騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

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遅れましたが、東京V戦決着


第五十二話 至宝の一撃

「すみません。俺が、簡単に躱されたせいで—————」

椿が悔しさをあらわにしながら謝罪する。が、どことなく怒りの感情も垣間見せている。

 

「レオナルドとのマッチアップで、いい形を作ったのは反省です。ですが、もう彼に仕事はさせない。彼のタイミングと感覚は前半で大分つかみました」

 

そして、飛鳥もまたレオナルドとのマッチアップでアップグレードを果たしたものの、攻撃を最後の最後でしか止めきれない歯がゆさを感じていた。

 

「気にするな。終わりごろはレオナルドにいい形を作らせなかった。進歩といえるだろう」

ベンチスタートの杉江は、それでも試合の中で成長を見せる飛鳥にエールを送る。

 

「気をつけろよ、てめぇら! 持田って奴はきたねぇプレーがうめぇんだ! 俺も昨シーズンは何枚もカードを貰っちまった!!」

そして黒田は、目下の脅威である持田に対し、罵倒を繰り返しながら自分の体験談を口にする。

 

「それは何の慰めにもならんだろう、クロ」

失敗談をそんなに話しても何の意味もないと、杉江が黒田を諫める。事実、持田の脅威はしっかりと駆と飛鳥の中で印象付けられた。

 

「無茶でもいいので、厳しめのパスをこちらに下さい。相手に釣られて、中々ボールを貰えなかったので」

そして、1ゴール1アシストと勢いに乗っていた青葉は、ボールを要求する。走らせるようなパスでなければ、ヴィクトリーの包囲網は崩せない。

 

「その通り、だから後半は青葉のいる右サイドの攻撃に比重を置く」

 

「前半の王子へのパス経由は終わり。後半はサイドを起点にピッチを広く使うんだ。後半のメンバーはそのまま。世良はボランチとセンターバックの間でボールを受けやすい形を作れ」

 

「うっす!」

 

「前半はちょっと前後が間延びし過ぎていたから、ディフェンスラインを上げるの遅れるなよ。今日は新人がいるんだ。しっかり引っ張れよ、黒田」

 

「おう!! てめぇに言われなくてもやってやらぁ!!」

 

「後、逢沢は出来る限り外でボールを受けるように。中に絞る動きはオーバーラップの時だけだ。ダメなら王子か村越にボールを預けてまた外に張り直せ、いいな?」

 

 

「え? は、はい」

 

「後半20分までの辛抱だ。しっかりと蒔き餌を与える。お前は後半に試合を決定づけるキーマンだ。青葉に集中する視線の中で、お前の感覚がこの勝敗を左右する」

 

 

「椿はこのままボランチで動き回れ。味方が苦しそうならサポートに入れ。そんで、前が空いたらボールを運んで王子か青葉にスイッチ。密集地帯でボールを渡す相手は考えろよ」

 

 

 

後半、コンパクトな守備体勢でヴィクトリーの攻撃を遅らせるETU。特に飛鳥と黒田がしっかりとラインを上げたことで、相手を挟んでボールを奪うシーンが目立つ。

 

「くっ!」

 

————おいおい、前半とは違うチームじゃねぇか!!

 

持田は、中盤の狭さを感じていた。そして、椿の寄せも格段に脅威となり、ボールを捌く役目に追われる羽目に。

 

そして城西のロングボールが、競り合っていた駆と右サイドの味方選手のどちらかにつくかに焦点が集まる。

 

—————確か、島さんは

 

一瞬の力の入れよう。それが相手の姿勢を崩すと言っていた。一点への方向にしか目が行っていない、動きが一点に集中した時こそ、チャンスなのだと。

 

合気道の体裁きは、サッカーには必要なものだと思った。

 

駆が小突く。味方に通るはずだったボールは、右サイドの選手がバランスを崩し、失速した瞬間になくなった。

 

ここで左サイドの逢沢がドリブルを開始。後半20分を過ぎたら仕掛けろと言われていたので、一気に味方が動き始める。

 

 

世良がスタミナを使い切る形でディフェンスラインとの駆け引きをはじめ、逆サイドは広く空いたスペースでダッシュする青葉。

 

三雲を振り切った王子と、三雲のカバーリングでシャリッチの空いた穴を突く椿、それに追い縋る持田。

 

—————見える、変化するピッチの状況が全部見える。

 

ドリブルを開始し、逢沢が前を向いて動き出す。左サイドの熊田も同時に駆け上がり、攻勢を強めるETU。

 

「ジーノさん!!」

 

駆が選択したのは、縦へのパス。抜け出した王子への強めのスルーパスに見えたが、

 

「なっ、直前にブレーキが!!」

 

城西が驚愕する駆のロングフィード。回転がかけられており、王子の絶妙なスペースで止まるスルーパスはチャンスを拡大させる。

 

そして間髪入れずに右サイドの青葉へとボールを蹴りこむジーノ。ここで、ETUの攻撃の柱となりつつある彼のプレーに注目が集まる。

 

————いかせるかっ!!

