【DQ11】ウソバレ☆レイトショー!【ざっくばらん書き】   作:千葉 仁史

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㊥洞窟の中で待つ者

「そろそろ、お話をせねばなりませんね」

 

 話を切り出したのはセーニャであった。

 セーニャが言うには、セーニャ以外の『皆』が時を巻き戻した者たちであるという。つまり、此の世界は『終わりの集結点』、時を巻き戻した彼らが集まることで出来た世界らしい。それぞれが何かしらの目的を以て、それぞれの世界を遡り、集結してできたのがこの世界。

 

(なんでみんなが余所余所しいか分かったぜ。本当に『顔の見知った赤の他人』だったんだな。道理(どうり)で、命の大樹の時にシルビアがホメロスに先手攻撃ができたのも、俺が「王が憑りつかれている」と言ったときも皆疑わずに攻撃できたのも、そういう訳か)

 

 納得する勇者。そして、セーニャ自身は他の世界のセーニャの意識が集まって出来たキュレーター(案内人)とのこと。だからレベルも能力もダンチだったのだ。

 だがしかし、カミュは自分が時を遡ったことを覚えていなかった。セーニャ曰く、時送りのショックで一時的な記憶喪失ではないか、とのこと。皆、戻った理由は言わなかったが、勇者は「ベロニカを助けるために、その世界の『俺』が行けなかったから代わりに皆戻ってきた」と思っている。

 

(※あれっ? そう考えるとベロニカ自身は何処から来たのか? このベロニカも時を遡ってきたのに? 今の勇者はそこまで考えが及んでいない)

(※時送りするためには紋章と証が必要だが、勇者以外の者が使用すると、時送りした後に消えてしまうようだ。だから、勇者以外は誰も剣や紋章を持っていない)

(※カミュは自分が時送りしたことに気が付いていない。要は一時的な記憶喪失状態だ。だから、命の大樹の際、何が起こるか分からずにまごまごしてしまっていた)

(※それでは、その時、どうしてセーニャも動けなかったのか? 他の世界のセーニャの意識が集まって出来たキュレーターならば、何が起こるか分かっていたはずだ。動けない制約があったのか、それとも……?)

 

 さて、皆が皆もう事情を知っているという訳なので、カミュは「黄金化した妹マヤを助けてくれ」を頼む。かくして、勇者たちはクレイモランへ向かうことにした。

 

 一方、カミュによってボロ雑巾にされ、命からがら逃げ帰ったホメロスは魔王に叱責され、もう一度チャンスを与えられていた。勇者たちのあまりの強さ――命の大樹前に会ったときとはまるでレベルが違い過ぎることに疑問を抱くホメロスにエビルプリーストが「彼奴は皆、未来から来たのです」と教える。

 

「未来からきただと!?」

「ええ、彼奴等は未来から時を遡ってきたのです。だから、誰も貴方に気を配らないのです。本来の貴方は命の大樹の元で魔王に殺されていたのですから」

「何故、貴様がそんなことを知っている!? 私がウルノーガ様に斬られるなんて、いい加減なことを言うな!」

 

 怒るホメロスにエビルプリーストは魔法を使って別世界の過去を追体験させる。

 

「これがカミュの来た世界の過去」

「これがベロニカの来た世界の過去」

「これがシルビアの来た世界の過去」

「これがマルティナの来た世界の過去」

「これがロウの来た世界の過去」

「これがグレイグの来た世界の過去」

「これがイレブンの――」

 

「もうやめてくれ!!」

 

 何度も無様に惨めに哀れに、何かを成し遂げることなく主君に殺される追体験をしたホメロスはイレブンの映像を見ることなく絶叫する。唯一自分を認めた下さった主君に失望される絶望と死への恐怖に顔が真っ青になるホメロス。

 

「彼奴等は魔王を倒した未来から来ました。つまり、魔王より強いのです。貴方が勝てる余地はありませぬ」

「うるさい! 彼奴等の戦力を削ぐことが出来れば、ウルノーガ様は俺に失望したりしない! 俺があの方に殺されることもない!」

 

 エビルプリーストの言葉にホメロスが反論する。そして、この自分をボコボコにしたカミュへの怒りを募らせながら如何にあの盗賊を苦しめるかを考えに考えた。

 

