やはり俺がバンドを組むのはまちがっている 作:静寂な堕天使クロノス
最近また別ゲーやってたせいでバンドリの腕落ちました......
でもドリフェスでは友希那さんを見事に10連で当てれたので幸せすぎます.....
小町に一色が加入したところまでを話し合えた俺は現在一息ついて休憩しているところである。
「それでさ.....」
俺がコーヒーを飲んでいると小町が少し聞きづらそうに切り出す。
なにが言いたいのかそれだけでわかってしまう。
それは.....
「お兄ちゃんあんなに楽しそうだったのに.....なんで、なんでやめちゃったの?」
その理由を知る人間は本当に少ない。
「そうだな.....いつまでも隠しててもなんも変わんねーだろうからな」
「.....」
小町は一言も言葉を発しない、ただ俺の話を聞くための覚悟を固めているのだろう。
「とりあえず続きから順を追って話すからそう身構えなくてもいいぞ」
そう言って俺は話し始めた。
天才と呼ばれた愚かな男の末路を.....
*****
一色が加入してからの日々は本当にあっという間に過ぎていった。
多くの思い出もあっという間に積み重なった。
あの後必死に練習してspaceのオーデションを受けた。
最初はやはり緊張してうまくできない部分も多かった、失敗も怖かった。
だから結果は不合格だった。
しかしそんなことで諦めてられないと俺たちは再び練習を重ねてオーデションを受けた。
「今回こそ合格しようねっ!」
「ああ」
「ええ、今度こそあのステージに立てるようにしましょう」
「そうですね!」
ちなみにだがなぜか一色はこのころから俺と雪ノ下にだけは敬語で接している。
俺的には先輩呼びも普通にやめてほしいんだけど.....
「まずは全力で楽しもー!」
由比ヶ浜は自分が1番緊張しているくせに俺たちを励まそうとしてくれた。
その後3人で話し合っている様子を見ながら俺は改めてこのバンドで演奏ができることがどれほど奇跡的なことだったかを感じた。
「ヒッキー?さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?」
「ん、いや、ありがとな」
「え?なに急にどうしたの、きもいよ?」
考えてたことがそのまま口に出てしまったことに今更ながら気づく。
うっわまた黒歴史増えたんだけど.....
そんな風に俺が暗くなっていると雪ノ下たちが俺の方を向く。
「まだその言葉を言うには早いのではないかしら?」
「そうだよ!このオーデションに合格してから言ってよ!」
「そのあと私たちに感謝の意を表して甘いものをおごってくれてもいいんですよ?」
「いやおごらないし.....」
「それじゃあ次のバンドの方準備お願いします」
「次ってあたしたちじゃん!早くいこう!」
「ちょ、ちょっと由比ヶ浜さん.....」
「引っ張らないでよー」
そんな調子で慌ただしく部屋を出て行く3人を追いながらふと俺は本当に合格したら甘いものくらい奢ってもいいかもしれないと思うのだった.....
その後俺たちは今までで1番な演奏をしたと胸を張れるような演奏ができた。
ただただ楽しくて、熱くてそんな思いを乗せて奏でた音が他の人にどう聞こえたのかは知らないが俺たちにとっては世界で1番な音だった。
だから結果が合格だった時も不思議と驚かなかった。
*****
「はぁ.....すごかったね」
「ええ、熱かったわ.....」
「私もうヘトヘトですー」
俺たちは初めてのステージに立って今はそのあと控え室で座り込んで余韻に浸っている。
「このまま、どこまで熱くなれるんだろうな.....」
俺は独り言でそんなことを呟いた。
しかしその言葉は聞こえていたようで
「それを確かめるために私たちはバンドを続けていくのでしょう?」
「ああ、そうだな」
「きっとあたしたちならどこまでだっていけるよ!」
「そうです!きっと、1番のバンドになれますよ!」
この時は俺は本気でこのままどこまでも行けると本気で思った。
その後も色んなことをみんなで経験した。
この1年後には学校の文化祭のステージにも立った。
葉山たちやゆり先輩と一緒にだ。
この2つのバンドとはspaceでのライブでも何度か一緒に立ったことがあるのでそこまで変わったことなのではないのだが文化祭というだけでなにやら普段と違ったことを意識してしまう。
そう、学校のやつらに葉山たちよりもスゲーって思わせたいという本当にくだらないものだが俺だって一応男、譲れないものがある。
「ありがとなー!!」
葉山の声が響くと会場からとてつもない声援が聞こえる。
「すごいねー葉山君たちも」
「でも先輩たちだってあれくらい盛り上げてくるんですよね?」
今年1年で俺はゆり先輩たちのバンドの人たちともだいぶ仲良くなった。
他のバンドの人とも少しくらいは喋れるようになった。
去年までじゃ考えられないような成長だ。
「まぁね〜」
「まったく葉山といいプレッシャーかけてもいつも通りの演奏までしかできませんよ?」
「いつも通りで十分君達はすごいって」
「ありがとうございます、それじゃあ頑張ってきてください」
「うん!」
そう言ってステージに出て行く先輩と入れ替わるように葉山が俺の近くに来る。
「どうだ?今日の俺たちは?」
「毎回毎回俺に感想聞きに来るんじゃねーよ」
「いいだろ?俺にとっては100人の感想よりお前の感想が気になるんだから」
「そういたこと男に言ってるといつか勘違いされるぞ.....」
「そんな意味じゃないなんてお前が1番よく知ってるだろ?」
「と言ってもなー」
「ぐふふ.....」
お前の後ろでめちゃくちゃ目を光らせてる海老名さんの視線はどうすればいいんだよ.....
