【DQ11】ウソバレ☆レイトショー!【ざっくばらん書き】   作:千葉 仁史

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㊦地獄の底へ降りていく

 ベロニカが言うには、逃げ帰るホメロスに魔法のマーキングを行ったとのこと。地図でその場所を確認したイレブン一考は早速向かうことを決める。その前にパーティに話を聞くと、シルビアから「『ミナディン』はとっておきの呪文だから使う時を考えなさいね」と忠告を受ける。

(※ちなみにマヤはクレイモランで預かってもらい、カミュとの会話を済ませているが割愛)

 

 山脈のとある洞窟に入った途端、魔法が発動し、洞窟内だというのに天空魔城のような内装に変わっていく(その内装を知っているのはイレブンだけだが)。一階のエントランスを探索していたイレブンだったが、トラップを発動させてしまい、「またかよぉぉおお!」と叫びながら落ちていく。その落とし穴が閉じる前に慌ててカミュとセーニャとグレイグが飛び込む。こうして、地上階と地底階にまたもやパーティは分断されてしまった。仕方なく、マルティナたちは最上階を、イレブンは最下層を目指していくことに。

 攻撃呪文を使うセーニャに既視感を覚えつつ、勇者しか使えない呪文を使うカミュに頼もしさを感じつつ、『魔封剣』といって相手の魔法を吸い込み自身のMPにしてしまう新技を使うグレイグに「前の世界でも持たことないなぁ」と思いつつ、勇者は敵を薙ぎ払っていく。

(※ウルノーガは命の大樹落としに失敗したので、魔物の大半が呆れて付いてきていない状態のため、ブギー達すらいない。しかも、過去の世界とは言え、既に一回は魔王を倒したことがあるうえ、カミュも勇者の力が使えるので、イレブンたちは若干楽観的である)

 途中で『何か』の断末魔の叫びが響き、上から下へと城の内装がガラリと変わる。そういう仕様か? と大して疑問を思わず、イレブンたちは下っていく。

 最下層についたイレブンたちは、とうとう魔王に対面する。会話のやり取りは二回目なのでカットして(酷い)、イレブンたちは全力で戦う。既に魔王を倒した経験があるので苦戦することなく倒し、やったぁ! と喜ぶイレブンたち。

 

 ところが、ウルノーガの死体は泡のように弾けたあと何も残さずに消えてしまった。

 

「おい。これってどういうことだ?」

「まるで雪原の洞窟で戦ったレプリカドラゴンのように消えてしまいましたわ」

「レプリカドラゴン? ……ということは」

「ウルノーガは既に倒されている……?」

 

 カミュ・セーニャ・グレイグ・イレブンが真っ青な顔でお互いの顔を見合わせるなか、最上階に着いたベロニカから魔法でテレパシーが届く。なんと魔王の死体が最上階の部屋にあるらしい。その死体の横で謎の魔法陣が描かれてて――という通信を最後に途切れてしまう。レプリカ魔王を倒した部屋の奥の扉が開く。あれが最後の部屋のようだ。行こう、そう言ったのはグレイグだった。

 

 真っ暗な部屋の中、イレブンたちが歩いていく度に炎が灯っていく。

(※クロノトリガーの魔王城みたいな感じ)

 

 その奥の玉座に座っていたのはホメロスであった!

 

 なんと、此奴は自分が魔王に殺されないために『進化の秘薬』を使って自身を強化し、奇襲してウルノーガを倒した後、その力を吸収して新魔王になったというのだ!

(※途中で聞こえきた断末魔の叫びはウルノーガによるもの。城の内装が上から下へ変わったのは魔王を倒したホメロスがイレブンを倒すために最上階から最下層へワープしたため、そして魔王の力がウルノーガからホメロスに移行したので内装まで変更された)

 

「俺を認めない世界なんて滅んでしまえばいい!!」

 

 凄まじい極論を語るホメロスに思わずドン引きしてしまうイレブンたち。だが、此奴を倒せば世界は救われる。一度倒したことがあるから、と思うイレブンだったが、進化の秘薬を使用したホメロスの姿はメキメキと凶悪で凶暴、悍ましい魔物の姿へ変わっていく。

(※DQ4のデスピサロ参照。あんな感じの面影0の姿へ)

 

「魔王は勇者によって倒される宿命(さだめ)、ならば勇者は新魔王によって倒される宿命なのだ!!」

 

 新魔王ホメロスが襲い掛かってきた!