 クレイモランについた勇者御一行だったが、洞窟の奥にマヤの黄金像はなかった。代わりにホメロスの伝言メッセージ(※漫画『魔法陣グルグル』の具象気体みたいなイメージ)があり、「マヤを返してほしくば、シケスビア雪原の奥にある洞窟に来い」と告げられる。百パーセント罠だと分かっていたが、マヤを助けるため、勇者たちは飛び込むことを決める。

 

 さてはて、勇者御一行は雪原奥に作られたダンジョンを進み、最後の部屋に辿りついた……が、その瞬間、カミュ以外のパーティは上から降ってきた檻に閉じ込められてしまう。勿論、ホメロスの仕業だ。その部屋の奥にある祭壇には黄金化されたマヤが横に寝かされ、その上の天井には重しがぶら下がっていた。そして、祭壇の前には人型のくぼみ(頭・胴・右手・左手・右足・左足と分かれている)がある石台が置かれている。高笑いしながら現れたホメロスが告げたのは世にも恐ろしいゲーム内容だった。

 

「カミュよ。貴様と仲間を使って、この石台にパーツを捧げろ。埋まったパーツの部分だけ妹を助けてやる。ただし、一人で補うことはできるパーツは二つまでだ。パーティの『誰』を使うかは貴様に一存させてやる。感謝しろ」

 

 つまり、体を切り取った部分だけマヤを『無事に』返してやるということだ。頭や胴のパーツを捧げたものは命がないし、これから魔王と戦うのに手足が無くては戦えなくなってしまう。

 

「俺の命はくれてやる! だから仲間を巻き込むな!」

「言ったはずだ、一人で補えるパーツは二つまでだと。貴様が頭と胴を捧げれば、其処だけは重しで壊さないでおいてやる。そうすれば、貴様の命とは引き換えに妹の命は助かるな、『命だけ』は」

 

 カミュの懇願をホメロスは鼻で笑う。なんて卑劣な真似を! と怒る勇者メンツにホメロスは笑いながら、こう答えただけだった。

 

「だったら、マヤを助けるために貴様らが命か体のパーツを差し出せばいいだけの話だ。『私は関係ない』なんてつまらないことを言わないでくれよ。お優しい勇者御一行殿」

 

 ホメロスの魔法で大きな砂時計が現れる。あの砂が落ち切るまでが『決断』のときだ。勇者メンツでただ一人檻に閉じ込められなかったカミュは蹲って頭を抱える。皆が皆、檻を破壊しようとするが、なかなか破壊できない。どうすればいい! と悩むカミュをホメロスは「早く決めろ、妹が大事なんだろ」と嗤いながら追い詰める。

 

「そういえば、貴様、時を遡る前の記憶がないんだったな。決断させる良い材料をやろう」

 

 砂時計の砂があと少しになったところでホメロスは鼻歌をしそうなぐらいの足取りでカミュに近付き、その頭をガシリと掴んだ。そして、エビルプリーストに教えて貰った通りに魔法を発動させ、カミュの記憶のロックを解いた。

 

 カミュが時を遡った理由はマヤの為だった。

 ラムダの里以降、少し変わってしまったような気がするが、まるで総てを見通したかのような行動をする勇者に心を許したカミュは黄金化された妹の話をする。ところが、クレイモランの洞窟に妹の黄金像はなかった。バイキングが先に見付けてしまったのだ。マヤを取り戻すためバイキングと戦う勇者たち。だが、あと少しと言うところで手を滑らせたバイキングがマヤの黄金像を谷底へ落としてしまう。砕ける音が響く。駆け付けたところで時すでに遅し、マヤは頭部を残して粉々に砕け散っていた。

(※カミュが勇者の偽頭部を見てブチ切れたのは、このため)

 しかも、頭部だけになったので首飾りが取れ、彼女は生身の身体に戻っていた。だが、これではもう蘇生できない。残された妹の頭部を抱いて、カミュは慟哭した。

 それでも勇者の為に、とカミュは仲間と共に旅を続け、世界の『真』の平和を取り戻した。仲間はそれぞれの故郷へ戻っていくなか、カミュは妹の墓の前に立っていた。

 

「勇者を支えるという俺の役目は終わった、もうこの世界にいる意味はない。マヤ、助けられなくてごめんな。今、そっちに行くから」

 

