やはり俺がバンドを組むのはまちがっている 作:静寂な堕天使クロノス
失踪はしないので気長に待っててください
湊から連絡があった日から数日が経ち今日が約束の日だ。
正直俺がRoseliaの練習に参加したところでなにもできる自信はないのだが...
最近になってspaceにもよく来るな、前はかなりのペースで来てたのにこんなことを思うくらいに来てなかったんだな...
それに、なんか雨降りそうだな。傘持ってきてないからできれば振らないで欲しいところだが...
そんなことを思いながら俺はスタジオへと入っていく。
Roseliaのメンバーはすでに全員揃ってすでに練習を開始していた。
ホントにみんな真面目だな〜、俺なんて3回に1回は遅刻してたというのに...
「あっ!八幡さん来た!」
「こんにちは八幡」
あこと湊が俺に気づき挨拶してくる。
「おう、遅れて悪かったな」
「友希那の言ってた通りだったね〜」
「ええ、全くだわ」
「...友希那さん...すごいです」
おい、湊お前なにを言ったんだ。
「私はただ事実を言っただけよ、八幡は必ず遅れてくるって」
なんでナチュラルに心読んでんだよ!
怖ーよ!
でも、実際遅れてきてるからなんも言えない...
「本当になにも変わらないのね、あなたって」
湊は、というかRoseliaは全員呆れ顔だ...
なんか居心地が悪い...
「で、お前らは俺にどうして欲しいんだ?」
「連絡した通りよ、ただ私たちの練習を見てアドバイスしてくれればいいわ」
「本当にそれだけでいいのか?」
「あなたたちアブアルは高いレベルの演奏でした。なのでそのギターだった人からアドバイスを頂いて私たちのレベルアップを図ろうということです」
「言っとくけど本当に俺は大したことは言えないからな」
「そんなことないって、だいじょーぶだよ」
今井ってギャルっぽい見た目だけどオカンみたいに優しいな...
なんかこいつに似た奴知ってるぞ、俺は
「それじゃあ聞くが良い!我が闇のえーと、えーと...」
「奏でる音をだよ、あこちゃん」
この2人のやりとりほっこりするな〜
「とにかく聞いてちょうだい」
*****
とりあえずまず一曲聞いたが相変わらずレベルの高い演奏だ。
湊を中心によくまとまった演奏だ。
...が近くで聞くと少しながらの改善点が見つかった。
やはり完璧な音などない、それだから彼女たちは練習を続けるのだろう。
「それでどうでしたか?」
「そうだな、じゃあ1人づつ言ってくぞ、悪いけどはっきりと言っていくからな」
「ええ、お願いするわ」
「じゃあまずあこ、たまにリズムが走り気味になっちまってるぞ。そのままだと全体のリズムが乱れる」
「うん!次から気をつけてみるよ!」
やっぱあこは素直だな〜。妹になってくれないかな?
*****
ーその時の小町ー
「なんか小町の妹としての座が危うい気がする!」
*****
「えーとじゃあ次に白金、自分の音にもっと自信を持てビクビクしながら弾いてるんじゃその先には行けないぞ」
「...はい」
白金なら俺が言わなくても自覚してるだろう、だがそれを他人に言ってもらうだけで意識が変わるのだ。
「じゃあ次に今井、ハッキリ言ってお前が現状1番Roseliaでは下手だ。だけど、努力してるのを感じる音だった、そのまま努力してけば必ずもっと上手くなる」
「あはは〜、流石に少し傷つくな〜、でもありがと!もっと頑張って次は褒めてもらうからね〜」
こうやって1番下手とまで言われて頑張り続けられる奴はかなり珍しいだろう。だから彼女はきっと人に優しくできるのだろう。
「じゃあ次に氷川、なんて言うんだ...演奏は完璧だ。だけど音からお前らしさを感じない。お前だけの音を見つけられてないって感じがするんだよ...それを見つければお前が1番成長の余地があるはずだ」
「..ろうは...ないのよ」
ん?なんだ氷川が小声で何か言っているがちっとも聞こえない。
「そんな簡単に見つけられるのなら苦労はないのよ!」
それは唐突に雷が落ちたかのようだった。
「あなたみたいな天才にはわからないのよ!完璧な音しか弾けない私の気持ちなんて!」
「.....」
俺の方はなにも言うことができない。それほどのショックに見舞われていた。
「...すいません」
そう言うと氷川はスタジオから出ていく、ほおに光る雫を滴らせながら、気づけば外は雨が降り出していた...
「...紗夜」
今井は心配そうな顔だ。
そしてそれはあこや白金も同じようだった。
「八幡、紗夜のところに行ってあげて」
湊だけは違った、心配そうではあるが氷川に対して俺はなにができるって言うんだ。
俺はまた傷つけてしまったんだ...
「たしかにあなたが紗夜を追い詰めていたのは事実だわ、でもだからこそあなたしか紗夜は救えないの...お願い行ってあげて」
「...私からも...お願いします」
「お願い、八幡さん!」
「紗夜を、助けてあげて!」
みんな...
「...ごめん、俺行ってくる」
ここで...また...
この手で間違えたくない!
