カイリと二度目に会ったのは、それから一年ほど後のことだった。
その妓楼の門を再びくぐったとき、漠然とあの子供はもう死んでいるかもしれないと思っていた。
妓楼は、廃れていた。それもそのはずだ。妓楼には女がいない。
それは、妓楼だけに限ったことではない。この国からは、女という女が姿を消そうとしている。
王が国から女という女を追放しようとしている。
そんな異様な勅令が出たとは、珊揮は俄かに信じがたかった。この国の王は、国を傾けようとしているとしか思えない。
国境のあたりでは、妖魔も出たと聞く。
珊揮はカイリというあの海客の子供のことが無性に気がかりになった。
そしてカイリは男なのか、女なのか、そんなことも聞いていなかったことに気付いたのだ。
以前に会ったとき、カイリにこの世界のことを簡単に話していた。
珊揮が語る話を、カイリは驚嘆と懐疑と、絶望をないまぜにしたような表情で聞いていた。
カイリは一年分以上に擦り切れていた。
気力というものが痩せ細っていた。瞳は力を失い、空ろだった。死にいたる寸前だ。
妓楼は廃業し、カイリは路上で生活をしていた。
珊揮は、後悔した。この子供を知っていながら、一年も放置していたことを。
気にはなっていた。
だが、こういう子供は世界のいたるところにいる。それら総てを珊揮が助けられるかといえば、そうではない。この子供だけを助けて、それ以外の子供を助けないのは欺瞞だと思った。
今、カイリはただ地面の上に転がっている。
その姿を見た時に、欺瞞だの何だのは、珊揮にはどうでもいいことに思えた。
珊揮の顔をちらりと見ると、幽かに笑ったように見えたのは、珊揮のそうあってほしいという願望のせいだったかもしれない。
実際、カイリは感情を表情にすることも出来ない程に弱っていた。
「私と一緒に来るかい?」
そう言ったものの、珊揮は自分がカイリに何かしてやれるのか、確信があった訳ではない。ただ、ここにこうして、カイリをおいていくことが、嫌だっただけだった。
カイリは肯いた、ように見えた。
なんとなく、珊揮はカイリが長くはないだろうと思っていた。
珊揮は、カイリの汚れた体を濯ぎ、衣服をあらため、清潔な寝台に横たえた。
はじめ、カイリはほとんど液体のようなお粥しか受け付なかった。
それでも、カイリは少しずつ、少しずつ、力を取り戻していった。
そうして、珊揮は自身の予想が外れたことを喜んだ。
カイリは、ぽつり、ぽつりと話をするようになった。
いちど話し始めると、カイリはとめどなく喋り続けた。
「あの宿。女の人がいっぱいいたのに、どうしてかな、ひとりも居なくなったんだ。みんな、どこへ行ったのかな。みんなふるさとに帰ったのかな」
そうではないだろう。珊揮は思う。おそらく、女たちは別の国に売られていったのだろう。
「みんな、いつも楽しそうに笑ってたよ。でもね、その笑い顔が時々とっても寂しそうだった。みんな、ふるさとに帰れないからだね」
たぶん、女たちが寂しいのは、それだけではなかっただろう。