東方古物想   作:紲空現

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第零章 おまけSS
2020新年SS もちもちのもち


元日。こがねの家には、のんびりとした時間が流れていた。

 

「(もにもに)おもちおいしい」

「そうですね♪」

「(MGMG)頑張っへ、餅米を買っへひへ(むぐむぐ)良はっは」

「ですね♪高くて中々手が出せないですから。お金も入ってきませんし」

 

そう言いながら彼女はお茶を出してくれる。

 

「(ズズズ……ごっくん)そうだね。お金は基本拾い物だし」

 

現在、唯一の同居人で住み込みメイドのる〜ことと一緒に炬燵へ入り、まったりと餅を食べているところだ。とはいえ、餅を作るのが精一杯だったために、残念ながらお湯に浸かった大量の餅しかない。小豆は……今年は無かった。去年も一昨年も無かったけど。

る〜ことは基本食べないので、私がもぐもぐしながら喋りかけて、それにる〜ことが合いの手を打ってくれる。昔は姉二人がいて、その後居なくなって、ずっと一人だったから凄く嬉しい。治したかいがあったものだ。

 

「(MGMG……)」

「……それにしても、このお餅、よく伸びますね。長ーく長ーく、いつまでも伸びてそうです」

「(ごっくん!)そうだね。永ーく永ーく、いつまでもね」

 

そう、いつまでもこんな時間が続いて欲しい。こんな時間を守りたい。一度守れなかったこの時間を……永遠に。長いだけではなく、いつまでも。

 

「それで、どうして年明けに奮発したんですか?毎年節目になるとかなり派手めに頑張りますよね。節分の時もお祝いしていましたし」

「ああ、それは。私の能力が関係しているんだ。気分的に」

「能力……『再生する程度の能力』でしたよね?」

「うん、そう。それで、何故節目に拘っているか。それは、節目は再生の時だから」

「再生……ですか?」

「そう。再生の時。例えば年末はトシの『おわり』から『はじめ』に逆転して流れる。節分も旧暦、まあ普段使ってる方ね、それの年跨ぎだから。トシはおわりからはじめへと、『再生』するんじゃないかと思ってね。この幻想郷も、60年で再び『再生』するし、こういう節目は重たく感じる」

「なるほどです。とすると、何かそのタイミングで変化でもあるんですか?」

「あるかな。他の妖怪や霊感のあるヒトも感じているだろうけど、ありとあらゆる境界が曖昧になる。普段流れる方とは逆に流れるから、その分曖昧な存在である妖怪は力を増し、この世と交わりを持つんだ。私の場合は能力もあって特に顕著だね。今なら大きな事もも起こせそう」

「なるほどです。では、何か準備でもしましょうか?」

「いや、今はいい。のんびりしたい」

 

そう。それはただの現象。毎年起こる事柄。でも正月はそんな時間を過ごしたい訳では無い。私はは、今はのんびりる〜ことと過ごすこの時間が愛おしい。私が守りたい時間が守れているなら、それで良いではないか。私はそう生きていたいから、そういう風に過ごす。それは妖怪としてのエゴなのだろう。このささやかな時間が嬉しい。

 

「さて、餅でも食べるかな」

「そうですね。まだ沢山ありますよ」

「どうも。では、もぐもぐ……」

「(こういう時間、やっぱり良いですね♪)」

「もぐもぐもぐ……んんっ!?んー!んー!」

「!?大丈夫ですか!お茶ですどうぞ!」

 

ほっこりしていたら、餅を喉に詰めてしまった。苦しい!お茶を流し込むがしかし流れない。る〜ことが背中を叩いてくれるのを感じながら、餅が喉を通り過ぎるのを苦しみの中感じた。

 

「げほっ!ごほっ!……あー、助かった……」

「無事で良かったです!大丈夫ですか?」

「うん。何とかね……やっぱり、居てくれてありがとう」

「いえいえ。感謝を言いたいのはこちらですよ。直して頂きありがとうございます」

 

やっぱり、この時間が大切だ。私が守りたいこの時間はゆっくりと過ぎていき、また一年が始まるのだろう。そうしてまた、来年も年越しを祝うのだ。再び生まれたトシに感謝して。


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