【完結】Transformers the Gate~機械仕掛けのオプティマス~   作:詠符音黎

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第4話

 倫太郎達ラボメンは、さっそく東京の四方へと散るように逃げていた。

 だが、その中で鈴羽と至は背中にテレトラン1を入れたバッグを担ぎながら二人ラジオ会館の屋上に向かっていた。アイアンハイドとラチェットはビルの合間に手足をつっぱらせて登っている。

 

「一緒に来なくてもよかったのに」

 

 鈴羽が言う。

 

「うーん、やっぱりタイムマシンはこの目で一度見ておきたいと思ったし。それに、タイムマシンに対トランスフォーマー用の武器があるんよね? 僕は使えないだろうけど持ってたほうが誰かの役に立つかなーって」

 

 至が答える。

 鈴羽と至は鈴羽が現代へとやってきたタイムマシンに積んである武器を取りに来たのである。

 

「じっくり見てる時間はないよ? まあ、確かに運んでくれる人がいると助かるけどね。あいつらには普通の銃はきかないけど、高速で高熱を発するAPDS弾が有効なんだ。だから、それを発射できる銃と弾をたんまりタイムマシンに積んできたんだ。一応別の場所にも隠してあるけど、どっさり積んでるのはタイムマシンの中だから」

「僕ミリオタではないからそこらへんはよくわかんないお」

「ふふっ、だろうね……さあ、そろそろ屋上だよ」

 

 そう言いながら鈴羽が扉を開ける。

 

「さ、あれがタイムマシンだよ」

「おお、しかしまさかラジ館屋上に現れた人工衛星がタイムマシンだったなんて、思いもしなかったお」

「まあ、誰も想像しないだろうねぇ」

 

 そう言いいながら、二人はタイムマシンへと近づく。

 

「待て!」

 

 と、そこで大声で二人を止める声がした。

 それは、ビルの合間を登って、屋上伝いに後ろからやってきたラチェットだった。

 

「どうしたん? ラチェット?」

 

 鈴羽達がアイアンハイドの方へと振り向く。そのときだった。

 至の耳には聞き慣れない、そして、鈴羽の耳には聞き慣れた駆動音が、人工衛星の方から聞こえてきたのだ。

 

「えっ!?」

「まっ、まさか!」

「そいつはタイムマシンなんかなじゃない! ディセプティコンの、サウンドウェーブだ!」

 

 そう、ラジオ会館の屋上に鎮座していたのはタイムマシンではなかった。

 ディセプティコンの情報参謀、サウンドウェーブだ!

 

「危ない!」

 

 気づいたときには遅く、鈴羽と至の足元にサウンドウェーブの拳が振り下ろされていた。

 ギリギリで避ける二人。

 だが、その衝撃に吹き飛ばされ、至はビルから落ちる。

 

「うわああああああああああああああああああっ!?」

「っ!? いけない!」

 

 その腕を、駆け出してなんとか掴もうとする鈴羽。

 鈴羽のその手はギリギリ間に合い、フェンスの壊れた屋上の縁で至は鈴羽に掴まれ宙にぶら下がる。

 

「うおおおおお!? 怖い! 怖いよこれ!」

「大丈夫!? 今持ち上げるから!」

 

 至を持ち上げようとする鈴羽。

 だが、その背後にサウンドウェーブが迫る。

 

「っ!? 阿万音氏逃げて! ディセプティコンが来る! 僕重たいから! 無理しないで! 阿万音氏だけでも逃げて!」

「そんなこと心配してる場合じゃない! なんとしても助ける! だって……だって!」

 

 そして、必死に至を持ち上げながら、鈴羽は言った。

 

「あなたは、私の父さんなんだから!」

「えっ!?」

 

 至が鈴羽のその言葉を聞いた瞬間、至にはサウンドウェーブが再び拳を振り上げているところが見えた。

 

「させるか!」

 

 だが、その拳が振り下ろされる前に、屋上伝いにやってきたラチェットが、タックルしサウンドウェーブと共に地面に落ちていく。

 

「ラチェット!」

「ありがとう、ラチェット! よし、今だ! よっ……!」

 

 その隙をついて、力を入れ至を屋上へと上げる鈴羽。

 屋上に上げられた至はぜーぜーと荒い呼吸をし、鈴羽もまたはぁはぁと熱い息を吐く。

 

「あ、ありがとう。助かったお」

「ううん、どういたしまして……」

「……それにしてもさっき、僕のこと父さんって……」

「あー、それね……」

 

 鈴羽はハハハと笑いながら頬をポリポリとかく。そして、至に告白する。

 

「こっちの時代に来たときにずっと隠しておこうと思ってたんだけど……そうなんだ。私の本当の名前は橋田鈴羽。あなたの娘だよ」

「ぼ、僕の……僕、ちゃんと結婚できるんだ……」

「驚くの、そこ?」

「……そ、その、聞いてもいい?」

「うん? 何?」

「僕の将来のお嫁さんって、どんな人?」

「……秘密」

 

 鈴羽は、人差し指を口にあてて言った。

 

「おいおいお二人さん、話し込んでる場合じゃないぜ!」

 

 と、そんな二人の元にやって来たのはアイアンハイドだ。

 

「さっき、他のディセプティコンがこっちの方へと向かってくるのが見えた。さすがにラチェットの爺さん一人じゃ分が悪いから、俺はそいつを止めに行こうと思う。二人は早く逃げな!」