 

 その頃、最上階において。

魔王ウルノーガの死体を見付けたマルティナたちは驚いていた。いったい何がどうなっているのか? 混乱する間もなく、魔王の死骸の横でウロチョロしていたエビルプリーストが魔法陣を完成させ、魔王の死骸を生贄に古代の邪神シドーを召喚してしまった。(※DQ2参照)マジかよ、と顔が引き攣る一同。エビルプリーストは召喚するだけ召喚して逃げてしまったので、マルティナたちはシドーと戦う羽目になった。

 

 さてはて、こちらは最下層。

 元々あった力+進化の秘薬+魔王ウルノーガを倒したことで得た力でパワーアップした新魔王ホメロスは阿呆なほど強かった。魔法も物理攻撃もバンバンかましてくるし、状態異常呪文は相変わらずだし、無駄に頭がいいからハメ技使ってくるし(格ゲーかよ)でイレブンたちを散々苦しめた。一度倒したが、お約束の変身(第二形態)を経て再戦。化け物姿から魔族の王らしい姿に変わったホメロスは更なる強さで襲い掛かる。

 それをどうにか倒すと、ホメロスはデルカダール国の将軍の白い鎧姿になる。変身状態を維持できない程、力が弱まってきたのだ。だが、死にそうなのはイレブンたちも一緒である。

 

 ホメロスが新魔王の力で得たしんくうはを放つ。その軌道にいたセーニャをカミュが押し退けたが、それによって体勢を崩してしまい、そこを狙ったホメロスにドルマドンを詠唱される。マジか! と思わず身構えたカミュをイレブンが助け起こす。

(※最初、デルカダールの牢屋から脱出した際、ドラゴンに追っ掛けられた際、カミュが勇者を助けているが、そのオマージュで今度は逆になっている)

 二人で走りながら、互いに左手の紋章に力を込める。使うなら、もう今しかないだろう。強く頷くと、二人の勇者は勇者にしか使えない呪文を詠唱した。

 

「ミナディン!!」

 

 その一瞬、イレブンはベロニカの声を聞いた。ベロニカはベロニカでも此方の世界ではなく、前の世界の彼女だった。ベロニカだけじゃない、カミュや他の仲間たちの声も聞こえてくる。無論、カミュも前の世界の――過去に戻れる方法を教えてくれた勇者の声を聞いていた。此方の世界のシルビアが「『ミナディン』はとっておきの呪文だから使う時を考えなさいね」といっていたことを思い出す。ミナディンは仲間のMPを使う呪文――今の世界だけでなく、前の世界の仲間がイレブンとカミュに力を貸している。このミナディンはこの世界の仲間だけでなく、前の世界の仲間のMPまで使用しているのだ!

 

 空気が裂ける音が響く。超特大級の稲妻が新魔王を襲う。悲鳴も生命も望みすら燃やし尽くす大量の光と音が最終ダンジョン内に響き渡る。あまりの衝撃にセーニャはしゃがみ込み、イレブンとカミュはすっころんでしまう程だった。

 どれくらいの長さだっただろうか。衝撃が過ぎ去り、舞い上がった煙と灰塵が晴れていく。新旧の仲間の想いを込めた究極呪文により倒される巨悪、なんてすばらしいファンファーレ!

 

[newpage]

 

 ……になる予定だった。灰塵が消えた後で現れた影にイレブンたちは息を呑んだ。其処には前の世界で「勇者の盾になる」と誓った大男の姿があったからだ。

 なんと、グレイグは新魔王の前に立ち、相手の魔法を吸収するという新技『魔封剣』であのミナディンを受け止め――すさまじい勢いだったからか完全に相殺できず、グレイグの身体はボロボロであったが――ホメロスを守ったのだった!

 

「おっさん!? なんで――」

「死ねぇ! グレイグ!!」

 

 イレブンが正気に戻るよりも先にホメロスがグレイグに斬りかかった。英雄は避けることも剣で受け止めることなく左目を斬られた。鮮血が散り、セーニャが悲鳴をあげる。どうしてだよ、と呆然とするイレブンとカミュ。MPは0だ、もうどうにも戦えない。絶望が蔓延するなか、自身もズタボロというのにホメロスは高笑いを上げた。

 

「ハーッハッハッハッ! ザマァないな、グレイグ! 騎士の命たる眼を斬られちゃあ、もう貴様も戦えまい! 敵に情けを掛けるからこんなことになるのだ!!」

「違う」

「違うだと? いったい何が違うというのだ! これを情けと言わず、なんと――」

「お前を敵だと思ったことは一度もない!」

 

