騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

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連続投稿です。先に27話読んでくださいね


第二十八話 騎士、アジアに立つ

 

江ノ島高校対相模ヶ浦高校の試合は、相模ヶ浦高校のハイプレスから始まった。

 

 

「俺にダブルチームか」

ボランチとトップ下のダブルチームを前に、顔色一つ変えない青葉。トップ下の天童一英は、青葉とピッチで相対することで、その実力とオーラを一番肌で感じていた。

 

—————こいつを自由にさせたらだめだ

 

 

しかし、絶え間なく位置をずらし続ける青葉のプレーは余裕すら感じさせるものだった。序盤は無理をせず、一人剥がしてパス。

 

単純な足技、フェイント言えるほどの動作もなく、青葉はスロースタート。

 

しかし奪えない。

 

「簡単に上げるな、ボールを回していくぞ」

織田は青葉からのヒールパスを受け取り、周りを見ながら指示を出す。

 

————トータルフット。理論上は可能でも、現実は違う。

 

桜井は、青葉から始まったパス回しを見ながら、相模ヶ浦高校の動きを見ていた。

 

————ローテーションで動き続け、中盤で温存。

 

海王寺も、そんな相模ヶ浦高校の動きを見切っていた。

 

かなり組織的に鍛えられているが、所詮はこけおどし。本当の走力を備えているわけではなかった。

 

「くそっ、こいつら全然前に来ない」

 

「ボール狩りを警戒しているのか?」

 

相模ヶ浦高校は積極的にラインを押し上げ、江ノ島を押し込む。ハイプレス、ハイプレッシャーを続ければ、いずれミスが出た瞬間にチャンスが巡ってくる。

 

————いける、俺らのサッカーが、江ノ島を押している!

 

 

前半10分が経過。ボールをゆっくりと回す江ノ島高校。そしてボールを狩るために動く相模ヶ浦の図式が続くのみ。

 

 

「勝負しない? なんでだよ!」

 

「おいおい、攻め込めよ!!」

 

観客からは総体王者らしからぬボール回しにブーイング。

 

『開始から序盤は江ノ島ペースですが、あまり積極的ではありませんね』

 

『ええ。まるで穴を見つけるかのように虎視眈々とボールを回している、そんな感じがしますね』

 

ベンチの岩城は、無理に行くなという指示を出している。

 

「まだです。まだ相手の守備シフトが映像と差異があるか確認が取れません。やはりローテで交代をしていますね」

 

「問題は、中盤の切り崩し方、でしょうか」

隣の美島は、ラインが高く、中盤も熱い相模ヶ浦のディフェンスに対し、一筋縄ではいかないと考えていた。

 

「—————数的不利を真正面から崩す必要はありません。こういう時こそ、織田君や荒木君のような選手の出番ですよ」

 

岩城は既に攻略法を見つけていた。前線で相手陣形を見ているワントップの高瀬、デュエルをしない青葉、そしてボランチにはピッチでの相模ヶ浦高校の動きが大体把握できていた。

 

「馬鹿正直に、あそこまで同じ動きをしていれば、わかってくるでしょう」

 

規律正しく動いている。それはチームプレーとしては良いことだ。しかし、サッカーはアドリブを入れなければ勝てない。

 

アドリブが出来る選手は、個の力が高い選手であり、自ら仕掛けることが出来る選手だ。

 

相手も真ん中の青葉を警戒して突出してきている。スピードこそ緩いが、逆にその動きが不安を煽り、相模ヶ浦にプレッシャーを与えていたのだ。

 

「—————頃合いですね。織田君に合図を」

 

 

一方、ピッチでは依然として流れに変化のない試合が続いていた。

 

一番警戒されている青葉が忍び寄るように中盤へ。天童(一)とボランチも青葉が動けば何かあると感じ、ローテーションで他の選手にプレスを任せて中盤に下がる。

 

————どうするつもりだ、わざわざ数の多い中盤によって—————ッ

 

 

「台風の穴は、どこにあると思う?」

 

不意に、青葉が口ずさんだ。

 

「なんだ、いきなり————ッ」

天童はいきなりの言葉に驚く。

 

