次からはストックが切れているのでかなり間が開きます。すみません。
2019/12/11
文中の「?」がルビになってしまっていたのを修正しました
アリスと別れて、ふらふらと、いつの間にか博麗神社まできていた。そして目の前の高い石段をみて少し元気を無くす。とはいえ、飛んでいけばいいやと思い出してそのまま階段に沿って飛んでいく。
「あんた、今日は何の用よ」
上まであがると、縁側で座っていた巫女さんがこっちに来た。縁側には箒と、お湯が入った湯呑みが置いてある。どうやら休憩中だったようだ。
「とくには無いけど、いつの間にか散歩してたらここに着いてた」
「……はぁ。あんたねえ……」
「ところで、昼ごはんは食べたの?」
ここの巫女は食糧事情が悪い。今は昼を越えたぐらい……腕時計で確認すると、1時を回ったぐらいだ。こちらもまだなので、一応聞いてみる。
「いや、食べてないわ。さっきもお茶を飲んで休憩してただけだし。煎餅は切れるし、散々よ」
どうやらさっきの湯呑みの中身はお茶だったらしい……。薄すぎてお湯と見間違えたらしい。今見てもやはりほぼ透明で、どう頑張ってもお湯である。
とりあえず、昼ごはんを一緒に食べないか聞いてみようか。
「え?良いの?あ、でも前の秋のときみたいなのは無しよ。あの後大変だったんだから。それとあの泥の塊みたいなやつも」
ちょうど今と同じような秋の頃合いに、相変わらずお腹を空かせていた巫女さんが居たので、彼岸花製の粉を丸めて塩を練りこんだだけの非常食を渡して一緒に食べたことがあった。そのときは毒抜きに失敗していて、厠に急行__私は特に問題なかった__した記憶がある。
「あの時はすみません……でも、
「いや、アレは食べ物じゃない。いくら私でも食べない」
「ある程度変なものを食べてる自覚はあるんですね……」
「……」
話題となっている、泥の塊とか言われたものだが、あれは単に周辺の土と花と水から河童謹製の道具を改造したものを使って栄養分を吸い上げ、そのまま固めた食糧だ。口に含むと湿り気と共に軽い粘り気があり、土の香りと共にエグ味と苦味、そして中に入れた塩の辛さがするだけである。うーん、もしかすると食べ物では無かったのかもしれない。けれど、気持ち悪さと吐き気の代わりにお腹は膨れたから、問題は無いはず。
「いや、問題あるから」
「相変わらずどうやって心を読んでいるかのごとく反応出来るの?」
「途中から声に出てたから」
「……」
サトリ妖怪が逆に心を読まれているというか、丸見えになっていると考えて、頭をひねる。果たしてこれは一体どうなんだろうか。
「まあとりあえず、お昼ご飯かな?」
「そうね。早く頼むわよ」
「はいはい」
相変わらず、一度使えるとなったら人使いが荒い。まあ、その辺の感じも込みで、いい印象の人だ。良い人、とは言えないかもしれないけれど。
□□□□□
神社から、珍しく美味しい匂いが漂ってくる。神社の調理場には、一人の少女が料理をしていた。
「さてと、この箱から彼岸花製デンプンを出して、さっき採ったキノコを出してと。これは毒、これも毒、それも毒、あ、いけるのあった」
……微妙に危険な香りがする料理である。あたらなければ美味しいとは思うが、果たしてどうなるのか。
料理が出来たらしい。最近はついぞ嗅いだことの無かった、美味しそうな匂いがする。お腹が減ってきた。いや、元から減っていたのに気付いていなかったらしい。彼女は時々変なものを作るが、総じて美味しいのでお願いをしている。時々出てくる胡散臭い妖怪に至っては料理を作らないどころか食糧すら足元を見て交渉してきて面倒なことこの上ない。私が欲しいのは茶と煎餅と酒と米と
……遅い。さっさと持ってこい。こっちはお腹が減っているのよ。
「出来たよ」
「遅かったわね」
「まあ、作るのが微妙に大変で。調味料も殆ど無いし」
「無くて悪かったわね。欲しいなら賽銭を入れてよ」
「後でお参りしておくから、その時に入れるよ」
「嬉しいわね。まあ、無理はしなくて良いのよ?」
「どうも。で、そろそろ食べます?」
普通に良い妖怪で色々困る。他の奴らはもっと自分勝手だったりするし……
そして、料理が出てくる。丸いボール状のやや黄色っぽい何かが出てきた。後はキノコの炒め物と焼き芋か。ボールだけよく分からないのでとりあえず聞いてみようかしら。変なものだと困るし。
「この黄色っぽいボールは何?」
「ああ、これはたこ焼きだね。中に入ってるのはキノコだけど。外でも良く食べられているみたいだけどね。何とか作ってみた」