「まぁいつも通り良かったんじゃないか?」
「そりゃ良かった」
「でも俺たちの演奏も負けねーからな?」
「相変わらず負けず嫌いだな、君は」
「お互い様だろ?」
「違いないな」
そういう葉山も聞いた俺も笑っている。
認めたくはないがこいつのことをライバル視してるのはもう否定しても仕方ないことだと最近ようやくそう思えるようになった。
「じゃあ俺もそろそろ準備してくるから」
「おう、楽しみにしてるぞ」
そう言って俺は俺の仲間の元に歩き出す。
「相変わらず先輩は葉山君と仲がいいですねー」
「なんだ妬いてるのか?」
冗談交じりでそう言うと一色は
「葉山君のことはもう諦めてるしいいんですよ、もっと好きなものができましたから」
「へー参考までに教えてくれ」
「このバンドに決まってるじゃないですか!」
普通の人間なら言葉の意味のまま捉えるところだが俺はもはやお決まりの一言を返してやる。
「あざとい」
「先輩もブレないですねー」
「お前もな」
「2人とも楽しそうなのはいいのだけれどそろそろ準備をしてちょうだい」
「おう」
「はい!」
そのステージからの景色はいつもと少し違ったのを覚えている。
学校で見たことあるような顔ばかりが並んでいる前でライブをやるのは少しくすぐったいものがあったがよく考えたら俺はぼっちだから関係なかかったわ。
はは.....
そんなことを考えてると雪ノ下の挨拶も終わっていたらしくもう直ぐ演奏か、目立つのはあんま好きじゃないけどやりますか。
文化祭のライブも大成功だった。
盛り上がりでいったら若干葉山たちの方が上だった気がしないでもないがあいつらはもともと陽キャ集団だし仕方ないところもあるだろう。
そんなわけで元からフェアな勝負じゃないからこれは負けじゃない、いいな悔しがって負け惜しみ言ってるんじゃないからな?
ほんとだからな?
*****
「と、まぁこんなことがあったな」
「お兄ちゃんたちでもやっぱり最初は緊張したんだねー」
「そりゃ雪ノ下はよくわからなかったけど俺や由比ヶ浜はガチガチだったぞ」
「えー他にもなんかないの?お兄ちゃん!」
本題も完全に忘れているようですっかりはしゃいでいる。
「話してたらきりがないからそれはまた今度にな。それより続き話していいか?」
「うん」
俺の言葉を聞いて小町は瞬時に真面目な顔へと戻る。
「聞きたくなくなったらいつでも言えよ?」
そんなことを言うが結局俺が話したくないだけなのかもしれない。
そう言うふうな弱い人間なのだ、俺は。
「なんだその、中3になった頃からかな.....」
*****
「そんな!君の才能でその選択はもったいない!」
「いえ、俺の音はあいつらとじゃないとダメです」
「考え直す気は.....」
「ないですから」
いい加減諦めてくれないかなこの人.....
断るのも大変なんだぞ.....
「そうかい.....」
おっ、ようやく諦めてくれたか.....