「答えは今から教えよう」

そう言って中盤をまたしても浮浪する青葉。肝心なことは何も言わない。そして、天童兄弟も挙げていた江ノ島の心臓織田にボールが渡る。

 

ダッ、

 

左へと寄っていた青葉が右へと方向を変えて動き出したのだ。あまりにも滑らかな方向転換で、マークのボランチが一瞬振り切られる。

 

「ちぃ!!」

 

しかし、難なく追いつかれてしまう青葉。だが、これこそが一つ目の布石。

 

 

「織田さん!!」

青葉が走りこんだスペースに侵入したのは、的場。ここで中に絞る動き。マークの受け渡しはあいまいにしてはならない。

 

そしてここで、青葉が制止。動き続けていた彼が止まったことで、ボールを貰いに行く体勢になったと判断してしまった相模ヶ浦高校。

 

————三人目の動き、狙いはあのドリブラーか

 

冷静に三人目の動きを注視していた相模ヶ浦ディフェンス。事実、一歩抜け出した的場に対し、センターバックの一人がケア。目で進行方向を予測し、侵入に備えたのだ。

 

「いけぇぇぇ!!!」

 

しかし織田の選択は相模ヶ浦の予想を上回るものだった。ここで、青葉、的場を飛び越えてのロングフィード。

 

ゆっくりしたボール回しからの一撃。縦に早いとはこういうことなのだと言わんばかりの一撃が、相模ヶ浦の心臓に迫る。

 

「も、もどれぇぇぇ!!!」

 

監督の阿久津が指示を飛ばすがもう遅い。的場が動き出した瞬間にズレた穴を見つけた高瀬が完全に抜け出していたのだ。

 

ディフェンスラインを高く保つことで知られる相模ヶ浦は、後方にスペースを抱えている状況。フィジカルで勝る高瀬は、大きなストライドでぐんぐん加速していく。

 

『織田からのロングフィードが通る!! 高瀬抜け出す!!』

 

『まさに一撃必殺。鋭いロングフィードは、相手ラインが高いとこういうメリットがありますからね』

 

「うおぉぉぉ!!!」

高瀬を止めようとするディフェンス陣だが、それでも倒れない。中盤の選手が高瀬に群がる中、

 

ワンテンポ遅れて的場が移動を開始。相手の背後を負うようにフリーランニングを始める。

 

————こういう場合、加速して抜け出すのが最善

 

「調子に乗るな、一年坊主!!」

 

「うおぉ!?」

 

しかし、高瀬がついに陥落。3人がかりで体をぶつけられ、よろけてしまうのだ。しかしその長い脚を活かし、ボールだけははじき出し、相手ボールにはさせない。

 

 

「いいポストプレーだった。後は任せろ」

 

 

その言葉と共に、バイタルエリア付近からセカンドボールを拾ったのは青葉。そのこぼれ球に近いボールに対して、

 

 

「———————その隙は見逃せないな」

 

ダイレクトでのロングシュート。高瀬の抜けだしを警戒し、許容範囲まで前に出ていたキーパー。高瀬が潰された瞬間の安堵を狙われた。

 

「あぁ!」

 

「あっ!」

天童兄弟がその瞬間の青葉の背中を見ていた。もはやどうすることもできない局面で、彼は決定的な仕事を果たしてしまう。

 

「くっ、あぁ………ッ」

 

キーパーが飛び上がってボールに触ろうとするが、触ることも許されないほどに速く、手元で相当に変化しながら落ちる無回転シュートの前では、ポジショニングミスをした彼に止める術は存在しない。

 

『江ノ島先制~~~!! 前半の12分!! 決めたのはやはりこの男! 背番号8! 宮水青葉!!』

 

ゴールネットが揺れ、観客が揺れるように大歓声を送る。全国まであと3つ。その大舞台を前に

 

 

「———————っ」

 

スーパーゴールを平然と決めてしまう、しかもその全てが計算づくだというのが恐ろしい。今の派手なゴールもすべて彼の予測通りだったのだろう。

 

————今の、ボールを保持する前から状況が見えていたのかよ

 

背番号14の天童は、青葉の恐ろしいほど冷静な視野の広さに驚いていた。

 