 

すぐに、左サイドのヴィクトリーの選手が詰めてくるが、簡単な切り返し、跨ぎの二つで膝をつき、横転。相手の足に体重が乗った瞬間を見逃さない、青葉のアンクルブレイク。

 

彼の前では、凡夫は立つことさえ叶わない。

 

「へへっ、行かせるかよ」

 

そこへ、カバーリングに持田。ここでヴィクトリーのエースと、ETUの新星のマッチアップが実現。この試合の分岐点が訪れる。

 

 

 

じりじりとPA内に寄り続ける青葉と、間合いを嫌って動き直しする持田。

 

「持田、無理に飛び込むな!!」

 

そこへ、二人係で彼を止めることに考えを置いた山根が寄ってきたのだ。青葉に与えられた時間は限られていく。

 

だから、彼は動いた。

 

シザースからの加速。明らかな動きに持田はそれだけではないと悟る。

 

————来るんだろう、十八番が

 

彼の得意技であるルーレット。直前までどちらになるか分からない二つのスピン。

 

 

そして、持田の予想通り、青葉はルーレットを選択したのだ。

 

—————馬鹿が、まるわかりだ————

 

切り返しの確率が高いと踏んだ持田。ヴィクトリーの守備陣ならクロスは跳ね返せる。

 

持田の読みは当たっていた。青葉は間違いなく切り返しのルーレットを選択していたのだから。

 

トンっ、

 

しかし、ボールの置き所に優先権を持つ彼の動きまでは越えられなかった。青葉は持田が自分の動きを読み切って動くことを知っていた。

 

唯一限られた、持田の残した穴。切り返しのボールを奪おうと伸ばした足と足の間。股下にボールを通したのだ。

 

走りこんだのは、フォワードの世良。絶好のシュートチャンス。

 

 

「は?」

 

しかし、グラウンダーのボールに空振りする格好となった世良が転倒。そのままボールはタッチを割ってしまうのだった。

 

「ひえぇ、あっぶな。運がなかったな、ルーキー」

 

命拾いした持田は皮肉気な笑みを浮かべ、その場を去っていく。一方、明らかに動きが遅れた、スペースへの走り込みが遅れた世良に文句を言いたい気分だった。

 

しかし、あの局面、あの瞬間でボールを通せる人間がどれだけ国内にいるのか分からない。世良の両手を合わせるボディランゲージですぐに怒りを鎮め、気持ちを切り替える青葉。

 

—————サッカーはミスをするスポーツなんだ。まだ俺が信頼を勝ち取っていないから生まれた齟齬なんだ

 

あそこで青葉なら通してくれると信頼されていなかった。それだけのことなのだ。

 

 

 

逆サイドからの展開を警戒して、ヴィクトリーのキーパーは前に出られなかった。完ぺきな布陣だった。

 

 

チャンスの後にピンチ在り。レオナルドへのロングフィードを、飛鳥が競り合いを制し、ボールが零れる。

 

—————もうお前の動きは見切った。その限界速も、パワーも。

 

青葉程の理不尽さはない。力が強いだけで体を入れられただけで、コントロールも出来ない。だから、あらぬ方向へとボールが転がっていくのだ。

 

しかし、城西がセカンドボールを拾い、中に絞る動きを獲った左サイドの堀へと一気に縦パスが通る。

 

「うおぉぉぉぉ!!!」

飛鳥がレオナルドを止めたなら、日本人ぐらい止めて見せると意気込む黒田。しかし彼はつりだされてしまっていた。

 

 

「よせ、前に出るな!!」

達海の指示もむなしく、黒田はあっさりと堀に躱され、大ピンチを迎えるETU。レオナルドへのボールは必ず阻止する気持ちで動き直す飛鳥と、ボールを貰う形を作る外国人FW。

 

が、やはりここで決めてこそヴィクトリーの王様なのだろう。飛鳥たちの背後のスペースへのマイナスのクロスボール。

 

—————しまった……持田がッ!

