怖】を通り越して【絶望】した。

 

「ではお話はここまでにして、そろそろ舞台の幕を閉めるとしましょう」

 

「ま、待て貴様。私を排除すると言うのがどう言うことか分かっているのか!?調律者で私を失えば世界の秩序は乱れ混乱にへと陥るのだぞ!」

 

「それならご心配なく。これから貴方が創り上げた世界は私が管理しますので、貴方が消えたところで何も変わりはしません」

 

最早何を言っても聞く耳持たない、着々と自分の最後の瞬間が近づく。

 

 

自分はどこで間違ったのだろう?

ヒステリカを作ったところか?

人間としての概念を捨てたところか?

新たな人類【ホムンクルス】を創り出したところか?

【マナ】と言うモノを創ったところか?

その【マナ】が使えない存在の【ノーマ】を迫害するようにしたところか?

 

 

いや違う。全てはこのピエモン(イレギュラー)が現れたことで狂いだした。ピエモン(イレギュラー)さえ現れなければ全て上手くいき、アンジュと共に理想の世界を築けたはず。

しかしそれをピエモン(イレギュラー)が全て台無しにした。今まで自分が積み上げてきた全てを失った。悔しくて悔しくて堪らなかった。

 

だがその時エンブリヲはあることに気付く。今の自分の状況が、過去に相手の気持ちを踏み躙ってきた自分と同じであることに。

これぞ正に因果応報。そして自分がその立場になって相手がどんな気持ちだったのか漸く理解するとは、哀れである。

 

「確かに、貴方はこの世界では神に等しい存在、しかし所詮は元人間。世界を支配出来ると思うこと自体大きな間違いだったのです。心配せずとも、後は私()に任せてお休みなさい────永遠に」

 

ピエモンの投げた布に包まれ一面が真っ白になったが、直様視界が真っ黒にへと変わり、そこでエンブリヲの意識は途絶えた。

 

 

───────────────────────────

 

 

 

ミスルギ王国

 

そこはマナの光によって人々が幸せに暮らす活気に溢れた街であった。しかし今では空はドス黒い雲に覆われ、街には以前のような活気は微塵もなく別の街ではないかと目を疑いたくなる程変わり果ててしまった。そしてその街の王宮であった建物の中では…

 

 

 

「遅い。一体どれだけ時間掛かってるの」

 

「…申し訳ありません」

 

「こんな簡単なことも出来ないなんてアンタ達、ホントに無能な豚だわ」

 

「ご、ゴメンなさい…」

 

…首を垂れながら拳を震わせている短髪の金髪の青年【ジュリオ】と、その隣で同じように首を垂れているガタガタと震える頬に傷があるツインテールの少女【シルヴィア】が椅子に座る実の兄妹であった──────アンジュに罵られていた。

シルヴィアはアンジュ()に見捨てられ顔に傷を負わされたあの日以来、恐怖でアンジュ()の顔を真面に見ることが出来ず、声を聞くだけで身体が怯えるようになってしまっていた。ジュリオに関しては、今まで受けたことがない屈辱を味合わされ、血が滲み出るほど歯を噛み締めていた。

 

「分かったら早くしない、この鈍間(のろま)な豚共が!!」

 

「は、はい…」

 

「…失礼します」

 

2人は顔を合わせないようにして大人しくその場を後にする。その情けない2人の後ろ姿をアンジュは蔑んで鼻で笑う。

 

「お待たせしました、アンジュリーゼ様」

 

「ありがとうモモカ。本当に貴方は自分の役目を果たしてるわ。あの無能な豚共とは大違いよ」

 

アンジュの侍女であったモモカは、あの出来事以降もアンジュの身の回りのお世話を今まで通りに熟している。そして今彼女が入れてくれた紅茶の香りで癒されながら、アンジュはティータイムを楽しむ。すると2人の目の前にモニターが出現にピエモンが映し出される。

 

『準備の方は如何ですか?』

 

「エェ、もう直ぐ終わるわ」

 

エンブリヲと言う『自称』神を失ったこの世界はミスルギ王国であったこの地を中心に、アンジュによって支配された世界にへと生まれ変わった。そして恩人であるピエモンと共にある計画の準備をしていた。

 

『ではそろそろ始めるとしましょう。もう一つの地球を我々の物にする計画を』

 

 

 

 

あの騒動の後、本当のアルゼナルに残っていた資料から【ドラゴン】と言う存在が何なのかを知った。

 

 

その昔エンブリヲは、アンジュ達とは別の地球(本来の地球)で新たなエネルギーを生み出した。しかしそれが原因で世界大戦、文明崩壊、地球汚染等の悪影響を与えてしまった。

現状を悟ったエンブリヲは地球を捨て差別のない理想の地球、アンジュ達の世界を創り出し、あらゆる者が思考で操作できる高度な情報化テクノロジーを生み出した。それが【マナ】。そしてそれを扱うことが出来る新人類【ホムンクルス】を創造した。

 

 

だが前の世界の住人達は、自分達の世界が滅びることに黙っていようとは思わなかった。そして彼らはある方法によって世界を復興させようとした。それが【ドラゴン化】であった。