 

「うおっ! すごかったぞ、青葉!」

 

「よく見ていたな、青葉。やはり遠目からのシュートはいい」

 

「凄かったよ、青葉!」

高瀬、織田、的場から称賛の声が上がり、他の選手にももみくちゃにされた青葉だが、嫌なそぶりは一切なかった。

 

 

「—————トータルフットは打ち止めだ。どうする、相模ヶ浦」

 

 

さらには、相模ヶ浦がケアしきれない縦のハイボールへのケアが未熟ということもバレてしまった。

 

 

ロジックの仕掛けを見破られた相模ヶ浦高校に焦りが生まれる。

 

「ワンタッチで回せ! 動け動け!」

阿久津の指示が飛ぶ。もっとパスコースをしっかりと作らないといけない。その為には動くことが必要になる。

 

しかし江ノ島高校のディフェンスは落ち着いており、迂闊にプレスには来ない。

 

「パスコースを消すだけでいい。蓋を閉じればどうすることもできない」

 

連動する守備。青葉がパスコースを限定させ、ダブルボランチがしっかりと蓋をする。ある程度入り込んだ場所ではパスコースもおのずと限られてくる。

 

「くっ!?」

天童兄はパスコースを限定され、追い込まれていくことに気づく。

 

—————12番堀川か!

 

 

12番が上手く立ち回っているのだ。彼は中盤に座すことで自由を得た。ボール奪取能力に長けた彼だからこそ、見えている景色がある。

 

攻撃では織田が、そして守備では彼の動きそのものがタクトになっているのだ。

 

 

「迂闊だな」

 

青葉が横から天童へのプレスを仕掛け、ボールが零れる。まるで円を描くようにボールホルダーの周囲をフリーランニングしていた青葉は、天童にボールが集まることを予期し、彼の死角から一気にボールを奪ったのだ。

 

————しまった、狙われていたのか!?

 

「今度は決めろよ、高瀬」

そしてここでスルーパス。敵陣を切り裂く球足の速いボールが一気に縦へと入る。

 

そして、高く上がったラインに抜け出したのは、またしても高瀬。今度は全速力でボールを追いかける。

 

 

そしてそのまま——————

 

『一対一を制したのは高瀬!! そのまま押し込んだァァァ!! 前半27分、江ノ島2点目!! 決めたのは1年生ストライカー高瀬!!』

 

『ワンタッチパスに固執し過ぎましたね。ブロックを組んだ相手には有効な戦術の一つですが、ロストすると逆にピンチになりますからね。縦に勝負する必要もあったでしょう』

 

勢いを失った相模ヶ浦高校は得意のワンタッチパスを悉く弾かれ、攻撃を組み立てることが出来ない。

 

「くっ」

ついにはワンタッチパスその物を封じられ、得意の形を作り出すことが出来なくなってしまった。

 

前半の序盤にボールを回していた江ノ島と、前半の中盤からボールを回されている相模ヶ浦高校。

 

『苦しい状況ですが、王者相手に意地を見せてほしいですね』

 

『しっかりとブロックを作り、致命傷を避けている格好ですね。割り切りが出来ていて江ノ島は効率のいい守備をしていますよ』

 

 

前半は相模ヶ浦が支配率では江ノ島を上回っていたが、チャンスらしいチャンスは作れず、シュートも苦し紛れのロングシュート一本に抑えられた。

 

 

慌てない。試合の流れを理解し、無理をしない。全体の意思が統一されており、江ノ島に対して相模ヶ浦が付け入るスキはなかった。

 

「皆さん。前半はよく我慢してくれました。ワンタッチパスを防ぎに行くのではなく、致命傷になり得るキーパスのコースを遮断する。これだけでいいんです。しかしショートカウンターの際、青葉君のカットはこれ以上ないプレーでしたし、その後の高瀬君の突貫は相手に余裕を奪いました」

 

監督に褒められた高瀬は笑顔で、青葉は油断なく頷いていた。しかし高瀬も高瀬ですぐに真顔に戻っており、切り替えは出来ていた。

 

「後半、飛ばしてきた相手は運動量が落ちるでしょう。止めになる3点目を奪いに行くタイミングはこちらで指示を出します。いいですね?」

 

はいっ!