 

そして、椿との競り合いで、倒された持田。PA内での笛。主審はゴール前に指をさしたのだ。

 

「あ—————そ、そんな———俺、足かけて—————」

声が震える椿。1点リードというシビアな展開で、許してはならないペナルティキックを献上してしまった彼は、表情が凍り付いていた。

 

 

 

後悔と焦燥の入り乱れた表情の椿。明らかに誘われていたが、止めなければゴールにつながっただろう。黒田が釣りだされた時点で勝負は決まっていた。

 

そしてこれを難なく持田が決め、2得点。同点に追いつかれてしまう。

 

チャンスをしっかり決めきるヴィクトリーと、直前の大チャンスで決めきれなかったETU。

 

その後、椿は精彩を欠いたプレーでETUの中盤が落ち着かない。このままでは試合が終盤で壊れると判断した達海は一枚目のカードを切る。

 

椿アウト、堀田がイン。

 

「俺————あ—————おれ、が——————」

 

呆然自失のまま、ピッチを後にする椿と、闘志を燃やしてピッチへとはいっていく堀田。その後、椿はタオルで顔を隠し、表情を隠したままだった。

 

 

しかし、双方に無理が祟ったのか、運動量は互いに落ち始める。ゆえに目立った展開が少なくなり、両チーム攻め手に欠くボール回しと、焦ってボールをロストする光景が続く。

 

「—————2枚目を切る。世良アウト、宮野インだ」

 

ここで、決定機を逃し、運動量も落ちた世良がベンチに下がる。本人も自分が真っ先に交代される理由が分かっているのか、苦悶の表情を浮かべたまま、椿の横に座り、戦況を見つめる。

 

落ち込んでいる椿を見て、泣きたいのは自分も同じだと思う世良。決定機で決めていれば楽な試合展開になっていたはずなのだ。決定機を外した直後の青葉の顔が忘れられない。

 

—————すいません、ちょっと独りよがりになったかもしれません、あの局面は

 

短い時間で交わした言葉。世良が遅れなければ決められていた局面だったが、青葉は謝罪をしたのだ。

 

—————違う、青葉のことを俺が信じ切れていなかっただけじゃねぇか

 

FWはその瞬間を信じて走らなきゃいけなかった。ルーキーにあんな顔をさせたままにしたくなかった。自分の不甲斐なさよりも、今は彼の好プレーを無駄にしてしまった後悔が頭をよぎる。

 

 

その後、接触プレーで相手選手がゴムボールのように地面にたたきつけられ、青葉が立ったままというフィジカルの強さを見せつける等、球際の強さは折り紙付きというのが分かる。

 

 

彼はこの壊れ始めたETUを粘らせている。中央にサイドにボールをキープし、押し込まれるのを防いでいる。

 

 

しかも、外国人選手のシャリッチを吹き飛ばすという体の強さ。同じ日本人選手など、簡単に弾かれてしまうだろう。

 

しかし、思うようにボールが運べていないチーム状況、気落ちしてプレーの精度が落ちているイレブンに、喝を入れようとしている。

 

 

まだ加入して浅い選手が持てるほどのメンタルではない。あそこまで攻守に走り抜くプレーは、ルーキー離れしている。

 

 

—————あの闘争心は、どこから来るんだ?

 

達海以外のスタッフ、ベンチメンバーがドキドキしながら戦況を眺めているのに、何かより集中している雰囲気のあるルーキーたち。

 

虎視眈々と隙を窺う駆。レオナルドを後半は抑え込んでいる飛鳥。

 

そして、チームの核となりつつある青葉。次第に彼の下にボールが集まる傾向になっていく。

 

 

 

後半の40分。その青葉は深い位置まで下がってボールを受ける。自陣の深い場所で受け取った彼は、ドリブルを開始する。

 

—————サイドでは、何度もこういう場面がみられるか

 

青葉を警戒して、サイドへのボールを封殺する作戦。これでは孤立する時間帯が多くなる。

 

 

前線のレオナルドがフィジカルを活かしてタックルを仕掛けるが、

 

————ボールが消え—————

 

アウトインの切り返しからのダブルタッチ。横に素早くスライドした青葉のフェイントがレオナルドを躱したのだ。

 

一枚躱すことで、青葉のスピードは加速する。それもここまで下がった位置からのドリブル突破はセオリーに反する。

 

しかし、そのセオリーの無視が出来てしまうのが青葉だ。

 

続く、寄ってきた持田をスピードで完全に振り切り、一気にバイタルエリア、ボランチが並ぶ中央へ。

 

—————あの深い場所からここまで一気にビルドアップだと!? 出鱈目な!!