「気が変わったら連絡してくれたまえ」
そう言って名刺を出してくるあたり未練タラタラと言ったところだろうか。
「はい」
何はともあれこれで断り切った。
最近自主練してるとこんなことが多くてかなわない。
狙ったかのように1人の時に来るもんだからなぁ。
いやまぁそれはむしろありがたいんだけどさ。
別にやましいことがあるわけじゃないが知られないならそれがいいだろう。
「さてようやく帰ってくれたし俺も帰るか.....」
うんざりしながらも俺はどこか嬉しさを感じてもいる。
それだけの人が"俺"の実力を認めてくれているということだろ?
でも俺はこのバンドをやめる気は無い。
それだけのものを積み上げてきている。
もうそんな簡単に壊れたりするものではなくなってきている。
「んでもって次の練習は明日だったよな.....」
この時には俺の変化を俺は大して深く考えないことにしたのだった。
それから2ヶ月くらいがたって3回目の文化祭のシーズンとなった。
もちろん俺たちは今年もステージに立つことになっている。
そんなわけで俺たちは練習に励んでいるわけなのだがそのある日にいつもと違った出来事があった。
「いやー文化祭楽しみだねー」
「そうだね!今年こそは私たちが1番盛り上げよう!」
「2人とも気持ちばかりで焦らないようにね」
「わかってるってばー」
「そうですよー私たちだって子供じゃないんですからー」
「いやお前たちならどうかわからないだろ.....」
「あら?この間急に練習にはなかったアレンジを入れたのは誰だったかしら?」
「いや、あれはだな.....まぁいいだろ盛り上がったし」
「だからタチが悪いのよ」
「次からは気をつけます.....」
「あははっ!結局ヒッキーが怒られてるじゃん!」
「あなたも気をつけてね」
「うう、はい.....」
「結局みんな怒られちゃいましたね」
いつもの通り俺たちはくだらないやり取りをしながら片付けをしてスタジオを出た時のことだ。
この間スカウトを断った人が待っているのが見えた。
(なんだよ....またいるのか)
正直俺はあいつらにあの内容の会話を聞かせたくは無い。
「悪い、やっぱ俺もう少し練習したいから先帰っててくれ」
「先輩がそんなことを言うなんて珍しいですね、変なものでも食べましたか?」
「これでは明日はきっと吹雪ね」
「いや、雪ですら無いのかよ.....」
「ヒッキーもそれだけやる気が入ってるってことだよね!」
「まぁな」
「それでは私たちは先に行きましょう」
「じゃあな」
「ええ、また」
そう言って雪ノ下たちが外に行ったのを確認してから俺は望まぬ待ち人の元へと向かう。
「またスカウトですか?」
「ああ、やはり君のあの才能を諦めることができない」
「俺は答えを変える気は無いですよ?」
「そうか、それは残念だ」
今回はあっさり引き下がるのな、そっちの方が楽でいいけど。
「さっき出ていった子達が君のバンドのメンバーかい?」
「ええ、少なくともあいつら以外と演奏するなんて考えられませんね」
「1度だけでも演奏してみないか?それからでも遅くは無いと思うんだ」
「もう俺以外はメンバー決まってるんですか?ずいぶんせっかちですね」
「あと君が、君さえいれば今まで見てきたどのバンドよりもすごいバンドになるはずなんだ!」
「言ったでしょう、あいつら以外考えられないって」
「頼む....それでダメならこちらも諦める.....」
1度だけか.....
「それで諦めてくれるのなら.....」
「ならこの時間は大丈夫かい?」
この時間は.....午後から練習だが十分に間に合うだろう。
「大丈夫だと思います」
「ならよかった」
その後詳しい時間などを伝えられてその後家路の途中俺はなぜか少し罪悪感のようなものを感じていた.....
*****
「まぁ長くなるから一旦ここで言いたいこと受け付けるぞ?」
どうせ小町は言いたいことがあるだろうと勝手に察してそう言うがその予想は当たっていたようで.....