「待って! 私も行く!」

 

 鈴羽はアイアンハイドに言った。

 

「タイムマシンはあのディセプティコンにどこかに消されちゃったけど、武器を隠してるところは別にもある。それを取って、加勢するよ!」

「鈴羽!? 危ないお!」

 

 至が鈴羽に心配そうな顔で言う。その言葉に、鈴羽は笑みを浮かべる。

 

「……ありがとう、父さん。心配してくれてるんだね。でも大丈夫。私は戦士だから。あいつらとはずっと戦ってきた。だから、今回も戦う。地球の、未来のために」

「鈴羽……わかったお……」

 

 至はうつむきながらもうなずき、被っている帽子を深めにかぶる。

 そして、鈴羽の手を掴んで言う。

 

「でも、かならず生きて帰るんだお!? タイムマシンだって、まだなくなったと決まったわけじゃないし、もしかしたら後でまた見つかるかもしれない! だから! だから!」

「……分かったよ、必ず生きて帰る。だから父さんも、絶対に、生きて」

「……ああ!」

「話は済んだな? じゃあ行くぞ!」

「ああ! 頼むよアイアンハイド!」

 

 そう言って、鈴羽はアイアンハイドの手に乗り、勢いよく一緒にビルの上から降りる。

 それを見ながら、至もまた、覚悟を決めていた。

 

「……僕も、僕にできることをしないと……!」

 

 そう言って、至はラジオ会館の階段を駆け下りていったのであった。

 

 

 地上では、ラチェットとサウンドウェーブが壮絶な攻防戦を繰り広げていた。

 

「このっ! はっ!」

 

 ラチェットはサウンドウェーブに次々と殴りかかる。

 だが、サウンドウェーブはその攻撃を避け、逆にラチェットに攻撃を加える。

 

「っと危ない!」

 

 ラチェットはその攻撃をギリギリで避けるも、防戦気味になっているのは否めなかった。

 

「くっ、こちらの攻撃が読まれているのか!」

「…………」

 

 サウンドウェーブは無言でラチェットの攻撃をさばく。

 何故か攻撃を読まれているラチェットは、追い詰めらる一方であった。

 

「ラチェット!」

 

 と、ラチェットの名を呼ぶ声がした。

 至だった。

 

「至! 下がっていろ! こいつは手強い! なぜか私の手の内が読まれている!」

「そうは言っても……!」

 

 防戦一方になっているラチェットを眺めることしかできない至。

 至は何かできることはないかと、周囲に目を配る。

 

「僕にも……僕にも何かできることは……!」

「ぐっ!?」

 

 と、そんな風に考えているとき、ラチェットはサウンドウェーブに殴り飛ばされ、至の直ぐ側なで吹き飛ばされてきた。

 

「ラチェット!」

「ぐ……至……逃げろ……」

 

 至はラチェットとサウンドウェーブの双方を見る。

 と、そのときであった。

 

「あ……!」

 

 至はとあることに気がついた。そして、それがもしかしたら勝利の鍵へと繋がるかもしれないと、至は考える。

 

「ラチェット! 少しだけ時間を作って欲しいお!」

「何か考えがあるのか!? 至!」

「うん! 多分、攻撃が読まれるカラクリが解けるかも!」

 

 そう言って、至はカバンからノートパソコンを取り出し、それをトレトラン1につないで高速でタイピングを始める。

 

「何をするか分からんが……信じるぞ、至! うおおおおおおお!」

 

 ラチェットは至を信じ、サウンドウェーブに体当たりを仕掛ける。

 それをも避けるサウンドウェーブ。ラチェットは側の店にぶつかる。

 だが、ラチェットは諦めなかった。すばやく店から抜け出すと、再び突撃を始める。

 それをまたも避けるサウンドウェーブ。そんな繰り返しを、ラチェットとサウンドウェーブは数回行った。

 そのときだった。

 

「!?」

 

 サウンドウェーブが一瞬狼狽したのだ。

 

「今だお! ラチェット!」

「任せろ!」

 

 その隙を、至とラチェットはついた。ラチェットの体当たりは今度は成功し、サウンドウェーブを大きく吹き飛ばす。

 そして吹き飛んだサウンドウェーブを逃すまいと、ラチェットは倒れたサウンドウェーブに走っていき、馬乗りになる。

 

「さっきまでよくもやってくれたな!」

 

 そして、その状態から何度もサウンドウェーブの頭を殴り、殴り、殴り続ける。

 そして最後に、朦朧としているサウンドウェーブを、キャノン砲で貫いた。

 こうして、ラチェットはサウンドウェーブに勝利を収めたのだった。

 

「ラチェット! よくやったお!」

「ああ、しかしいったい何をしたんだ至?」

「あいつ、街中の監視カメラをどうやらハッキングしてたみたいで。さっきラチェットが吹き飛ばされた問監視カメラが不自然に動いて気づいたんだお。だから、逆にハッキング仕返して関係ない画像で埋め尽くしてやったんだお!」

「なるほど、君はどうやら思っていた以上に優れた技術者らしいな、至」

「ふん、なにせ、スーパーハッカーだからね! 僕は!」

 

 至は胸を張る。

 ラチェットは感心し、腕を組んで静かに頷いた。

 

「さあここから去ろう。おそらく、このすぐ近くでオプティマスとメガトロンが戦いを始めるだろうからな」

「う、うん! わかったお!」

 

 そう言って二人は、秋葉原から離れていったのであった。

 

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