【完結】Transformers the Gate~機械仕掛けのオプティマス~   作:詠符音黎

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第1話

 今回の物語はここ、二〇一〇年の日本、秋葉原から始めよう。

 

 そこは秋葉原でも有名なラジオ会館、そのとあるフロアに、多くの人々が集まっていた。

 そこに集まる人々はみな、どこか野暮ったい印象の格好をしている。そんな人々の前に立つのは、ひと目でアニメのコスプレだと分かるような、派手な格好をした女性。

 その女性は、マイクを持ち、手に紙をもってもったいぶったような顔を群衆に見せている。

 

「それでは発表します。今回の優勝作品は……」

 

 その女性はもったいぶるように溜めを作る。そして、どこからともなくフロア全体にドラムロールが鳴り響く。

 その妙に長いドラムロールが終わった瞬間、女性はマイクに向かって高らかに言った。

 

「未来ガジェット研究所制作! テレトラン1です!」

「いよっしゃああああああああああああああああああああ!」

 

 その言葉と同時に、雄叫びを上げた白衣の男が一人。

 彼の名は岡部倫太郎。

 今その名を叫ばれたサークル、未来ガジェット研究所のラボメンナンバー〇〇一でありリーダーである青年である。

 

「フゥーハハハハハハ! 我が発明がついに、ついに世界征服の第一歩を歩んだのだ!」

「それを言うなら『我々』であると思われ!」

 

 ポーズを決めながら言う倫太郎にそう言うのは、ラボメンナンバー〇〇三であり、倫太郎の大親友、橋田至。通称ダル。

 至はそんな冷めた台詞とは裏腹に、言葉に興奮を隠せない様子であった。

 

「ふっ、そうだったなダルよ。これは我々未来ガジェット研究所の大いなる発明の一つ。その開発にはラボメン誰が欠けてもなしえなかっただろう」

「まゆしぃは何も手伝ってないけどねー」

「右に同じ」

 

 一方で、あまり興奮してない様子の女子が二人いた。

 一人はラボメンナンバー〇〇二、椎名まゆり。

 もうひとりはラボメンナンバー〇〇四、牧瀬紅莉栖。

 二人共それほど先程の発表に驚いていない様子であった。

 

「何をそんな落ち着いているのだ貴様ら! これは歴史的進展なのだぞ!」

「街の発明品品評会でしょ。そこまで言うこと? まあ、確かにあの変な未来ガジェットが優勝するなんて思わなかったけど」

「変とは何だクリスティーナ! あれは俺達が作った未来ガジェットの中でも一番の性能をもった優れモノだぞ!」

「ティーナ言うな! というか私、あれが結局何をするためのものかよく分かってないんだけど」

「あれは携帯電話とかの電波をめっちゃ拡張できる端末だお。あれがあればダウンロードもアップロードもめっちゃ早くなってムフフな画像も手に入れ放題! 的な?」

「凄いけど素直に褒めづらいわね……」

 

 説明する至に呆れ顔をする紅莉栖。

 その一方で、倫太郎は未だ興奮冷めやらぬ状態でいた。

 

「ふん、偉大なる発明を理解できない凡俗めが。この鳳凰院凶真の偉大なる閃きとダルの手腕によって誕生したこのテレトラン1は、いずれ世界を変革する足がかりとなるのだ!」

「さっすがテンション高いねぇ岡部倫太郎。ま、気持ちは分かるよ。私も勲章貰ったときは嬉しかったしねー」

「勲章? 鈴にゃんはなんか表彰されることがあったのかにゃ?」

「ん? あーまあーいろいろとね。ははは!」

 

 そう言って笑ってごまかしているのは、ラボメンナンバー〇〇八であり、バイト戦士の通称を持つ阿万音鈴羽。そして、そんな鈴羽を不思議に思っているのは、メイド喫茶「メイクイーンニャンニャン」のナンバーワンメイドであり、ラボメンナンバー〇〇七であるフェイリス・ニャンニャンだ。

 