 そう言ってナイフを首に向けるカミュを止める者がいた。勇者だった。勇者は「見せたいものがあるんだ」と告げた。

 勇者に連れて来られた先は見も知らぬ塔だった。まるで一度来たことがあるように迷わずに真っ直ぐに最深部まで辿り着いた勇者はカミュに言った――あのオーブをこの勇者の剣で壊せば過去に戻れる、と。

 

「お前はすっと俺を支えてくれた。カミュ、お前は大事な相棒であって友達だから、マヤを助けて、その憂いを絶ってほしい。この左手を掴んでくれ、これが俺からお前に出来る最後のプレゼントだ」

 

 カミュは勇者から渡された剣を右手で受け取る。最後に握手を、と勇者から伸ばされた左手を、同じように左手で握り返す。すると、左手が光り輝き――。

 

 カミュの記憶が完全に戻る。勝ったと言わんばかりに高笑いするホメロスを余所に、頭を放されたカミュはゆらりと立ち上がった。砂時計の砂はもう本当にあと僅かだ。その最中、イレブンが叫んだ。

 

「カミュ、俺を使え!」

 

 檻の隙間から伸ばした勇者の左手をカミュも同じように左手で掴む。途端、二人の左手の甲が黄金に輝いた。勇者の光に魔族であるホメロスが苦しみ、皆を閉じ込めていた檻が消えていく。カミュの左手の甲には勇者の紋章があった。カミュの記憶が消えていたのは、同じように紋章を継承した皆よりも強いエネルギーを――時送りしても消えない程のエネルギーを渡されていた故の後遺症だったのだ。

 

 今、こうして二人目の勇者が誕生した。焦ったホメロスは重しを縛っていた縄を断ち切る。黄金化したマヤ目掛けて落ちる重し。

 

「いけ、カミュ!」

「おう!」

 

 カミュは光よりも早く駆け出し、重しが落ちる前に妹を助け出した。勇者の証の光を受け、マヤの黄金化が解ける。とうとう二人は出会えたのだった。

 勇者メンツの力を削ぐどころか、第二の勇者まで目覚めさせてしまったことに慌てるホメロス。

 

「もう許さんぞ、ホメロス!」

 

 勇者の光を浴びて弱ったホメロスにグレイグが斬りかかる。しかし、ホメロスは難なく躱し、ドラゴンを召喚すると逃げてしまう。そのドラゴンは昔デルカダール軍が束になって倒したドラゴンであった。どうやら、ホメロスは己の魔力を使うことで、今まで倒した魔物のレプリカを複製できるようだ。

 

 みんなで力を合わせてドラゴンを退治すると、レプリカドラゴンは泡のように弾けたあと何も残さずに消えてしまった。そして、パーティは改めて互いの無事を確認する。

 

「それにしても、イレブン、いつカミュが勇者の証を継続出来ていたことを知っていたの?」

「そうよ! そうじゃなきゃ、手なんか差し出せないじゃない?」

「いや、知らなかったぜ、そんなこと」

「イレブン、どういうことじゃ?」

「カミュが苦しんでいるのを見たら、じっとしていることが出来なかったんだ。奇跡とか考えていなかった。ただそれだけの話」

「お前、馬鹿だろ! 勇者であるお前がいなくなったらどうすんだ!」

「それでも何かしたかったんだ、お前は俺の大事な友人だから!」

「イレブン様も無茶なさいますねぇ」

 

 わぁわぁきゃあきゃあと仲間と一緒になって、友情を確認するイレブンとカミュ。その少し離れたところではグレイグはホメロスが落としていった黒い羽根を掴み、物思いに沈んでいた。

 

「どうしたの、グレイグ。貴方らしくないわね」

「『ゴリアテ』か。俺は強い決心をして此処まできたが、『揺るがない覚悟』と言うのはやはり難しいものだな」

 

 それ以上、グレイグは何も言わなかったが、シルビアにはグレイグが親友であるホメロスを戦うことに悩みを抱えていることを見抜いていた。グレイグはこの手で友を討つことに苦しみを感じているのだろう、とシルビアは思った。

 

「貴方がどんな選択をしたって、私たちは貴方の味方よ、グレイグ」

「ありがとう、ゴリアテ」

 