 

つまりドラゴンの正体、それはアウラ(あの巨大なドラゴン)を取り戻すために来た別世界の人間達。それを知った時はショックを受けた。

エンブリヲと言う『自称』神の創り出した仕組みによって迫害され、別の地球の住人とは言え、自分達が今までやってきたことは人殺しと変わらない。知らなかったとは言え許されることではない。

しかしショックを受けたのはその一瞬だけであった。考えてみれば向こうの世界の住人も多くのノーマを殺してきた。なら互いにやっていることは変わりない。そもそもアイツらがアウラ(そのドラゴン)を奪われたのが原因で自分が死にそうな目にあったのだ。全てはアイツらの所為だ!

 

軈て彼女の怒りの矛先は、旧地球の民にへと向いた。

 

そんなアンジュの怒りの感情を読み取ったピエモンはある提案を持ち出す。

 

 

『貴方が人と言う概念を捨てるのであれば、私が貴方に力を与えてあげましょう』

 

 

「人という概念を捨てる」ということは、人間と言う存在を辞め、新たなる存在に生まれ変わると言うこと。しかしそれはあのエンブリヲ(変態男)が人間を辞めた成り行きと似ているので癪だった。

だがそれ以上に自分があんな醜い人間()共と同じ存在でいると言うことの方が我慢ならなかった。

それに自分も散々『ノーマは人ではない』と言ってきた。

 

だったら彼女の心は既に決まっていた。

 

『良いわ。貴方の誘い受けてやろうじゃないの』

 

誘いを承諾したアンジュにピエモンは、彼女に近づくと掌に赤く光る球体を出現させる。

 

『これは私の力の一部です。貴方にこれを授けましょう』

 

そしてその球体を彼女の胸に押し込んだ。するとアンジュは突如悶え苦しみ床を転げ回る。アンジュのその姿に駆け寄ろうとするモモカをピエモンは手を出し「心配いりません」と静止させる。

軈てアンジュは大人しくなり荒い息を落ち着かせていく。

 

『どうですか気分は?』

 

『…最高の気分よ』

 

身体を起き上がらせたアンジュが顔を上げると、瞳の色が紅色からオレンジに変色し憎悪に満ちていた。

今この時を持ってノーマであったアンジュ、及びミスルギ王国の皇女でもあったアンジュリーゼは死んだ…今この時をもって彼女は人類を超越した新たな存在にへと生まれ変わったのであった。

 

 

元の世界に戻ってきたアンジュは、最初にその世界のアルゼナルにへと向かい、そこにいたパラメイルのパイロット達、司令官であった【ジル】を圧倒的な力の差を見せつけ蹴散らしたった数分で制圧。

その後ミスルギ王国に戻ると、そこで暴れていた【イビルモン】達をピエモンが大人しくさせたところで、自分が処刑されそうになっていた台の上に立ち語りだす。

 

 

『この世界を創り出した神はピエモン(この男)によって死んだわ。だからこれからこの私がこの世界を管理する。全員この私に従いなさい!』

 

 

勿論国民達はそんなこと大反対「【ノーマ】の癖に偉そうに」「化け物が調子に乗るな!」等ブーイングの嵐。

 

するとアンジュは右手の人差し指を1人の人間に向ける。次の瞬間、指先から一筋の光が放たれその人間の脳天を貫いた。その人間は膝から崩れ落ち倒れる。その光景に悲鳴が上がり、街の人達も騒めき出す。

 

『次は誰が、そこの豚みたいになりたいかしら?』

 

アンジュは顔をニヤつかせながら質問する。するとさっきまで雑音のように響いていた彼女に対するバッシングは嘘のようにピタリと止んだ。この時ミスルギ王国と言う国は消えたのであった。

 

その後元国民とアルゼナルにいた者を奴隷とし、元ミスルギ王国の場所を拠点として、自分に屈辱与えるきっかけとなった旧地球への侵攻を開始するのであった。

 

「待っていなさい、ドラゴン共。アンタ達は全員私が殺してやるから」

 

モモカが入れた紅茶を飲みながらモニターに映る旧地球に憎悪を燃やす。

その彼女が座る椅子の後ろの棚に置かれたケースには、貴族服を着た金髪の男性、パラメイルに似た黒いロボットの人形が飾られていた。

 




アンジュさん完全に闇堕ちです。原作であれだけの仕打ちや絶望を受けたのに、よく自分自身を保てたなっとそのメンタルの強さには本当に感心します。
因みにタスクは、アンジュの演説の後何とか彼女を説得しようとしました。しかし今のアンジュにはタスクの言葉は全く届かずピエモンから貰った力によってボロボロにされてしまいます。それでもアンジュの目を覚まさせようと裏で交錯していると言う感じです。

11月に発売したポケモンゲームをやり込んで遅れましたが、何とか根性で書き終え元旦までに投稿できました。
私の作品を見てくださっている方々、本当にありがとうございます。
感想などあればお願いします。

そして今年もよろしくお願いします。
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