【完結】Transformers the Gate~機械仕掛けのオプティマス~ 作:詠符音黎
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ!?」
「うわあああああああああああ!」
フェイリスとるかは、声を上げながら街中を逃げていた。
その背後に迫るのは、ディセプティコンの尖兵、ジャガーのような姿をしたラヴィッジと、その背中に乗る小さな戦士、フレンジーだ。
「こ、怖いにゃあ!?」
「は、はいー!」
二人は一心不乱に逃げている。しかし、二人共足があまり早くないのと、るかが手に模造刀――倫太郎から妖刀五月雨と名付けられた刀――を持っているため、逃げ切ることができない。
そんな二人がなんとか追いつかれずに済んでいるのは、フェイリスの土地勘があるからであった。
あえて複雑なルートを通ることによって、ラヴィッジとフレンジーを撹乱しているのだ。
「だ、大丈夫なんですかこのルートで!?」
「き、きっと大丈夫なはずにゃ! 今は四の五の言わないで逃げるにゃー!」
必死に逃げる二人を、ラヴィッジとフレンジーは狩りをするかのように追いかける。
いつまでも続きそうな逃走劇。
だが、その逃走劇は、急な終わりを迎える。
「っ!」
フェイリスとるかは、行き止まりに突き当たったのだ。
「…………」
「wtlwtn、vcbmmb!」
ラヴィッジは追い詰めた獲物を今度こそ逃すまいと、じわりじわりと距離を詰め始める。
フレンジーがラヴィッジの上で理解不能な言語を喚き散らす。
まさに絶対絶命のフェイリスとるか。
だが、そのときだった。
「よくやったぜ、二人共!」
そんなフェイリスとるかの前、そしてラヴィッジとフレンジーの後ろに、突然二人が突き当たった路地の直ぐ側のビルの上から、降りてくる影があった。
それは、スキッズとマッドフラップのツインズだった。
スキッズがフェイリスとるかの前、マッドフラップがラヴィッジとフレンジーの後ろに降り立っていた。
「!?」
「bgtpq!?」
そう、それはフェイリス達の作戦だったのだ。
逃げるふりをしてラヴィッジ達をなるべく倫太郎から離れさせ、そして機動力のあるラヴィッジとフレンジーを、逃げられない場所で逆に追い詰めるという作戦だった。
そして、その作戦はうまくいった。
「ここまでだぜ猫ちゃん!」
スキッズとマッドフラップがラヴィッジとフレンジーに攻撃を仕掛ける。
それをなんとか避けようとするラヴィッジ、そしてフレンジー。
だが、ツインズの完全なコンビネーションに、見事に手球に取られる。
「おらっ!」
「とりゃあっ!」
逃げようとするラヴィッジに向かって同時に挟み込むように射撃をする。
その攻撃により、ラヴィッジは地面に倒れ、バラバラになる。
フレンジーはその瞬間逃げるも、射撃の衝撃により大きく吹き飛び、るかの足元に飛んでくる。
「っ!? うわあっ!」
そんなフレンジーを見て、思わずるかは手元に持っていた妖刀五月雨を振り下ろす。
「yth!?」
そしてそれがまさかの直撃をし、フレンジーの頭と体を別々にしてしまった。
「おお! やるじゃねーか!」
「見直したぜ!」
「すごいニャ! るかにゃん!」
「えっ? えっ? えっ?」
るかを褒め称える面々。
一方るかは、フレンジーを倒した実感がないまま、頭に疑問符を浮かべつつそれぞれを見回すのであった。
◇◆◇◆◇
「うわあああああああああああ!? 姉ちゃん!? なんか運転乱暴じゃね!?」
「……そんなこと言ってる隙、ない」
秋葉原の街中から離れた、直ぐ側に林の見えるカーブの多い道路。
そこで、萌郁はウィーリーを乗せながら車をもの凄い速さで走らせていた。
その後ろからは、追跡するパトカーが。
最初に倫太郎を襲ったディセプティコン、バリケードだ。
バリケードもまたかなりの速さで萌郁を追いかけている。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!?」
「…………」
助手席で大声を上げるウィーリー。
そんなウィーリーだったが、ちらちらと後ろを見る余裕はあるようだった。
「おいおい、バリケードの野郎、すぐ後ろまで来てるぜ! どうするんだよ!?」
「……振り切る」
「振り切るっつったってよう……うおおおおおお!?」
蛇行した道も速度を落とさず走り抜ける萌郁。
それを、同じく速度を落とさず追いかけるバリケード。
そのチェイスに、終わりは見えないように思えた。
だが、とあるルートに入ったとき、萌郁は言った。
「……勝負を、しかける」
「へ!? 何だって!?」
そう言うと、萌郁はより一層アクセルを踏み込み、スピードを上げた。
「うわああああああああああああああああっ!?」
その速度にウィーリーはさらなる悲鳴を上げる。
そんなこともつゆ知らず、追いかけるためにこちらもとスピードを上げるバリケード。その速度は、萌郁に肉薄するほどのものだった。
