騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

53 / 94
遅れましたが、プロ編続きです。



第四十八話 その為の布石

レギュラー候補組。それを言い伝えられた時、何か自分の中にあるものが変わった。芽生えたのは戸惑いと、訳の分からない鼓動が早くなる感覚。

 

新監督に、新たな選手の加入。環境が変わり、このチームが少しずつ変わっていっているのが理解できる。

 

なのに、自分はなぜレギュラー候補組に選ばれたのだろうか。なぜ若手ばかりの選手を集めたのだろうか。

 

ここに至るまで、椿は散々なプレーに終わっていた。

 

飛鳥亨が加入し、変則的な紅白戦ではいいプレーも出来ていた。なのに、途中から止められてそれが出来なくなってしまった。

 

考えが全て見透かされ、考えるよりも早くに距離を詰められた。

 

そんなダメダメなプレーしかできなかった自分が、本当にレギュラー候補に値するのか。

 

 

「—————いい脚持っていますね、椿さん」

 

その時だった。宮水青葉と話し込んでいた逢沢駆がこちらにやってきたのだ。飛鳥亨と宮水青葉は、若手を仕切っている赤﨑と監督を交えて何かを話している。

 

「え? 逢沢、君?」

 

「駆でいいですよ、椿さん。まさか、青葉ほどではないけど、とんでもなく速い選手がいたなんて思ってもいませんでしたし」

嬉しそうに語る駆。まるで、自分が必要とされているかのような物言い。その期待が重かった。

 

「———駆君は、勝つつもりなの?」

 

相手はレギュラー組。こちらは控え組。監督が言うように、ギリギリプロレベル。そんな自分たちで勝てる相手なのだろうかと。

 

「当然。早々にポジションを奪って青葉からベストヤングプレーヤー賞を奪うつもりですから」

 

野心に燃える新進気鋭の若手。彼は楽しそうだ。

 

「ははっ! そういう野心を隠さないところは好きだぜ、駆ちゃん」

 

そこへ、達海監督がやってくる。話が終わったのか、メンバーを集める。青葉は苦笑いをしており、赤﨑は獰猛な笑みを浮かべている。飛鳥に至っては、困ったような笑みを浮かべていた。

 

「小動物系かと思いきや、よくかみつく番犬とはな。世代別は伊達ではねぇか」

 

満足げに骨のあるやつを見つけたと、言う表情を浮かべる達海。

 

「いいか。作戦は至ってシンプル。ワンタッチプレーは禁止。俺が良いというまでね」

 

 

「————う、うっす!」

 

「けど、30メートルダッシュのタイムを活かすには、速攻で攻めたほうが」

 

「ああ。技術や経験で劣るなら、そういうシンプルな攻めの方が」

 

中には異論が出てくる。ワンタッチを禁止する意味は何なのか。

 

「まあ、試合の中、なんで自分らが選ばれたのか、よく考えておけよ。すぐにわかるさ」

 

「まあ、ヒントなら—————青葉だな」

 

「青葉の力がレギュラー組に勝るって話か? そりゃあ、確かにすごいけど」

 

「ノンノン。そうじゃない。青葉は確かに上手い。けど、お前らはこいつがなんでやばいのか、わかるか?」

 

「スピード? 技術?」

 

 

「惜しいなぁ。正解は運動量だよ」

はずれぇ、とダメ出しをしっかりした後に、達海は簡単に種明かしをする。

 

 

「青葉はその豊富な運動量で、攻守で貢献できる。そしてお前らは比較的、30メートル走のダッシュのタイム、その初めと終わりのタイム差が狭かった」

 

 

「俺はね。今日にいたるまで、そして昨夜もお前らの試合を見てきた。どんな形でやられているのか、どういう失点、その傾向にあるのかをね」

 

その時、駆と飛鳥、青葉はだから寝坊したのか、と心中で事実に至る。

 

「でだ。ちょいと荒療治だが、こういう手段を取らせてもらった。走れねぇ選手がダメとは言わねぇ。ただ、うちがいつもやられているのは、ボールキープして回され、バテバテになるお決まりのパターン。弱いチームの典型だな」

 

 

達海の指摘に押し黙ってしまう一同。それは、いつも劣勢で主導権を握られ続けている毎年のシーズンを思い出させるものだった。前に出ても繋がらない、前に出ることさえできないもどかしさ。

 

「んで、お前らはそんなチーム状況で控えという存在。言っちゃあ悪いが、辛うじて一部レベルのプロ、ってことになる。けど、ここでお前らは足を止めるの?」

 