「ふーん、そうなの。毒じゃないわよね?」
「キノコは全部気をつけたよ。だから多分大丈夫かな」
「……このたこ焼きに使った粉は?」
「……彼岸花製」
「…………大丈夫よね?」
怪しい。にっこりと笑って、相手を見つめる。その相手は、冷や汗を流しつつ、返事を返してきた。
「……大丈夫だよ」
「何よその間は」
「前回の反省を全部活かせているか思い出してた」
「……へえ。ならいいかしら。また毒だったら許さないわよ」
「うん」
そうやって笑って返してきた。まあ、今回はいいだろう。お腹も減ったし。普段より早く準備がされて、実食となった。
もぐもぐ。まあ美味しい。すごく美味しいとは言えないけれども……。間違いなく里のご飯の方が美味しいだろうか。無論、普段から比べると素晴らしい料理だ。
「そこそこいけるわね」
「それはどうも」
相変わらず素っ気なく聞こえる返事だが、少しだけ微笑んでいる。私の言葉で素直に嬉しそうにしてくれるのを見ると、こちらも少しだけ嬉しくなる。
そのまま、のんびりといつも通りの調子で素早くたこ焼きとキノコ炒めを食べた。相手の分?食べない方が悪いのよ。
□□□□□
美味しそうに食べてくれるのを見ると嬉しくなる。たとえ、自分の分がどんどんと減っていったとしても。そのまま食べ終わって、そのまま帰ろうと神社から出る。その時、ふと神社の横に蔵が見えた。今まであった覚えは無いんだけどなあ……とりあえず、ついてきていた霊夢に聞いてみる。
「ん?あんな蔵、あった?」
「……見えるの?」
「見えるよ?」
何か見えたら不味いものだったのだろうか。確かに、結界が張られている様子。記憶を見るに、数年前には張っていたらしい。
「結界を張っておいたはずなんだけどね」
「うーん、慣れて、見えるようになった?」
「それは問題ね。というか、あんたみたいのがこれから増える予感がするのよ。今はここに来る妖怪はあんまり居ないけど、増えたらどうしようかしら。問答無用で退治する?」
なかなかに物騒な話である。まあ、最近は平和で、そんな戦いというか一方的な虐殺は全く起きていないから、一つのイベントみたいなものになりかねない気もする。
「それはやめて欲しいかな。私が逃げるのが大変だし」
「自分の心配しかしないのね」
「それが妖怪だから。身内は心配するけど。まあとりあえず、あの蔵には何が入っているの?」
自分で変な方向に話を持っていきかけたので話を逸らす。ついでに気になる蔵に話を誘導してみる。
「ああ、ええと〜、なんだっけか」
「ええ……」
「ま、まあ、中に入って見てみる?」
「あ、ありがとう」
そうこうして、蔵の中に入らさせてもらえた。なかなか開けていないからか、凄く埃っぽい。
「ごほっごほっ……これ、酷い」
「げほごほっ……そうね……げほっ」
「とりあえず……ごほっ……中を見るね」
「ええ……早くしてよね……げほっげほっ」
あまり埃をたてないようにして、そろそろと中に入る。
色んなものがそこにはあった。古い御札や竹箒、ここに有って良いのかは分からないが、注連縄や陰陽玉。多数のガラクタとカビた本。目で見る限り、長い間放置されているが、今の状態で安心しているものも多いようなので、手をつけることなく奥へと進んでいく。そして、最後の最後、最奥地でめぼしいものは見つかった。
「……これは?」
「……なんだったかしら?」
隅の方にあったのは、緑色の髪をしたメイドの服を来た少女?だった。何故こんな所にある(いる?)のだろう。記憶を読んでみる……
……どうやら先代の巫女が遺跡?探索の果てに貰ったものだったらしい。元々は違うところで働いていた所を、手際が悪い為か先代の巫女に譲られた様子。また働きたいようだが、全身ボロボロでまともに動けないだろう。
「……という感じかな?」
「なるほどね。相変わらず、ものに対しては便利ね」
「ええ、まあ、そうなりましたから」
「そう……まあいいわ。それで、どうするの?」
「持って帰っても良い?」
「良いわよ。こんなのあったところで使わないだろうし、使えないだろうし。それならしまい込むよりは譲った方が良いでしょ?」
それはそうだ。目的のもの、いや、少女は見つかって、しかも連れて帰っていいことになった。有難い。今日はもう家に帰って、とりあえず忘れかけている黒い円盤をぷれーやーに掛けようか。放っておくのも悪いし。こちらはどうせ河童との協力案件だし。
微かに少女が笑ったような気がした。早く直してあげるからね。