「おいおいこの速度でも追いつかれ……っ!? やばいやばいやばいって!」
ウィーリーが後ろを見てバリケードを見た後、正面に視線を戻した瞬間に大声を上げる。
それもそのはずで、萌郁達の正面には、崖になっている急カーブが待っていたのだ。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!」
「…………」
ウィーリーは恐怖に震えながら頭を抱える。
だが萌郁は表情一つ変えず、車を走らせる。
そして、かなりの速度でカーブに差し掛かった、そのときだった。
「っ!?」
萌郁は急ブレーキを書けながら勢いよくハンドルを切った。
ドリフトをしたのだ。
速度がほとんど落ちないままドリフトを行った萌郁は、ギリギリのところでそのカーブを曲がり切る。
だが、バリケードは違った。
萌郁に肉薄するほど速度を上げていたバリケードは、そのカーブを曲がりきれず、崖下に落ちていった。
そして、そのままバリケードは、崖下に鬱蒼と生えている雑木林の中へと消えていったのだった。
「…………」
萌郁は車を止め、そんなバリケードの落ちていった先を見る。
その先は、生い茂る木々と夜の闇でまったく何も見えない。
それをただ、萌郁は無表情で眺めている。
「……姉ちゃん、すげーな」
そんな萌郁を見て、ウィーリーはぽつりとこぼしたのであった。
◇◆◇◆◇
「くっ! どこからともなく現れる!」
ジャズは吐き捨てるように言った。
秋葉原から離れ、より都市の中心部に近づいた場所。
そこでジャズと紅莉栖は戦っていた。
相手は、ディセプティコンの防衛参謀、ショックウェーブである。
二人がショックウェーブに苦戦をしているには理由があった。それは、
「っ!? また来るわ!」
紅莉栖が叫ぶ。その方向に、地面のコンクリートが盛り上がり、ショックウェーブが大きなワーム型のマシン、ドリラーに乗って現れた。
そう、ショックウェーブはドリラーを操り地中と地表を自由に行き来して紅莉栖とジャズを襲っていたのだ。
「くっ!」
「きゃあ!?」
ジャズが紅莉栖を抱えながら横転しそれを避ける。
間一髪のところでショックウェーブの攻撃を回避した二人だったが、ショックウェーブは再び地中に潜り、姿を隠す。
「これでは埒が明かない!」
ジャズが言う。
一方紅莉栖は、ジャズに守られながらも何かを考えているようだった。
「さっきはあそこから……その前はあそこから……とすると……」
「ん? どうした、紅莉栖」
「……ねぇジャズ、お願い、もう少しだけあいつを引きつけてくれる? 私は、少し高いところからあいつを観察したいの」
「……何か考えがあるようだな」
「ええ、うまくいくか分からないけど」
紅莉栖は真剣な眼でジャズを見る。
その瞳に、ジャズは頷いた。
「……よし、任せた。あのビルに登れ!」
「ええ!」
そう言われて紅莉栖は、近くのビルに入り、屋上へ登っていった。
一方で、ジャズは相変わらずショックウェーブとドリラーの波状攻撃を浴びせかけられる。
「ちっ! 正々堂々と戦え、卑怯者!」
ジャズはそう吠えるも、ショックウェーブはまったく意に介することなく、地中に消えていく。
その様子を、紅莉栖は静かに観察していた。
そして、そんな波状攻撃が三、四回ほど繰り返されたとき、紅莉栖は叫んだ。
「ジャズ! 次! 十五秒後! あなたから見て六時の方向!」
「何!? どういうことだ!」
「いいから、早く!」
ジャズは紅莉栖に言われた通りの方向を待ち構える。
すると、本当に十五秒後、六時の方向からショックウェーブが飛び出してきた。
「っ! そこだあああああああ!」
「……何!?」
ジャズはドリラーからショックウェーブを致命打になる一撃をもって引きずり下ろし、地面に叩きつける。
ショックウェーブがいなくなったことにより、地面に潜ることなく地表を這うドリラー。
ジャズは地表に落としたショックウェーブを引きずると、ドリラーの口にショックウェーブを放り投げた。
「うがあああああああああああああああっ!」
ショックウェーブが悲鳴を上げる。
ショックウェーブはドリラーの口の中でバラバラになり、そしてドリラーもまたその衝撃で爆散した。
ジャズは見事、ショックウェーブ相手に勝利を収めた。
「やったわね、ジャズ!」
ビルから降りてきた紅莉栖がジャズに言う。
「ああ、しかしなぜショックウェーブが出てくる位置と時間が分かったんだ?」
「あいつの出方と時間に、ある程度のパターンがあるのに気づいたのよ。おそらく、あいつ自身も気づいていなかったパターン。私、脳科学専門だから、そういうのには人よりも敏感なの」
「そうか……とにかく、助かったぞ紅莉栖。君も、立派な戦士だ」
「やめてよそんなの、ガラじゃないわ」
そういいながらも笑う紅莉栖。
ジャズもまた、紅莉栖に向かって笑いかける。
「……それじゃあ、戻りましょうか。岡部のところへ。一人じゃ不安だわ」
「ああ、そうだな。司令官を助けなければ」
そうして、紅莉栖とジャズは倫太郎の元へと向かうのであった。