守っていれば負けはないと、どこか消極的な気持ちが燻っていた。そんな彼らを焚きつけるように達海は続ける。

 

「ここでレギュラーを掴んで、シーズン開始とともに強豪チームを倒しまくる。そんでお前らの評価は変わる。世界が変わる。本当に目指したい場所が、わかってくるはずだ」

 

夢物語のような、漫画の話をする達海。空想のアニメや漫画のような、ご都合主義なんてなかった。今まではそうだった。だが、達海はそれが出来ると説くのだ。

 

「—————俺は、このチームには伸び代しかないと確信しているぜ。お前らの今まで燻っていた気持ちは、時として信じられねぇパワーを与えてくれるんだ。そしてそれがかみ合ったとき、ジャイアントキリングは起こる。起こるべくしてな。俺はそれを見続けてきた」

 

 

ドクンッ、

 

その時だった。その若手の選手の中で心臓が高鳴った選手がいた。それは幻なのか、幻聴なのかは分からない。しかし達海はその鼓動を、その渇きを誰よりも感じている存在がいると確信した。

 

そしてそれは、青葉や駆ではない。他の誰かから感じられた。

 

 

「とりあえず、だ。青葉は俺と一緒に観戦。後は俺の言うポジションについてもらう」

 

「—————体、温まっているんですけど」

不満を覚えた青葉は、監督に文句を言う。なぜ自分は出られないのかと。せっかく彼の前でプレーできると思っていたのに、お預け派を食らうわけにはいかない青葉は、異論を唱える。

 

「うーん。まあ、出たいって言うなら出てもいいけどさ。ドリブルでゴリゴリ進むの禁止な。後クロスも。まあ、ターゲットもいない場所ならだめだし」

 

 

「なっ!?」

それにはさすがに驚きを隠せない青葉。なぜ自分の強みを次々と禁止にしていくのか。自分はこの紅白戦でアピールをしなければならないのに。

 

なお、達海としては明らかにレベルの違う彼をすぐに出してしまえば、勝負がついてしまうと見切っていた。選手権のパフォーマンスを見る限り、もう彼は技術だけならプロレベルだと分析していた。

 

そう、彼の実力だけは。

 

 

「あっと忘れてた。ミドルレンジ以上からの射程のシュートも俺が良いというまで禁止な」

 

だからこそ、勝負を簡単に付けないよう制限をかける。この試合は、青葉の為の試合ではない。ETUが変わる為の試合にしたい。

 

ここにいる若手がインパクトを与え、ベテランが刺激を受けて奮起する。このチームに足りないのは自信と意志の変革だ。

 

だからこそ、達海はベテランの奮起にも期待しているのだ。右も左も分からない若手を自分が受け持ち、監督不在の状況でどれだけ個の実力を出せるのか。ベテランにはその技術力があると信じたいのだ。

 

「ぐ、ぐぬぬ!!」

次々とプレーの制限を掛けられる青葉。これにはさすがの駆も何か言おうとするが、

 

「駆ちゃんもおんなじだぜ。2,3人いつでも抜けます、なんて顔をしているけどね」

まさか自分まで標的になるとは、と駆は驚く。これではサッカーにならない。

 

「えぇぇぇ?!」

 

まさかの流れ弾。駆も当然驚く。アピールする気満々だった彼も、お預けを食らいショックを受けたような顔をしている。

 

「それが嫌なら、お前たち二人は観戦だ。レギュラー候補組だっていう称号もなし。どうする?」

 

 

「くっ、わかりました————」

 

積極性をほぼ封じられた青葉と駆。仕掛けるのは誰になるのか。そんな空気が充満するが、

 

「なに、ボールキープして様子を見ろ。時間が経てば面白いことになるからさ」

 

 

なお、飛鳥はセンターバックで亀井と一緒に組むことになる。

 

陣形は4-2-3-1で、

 

「おい、なんで俺はこのポジションなんだ」

 

右サイドバック宮水青葉爆誕。守備のやり方ぐらいはわかるが、この位置からの攻撃参加は厳しい。バランスを気にする彼は、なかなか上がる勇気がない。前は穴と呼ばれるほどに守備が下手糞ということを宮野から聞いているのだ。

 

—————ミヤさんから聞いた話だと、赤﨑選手は攻撃センスこそあるが、守備に難あり。

 