 

 

 

後半からはもはや両者が走るサッカーであると言えないほど明暗がくっきりと分かれてしまう。

 

「くそっ、戻れ戻れ!!」

 

竜胆が選手に指示を出すが、前線の選手の戻りが遅い。しかも中盤はガス欠が見え始めている。

 

チームとしての閉塞感が相模ヶ浦に与える疲労感と絶望は半端ではない。

 

「あっ!」

 

横パスをカットしたのは、的場。パスコースを限定し、ドリブルコースを遠回りする方向だけを残していたのだ。

 

明らかな集中力の欠如。そこを狙われた。

 

ショートカウンターの際に一気にスピードアップするのは江ノ島の十八番だ。高瀬がゆっくりとターゲットマンになるように走り、二列目の兵藤と青葉が飛び出してくる。

 

「そろそろこっちもこい!!」

兵藤が叫ぶ。守備ばかりで貢献するばかりでは物足りない、と。

 

二列目から飛び出した二人がディフェンスラインを下げさせ、後方より高瀬の陰に隠れるのは織田。

 

その瞬間、織田とのアイコンタクトを取った的場。

 

織田へのパスを選択する的場と、そのボールを受けるよう体勢を変える織田。相手は当然織田のロングフィードを警戒する。

 

————こいつのパスから、攻撃は始まっている!

 

 

しかし、ダイレクトでリターン。的場の走りこむスペースへとパスを出した織田。二列目と高瀬を警戒していた陣形がまたも崩れる。

 

————見えたッ

 

的場には乱れた陣形の穴が容易に分かる。ドリブルで横の揺さぶりをかけるだけでラインがズタズタになる。

 

ステップオーバーでボディフェイント、そして詰めてきた相手には——————

 

「なっ、あぁ!?」

 

ダブルタッチ。素早く横にスライドし、一瞬で抜き去る的場の伝家の宝刀。そしてそのまま一気呵成にドリブルで切り込んでいく。

 

 

『的場からの縦パス! おっとダイレクト! 的場に通って、仕掛けていく、仕掛けていく! 躱して、切り返し! シュートぉぉぉぉ!!!』

 

ここで、慌てて体を投げ出してシュートコースを塞いだ選手を冷静に見ていた的場が、右足で切り返し。

 

横にずれていく相手選手を尻目に、的場のシュートコースが再び復活する。

 

 

その刹那に左足一閃。塞いでいたはずのコースが破られ、限定していたニアサイドの逆を突く一撃に反応が遅れた相模ヶ浦の守護神。

 

ゴールネットを揺らすボールと、江ノ島3点目を告げるホイッスルが鳴り響く。

 

『決めたぁぁァァァ!!!! 江ノ島3点目! ドリブラー的場の鮮やかなフェイントで、ゴールをこじ開けました!』

 

『最後の切り返しが効きましたね。あれはどうしようもないですよ』

 

『後半8分! 早々と追加点を奪った江ノ島! さぁ、苦しくなります相模ヶ浦』

 

 

心を折るには最適な時間帯でのダメ押し。時間だけが過ぎていき、相模ヶ浦は有効打を打つことが出来ない。

 

 

そして後半20分過ぎには——————

 

『江ノ島高校、ここで選手を代えるようですね。6番の織田が下がります。今日中盤で質の高いパスを供給した織田の代わりに10番の荒木、的場に代えて20番夏目が入ります』

 

その5分後には—————

 

『ここで高瀬が下がります。背番号13火野が入り、江ノ島高校は交代枠をすべて使い切りました』

 

『荒木というチーム屈指のパサーを投入した江ノ島。相模ヶ浦としても、前線がフレッシュになった江ノ島の運動量に、精度の高いパスでは前に出るのも難しいですね』

 

 

 

とはいっても、運動量が落ちほぼ陥落寸前となっている相模ヶ浦に打てる手はなく、時間だけが過ぎていく。

 

『あっとミスパスになった! ロングフィードからの!  兵藤の折り返し!! あっと火野を飛び越えて、走りこんでいたぁァァァ!!! 江ノ島4点目!! 背番号20の夏目が二試合連発!! ダイレクトで決めて見せました!!』

