騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

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第十七話 予期せぬ過去

 

 

 

鎌倉学館の面々は、前半の終わりあたりから流し気味にプレーする青葉を見て、嫌な顔をする。

 

「こういうところが、日本人らしくねぇんだよな」

 

守備もそれなりにこなすどころか、取り所とポジショニングがいいから無駄に走らない。

 

鷹匠は、青葉のランニングを見て苦い顔をする。

 

「――――奴は覚えていないかもしれないが、中学時代から飛びぬけていたよ」

 

彼は、岐阜県下の中堅チームと試合をした時があるという。その際に初めて青葉の存在を認知したという。

 

 

結果は僅差での勝利。横浜側からしてみれば、ありえない展開だった。

 

横浜は、青葉一人のドリブルを止めることが出来なかったのだ。

 

一人だけ日本人ではない何かがピッチの中にいたという感覚。さんざん海外で打ち負かされてきた一流の国の下部組織の選手と同じ質の動き。

 

ファウルでしか止められないのではなく、ファウルでも止められないときもあった。

 

 

彼一人に4点を奪われる。22人の選手の中で彼だけがレベルが違い過ぎた。

 

 

「―――――あの頃の俺は、代表に呼ばれるような選手ではなかった。本当の世界標準というやつを感じた」

 

その後の試合に出てきた逢沢傑に試合をひっくり返されもした。サッカー選手としての実力の全てで、何もかもが劣っていた。

 

「葉陰の面々が止めようとしているが、あれは即席で対応できるほど、生易しい存在じゃない」

国松も、青葉のドリブルを体感した選手としての視点から、あれに対応するのは簡単ではないという。

 

「―――――駆は、そんな選手の背中を見ているのでしょうか」

 

あの駆け引き、そしてあの閃きは、本当に逢沢駆なのだろうか、と佐伯は思う。

 

他にも高瀬という長身のFWはポストプレーも上手く、献身性も出てきた。あれでうまくなれば世代別代表に選ばれるかもしれないと思えるほどの。

 

江ノ島では様々な化学反応が起き、1試合ごとに成長している。まるで生き物のようにその姿を変えている。

 

自分は傑のドリブルを見てきたはずだった。少しでもあの背中に近づきたいと考えていた。

 

しかし、どれだけドリブルが上手くても、その背中は遠かった。

 

原点の発想から傑とは違う。閃きの面で模倣は出来ないと知ってしまった。

 

だが目の前の駆はどういうことだ。

 

まるで傑のようなプレーを次々と見せている。スピードに乗ったドリブルではなく、相手の意表を突くトリッキーな足技。

 

どんどん動きが最適化されていく彼の姿は、少し羨ましく思う。

 

「本当に、兄弟なんだな」

 

 

「っ。けど、逢沢傑ほど、彼はうまくない。俺たちの敵ではないですよ」

現状の駆や、青葉と傑の昔話に嫌気がさした世良は、江ノ島に感心しっぱなしの鎌倉の空気を壊そうとした。

 

次戦うことが濃厚な相手だ。そんな姿勢では負けてしまうぞと。

 

「そうだな。俺たちの目標は全国制覇。ここで足踏みは出来ねぇ。それはそれ、これはこれだ」

鷹匠はニッと笑い、はき違えていないぞと語る。

 

「ええ。駆には悪いですけど、蹴球を倒すのは俺たち鎌学ですから」

佐伯も、勝負事では手を抜くつもりは一切ないと言い張る。

 

 

「それに、俺たちには頼りになる司令塔がいるからな」

国松も、若干不機嫌になる世良を慰める。傑や荒木、駆。とくに青葉に対して強烈な対抗心を持つ彼だ。

 

「そ、それならいいんっすよ。それなら――――」

彼らの言葉で落ち着く世良。しかし、彼も青葉と駆のプレーを認めないわけにはいかない。

 

――――俺は、高校サッカーで立ち止まっている暇はないんだよ

 

こんなところで、負けるわけにはいかない。

 

 

試合は後半も江ノ島ペースに進むかに見えたが、鬼丸による攻撃を諦めたかに見え葉陰。

 

 

もはや終戦確定の空気の中、それは起きる。

 

 

八雲とマークの受け渡しをし、他の選手をマークした青葉。マーク自体に問題はなかったが、

 

 

マッチアップしていた駆と飛鳥の間で起きた

 

「ッ!!」

 

ロングボールを上げさせないという駆側の目標を達成できなかったのだ。フィジカルにものを言わせ、駆のプレスを跳ね返した飛鳥は、わずかに見つけた右サイドの穴をついたのだ。

 

 

――――こんなところで、終わるわけにはいかないんだ!!