 グレイグの言葉にホメロスの勢いが止まった。勇者たちもぽかんとしてしまう。グレイグは小さな息を吐くと、左目から血を流したまま喋り始めた。

 

「ホメロス。こうしてお前と正面向いて話すのも久しぶりだな、此処まで来るのに『七年』も掛かってしまった」

 

 七年? その年月にイレブンは「あ!」と小さく叫んだ。イレブンは盛大な勘違いをしていた。他の仲間が時送りしたのは、パーティメンバーを失ってからのすぐの行動だった。だから、イレブンはグレイグもまたすぐ時送りしたと思い込んでいたが、そうではない。彼は自力であの塔へ辿り着くのに七年も掛かったのだ。だから、彼だけ異様にレベルが高く、知らない技も多かったのだ。

 

「あの塔の番人に言われた、今からお前が助けようとしている男は『総て』を捨てなければ助けられん、と。だから、俺は此処までくるのに『総て』を捨ててやってきた」

「総て……?」

「武勇も地位も権力も栄光も名誉も未来も望郷への想いも今まで積み上げた己自身の歴史も何もかもを、そして今此処で左目も捨てて、お前がいる地獄の底まで降りてきた」

 

 グレイグの背負う重みは同じ地位に就いていたホメロスだからこそ、すぐに理解できた。そんな自分の命を捨てるよりも重いものを、彼は投げ捨ててきたというのだ。

 

「俺は王に拾われて以来、お前の背中を追い続けてきた。その優しさに追い付きたかったんだ。お前こそが俺の光だったんだ。今の俺があるのはお前のおかげだ。ホメロス、どうしてそれが……」

 

 グレイグはそう言いかけて言い直した。

 

「どうしてもそれを生きているお前に伝えたかった」

 

 グレイグ、と親友の名を呟くとホメロスはその場に崩れ降ちた。だが、イレブンが一度見た光景のように彼の姿は消えることはなかった。蹲るその姿は幼い子のようにも老人のようにも見えた。

 

「おじさまが救いたかったのはホメロス様だったのですね」

「ああ、だから『あの時』は喋れなかったんだな」

「魔王は勇者によって倒される宿命(さだめ)……でも、新魔王を救えるのは親友だけだってことか」

 

 啜り泣きが静かに響くなか、洞窟が本来の姿を取り戻していく。勇者たちは魔王に勝ったのだった。

 

 その頃、死ぬ思いでシドーを倒したマルティナたちは入口へ戻っていた。急に城が洞窟に戻ったことに驚いたが、「魔王が倒れて、その魔力を失ったから」とベロニカの推測にイレブンたちが魔王を倒したことに安堵の息を吐いた。入口で待っていると、イレブンが現れた。「とりあえず、魔王は倒したかな。とりあえずは」と言いながら、顔がげっそりとしている。次に現れたのはカミュだった。彼は何処か苦々しい顔をしている。三番目に現れたのはセーニャだった。彼女は苦笑いを浮かべている。四番目に現れたのは左目が潰れたグレイグだったので、マルティナたちはびっくりして悲鳴を上げた。

 

「ちょっと、グレイグ!」

「いったいどうしたんじゃ!?」

「何があったのよ!?」

「ん? まだ誰かいるわね?」

 

 シルビアが首を傾げる。五番目に現れたのはホメロスだった。顔は俯いていて、酷く憔悴しきっているのが誰の眼にも明らかであった。ちょっとどういうこと!? とキレ気味なベロニカにイレブンはお手上げと言いたげに両手を上げながら、こう言ったのだった。

 

「新魔王、連れて帰っちゃいました」

 

 とりあえず、近場のキャンプ場でイレブンたちは休むことになった。マルティナたちから質問攻めにあうグレイグだったが、本懐を達せたことがそんなに嬉しいのか、左目を失ったのにも関わらず、朗らかに笑いながら「申し訳ありませぬ」と謝り続けた。

 さて、これからどうするのか。そんな話題になった時、カミュは妹と旅に出ると言った。本当は相棒とも一緒に行きたいんだけどな、とカミュが思っていると、イレブンもまた「俺も旅に出る。今度は平和になった世界を見て歩きたいんだ」と言った。そうだよな、此奴は王族だし、一緒に旅なんてもう出れないよな、と落ち込みながらカミュは「何処かで会ったらよろしくな」とイレブンに声を掛ける。すると、イレブンは瞳を大きくして「カミュとマヤの三人で旅に出るのに、なんでそんなことを言うんだ?」と言った。その言葉にカミュはじわじわと嬉しさを感じてくる。カミュは握り拳を作り、イレブンのそれに合わせると「これからもよろしくな、相棒!」と笑った。その瞬間、役目を果たしたカミュの左手の甲から焚火の火花のように紋章が消えていった。