「凄いです、さすが岡部さん……!」

「……携帯、便利になるならいい……」

 

 その脇で素直に簡単している様子なのは、美少女のような外見を持つ男子、漆原るか。ラボメンナンバーは〇〇六。

 とてもか細い声で喋りながら携帯をいじっているのは、そのメールを打つ速さから倫太郎から「閃光の指圧師(シャイニングフィンガー)」と名付けられた桐生萌郁。ラボメンナンバーは〇〇五。

 以上、自身を含めて八名のラボメンを倫太郎はその会場に全員連れていていた。

 すべては、その日に行われた、秋葉原発明品品評会のためであった。

 倫太郎達は前々から作っていた発明品をその品評会に出した。その結果、最終選考まで残り、晴れて優勝することになったのだ。

 

「あのー、そろそろ代表者さんに壇上に上がって欲しいのですが……」

 

 がやがやと話す倫太郎達に、司会の女性が困ったように言う。

 そこでやっと、倫太郎達は自分達が表彰のために呼ばれているのに気づいた。

 

「ほら、岡部行ってきなさい」

「お、おう。任せろ、この鳳凰院凶真が、見事にトロフィーと副賞とやらを受け取ってやろう」

「そういや副賞って何貰えるんだろうねー。ずっと秘密って言われてたから私知らないや」

「まゆしぃはー、きっととってもかわいいものだと思うのです」

「それはお前の願望ではないか。まあいい、受け取りに行けば分かる事だ」

 

 倫太郎は得意げな顔で壇上に上がっていく。

 そこで司会の女性は一安心したのか、先程の困り顔から少しだけほっとしたような顔を見せると、すぐさま笑顔を作り言った。

 

「おめでとうございます! 今回の発明によって、あなた達は見事優勝を勝ち取りました! その商品はなんと……こちらです!」

 

 そう言って司会の女性はいつの間にかその場に用意されていた、白いシーツの被せられた台の前へと移動し、そのシーツを勢いよく剥ぎ取った。

 

「……?」

 

 だが、そのシーツの中から出てきたものを倫太郎は疑問符を浮かべた。

 それは大きなカギだった。人の上半身ぐらいはある大きさで、明らかに模型だ。

 それがどんな意味を持つか、倫太郎は理解できなかった。

 

「おい、これは一体……」

「はい! ということで、未来ガジェット研究所さんにはこれ! 往年の名車、一九七六、シボレーカマロをプレゼントします!」

「は? カマ……?」

「はい! つまりは、車をプレゼント、ということです!」

『え……えええええええええええええええええええええ!?』

 

 ラボメン達がみな驚きの声を上げた。

 そうしてこの日、倫太郎は図らずとも自分の自動車を持つことになったのだ。

 

 

   ◇◆◇◆◇

 

 

 秋葉原から電車で少し揺られ、池袋駅で降りある程度離れた場所に、倫太郎の実家はあった。

 静かな住宅街の中にある、少し古びた八百屋。そこが倫太郎の家だ。

 その家の庭に、その寂れた住宅街には少し不似合いな、煤けた、黄色いストライプの入った古い自動車があった。

 それこそ倫太郎が勝ち取った車、シボレーカマロである。

 その車の中から、倫太郎とまゆり、そして紅莉栖が出てきた。

 

「ふう……そこそこまともな運転するじゃない、あんた」

「ま、まあな。この鳳凰院凶真にかかれば、車の一つや二つ造作もない」

「ペーパードライバーだったからすっごい緊張してたよねーオカリン」

「なっ、何を言うまゆり! この俺が車の運転で緊張など……!」

「おっ、帰って来たん?」

 

 車の側でわいわいと話す三人を家の方向から歩いてきて出迎えたのは至だった。

 

「あ、ダルくんやっほー」

「やっほーまゆ氏。それで、初ドライブの感想はどうだったん?」

「うむ、古いがなかなかのものだったぞ。ハンドルの位置が日本車とは左右別なのはさすがに慣れるのに時間がかかったが、車としては申し分ない」

『サンキュー!』

「うおっ!?」

 