 

あの人は、こんなところで終わっていい選手ではない。

 

 

ロングパスを受けた鬼丸に強い感情が渦巻いている。強豪校としてのプライドを背負い、試合に出られない選手の想いを背負っている。

 

 

何より、腐りかけていた自分を救ってくれた恩人を、全国の舞台へ連れていきたい。

 

 

―――――なのに―――――っ

 

 

並走している男が、どこまでも葉陰の夢を阻んでくる。

 

 

青葉はスペースへと走りこむ彼の姿を見た時から、何かを察知し、追走していたのだ。

 

 

否、追走というのは語弊がある。すでに鬼丸を抜き去り、その先のスペースに辿り着きそうな速度。

 

単純で、無慈悲なほどの、脚力の差。

 

 

飛鳥からのロングボールが青葉に迫る。鬼丸へ渡るはずだったボールを刈り取っていく。

 

――――くっそぉぉぉぉ!!!!

 

必死に足を延ばす鬼丸。そして無防備な青葉の背中に迫っていく。

 

その様子を、3点差という大差の状況で油断していた青葉は気づかない。直前に彼が迫っていることを見ていなかった彼には――――

 

「? あ――――」

 

アウトサイドでトラップして、そのまま躱そうとした青葉の背中に砲弾のような衝撃が迫る。

 

 

そして――――――

 

 

 

ピピィィッ―――!!!!

 

 

 

 

「なっ!?」

ベンチで岩城が立ち上がる。

 

 

「青、葉?」

ピッチの中心にいた王様は、その光景に目を背けてしまう。

 

「―――――え?」

 

逆サイドからジョギングしながら走っていた駆は、何が起きたのかがわからなかった。

 

 

青葉が倒れている。しかも、まったく動かない。意識を失っているのか、単純に気絶しているのか。

 

「青葉、さん―――――青葉ぁぁっ!!!」

口元を手で覆ってしまった美島は、目に涙を浮かべ、その光景を見ていることしかできない。

 

その光景が重なる。

 

あの日、永遠に出会うことがなくなった伝説のトップ下の倒れている姿と。

 

「美島さん!?」

その場に座り込んでしまう美島を見て、岩城は当然のことながら焦る。息も荒く、トラウマのようなものが引き起こされているのかもしれない。

 

詳しくは知らないが、彼女はあの事故の現場を見ていたという。ゆえに、親しい人間のそういう状況を見て、思い出してしまったのだろう。

 

近くのマネージャーに彼女のことは任せ、岩城は最悪青葉の交代すら考えないといけないと考えていた。

 

――――決勝戦も、彼を欠く状態で戦わないといけないかもしれません。

 

全国への切符を目前に、突如として立ちはだかる神のいたずら。岩城は天を恨んだ。

 

 

 

 

『倒されたァァァ!!! ファウルですっ!! 江ノ島高校、ここでも守ります!! おやっ、青葉が倒れている。』

 

『相当な衝撃で、後ろからぶつけられましたからね。これは非常に危険なプレーです。』

 

『ああっと、ここでレッドカード!! 鬼丸一発退場!! 3点差ビハインドの劣勢の中、10人で戦うことを強いられます、葉陰学院!!』

 

『正直厳しいですね。どちらもボールには行っているので。イエロー辺りが妥当だと私は考えていましたが。しかし、攻撃の核ともいえる鬼丸選手を失ったことで、葉陰は厳しくなりますね』

 

 

『そうですねぇ。そして青葉選手はどうやら一度ピッチの外へと出るようです。担架が出ます』

 

 

「…………」

 

眼をすぐに開けた青葉は、ぼんやりとピッチを眺める。意識に問題はなく、問題はなさそうだったが、どこか様子がおかしい。

 

「青葉!?」

その様子に、織田が思わず声をかける。どこかを痛めたのか、と。

 

「—————ああ、大丈夫だ。しかし、若干視界が揺れる」

 