「お兄ちゃんスカウトされてたの!?」
「一応な」
まぁ断ったからこうしてのんびりしているのだが
「そんなこと一度も聞いたことなかったよ.....」
「一応親父たちには言ったんだけどな」
基本うちの両親は忙しくてライブにもほとんど来ないがそれでも何回か見に来てくれたことがある。
そのため一応俺の演奏も素人ながら知っているはずで珍しくそのことだけは褒められたのを覚えている。
「え!?じゃあ知らなかったの小町だけ?」
「まぁ、そうだな」
「みんなしてそんなことを黙ってるなんてひどいよー!!」
「いや、だって言ってもしょうがないことだしいいかと思って」
「よくない!」
なにやら小町が若干不機嫌目だがそこは気にしない方向で話をして戻すとするか。
「まぁ言いたいことはあるかもしれないけど続けるぞ」
「むぅ、わかった」
まだ不機嫌そうだが小町は話を聞く姿勢へと戻る。
「まぁあとは簡単な話だ」
*****
それから文化祭も終わり(今年も当然盛り上がった)あっという間に約束の日は訪れた。
「それであなたたちが集めたっていう人たちはどこですか?」
「そう慌てないでくれ、少なくともみんな君と同等の腕を持つと思うよ」
「そうですか」
正直なところ早く終わらせて帰りたい、もとい練習に行きたいところである。
今日のことは雪ノ下たちには伝えず用事で遅れるかもしれないとだけ言っておいた。
「お!この子が噂の子ですか」
「ああ、今は14歳だよね?」
「はい」
どうみても俺よりも5歳は年上そうな人が話しかけてくる。
「よろしくな!」
「ええ、よろしくお願いします」
優しそうだがテンション高そうな人だった。
その後もあと3人の人を紹介されいずれも俺より3歳は年上であった。
もしかしたら俺が異常なのかもしれない。
「じゃあ彼と音を合わせてみてくれないか?」
「はい!わかりました!」
俺と最初に話した人がリーダー格らしく場を仕切っている。
「じゃあ大丈夫かな?」
俺にそう確認を取ってくるが早く終わらせたい俺としては断る気がそもそもない。
「はい、大丈夫です」
その後1時間ほど一緒に演奏して初めてであるのに妙に上手くあっているような気がした。
あの人が言った通り腕は確かなようだ。
だが、それでも雪ノ下たちには及ばない。
その結論はやはり変わらなかった。
「八幡君、ちょっといいかな?」
休憩中にリーダー格の男の人が話しかけてくる。
「ええ、なんですか?」
「いや、単純にすごいなって思ったんだ」
「ありがとうございます」
「まだ君は中3なんだろう?羨ましいなその年でそんなに弾けるなんて」
「はぁ」
いまいちなにが言いたいのかわからない。
「君は今、迷ってるんじゃないのかな?」
その人は唐突に真面目な顔をしてそう切り出す。
「なんのことですか?」
「いや、俺としてはね君と一緒にこのまま演奏を続けたいところなんだけど君もバンドに所属してるんだろ?」
「君も?」
「ああ、俺も高校から組んでいるバンドにまだ所属してる、ただもう話は済んでいて今年で終わりにすることになっている」
「.....俺は今のバンドをやめる気は無いですよ」
「俺もそう思ってたよ」
あまりにも感情を隠さなかった俺の言葉に苦笑しつつも話しを続ける。
「俺も最初は断ってたんだけどね、バンドのみんなに話したらなんて言われたと思う?」
「いや、行ってこい的なことですか?」
「まぁそういう感じなんだけどね、この間あった時に本音を話してくれたんだ」
「本音?」
「俺と演奏するのが辛くなっていたそうだ」
「え.....?」
予想外すぎる答えに思わず何も反応できずにいると取り繕うようにその人は続ける。
「いや、別に仲が悪くなったとかそういうわけではないんだけど、俺を追いかけ続けるのが辛くなったと言っていたよ」
「.....」
心の中ではあいつらはそんなことありえないと思いつつもどこか否定しきれないのではと思う自分もいる。
「とにかく君がバンドを抜ける気がないにしても一度話し合ったほうがいい、そうしないともしかしたら取り返しのつかないすれ違いをしてしまうかもしれない」
その人は話をそう締めくくった。
次には笑顔が戻っていたが一瞬何か悲しげな顔をしていたように俺は思えた。
「さ、じゃああと少しがんばろーぜ」
そう言って俺の元から去っていくその人を俺は呆然と見ることしかできなかった.....
その後の演奏もイマイチ集中しきれずに時間が過ぎていった。
気づいてみると終わった時間は予想よりも遅くてこのままだと練習に30分近く遅れてしまうかもしれない。
「じゃあ待ってるぜ」
そんなことを口々に言われたが上の空だったため返事は相当に適当なものになっていただろう。
「はぁ、この分だと雪ノ下に説教かもな.....」
さっきの人の話はどうも頭について回る。
そのことは考えたくなかったので今は別のことを考えて気を紛らわせようとしてる。
どうしてありえないとわかってるのに不安になるのだろうか。
あんなにも毎回みんなで楽しく練習できているというのに。
そもそも俺について来ようとしてるなんて傲慢な話じゃないだろうか。
そうだよな、また恥ずかしい勘違いをしてしまうところだった。
「遅れて悪かっ.....」
俺がそう言いスタジオに入るとそこには修羅のような顔をした雪ノ下の姿があった。
「比企谷君?あなたどうしてこんなにも遅れてきたのかしら?」
え?俺が遅れたのって30分くらいじゃ.....