 倫太郎が車を評価したかと思うと、突然車についていたラジオが鳴り響き至は驚く。

 

「あーそうだ……ダルよ、後でちょっと見てくれないか、車は問題ないがどうもラジオが壊れているようで、たまに勝手に鳴り出すんだ」

「はーびっくりした。そういうことなんね」

「そうなのよねー、私がドライブ途中に一旦降りたときもなんかメロディアスな曲が勝手に流れたりしたし」

「わかった後で見ておくよ。ささ、みんな今日は暑いし中で扇風機にでも当たって涼むお」

「お前なぁ……ここは一応俺の家だからな! 今両親が旅行でいないとは言え!」

 

 倫太郎の言う通り、彼の実家には彼の両親は不在だった。

 倫太郎が品評会で賞を貰ったのとほぼ同時期に、商店街の福引きで海外旅行を当てたのだ。

 それゆえ、現在倫太郎の家の八百屋は休みで、車を置きに来た倫太郎達はそのまま家でゆっくりすることにしたのだ。

 

「久々にオカリンの家に泊まるの楽しみなのです、トゥットゥルー」

「おい、他の面子はともかくまゆりは近くに実家があるではないか」

「えーそんな意地悪言わないでよーダルくん達は泊まるのにまゆりだけ仲間はずれは嫌だよー?」

「だからそもそも他の奴も泊めると決めたわけではないぞ!?」

「もう、心の狭い奴ね。いいじゃないたまにはラボ以外でこういうことするのも」

 

 まゆりの言葉に困惑する倫太郎に対し、軽くため息をつきながら言う紅莉栖。

 その側の縁側では、至が品評会で優勝した未来ガジェット、テレトラン1をいじりながら携帯を操作していた。

 

「ふんふーん、やっぱりこれは使える発明だお。携帯を携帯できなくなることを除けばこれほど便利な未来ガジェットもないし」

「それ、一番どうしようもない欠点だと思うけどね」

 

 紅莉栖がぴしゃりと言った。

 

「牧瀬氏ははっきり言うなあ。にしてもおかしいな。なんかテレトラン1、さっきまで起動してなかったはずなのに動いていたような……」

「多分忘れてただけだろう。それよりも中に入るぞ」

 

 そんな話をしながらも、家の中に入っていく倫太郎達。

 庭には、エンジンの切られた車がぽつんと取り残された。

 

 

 その日の深夜。

 

「……んあ?」

 

 倫太郎は庭の方から聞こえてくる音で目を覚ました。

 どうやらそれはエンジン音らしかった。ブルルンと、古い外国車特有の大きなエンジン音が鳴り響く。

 

「……なんだこんな時間に……んん!?」

 

 倫太郎は庭の方を見て急に目を覚ます。

 そこには、車が勝手に外に向かって動いている姿があったのだ。

 

「なーっ!?」

 

 倫太郎は大声を出して急いで外に向かう。

 その倫太郎の声で、紅莉栖とまゆり、至も目を覚ます。

 

「ん……もううるさいわね……何事?」

「何事もあるか助手! 車が盗まれたんだ! ダル! 警察に急いで連絡してくれ!」

「おっ、おおっ!? マジで!? りょ、了解!」

「そんなー、貰ってすぐなのに盗まれちゃったのー?」

「くそっ! そうはさせるか!」

 

 倫太郎は靴を履き玄関を飛び出すと、近くにあった自転車に飛び乗り、車を追った。

 

「ちょ!? あんた自転車であの車追うつもり!? って、もう聞こえてないか……」

 

 紅莉栖の言葉も耳に入らず、倫太郎は車を自転車で追う。

 車は幸いなことにか、それほどスピードを出すことなく次々と右折、左折を繰り返したため自転車でも追うことができた。

 しかし、やはり車と自転車である。どうしても速さの差はあり、倫太郎はどんどんと離されていく。

 

「くそっ、どこだ……!」

 

 倫太郎はとある公園に差し掛かったところで完全に車を見失い、頭を左右に振る。

 