冷静な言葉で自分の状態を説明する青葉。どことなく冷静で、熱さとは別のしたたかさの面が目立つ雰囲気。どこかいつもの青葉とは違うような気がした。

 

 

「し、心配したんだよ!! 青葉が、青葉が――――」

駆が思わず本音を出してしまう。

 

――――おい、なんで周囲の男をときめかせるんですかねェ

 

兵藤は、その駆のしおらしい姿に目を奪われているチームメートに白い目を向けるが誰も気に留めない。

 

「ったく、心配かけやがって。」

荒木も荒木で、照れを含んだ表情を浮かべ、青葉がすぐに意識を取り戻したことに安堵する。

 

 

「すまない。俺はベンチに下がらせてもらう」

担架で運び出されるとき、青葉が申し訳なさそうにみんなに謝罪するが、

 

「ばっか。俺らがたくさん点を取って全国決めてやんよ」

 

「ああ。俺のロングフィードが火を噴く。ベンチで見ておけよ、青葉」

 

「狙って言っているつもりなんだろうが、盛大に滑っているぞ、織田」

 

「う、うるさい!! いいだろう、べつに!! 語弊的には間違っていないだろう!!」

兵藤に冷やかされ、顔を真っ赤にする織田。

 

ヒヤリとする場面ではあったが、青葉が無事なことで一同は落ち着きを見せる。

 

 

しかし次の瞬間

 

「うちの仲間を負傷退場に追い込んだとか、まああれだよな」

兵藤は周りを見回して、しゃべり始める。

 

「――――ああ、上等だぁ。点を取れるだけ取って、トラウマ刻んでやらぁぁ!!」

荒木も怒り狂っていた。アドレナリンが出ているのか、いつものひょうひょうとした雰囲気が消えている。

 

「プレー中の事故は仕方ないとはいえ、何も思わないほど俺も愚鈍ではない。最後まで江ノ島サッカーを貫くぞ」

沢村も、江ノ島サッカー部結成に貢献した彼を負傷させた葉陰相手に燃えていた。

 

むしろ、士気は天井知らずだった。江ノ島の選手は勝負がついているにもかかわらず、攻撃の手を緩めない。

 

 

 

 

 

鎌倉学館のメンバーは、一発退場並みのファウルを受けた青葉がそのままピッチの外に出され、負傷交代という形で去ってしまったことに複雑な心境だった。

 

「―――――猶更、江ノ島には勝つしかないですね」

世良は、青葉不在の江ノ島には必ず勝たないといけないと決意した。

 

「――――世良?」

 

 

「悔しいが、あれは世界の同世代の中で抜きんでた存在です。外で見てきた俺にはわかる。なんであんな逸材が、日本に転がっていたのか」

 

レオナルド・シルバやドイツの皇帝とも互角に渡り合うプレーヤー。そしてその割には報道されていない、ギャップのある選手。

 

もし仮に、彼が出てくるのであれば、鎌学は彼を止められない。防ぎようのない弾丸をフルで打ち込まれ続けることになる。

 

そう、今眼前で行われている葉陰の二の舞になるだろう。いかに鷹匠と自分、佐伯と攻撃陣が揃っていても、間違いなくマッチアップする佐伯が封じられる。

 

 

そして、佐伯は宮水を止めることはできないだろう。相手は五輪代表候補クラスだ。彼には酷だろう。

 

そして逆サイドには成長著しい逢沢駆。この試合でも見せた非凡なプレーの数々。さすがに七光りではないということが分かった。

 

――――彼は間違いなく全国クラス。世代別にも選ばれる

 

 

「だな。奴のドリブルは、止めるのが至難の業だ。うちもそういう世界クラスと戦う経験が欲しかった。」

鷹匠は、青葉の負傷を見て、残念そうにつぶやいた。

 

「―――――」

佐伯は、その光景を黙ってみているだけだった。

 

 

 

 

青葉に代わって出場したのは、的場。さんざんに疲弊し、鬼丸というWBすら失った無防備なサイドを蹂躙する。

 

――――マッチアップする選手もいない。さんざん青葉が走りこんで、相手はヘロヘロ

 

こんな状況で、仕事ができないと言われたら、ドリブラーとして情けない。

 

 

――――サイドの選手には、守備が求められる。

 

 