 

城西も驚く青葉のビルドアップ。攻撃の組み立てを力技で為してしまう。ここで多くの選択肢が彼には与えられている。

 

ドリブル突破。ロングシュート、ワンツー。ロングフィード。上手い選手は多くの選択肢を持っている。凡人が思い浮かべないだけで、複数の未来が見えている。

 

青葉が中央を見た。広く周囲の動きを見切る。ジーノは何かを悟ったらしく、秋森へと動き直す。

 

そして、宮野がサポートできる場所へ。ここで選択したのはジーノへの縦パスだった。

 

「やらせるかっ!!」

 

しかし秋森のチェック。前に向くことは出来ず、競り合いの場面となる。

 

「苦しいボールは僕に通さないでよ、青葉」

 

プライドの欠片もないバックパスに見えた動き。しかし、横目で宮野の動きを見ていたジーノはワントラップから意表を突く横パスで宮野に通す。

 

「リターンッ!!」

強い口調でフリーになっている青葉が指示を出す。宮野も山根につかれており、思うような動きも出来ず、スピードに乗ることが出来ない。

 

—————この二人をおとりにしたのか!!

 

————ここで勝ち越しゴールをお前なんかに!!

 

青葉のミドルシュート。リターンパスが足元に渡り、それまで前に進み続けていた青葉が止まる。ワントラップして、ボールを前に転がし、置き所を考えたのか。

 

「え、とまっ」

 

トンっ、

 

力みを全く感じさせない鮮やかで、滑らかな放物線が、ゴール前で出現した。

 

その放物線、青葉と同じイメージをしていたのは、ジーノのほかにもう一人存在していた。

 

 

ループ気味のフライパスは、背番号19へと渡る。これまで試合から消えていたあのルーキーが完全に守備の穴を見つけていたのだ。

 

 

—————楽勝過ぎるよ、このシチュエーションは

 

 

 

振り切る右足。豪快に突き刺さるシュート。後半アディショナルタイムでの一撃で、試合を決めるプレーを実現したのは、

 

「逢沢だぁァァァ!!!! 逢沢が決めたぁぁ!!!」

 

「最後の最後で、大仕事をしちまった!!!」

 

「青葉の視野の広さは何なんだ!! どうしてあそこのボールを通せるんだ!!」

 

「ここで勝ち越すのが今年のETUだ!!」

 

「見たかァァァ!!! 10年前からの屈辱、今年こそは!!」

 

大興奮のETUサポーター。プレシーズンマッチとはいえ、因縁のある東京の2チーム。その大仕事を成し遂げたルーキーに感謝と、これまでの歴史を考え、今期にかかる期待が膨らむ。

 

「さすがだね。イメージが繋がった時は本当に駆君がくるとは想像してなくてね」

 

ジーノは、逢沢の抜け出しに満足げだった。宮野も、デコイとして使われていたが、青葉の動き出しで悟った。あれは自分に対するパスが来ないという雰囲気だったからだ。

 

「完璧な抜け出し、狙いすましたかのような抜け出しと縦一本。凄い参考になる」

その宮野は感銘を受けていた。フォワードとして重要な抜け出しの動き出し、相手の動きを見て効率よくゴールを狙う動きの質。

 

今までジーノは精度の高いパスを広い視野で実現していた。自分もこの動きをマスターすれば、出来るとまで思えてきた。

 

—————練習したい。ステップの動きを勉強したい

 

 

彼の様にチームを助けたい。宮野はその思いが強くなった。

 

 

 

一方、弱小といわれていたETU相手にいいようにやられ、最後はルーキーコンビにとどめを刺される展開。しかも、持田を翻弄しての見事なプレー。

 

監督の平泉も、苦々しい顔をしてあの二人を見つめている。

 

—————実力通りといえば実力通りだ。驚きはない

 

しかし、あの二人を同時起用できる監督が、一部リーグのチームがどこにいるのか。

 

下位、中堅、昇格チームは降格を防ぐためにベテランの起用が多くなる。外国人選手のフィジカルに頼るだろう。

 

上位になれば、選手層に埋もれ、彼らの出る幕はなくなる。そもそも彼らを同時起用してバランスを崩すようなことはしない。

 

しかし、ETUはどうだ。後がない状況下で、彼ら二人に希望を託した。彼らのポテンシャルに命運を託した。

 

そしてその賭けに勝った。彼らは予想以上の活躍。1ゴール2アシストの青葉。勝ち越しゴールの逢沢駆。

 