だからこそ、迂闊に自分も前に出た瞬間、食い破られるとわかっている。ボールキープをするポゼッションの戦術で、ボールロストの危険がある。これはリスクだ。

 

 

—————なんだか知らないっスけど、サイドバック起用か。

 

ライバルがなぜか監督に弄られているが、これを機にアピールできればこのポジションは固めることが出来る。

 

赤﨑はこれをチャンスと考えていた。

 

「あははは。あそこまで攻撃制限はきついなぁ」

 

 

そして、逢沢駆はトップ下。ボールを散らす技術は一応持っている。ゆえに、かろうじて攻撃的ポジションにつくことが出来た。

 

一方、ボランチには椿が入ることになる。緊張をしている彼を見かねた駆は、しきりに何度も声をかける。

 

「椿さん。危なくなったら僕がボール貰うんで、大丈夫です」

 

「逢沢君———う、うん」

 

年下にフォローされる立場というのも、何とも心苦しいのだが、今は緊張でガチガチになっている椿。それを気にする余裕はないようだ。

 

ワントップは世良。良く動き、スピードもある。解禁時にはいいパスを出せそうだ、と駆は思う。

 

 

そんな布陣で臨むレギュラー候補組の様子を見て、永田有理は達海を問いただす。

 

「ねぇ、本当に控え中心で勝てるの? 相手はレギュラーよ? しかも、宮水君にサイドバックをやらせるなんて。あれは酷いわよ」

 

「まあなぁ。あいつが無双するだけだと、本質を突きつけることすらできないからな。紅白戦で、練習試合。ETUが変わる為には、まずはそこをはっきりさせなきゃいけねぇ」

 

走れないサッカー。走らされてバテバテになった相手程、倒しやすいものはない。しかし、若手は案外走ることが出来るのが救いだった。

 

ただ、青葉へのフォローは忘れないつもりだ。

 

「終わりごろに、あいつを一列上げるぐらいはいいかもな」

 

 

 

 

そして、試合は、達海の思惑通りに進む。ワンタッチプレーを禁止されている控えチームはなかなか前に進むことが出来ない、というより達海がサイドチェンジを意識し、数的有利を作ることを指示しているのだ。

 

 

だが、彼らは仕掛けない。そして、その数的不利を埋めるためにチェイシングするレギュラー組。

 

彼らはわかっているのだ。控え中心のチームは走力に秀でた傾向にある。ゆえに、どこかでスピードで勝負をしてくるのだと。

 

「ほらよ、新入り!」

 

「っ」

 

オーバーラップするのは青葉。右サイドのタメから抜け出すかに見えたが、

 

 

見事な逆サイドへのロングボールで組み立ては最初から。右に集中していたレギュラー組をあざ笑うロングフィード。しかし意味はない。

 

—————苛立ってるなぁ、あいつ。

 

赤﨑は、不満を隠そうともしない青葉の姿を見て笑う。相当ストレスをため込んでいるらしい。

 

ドリブルで抜け出せるという自信がありありと伝わる。なのに、それを禁止されており、手枷、足かせをはめられた状態。

 

 

そんな彼を見ている駆は、心苦しくはあるが、ボール回しに徹する。

 

 

「なっ!?」

 

簡単な跨ぎフェイントとトラップで、マッチアップしている村越を抜き去り、ボランチの椿へパス。

 

「くっ!?」

 

「抜かせるかよ、7番!」

 

「刈り取れ!!」

 

しかし、二人係で囲まれ、孤立してしまう。スピードに乗る前にプレスの網にかかってしまったのだ。そんな様子を見かねた駆は、

 

「いいよ、椿さん!! 戻して!」

 

溜まらず椿からの苦し紛れのボールを受け取る駆。そこへ、村越がボールをぶつけてくるが、

 

————なっ!? 受け流されている? どこにそんなフィジカルが

 

村越のプレスを簡単にはがしてしまう身のこなし。悠々とバックパスをして流れを落ち着かせる駆に戦慄を覚えた。

 

体を入れ替え、合気道の要領で押し出されるような感覚。相手の力を受け流し、前を向くプレーは際立っている。

 

余裕を感じさせる雰囲気に、視野の広さ、抜群のキープ力。司令塔としてのプレーぶりも侮れない。それはつまり、彼がいつでもこちらを崩せるという意図が感じられるほどに。

 

 

青葉のような理不尽さを感じはしないが、絶対にボールを相手の届く場所に置かない、取られないという一点に関しては劣らない。

 