*****
それから俺は走り続けた、雨に打たれながら氷川を探した。
もう体は悲鳴をあげている。それでも止まるわけには行けない。
そう思いまた走り出そうとした時、俺は公園のブランコに座る人を見つけた。
「...ようやく、見つかったな」
「っ!なぜここに...」
「お前と...話をしに来た」
「今更、今更なにを話そうって言うの!」
雨が降る中悲壮な思いで叫ぶ少女、俺は向かい合わなければならない。
「私みたいな...才能のない人間となにを話そうっていうの!あなたたちみたいな努力もせず私みたいな人間を...軽く超えていく人が!」
「...それは違う、俺は確かに天才と呼ばれていた。だけど俺は自分のことをそう思ったことはないし努力を怠っていたわけじゃない」
「どうして、そんなことが信じられると...」
「本当だ、努力を必要としない人間なんているはずがない。それに俺はお前のことを心の底から尊敬しているぞ」
「どうして?どうして私なんかを...」
「なんか、なんて言うんじゃない。お前は俺より優れたものを持っている、俺はあんなに正確に音を奏で続けることはできないそんなお前を見てると俺もまだまだだなって思わせてくれる...だから俺も努力をし続けられるんだよ」
「...本当...なんですか?」
「本当だ、信じてくれ」
そう俺が言った瞬間彼女の頬を涙が伝っていく。
気づけば雨も止んで、空に光がさした...
*****
それからしばらく泣き続けていた氷川は落ち着いたようで、ふと溢れたかのように話を始めた。
「私には双子の妹がいるんです...その子は私が始めたことをすぐに同じように始めるのですが、その全てをすぐに私以上にできるようになってしまったんです...」
「なるほど、それがお前のコンプレックスの元ってわけだ」
「ええ、恥ずかしながらまだ妹との接し方はよくわかっていません...」
「俺にもな、1人妹がいる。かなりわがままな妹でよ、昔からだいぶ迷惑かけられてきたしかけてきた。時々大ゲンカすることもあった。それでもさやっぱり俺は妹のことが好きだ、当然家族としてだけどな...お前も本当に心のそこから嫌いなのか、妹のこと?」
そう言うと氷川は何か考えてるようだった。
しかし、俺は氷川が本当に妹のことが嫌いだとは思わない、それは根拠もなにもない同じ妹を持つものとしての勘なのだが。
「...今まで妹のことは大嫌いだと思ってたんです。でも、今思い返してみると私は妹のことをよく知っているんです。昔あったことも鮮明に覚えていて...私は...私は妹のことを嫌いになんて...なれない」
「なら、きっとそれがお前と妹の"本物の関係"ってことだろ」
「あなたに言われてようやく気づくことができました...本当にありがとうございます、それと先程はあんなことを言ってしまい申し訳ありませんでした」
「気にすんなよ、俺は俺のやらかしたことに責任を取っただけだ。それに礼なら俺じゃなくてお前の仲間に言ってやれよ、お前のことみんな心配してたぞ?」
「私みたいな人がこれ以上Roseliaの皆さんに迷惑をかけてしまって...いいんですかね?もっとふさわしい人がいるんじゃ...」
「そんなこと誰も思っちゃいねーよ、それはお前を選んだ湊に失礼だろ。お前が思っている以上にお前の存在は大きいんじゃねーの?それに...それはお前の本心か?後悔しないと言い切れる道か?」
「そ、それは...」
氷川が返事に困っているそんな時。
「あ!紗夜さんいた!」
「ようやく見つけたよ〜」
あこと今井が公園に入ってくる。
「はぁはぁ、紗夜、八幡2人とも話は済んだのかしら?」
「...2人とも大丈夫ですか?」
あまり運動が得意ではなさそうな湊と白金は息を切らして入ってくる。
「ああ、全部終わった。それより氷川がお前たちに言いたいことあるらしいぞ」
「え?何ですか?」
あこは疑問そうだ。
「えっと...その...」
なかなか言い出せない様子である氷川、その背中を押してやるまでが俺の仕事だ。
「氷川、言葉にすることが大切なんだ。言葉にしないまま向き合うことから逃げ続けるといつか自分の大切なものを全てなくすことになるぞ」
俺の言葉を聞いた氷川は覚悟が決まったような顔になった。
「皆さん...先程はすいませんでした...これからも私はあなたたちに迷惑をかけてしまうかもしれない...でも、それでも、私はあなたたちと演奏をし続けたい!こんな私ですが受け入れてもらえますか?」
「なにを言うのかと思えば...そんなこと聞くまでもないでしょう?それともあなたがRoseliaにかける思いはそんなものなのかしら?」
「そんなことはないです!私は、このメンバーで最高の音楽を...奏でたい!」
「なら、最初からそう言えばいいのよ」
途端に湊は優しい笑顔でそう答える。
「そうだよ!紗夜がいなきゃRoseliaは成り立たないって」
「リサ姉の言うとおりですよ!あこも紗夜さんともっとバンドやりたいです!」
「...私も氷川さんと...もっと演奏したいです」
「皆さん...」
氷川はまた泣きそうな顔だ。
「俺の言ったとおりだっただろ?...いい仲間じゃねーか」
「ええ、最高の...仲間です!」
そして氷川は今日何度目かの涙を流す。
もう、空から雲は消え優しい夕焼けが本当の意味での始まりを迎えた少女を照らし続けるのだった...
ひとまずRoselia編はここら辺で終了となります。これからはそろそろポピパに沙綾を入れるための話を始めます。