この試合の青葉と駆を見て、それを痛感する。守備からの攻撃という局面は、サッカーにとって大切なことだ。

 

もはやまともなモチベーションを保てなくなった葉陰相手に無双する的場。

 

 

――――足の止まってきた時間帯に、ドリブラー投入か。くっ、

 

 

飛鳥はこの状況で勝利するビジョンを見出すことが出来ない。こちらのモチベーションは半壊状態。対する江ノ島は、エースを負傷させられたことにより、鬼気迫る勢いでゴールに襲い掛かっている。

 

 

そして――――

 

的場の切込みによって、チャンスが生まれる。

 

 

「くそっ!!」

 

マシューズフェイントで簡単に抜かされてしまう葉陰の選手。精神的にも、肉体的にもきつい時間帯。集中するのも無理からぬことかもしれない。

 

ドリブルで切り込む的場につくことが出来ない。フレッシュなドリブラーに仕掛けられ、堅守を誇っていた守備が崩壊している。

 

 

『的場一人で切り込んで、荒木にパスっ! さぁ、そのパスセンスが光る時だ。ファーサイドに逢沢流れる。真ん中には高瀬!!』

 

 

ここで、高瀬と逢沢、走りこんできた的場の目が合う。そして―――――

 

 

荒木は彼らのやり取りを見て、イメージを共有したと考えた。瞬間に、

 

荒木の縦パスが高瀬に通る。浮き球な弾道のボールは、高瀬の胸に当たり、トラップしたボールは逢沢へ。

 

「させるかぁぁぁ!!!」

 

逢沢のシュートチャンスを阻むべく、葉陰の選手が最後の力を振り絞る。身を挺してブロックしようとする選手を見た駆は、

 

低いグランダー性のボールを逆サイドに蹴りこんだ。そしてそのスペースに走りこんでいたのは――――――

 

『押し込んだぁァァァ!!! 江ノ島4点目!! 決めたのは途中出場の的場!! 流れるようなパスワーク!! 一気にスピードアップしたプレースピード!! 今の崩しは上手いというより、とにかく速かったですね』

 

『逢沢選手のキックが決め手ですね。あの右足からのボールが、まさにドンピシャです。的場君のことを計算に入れて、いいラストパスでした』

 

 

さらに―――――

 

葉陰の軸となっていた飛鳥相手に攻撃時は荒木と織田がダブルチーム。

 

「させねぇよ!!」

 

「通せると思うなっ!」

 

 

飛鳥を二人係で阻んだ荒木と織田から始まるカウンター。パスコースを誘導した荒木が、織田にその残されたコースに動いたのだ。そのままボールを刈り取るだけだった織田から、

 

裏へ抜ける準備を怠っていなかった逢沢へと浮き球のパスを供給した。

 

 

『一気に抜け出した逢沢!! さぁ一対一の状況!! 決められるかっ!? 決めたァァァ!!! 左足一閃!! 5対0!!』

 

強烈なハーフボレーシュートでゴールに突き刺さるボール。プレーに迷いがなくなり、結果としてプレースピードも上がっている。

 

駆のエリア内での動きが別次元の領域と思えるほどの。

 

 

『これで今大会7得点目!! 得点ランキングトップに1ゴール差!! さらに、そのトップは宮水青葉!! これが江ノ島の攻撃力です』

 

 

完膚なきまでに勝利の可能性が消え失せている葉陰。誰もが下を向き、闘志を失った局面で、最後の最後にあの男が江ノ島相手に一矢を報いる。

 

 

ロングボールの戦法に切り替わった葉陰の攻撃、セーフティーに外に出した江ノ島の守り。

 

すでに逢沢と宮水は下がり、荒木もベンチに下がった状況下で、コーナーキックのチャンス。

 

—————まだピッチにいる俺たちは、諦めるわけにはいかない。

 

主将としての責務を果たすまで、笛が吹かれるまで、戦う義務がある。飛鳥は、懸命に声援を送るベンチ外のメンバー、応援し、期待をしていた観客の為にも、ここで足を止めるわけにはいかなかった。

 

————もし、勝ち目がなくて、すぐにあきらめるような選手を、自分が監督なら使うか?