柔のドリブル、連想するのはそんな言葉だ。対する青葉はまさしく剛の者。切れ味が鋭く、一瞬で間合いを崩す速度と、トリッキーなボールタッチ。

 

 

 

しかし、それだけの武器を持つのに、青葉はなぜサイドバックに縛られているのか。そしてなぜ、彼らはスピードで勝負をしてこないのか。

 

度胸がないわけがない。青葉のあの苛立ちを隠せない表情と、浮かない顔の駆を見れば、そんなことはないとわかる。

 

 

「——————まさか」

 

 

サイドチェンジを多用し、数的有利を作る作戦の奥には、それがあったのだ。こちらを走らせたいという狙いが、昨シーズンの苦い経験の大部分を作った記憶が、村越に達海の監督を見破らせたのだ。

 

 

「無理にボールを獲りに行くな!! 相手はこちらを走らせたいだけだ!!」

 

 

「なっ、コシさん!?」

 

「—————(やはり、か。危ない場面は何度もあったが、そういう狙いか)」

 

黒田は姑息な手段を使っていたことに激怒し、杉江は冷静に相手の作戦を分析していた。思えば、中盤が疲弊し試合後半に失点するケースをこれまで何度も見てきたのは彼だ。

 

チーム力の問題で、その問題をどうすることも出来ず、前の監督もそれを修正することが出来なかった。ボールを獲りにいかず、籠るばかりのサッカー。

 

それでは余計に相手を調子づかせてしまう。点を取るどころか、前にも進めない状況に陥る。

 

————分かっていたんだ。達海さんはこのチームの問題点を

 

 

中盤も前線も走れないサッカー。堅守が武器といいながら、まったく守れていなかったという現実が。

 

 

「あ~あ、ばれちゃった。けど、あっちにもいい顔をする奴がちらほらいそうだね」

 

フォワードの堺は、相手のやり方を意識して、さらに集中力を上げていた。効率のいい追い込み方を意識し、首を振る回数も増えていく。

 

つまり、堺は周りの位置取りを確認するように、動くことを心掛け始めたのだ。ベテランらしい渋い傾向である。

 

そして、最奥に控える杉江はしきりにディフェンスラインを上げ、声をかけ続けている。恐らく、無駄に走るのを躊躇い、体力を温存させようとしているのだ。

 

スプリントやチェイスの強度を分散させ、出来る限り体力の消費を抑える。

 

他にも、目の覚めたように首を振る回数が増えていくベテラン勢が一部存在する。自分で考え、即席ではあるが連動させていく技術。さすがレギュラー組というプレーを見せ始めている。

 

「おし!! ワンタッチプレー解禁!! 住田と宮水のポジションをチェンジ! 一列上げて仕掛けろ!」

 

 

「——————またボランチか。まあいい。攻撃にこれで参加できそうだ」

 

 

前線から仕掛けるのは青葉。マッチアップするのは丹波。

 

「へっ、行かせないぜ、ルーキー」

 

 

しかし簡単にフェイントを入れてこない青葉。じりじりと間合いを測り、機を待っているかのように見受けられる。そして、その間合いは隙だらけに見えた。

 

 

「—————え?」

 

一歩動いた。彼の間合いに一歩近づいただけなのだ。なのに、その瞬間に彼の視界から青葉は消えた。正確に言うと見失ったのだ。

 

まるで見えない壁があるかのように届かない足。横を見るとするりと抜けていく青葉のドリブルが見えるが、追いつけない。まるで魔法を使ったかのような抜き去り方。

 

—————ボールと体が接着剤みたいに近い!? それに今のドリブルは!?

 

 

フェイントを使われたわけでもないのに、あっさり抜かされた。レギュラーチームは、丹波が簡単に抜かされたことで緊張の色が濃くなる。

 

「つぶせっ!! 一人カバーリング!!」

 

杉江の声が鋭く響く。このまま彼に前を向かせるわけにはいかない。村越がチェイシングするが、

 

「なっ!?」

 

近づく前にスルーパス。マークを外す動きをしていた駆が、堀田から逃れており、ボールはインサイドに張り付くようにトラップ。そのまま縦に仕掛けていく。無論スピードもどんどん上がる。

 

「いかせっ、なっ!?」

 

ここでスピードダウン。縦を切ろうとした堀田の股下にボールを通す駆。また抜きドリブルをしたのだ。しかも、警戒していた右への抜け出しを読んでいたのか、ボディフェイントを入れながらの左への突破。

 