 グレイグがそう言って羽を指の腹で擦ると、跡形もなく羽は消え去ってしまった。

 

 クレイモランのキャンプ場に戻り、「時を遡った理由をここ等で白状してしまいましょう」というセーニャの言葉を皮切りに皆事情を話し始めた。まずはカミュが妹を助けるために時を遡ったことを告白した。次にイレブンがベロニカを助けるために戻ったことを話し、皆をびっくりさせる。

(※此処ではじめて、イレブンは皆が自分とは違うルートで魔王を倒したことに気付く。つまり、イレブンとセーニャ以外は本来の二週目ルートから飛んできてる)

 他のメンツとはいうと、魔王を倒してから現れた脅威(※邪神ニズゼルファのことだが、一週目の世界から来たイレブンは知らない)によって失った仲間の為に戻ったという。

 

 ベロニカはカミュとセーニャとシルビアとグレイグ。

 シルビアはカミュとベロニカとロウとグレイグ。

 マルティナはカミュとロウとシルビアとグレイグ。

 ロウはカミュとベロニカとシルビアとグレイグ。

 

(※マルティナが「もうロウ様には死んでほしくないから」と言ったのはこのため。それぞれ四人ずつ亡くなっているのは邪神の最後の攻撃で誰かが誰かを庇ったせい。なので、グレイグはマルティナを庇って百パーセント亡くなっている)

(※つまり、カミュはイレブンを、セーニャはベロニカを、ベロニカはセーニャを、との具合である。騎士道溢れるが故にシルビアは、若者の未来を守るためにロウは、それぞれ仲間の壁になったのだろう)

(※ちなみに、カミュは邪神をみんなで生きて倒すことができたが、マヤを助けるために戻って来ている)

 

 時送りが出来るのは、例え本物の勇者でも『一回』だけ。その為、勇者の代わりにマルティナたちは戻ってきたようだ。魔王よりも強い敵がいて、それで半数の仲間を失うのか、とショックを受けるイレブン。

 

(ん? じゃあ、グレイグのおっさんは?)

 

 最後まで黙っているグレイグに皆が視線だけで喋るように促すと、彼は「今は話せません」と言っただけだった。

 

「もしかすると、これよりもひどい未来から来たの?」

「いや、ベロニカ、貴殿も含めて誰も邪神との戦いで命を落としていない」

「? じゃあ、俺の妹は?」

「ちゃんと勇者殿が助けている」

「?? 命の大樹が落ちたとか?」

「勇者殿、命の大樹も無事です」

「??? え、じゃあ貴方、どの未来よりも最良の未来から戻ってきたってこと?」

「そうなりますね、姫様。あの塔も自力で見付け出しました。……俺にとって『あの世界』は最良じゃなかっただけですよ」

 

 これ以上は話せません。時期が来たら必ず話しますのでどうかご容赦を、と頭を下げるグレイグに首を捻るイレブンたちであった。

 

 さてはて、またもや逃げ帰ることになった魔軍司令ホメロス。今度は確実に処刑ものなので、その足取りは重い。其処へエビルプリーストが現れる。死の追体験を散々味わったことで、死への恐怖に侵されていたホメロスにエビルプリーストは「生き延びる方法があります」と告げ、謎の秘薬を渡す。

 

「これは『進化の秘薬』と言います。『私の世界』から持ってきた代物です。これを使えば飛躍的にパワーアップできます。そして、魔族という生き物は倒した魔族の力を吸収して強くなれます」

「『私の世界』? いや、今はそんなことはどうでもいい。何故それを今も今まで渡さなかった?」

「魔王を一度倒したことがある勇者たちにこれを使ったところで付焼刃にしかならず、あまり意味はないでしょう。それに元々底力のある魔王に手渡しても効果は薄いですし」

「何が言いたい?」

「人間の言葉でいうのならば『先手必勝』ですかね。やられる前にやってしまえばいい。……ところで、魔軍司令殿、戦力の差を埋めるには何が有効でしょうか?」

 

 笑うエビルプリーストからホメロスは進化の秘薬をひったくる。そして、死の恐怖と戦う術を手に入れた彼はこう告げたのだった――「奇襲だ」と。

 

 

 

つづく

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