 

 ロウはユグノア再建の為に国へ戻り、ベロニカとセーニャはそれの手伝いをするという。シルビアは笑顔をばらまくためサーカスへ戻り、マルティナもデルカダールへ戻るとのこと。

 

「グレイグも戻ってくれるよね」

「申し訳ございませんが、姫様、俺は戻りません」

 

 マルティナの言葉にグレイグははっきりと断った。

 

「俺はホメロスを連れて旅に出ます。彼奴をもう独りにする訳にいきませんから」

 

 唖然とする皆にグレイグは「これが俺の揺るがない覚悟です」と頭を下げると、魔族ゆえにキャンプ地に近寄れず、背を向けて蹲るホメロスの元へ歩いていった。ぽかんとするマルティナの肩を優しくシルビアが叩き、首を横に振った。

 グレイグはホメロスと背中合わせに座ると、一つしかない右目を細めながら「一緒に旅に出るぞ。最初は何処へ行こうか。まずは魔族から人間に戻す方法を探さないとな」と朗らかに告げる。本当に本気でグレイグは親友の為に『総て』を捨てる気であることを知ってしまい、ホメロスは更に膝の間に顔を埋めた。

 

 翌日、皆は皆の目的の場所へ去っていった。イレブンはカミュとマヤと旅に出て、シルビアはサーカスへ、ロウとベロニカとセーニャはユグノアへ、マルティナはデルカダールへ、そしてグレイグとホメロスは当てのない旅へ。

 

「姫様、御免!」

 

 グレイグは再度謝ると、ホメロスを連れて歩き出した。ホメロスは俯いたまま深く頭を下げると、その背は二度と見ないと言っていたグレイグの背を追っ掛けて行った。マルティナが「グレイグのバーカ!」と叫ぶ。涙を拭うと、姫は故郷の国へと足を向けた。

 

 次の脅威の兆しはまだ表れていない。それまで束の間の平和を勇者たちは享受したのだった。

 

 

 

おわり




 後書き

 この話を書く切っ掛けとなったのは、レビューサイトにて「過去に戻った後の面子が赤の他人に見える」という書き込みを見付けたのがそもそもの切っ掛けでした。まぁ、過去に戻る=今までの冒険全てチャラになる=絆もないことになるから、そりゃあそうだべ、と思ったが、ならば「その過去を遡った先で新たな絆を結べればよくね?」と思いたった結果、妄想に耽ることに。
 当初、DQⅪで気になっていたキャラはカミュだった。なので、㊤㊥では彼の活躍や勇者との絆(友情)が中心となっていて(なので、カミュに至ってはもう一人の勇者になるという好待遇っぷり)、ホメロスはスーパー嫌な悪役であった。
 思い付くまま脳内ストーリーを進めた結果、セーニャ以外の面子が実はそれぞれ別の世界の未来から来ていたことが判明した! つまり、ガチの赤の他人であった。それでも「いつでもどこでも、どんな時代だって、お前と俺は相棒だ!」というカミュの言葉を信じ、友情を紡いだイレブンにはきらめきが感じられる。 
 それで、それぞれが過去に戻った理由を語るなか、カミュはマヤの為だが、マルティナ・ロウ・ベロニカ・シルビアが似たような理由になってしまった。これでグレイグまで似たような理由だったらつまらないな、と思い、特に理由は考えず、彼だけはぐらかすことにした。
 そして、魔王城に入り、まさか脇役のホメロスが新魔王になっていた。わーお、魔王ウルノーガと慣れた戦いになると思っていただけに、みんな大苦戦! 最終的にそれぞれの世界の仲間を借りてイレブンとカミュで「Wミナディン」を放つ華々しいラスト!!
 こんな華々しくて見事なラスト、滅多に思いつかないぜ! と思っていたら、脳内グレイグが勝手に行動し出して、新魔王ホメロスを庇い出した!
 なんでやねん! と思っているうちに、あれよあれよと話が進み、グレイグはホメロスを助け出し、一緒に旅まで出てしまった!
 脳内ストーリーなのになんでこうなった!? と思い、グレイグの行動の理由を考えて書きだしたのが「Q.E.D」。未プレイにも関わらず、グレイグとホメロスに嵌まってしまっている千葉の姿がありましたとさ。

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