 

 

『狙われていましたねぇ、縦パスを。堀川君の察知する能力は高いですね。ですが、宮水君を中心とした前線が組織的にプレッシングすることでコースを限定させたからこそ、堀川君も思い切って前に出ることが出来ました』

 

『ですが圧巻は、兵藤へのロングフィードを演出した宮水君と、そのボールを折り返した兵藤君のラストパスですね!』

 

堀川が飛び出した瞬間に空いているスペースを荒木がカバー。堀川の飛び出しをケアしつつ、ショートカウンターの準備をしていた前線。

 

『交代選手が機能した素晴らしい攻撃です。堀川君が奪った瞬間に縦パスで宮水君に、プレスがなかったわけではありませんが、相手の股を抜くファーストトラップで振り向き様に躱してロングフィード。ここ速かったですね』

 

ターンしながらのトラップで相手を手で押さえながら振り向いたのは青葉。実は、彼は堀川が飛び出した瞬間の直後、前線の選手の位置を確認していたのだ。

 

素早く右サイドへ大きく展開し、後は兵藤の匙加減。火野がニアに走りこむ献身的な走りで相手を惹きつけ、同時に自分でも決められるようポジショニング。

 

最後はスペースに飛び込んできた火野がダイレクトで蹴りこむだけだったのだ。

 

スペースをいかに作り出すか。二列目の飛び出しをいかに効果的に行うのか。

 

4-2-3-1の有効的な戦術を、これでもかと見せつける。

 

 

 

この4点目が決定打となり、試合の流れは停滞。江ノ島は最後スタミナ温存。流しながらのプレーとなり、相模ヶ浦も動けないまま、タイムアップの笛が鳴る。

 

 

『試合終了~~!!! 江ノ島勝ちました! 4対0と快勝! 序盤の緩いパスワークから縦に速いサッカーで相模ヶ浦高校を撃破! 流れるような連動から後半も躍動!』

 

『いやぁ、本当にすごいですね。ここまで完成度の高いチームは稀ですよ。総体の時よりも連携は強化されていますし、個の力もさらにレベルアップしています』

 

『さぁ、江ノ島高校の次の相手は長らく神奈川サッカーを牽引してきた二強の一角、葉陰学院! どんな試合模様になるのか、次も楽しみです』

 

 

そして一方、アジア選手権に出場中の逢沢駆は———————

 

 

『これが逢沢駆の反転ルーレット!! 切り返して、シュートぉぉぉ!!! 決めたァァァ!! 今大会4点目!! 3試合で4発!! 後半ロスタイム! グループリーグ3連勝を手繰り寄せる、値千金のゴラッソぉぉぉぉ!!!』

 

 

今大会躍動するのは、ユース組ではなく高校生組の逢沢駆であった。前評判は逢沢傑の七光りと言われてきた彼だが、初戦の中国戦で1ゴール1アシストと結果を出したのに続き、

 

2戦目となる北朝鮮戦では超絶フェイント、ヴァニシング・ターンがさく裂。ボールが消えたと錯覚させるほどの威力を誇る反転ルーレットに次ぐ逢沢駆の大技。

 

鮮やかなドリブルで敵陣を切り裂き、ゴールを決める姿がついに重なった。

 

まるで、伝説が舞い降りたかのような光景だと。逢沢傑の弟は、やはり規格外の存在だったと。

 

ついに兄越えを成し遂げたと思われる駆は、尚も予選リーグで猛威を振るい続け、先制ゴールに続き、試合の流れを決定づける彼のゴールが試合会場を興奮の渦に包み込む。

 

 

アジア屈指の死のグループと言われたグループDを首位通過。3戦目はあの韓国を相手に躍動。

 

2位の北朝鮮とともに、グループリーグ突破を決めたのだ。

 

「最後のシュート。切り返しからの素らしたシュートは見事だった。とっさの判断なの?」

世良はラストパスを送った相手に尋ねる。キーパーの逆を突くシュートを決めた彼に対し、あれはまぐれなのか、それとも狙っていたのかと。

 