「せっかく我が未来ガジェット研究所が評価された証なのに、盗まれてたまるか……! こうなれば、車をずっと見張っておけという内容のDメールを……!」

 

 倫太郎は携帯を取り出す。

 Dメール。

 それは、偶然倫太郎達が発明した、過去へと送れるメール。

 色々と制約はあるものの、倫太郎はそれで過去改変を既に幾度か成功させている。そして、そのことにより自分が歴史が変わっても記憶を保持できる、リーディングシュタイナーを持っていることも知った。

 

「よし、今は……零時か。では零時になる前に車を見張っておけというDメールを……」

 

 と、そのときだった。

 公園の奥の雑木林から、光が伸びていたのだ。

 その光は空に向かって伸びており、曇り空に見たことのないエンブレムを映し出している。

 

「なんだ、あれは……?」

 

 倫太郎は雑木林の中に入っていく。

 すると、そこには驚くべきものが“いた”。

 

「なっ……なんだあれは……!?」

 

 それは、巨大なロボットだった。全長数メーターはありそうなロボットで、そのロボットが空に向かって光を掲げている。

 その色は黄色く、煤けており、その色合いに倫太郎は見覚えがあった。

 

「あの色合い……俺の車と同じ……いや、まさか……そんなバカなことが……」

 

 倫太郎はそう言いながらも、いつしか携帯をロボットに向けていた。

 そして、携帯のカメラ機能でロボットを撮る。

 そんなとき、ウーウーというけたたましい音が、倫太郎の耳をつんざいた。

 

「っ!?」

 

 パトカーのサイレンが、倫太郎の背後から聞こえてきたのだ。

 それを聞いて振り返る倫太郎。

 そこには、いつの間にか一台のパトカーがいた。

 

「けっ、警察!? もう来たのか!? そ、それより見てくれ! あそこになんだかでかいロボットが――」

 

 その瞬間だった。

 パトカーが、倫太郎を弾き飛ばしたのだ。

 

「うっ!? な、何をする!?」

 

 倫太郎はお腹を抑えながらも起き上がり、パトカーに怒る。

 だがパトカーはなおも倫太郎を弾き飛ばそうと接近してきて、倫太郎はそれを避けようと後ろに下がり、いつしか側の木に背中がつく。

 

「うっ!? わっ!? な、なんなんだ一体!?」

 

 倫太郎が困惑しながら口にする。

 その瞬間だった。

 目の前のパトカーがみるみるうちに変形し始めたのだ。

 それは、複雑な変形をしながらもあっという間に二足歩行の巨人となってしまった。

 

「な……!?」

 

 倫太郎は言葉を失う。

 パトカーから変形したロボは、倫太郎を片手で木に押し付け、言った。

 

「テレトラン1の開発者、鳳凰院凶真だな!」

「えっ……えっ!?」

「鳳凰院凶真とは貴様のことだな!」

「あっ……ああっ……」

 

 目の前のパトカーから変身したロボットは倫太郎に名前を聞くと、さらに倫太郎を圧迫するように、木に押し付け続ける。

 

「ぐっ……!?」

「言え! テレトラン1はどこに――」

 

 目の前のパトカーのロボットが言い切る前だった。そのロボットは、思い切り顔を殴られた。

 先程まで倫太郎が目にしていた、黄色いロボットに。

 

「へ? えっ?」

 

 倫太郎は訳も分からずその場に立ち尽くす。

 殴られたパトカーのロボットは、大きく吹き飛び公園に大きな跡を作る。

 一方で、殴った方の黄色いロボットは、倫太郎の目の前で変形した。倫太郎が手にした、シボレーカマロに。

 車に変形したロボットは、倫太郎の目の前で扉を開ける。

 

「……乗れって、ことか?」

 