 

出来ることを、最善を尽くすこと。敗色濃厚な試合であっても、出られない選手のことを考えたら、そんな考えは消え去ってしまう。

 

 

そのクロスボールに身を投げ出し、飛び込んでいく飛鳥。マッチアップするのは、フィジカル自慢の海王寺。

 

————くおっ!? な、なんだ!? この終盤でまだ—————

 

気迫で押し切られた、もしくは大量リードでの油断があったのか、飛鳥に競り負けた海王寺の眼前で、彼はゴールを決めて見せた。

 

 

『クロスボール、合わせたァァァ!!! 葉陰学院一点を返します!! キャプテンの飛鳥がすぐにボールを抱えます!!』

 

 

『集中していますねぇ。強豪校の意地とプライド、一矢報いましたね』

 

一点を返した葉陰学院。尚もアディショナルタイムで飛鳥にボールが渡り、ミドルレンジからのシュートを狙うも、惜しくもバーに当たりゴールならず。そのままタイムアップとなった。

 

 

5対1という信じられない結果を突きつけられた観客と葉陰学院。

 

強豪と言われた葉陰の惨敗ぶりに、他県からの偵察部隊も驚愕していた。

 

「ああ。江ノ島が圧倒して試合終了。宮水は負傷交代だが、代わって入る選手もドリブルが上手い。だが一番危険なのは、左サイドの逢沢だ」

 

「逢沢駆。逢沢傑の弟。伝説のトップ下の片割れだ。要警戒だな」

 

特に、この試合で2得点と活躍した逢沢駆に対するマークは厳しいものとなっている。

 

「宮水の状態は次の決勝までわからないが、出てきたら要チェックだ。ダブルチームを敷いても意味がないほど抜け出しが上手い。」

 

「ああ。ドリブルのコースを消さないと致命傷だ。」

 

そして、スピードという武器があるせいでマークが振り切られると判断した強豪校。ゾーンディフェンス一択。彼にドリブルコースを開けさせてはだめなのだと。

 

しかし、宮水の状態で今後の受け方も変わってくると考えている。

 

 

レオナルド・シルバは、青葉負傷からさらに苛烈になった江ノ島の攻めを見て苦笑いしていた。

 

「4-2-3-1、4-2-2-2を使い分け、上手く勝ち進んでいる江ノ島。まさに逆鱗に触れたような試合展開だっタ」

 

強豪校のプライドを根こそぎ折るようなプレー。青葉不在であれなのだから、準決勝の結果もおのずと見えている。

 

「あの駆という男。あいつを見ているト、あの男を思い出すナ。」

隣にいるリカルド・ベルナルディは、U-15アルゼンチン代表に召集された際、青葉と傑に苦い思い出を作られていたのだ。

 

だからこそ、今度こそ正面から彼らに勝つと意気込んでいた。いろいろな金銭面での条件もあったが、彼らとの再戦を臨み、日本にやってきたのだ。

 

「駆の中に眠る傑の鼓動。一緒にプレーしたいと思うシ、目の前で見てみたい気持ちにもナル。」

 

それは、あの男を最も知っているという証。もうこの世界に傑はいないが、そのプレーと遺志を継ぐ存在がいる。

 

それが他ならぬ傑の弟であるということが喜ばしい。

 

――――お前が目指したサッカーを継ぐ存在が、

 

自分の目の前にいるかもしれない。そう思うと、彼の友人として嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 

クラブでは共にプレーをして、代表で火花を散らし合う。それが彼の将来の展望の一つだった。

 

――――まさか、ここまで日本の選手に入れ込むことはネ

 

罪づくりな男だ、とシルバは笑う。

 

 

そして気がかかりなのは、宮水青葉の状態。軽症と思われるが、決勝戦はドクターストップがかかるかもしれない。

 

世界では脳震盪に対する認識を改めている。江ノ島も医師の判断があれば青葉をベンチにいれることはできないだろう。

 

 

――――さぁ、どうなる

 

全国出場を目前に、江ノ島高校に試練が訪れる。

 

 

 




傑「ん? 青葉はどこに行った?」

??「いたた。油断したぁ・・・・ん? 傑さん?」

傑「え? 青葉?」

青葉?「ひえぇぇぇ!! 傑さんが化けて出たぁぁ!! って、ここはどこだぁぁ!!」

青葉?「というか、なんかガラスの向こう側に俺がいるぅ!?」


傑「・・・・・・」
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