そう思い時計を見るとその予定を大幅に超えて俺は1時間近く遅刻していた。
考えながら歩いていたのでいつもより時間がかかったのかもしれない。
「とりあえず先ずは理由を聞かせてもらおうかしら?」
「はい.....」
その後俺は遅れた理由だけははぐらかしたものの10分間ほど説教を受ける羽目になってしまった。
「今日はこれで許してあげるけど次はないわよ」
雪ノ下もこれ以上練習時間を無駄にする気は無いらしくその程度で済んだ?のでよかった。
「先輩最長記録更新じゃないですか?」
「うっせ」
「でもヒッキー前から遅刻多くてゆきのんに怒られた回数もダントツだよね」
「うっせ」
笑いながら俺をいじってくる2人にはめんどくさいので適当に反応して俺は準備を進める。
そう、俺たちは少なくともまだこうやって笑いあえるのだ。
その後練習が終わったが特に問題もなく進んだ。
「はぁ」
「同士のため息なんてついて、つかれたの?」
そりゃ一日中ギター弾いてたらな.....
「いや、大丈夫だぞ」
「でも休みはしっかり取ってくださいよ?」
「お前たちに素直に心配されると怖いんだが」
「先輩にだけは言われたくないですね」
「俺はいつでも素直だろうが」
「でも今日の練習でもぼーっとしていることが多かったわ、体調管理はしっかりとしてちょうだい」
「無視しないで?」
こいつらはすぐに俺の言葉を無視する癖があるな。
まったく俺みたいにどんなことでも受け止められるメンタルを鍛えてほしいものだ。
この時まだ俺は何も知らなかった、知っていると思い込んでいた。
そしてある日全ては動き出して全ては終わってしまった.....
その日も練習だが俺は数学のテストの点が酷すぎて夏休みの特別補習に参加しなければならないということになっているので1時間ほど練習に遅れると伝えてある。
一応受験生だからまぁ仕方ないことではあるのだが数学に関して言えばどれだけやってもできるようになる気がしない。
「じゃあ今日はここまで次回だ最後だからしっかりと出席してね」
その言葉が終わると同時に俺とあと数人の生徒は帰り支度を始める。
その時に何が起こっていたかも知らずに.....
spaceについたとき入り口から俺を何度もスカウトに来た人が出てきた。
「また来てたんですか?」
「今日は君には用はないよ、ただ説明をしに来たんだ」
「まさか、あいつらに!?」
「ああ、3人に君に話した内容を話したよ」
「なんでそんなことを!」
「どのみち避けては通れないことだろう?」
あの人の言う通りだった、俺はもっと早くに自分の口で相談するべきだった.....
それ以上会話をする必要はないので俺は急いでスタジオへと入る。
「はぁはぁ」
「あら、比企谷君」
雪ノ下はいつもと口調を変えずそう言う、しかしその側の2人はいつもより顔がこわばっている気がする。
「聞いたよ、スカウトされてたんだって」
「.....ああ」
「断り続けたんですか?」
「.....ああ」
「あなたはなんでそう言ってくれなかったの?」
「俺はこのバンドをやめる気がなかったから....」
「それでも相談してくれてもいいじゃん.....」
「いやでも!」
「さっき、先輩が他の人と演奏しているところを見せてもらいました」
あの一回きりの.....演奏を.....?
「正直自信をなくしちゃいましたよ.....」
「どう....してだよ?」
「だってあたしたちよりみんな.....上手かった」
「でも!」
「ねぇヒッキーあたしたちみんな頑張ってたんだよ」
「どう言う意味だよ?」
「ヒッキーには内緒でみんなで練習したりしてた.....そうしないとヒッキーがどんどん先に行っちゃうから......」
俺は.....追いかけられていた......ってことなのか?
あの人が言ったことが俺にも......起こっているのか?
「それでも、先輩はどんどん私たちを置いていってしまって.....」
やめろ、その先は言わないでくれ.....