 倫太郎はその意図を理解し、車に乗り込む。

 そして、倫太郎が乗ると同時に車は急発進し公園から飛び出す。

 倫太郎が後方を見ると、パトカーのロボットが再びパトカーに変形し、倫太郎達を追い始めていた。

 倫太郎の車は逃げる。パトカーが追う。

 そこだけ見れば倫太郎が何か交通違反をしたかのように見えるだろう。

 深夜の街中をあちこち曲がりながら逃げる倫太郎の乗ったシボレーカマロ。

 やがて、シボレーカマロは街の外れにある廃工場へと逃げ込む。

 

「…………」

 

 息を呑む倫太郎。その側を、パトカーのサイレンが近づいていき、そして遠ざかっていった。

 その隙を見て、飛び出す倫太郎の乗ったカマロ。

 そこで大きく差をつけたのか、パトカーのサイレンはしばらく聞こえてこなかった。

 そして、そのまま倫太郎は彼の実家へと運ばれる。

 

「岡部!? 車取り返したの!?」

「車大丈夫なんオカリン!?」

「オカリン、大丈夫なの!? 泥棒さんにひどいことされてない!?」

 

 心配そうに声をかけてきてくれた紅莉栖達。

 そんな紅莉栖達に、倫太郎は車のドアを開けて言った。

 

「はやく車に乗れ! みんな!」

「ちょ、どうしたのよ岡部? そんな慌てて?」

「いいから早く! 奴が来る!」

「奴? 奴って誰お?」

 

 そのときだった。サイレンを鳴らしたパトカーが倫太郎達の後方の視界に入った。

 

「あっ、パトカーだよオカリン。連絡した警察の人かなぁ?」

「違う……奴だ!」

 

 倫太郎がそう言った瞬間、そのパトカーは再び変形し、ロボの形をとった。

 

「きゃあああああっ!? なっ、何あれ!?」

「パトカーが! パトカーがロボットに!?」

「おっ、オカリン!? なんなのあれっ!?」

 

 困惑する紅莉栖達。

 そこで、倫太郎を乗せたカマロは扉を開け倫太郎に降りるよう促す。

 

「ああ分かったよ降りるよ降りればいいんだろ!」

 

 倫太郎はそれに従い降りると、車は変形し、黄色いロボットへと変わった。

 

「こ、今度はこっちが!?」

「ど、どうなってんの!?」

「俺にもまったく分からん……! だが一つだけ分かることがある……それは、あいつが敵で、こいつが味方だってことだ!」

 

 倫太郎がそう説明したときには、すでに黄色いロボットとパトカーのロボットは戦闘を始めていた。

 お互いを殴り合うロボット達。

 ときには拳を、ときには蹴りを。

 細い道路の真ん中で戦う二機のロボット。

 その攻防の中で、黄色いロボットは比較的相手の攻撃を避けていた。

 時折発せられる声から、パトカーのロボットのイラつきが感じられるようだった。

 そのイラつきからか、パトカーのロボットが大きく拳を振りかぶり、黄色いロボットめがけて殴りつける。

 だが、黄色いロボットはそれを、上体を逸らし間一髪のところでかわした。

 そして、そのまま伸びた腕を掴んだかと思うと、パトカーのロボットを一本背負いした。

 大きく投げ飛ばされたパトカーのロボットが飛んだ先は、細い道路の先にある空き家だった。

 空き家に突っ込み、その瓦礫の中に埋もれるパトカーのロボット。それから、そのロボットはしばらく起き上がる気配を見せなかった。

 その隙を見て、黄色いロボットはまたもシボレーカマロに変形し、扉を開けた。

 

『乗らないかい?』

 

 ラジオの音声でそう聞こえてくる。倫太郎は頷いた。

 

「さっ、今のうちに荷物を積み込んで乗り込むぞ、みんな! とりあえず、柳林神社に行こう。あそこなら夜も監視されてるしひとまず安全だろう」

「え、ええ……」

「お、おう……」

「わわ、ま、まってよー」

 

 倫太郎達は居間などに置いてあったカバンをそのまま掴み、カマロに乗り込んだ。

 そのとき、誰も気づくことはなかった。

 紅莉栖のカバンのパソコンが、こっそりすり替わっていることに……。

 

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