バランスを崩し、ふらつく堀田を尻目に、駆は止まらない。さらに、ボランチからものすごい勢いで飛び出してくる青葉の姿も。

 

「いかん、19番潰せ!!」

 

「おらぁぁぁぁ!!!」

 

黒田がすかさずチェイシング。ボランチの攻撃参加という青葉の運動量が可能にさせる諸刃の剣。トラップした瞬間に潰してやると意気込んでいた。

 

しかし、駆には別の世界が見えていた。

 

 

「しまった、左サイド!?」

 

杉江が声をあげる。左サイドには、宮野がいる。スピードが武器の若手。駆は彼とコミュニケーションをとっていた。

 

完璧なピンポイントクロスが宮野の足元に納まる。まるで、チームの要である王子を彷彿とさせる精度。

 

————凄いパスだ。俺のスピードを計算して相手に取られず、かつ正確な場所にボールを運ぶなんて

 

宮野の抜け出しは彼にカットインをさせる余裕を与える。完全に裏に抜け出し相手のディフェンスラインはズタズタだ。

 

「—————」

 

青葉と駆がデコイに徹する。無論彼らはいつでもパスを受けられるような状態を作るが、それでも、宮野のドリブルコースを消さないよう動いていた。

 

————開けてくれているのか!? 僕に————

 

余裕が生まれいくつものルートが見える。今まで見えてこなかった視野の広さ。そして、二人がコースを開けてくれたので、迷わず狙うことが出来た。

 

「っ!!」

 

しかし、ここで緑川のファインセーブ。ファーサイドを狙ったコントロールシュートは左手一本で止められるが、

 

「!! ちぃ!! このっ!」

黒田とセカンドボールを競るのは青葉。しかし、体を入れた彼が勝り、難なくボールを収めてしまう。黒田のフィジカルをまるで寄せ付けない。

 

————なっ!? これが高校2年のフィジカルかよ!?

 

まるで外国人と競っているような感覚だ。しかも、簡単に押し戻される辺り、何か体の使い方が違うようにも見える。

 

そして、背を向けながらのドリブル。斜め後ろ、ゴール前にものすごい勢いで走る世良。それを見た青葉がパスを選択するが、

 

「やらせるかよ! なにっ!?」

 

黒田の股下を通すヒールパス。出した方向に視線を向けていないノールックパスではあるが、ボールは走りこんでいた世良の方へ。

 

—————ボールをロールした時に、回転をかけ、踵で弾く様に—————ッ

 

今の一連の動作を見ていた杉江は戦慄を覚える。これが彼の見えている世界なのかと。

 

 

そのまま世良がダイレクトにシュートを叩き込み、控え組が先制。見事なアシストを決めた宮水とゴールを決めた世良。

 

————いい抜け出しだったな。この人は世良さん、だったか

 

小柄だがすばしっこい彼は、運動量が多い。現在エース不在というが、今日のような動きが出来るなら、前線にいてほしい存在ではある。

 

「おっしゃぁぁぁぁ!!!」

 

「すっげぇぇえ!! ほんとに点とっちまったよ!!」

 

「世良ぁァァァ!!!」

 

喜ぶチームメイトを少し離れた場所で見守るのは青葉と駆。いい感じにかみ合ってきたと手ごたえを感じる攻撃だった。

 

「狙い過ぎたかな———」

少し苦笑いの宮野。絶好のシュートチャンスではあったが、緑川のファインセーブにあってしまった。しかし、彼はこの距離でシュートをあまり打ったことがなかった。

 

「コントロールし過ぎた感はあるな。だが、いいチャレンジだったと思う」

 

「これからどんどん狙っていけばいいと思いますよ、ミヤさん!」

 

 

そして最後尾のラインを守る亀井と飛鳥は、

 

「最後のラストパス。一体どうやって通ったんだ?」

 

「青葉のヒールパスだな。ロールで回転をかけて、弾く様なラストタッチ。相変わらず周りが見えている」

 

亀井は何がどうなって得点につながったのかをよくわかっていなかった。なんだか知らないが、青葉がパスを通して世良がシュートを打ったという感覚である。

 

 

若手組が先制。その試合の行方は、達海以外にとって予想外の展開へとなりつつあった。

 

 

 

 

 





やはり新生ETUのゴールを奪ったのは世良。良く動いたり、抜け出しをする傾向にあるので、王子や駆、青葉とは相性がいいです。フィジカルは紙ですが。


世良君は出し手に恵まれた環境でプレーすることになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。