「私たちも少し疲れちゃいました」
雪ノ下、お前は、お前はどうなんだ?
「.....この際だから隠さず言うわ、私はあなたがスカウトされたと聞いたとき最初に悔しいと思ったわ。だって、あなただけがスカウトされたってことは私たちはあなたと同じところに立てていないということでしょう?」
「そんなことは.....」
「きわめつけはあの演奏よ、私たちの演奏よりレベルが高かった.....初めての演奏でよ?」
「でも、俺は.....」
「あなたがどう感じたのだとしても私たちにはそう思えてしまったの.....」
「ねぇ、比企谷君?どうしてあなたはそんなに先に進め続けられるの?」
「俺は.....」
「どうしてさっきから何も言ってくれないの?ねえ、ヒッキー!答えてよ!」
「どうして.....なの?どうして私たちはあなたに追いつけないの!」
全員がその場で溜め込んでいた感情が爆発して誰も抑えることができなかった。
弱い俺はそれだけでその先も終わってしまったと思ってしまったのだ。
俺がいない方が、この3人は楽しんでバンドができるのではないかと思ってしまった。
何も話してすらいなかったのに.....
「なら.....俺は.....もう、やめる」
「何を言っているの?」
「俺はこのバンドを.....やめる」
そう言って俺は歩き出す、入口へと。
俺は間違いに気づかず話し合いもせず。
この雰囲気に流されて俺もイライラしていた。
「ねぇ、なんでそうなるの.....?」
「俺と演奏してたくないんだろ!」
「そんなこと言ってないじゃない!」
もうお互いに引き返せなくなっていた。
お互いの感情は同じなのに会い入れることなくすれ違った。
「じゃあな」
もう2度と演奏する気もないとさえこの時は思っていた。
実際に声にもそんな感情が出ていたのだろう。
もう由比ヶ浜ま雪ノ下も何も言ってこなかった。
「待ってよ!八幡!!」
ただ、その場で少し冷静になれた一色は追いかけてきたが俺はその言葉さえを無視した。
それがとどめだったのか一色もその場で座り込んでそれ以上は何も言ってこなかった。
これが俺のお終いだった。
*****
「まぁ、これが俺の.....抜けた理由だな」
「そんなことがあったんだね.....」
そのあと俺たちはお互いに自分の間違いに気づきあいつらは俺をもう一度バンドに戻らないかと誘ってきてくれるが俺は罪悪感ともう一度繰り返してしまうのではという恐怖でその誘いを断り続けている。
「スカウトも結局断っちゃったんだよね」
「ああ、しばらく誰とも演奏したくなかったしな」
「でも、今お兄ちゃんは戻りたいって思ってるんだよね?」
「ああ、それだけは確かだ」
「なら、まだ戻れるってことだよね!」
「ああ、きっと.....」
「お兄ちゃんは不器用で捻くれてるからね」
「そこまで言うことないだろ」
「だから!小町も手伝ってあげる!」
「.....ありがとな、小町」
そうだったな、俺はもう1人じゃないんだよな。
こんなにも身近にも俺の味方はいるのだ。
「小町、俺今度あいつらに頼むつもりなんだ」
「そうだよ!お兄ちゃんも一緒にspaceに立とう!」
「ああ」
また一つ戻らなきゃいけない理由ができた。
俺はもう、誰も傷つけないし、後悔もしない。
そんな選択を、俺の本物を取り戻したいのだ
不思議と話した後はすっきりしていて俺は自分の中にもう絶望がないことをここで自覚した。
また始まる、そんな希望がキラキラしたものが胸に満ちているのを感じることができたのだった......
今回はここまでになります。
次からはようやくみんなで海です!
今回は前回と違った感じの予告にしましょうかね、いろいろ試してみて気に入ったのを定着させます。
感想評価など励みになるので是非残してください。
「はぁ、なんで俺が次回予告なんてしなきゃいけないんだよ.....」
「お兄ちゃん、文句言わないでさっさとやるよ!」
「わかったわかった、えーじゃー次回は海いきまーす、以上」
「お兄ちゃん流石にそれはダラけすぎだって!」
「いや事実なんだしいいだろ」
「ちょっ!お兄ちゃんそんなんで本当に終わらないでってー!あ、え、えーと次回のやはり俺がバンドを組むのは間違っているは『海でも比企谷八幡は変わらない』です!ちょっとお兄ちゃん待ってよー!」