「うん。反応がこの試合よかったからね。最後の最後、一捻りしようと思ったんだ。振り抜きざまに少し動いていたし」

駆は最後まで冷静にキーパーの動きを見ていた。それがコロコロシュートによって奪ったゴールにつながる。

 

「しかし、先制点の時は凄かったな。いつの間にあんなチップキック気味のクロスを会得したんだよ! 動きからそんな感じがすると思って抜き出したけど、まさかあんなドンピシャとはなぁ」

 

右サイドハーフで先発した横浜マリナーズの遠藤が駆け寄る。

 

「うん。ちょっと青葉と一緒にクロスの練習をしたんだ。悔しいけど5回連続ターゲット当てが限界だったけど」

 

「は? おいおい、なんだその練習!?」

驚くのはボランチで先発したジェムユナイテッド千葉の守屋。

 

駆は練習概要である青葉とのマッチアップを加味したクロス上げ練習を説明した。しかしここで問題発生。なでしこの群咲舞衣と美島奈々ともマッチアップした青葉が二人をコテンパンに負かして、片方を大泣きさせたことが暴露されたのだ。

 

「あの男はぁァァァ!!! 奈々ちゃんを相手になんてことをしやがる!!」

 

「しかも舞衣ちゃんを大泣きさせたとか!! 許すまじ、宮水青葉ぁぁ!!」

 

 

「—————(青葉ごめん。つい口を滑らせてしまったよ)」

 

 

青葉の知らないところで、青葉はどんどん敵を作ってしまうのだった。だが、そんな悪評も選手権予選で見せたスーパーゴールとロングフィードは彼らの口を沈黙させた。

 

 

「——————こいつ、本当に高校生?」

東京蹴球高校の風巻は、ロングシュートを放った際の軌道と速度を見て唖然としていた。

 

「おいおい。高校の試合にプロがいるぞ、プロが。ありゃあ反則とられるって、なぁ原田」

 

「俺に振るなよ、菊地原。だが、ドリブルもシュートもパスもあれでは、守るのが難しいな」

 

センターバックコンビである大阪ガンナーズの原田と、鹿島ワンダラーズの菊地原が談笑する。

 

なんだかんだ言って、青葉のことは全員が認めているのだ。

 

「—————ていうか、江ノ島も江ノ島でレベル高いよなぁ。なんだよ、あのセンターフォワード。ハイボール収め放題じゃねぇか」

しかし、話題は青葉以外の選手にも波及する。

 

「セットプレーでも止められる気がしねぇぞ。体入れるのが精いっぱいだな」

 

「右サイドハーフも小柄な癖に倒れねぇし、体もブレねぇ。いい体幹してやがる」

 

 

他の江ノ島高校の選手が褒められたことでなんだか誇らしい気がする駆。それは間違いなくチーム力が上がったことを意味する。

 

「けど、宮水を起用するならサイドだろ。トップ下もできない事はないが、奴の俊足が活かされるのはサイドだろ」

 

しかし、江ノ島高校でもたびたび話題になっていた青葉の適正ポジションはどこなのかという議題が代表チームでも広がった。

 

「ああ。フィジカルも強く、足も速く、視野も広い。けど、奴はよりゴールに近い場所でプレーしないと威力が半減だ」

 

 

駆はその話を聞いてはっとする。そういえば、青葉がサイドからトップ下になってから、彼のドリブルは鳴りを潜めている。

 

相手のマークを外し、躱す技術の高さは見せているが、それでもロングフィードとミドルレンジからの正確なキックで相手ゴールを脅かしているだけだ。

 

彼本来の持ち味が消されてしまっている。

 

 

「——————————」

 

それを彼はわかっているのだろうか。駆は青葉が伸び悩んでいるという事実に、目を伏せてしまった。

 

 

そんなこんなで、その後行われた相模ヶ浦戦でもその評価は変わらない。

 

今の江ノ島高校では、青葉のスピードを生かすことが出来ていないことに。

 

 

 




海外では駆君無双。

国内ではなぜか不調扱いの青葉(当社比)

やはりトップ下ではスピードに乗る前に寄せがすごいことになっています。なお、近づいた相手を簡単に躱す模様。
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