ブレイクの予感すら感じさせる宮野。後半途中からの出場とはいえ、ジーノと青葉との好連係を見せ、夏木というエース不在の中、ベンチメンバーに割って入れるか。

 

ジーノもデコイの動きを見せる等、これまで見られない動きを見せ始めている。何か今年のETUは変わり始めている。そんな予感を感じさせる。

 

しかし、堅守はどこに行ったのか。ディフェンスラインはザルになった印象を受ける。飛鳥は後半から持ち直したものの、黒田の釣りだされた場面はまずい。

 

 

「——————」

 

持田は憮然とした表情で、ETUの選手と握手をしてピッチを早々に後にする。他のヴィクトリーの選手も同様だ。悔しさと二人のルーキーの実力を目の当たりにしたのだ。

 

その心中は穏やかではないだろう。

 

「会心の勝利とはいかねぇけど、まあ、勝てて課題を見つけられるのはいいことかな」

 

「ふっ、敗者にそう話すお前の神経の図太さは相変わらずだな。しかし、あの二人がスターターで出られるチームはETUしかなく、あの二人とフィーリングが合う選手がいたのも」

 

プレシーズンマッチとはいえ、両者の表情はとても対照的だった。達海は笑顔で、平泉は憮然としていた。

 

「まあ、シーズンもこのぐらい攻撃陣が機能してくれるとね。守備は我慢だ」

 

「うちのレオナルドと互角にやれるルーキーとはな。杉江とコンビを組ませなかったのはそういうことか?」

 

飛鳥の成長を促すような起用法。今シーズンは飛鳥を我慢する器用もあるかもしれない。

 

 

「うち以外での健闘を祈っておくよ、達海」

 

「そっちもね」

 

 

こうしてプレシーズンマッチで競り勝ったETU。持田2得点が霞む、宮水青葉の1ゴール2アシストの大活躍。抜群の視野の広さと、決定機を作り出すチャンスメイクとフィニッシュ。

 

味方を活かし、自分も好プレーを見せる彼の活躍は、王者相手に存分に見せつけられた。

 

 

報道各機関も手の平返しを見せつけ、フィジカルの強さを含む、今までのルーキーではありえないプレーを見せつけた宮水青葉の活躍を一斉に報道した。

 

—————やはり本物か? チームの全得点に絡む活躍! 宮水劇場開演!!

 

 

—————王者相手に躍動!! 1ゴール2アシストで、勝利に導く!!

 

 

—————決勝ゴールの逢沢! 「彼なら通すと確信していた」

 

 

—————先制弾も後半は暗転……成り上がり狙う若手の椿「悔しさしかない。もっといいプレーを」

 

 

————プレシーズンマッチでまさかの不覚……東京V城西「手強い選手が出てきた」

 

 

 

次々と手の平返しの記事が出来上がる。独善的なプレーや傾向が見受けられない。逆に視野が広く、連携に絡むプレーも多かった。

 

そして、勝ち越しゴールを決めた逢沢駆のバディ役としても十分、いや、逆に宮水青葉単体でも活躍できることが広まる。

 

 

ネットの方では、手の平返しのファンがだんだんと増えていく。

 

—————なんかもう、プレーの次元が違うんだが

 

————高校サッカーに詳しい人、宮水ってこんなにすごかったのか?

 

—————相手になる人がいないからプロになったんだぞ。

 

————先制アシストの時とか、絶対味方が見えてなかっただろ? 背中に目があるのかよ

 

————ていうか、あの距離と角度で強烈なミドル打てる日本人がいるか?

 

————悪評とか、あんまり当てにならないね

 

————お前ら、何か言うことは?

 

————すいませんでしたぁぁぁ!!

 

————逢沢の添え物だったと思っていたが、実は江ノ島のエースって

 

————劣勢の総体予選準決勝で、鎌学の流れを一人で蹂躙した男だぞ。これくらい普通

 

 

—————実は会場にいたけど、あの試合はやばかった。

 

 

————調子がいいと、ハットかますからな、宮水は

 

————シュート蹴りこんだら入るというか、ミドルがよく入る。

 

————なお、凡プレーヤーは宮水に高確率でアンクルブレイクされる模様

 

—————情報甘いぞ。無事にレオナルド・シルバ、リカルドといった世代別の要もアンクルブレイクされたぞ

 

————化け物過ぎて大草原。

 

————むしろアンクルブレイクされないと思ったのか。今日も持田が股下通しのアシスト未遂食らったぞ

 

————その後簡単に振り切られて草。やっぱ俊足は正義やな。

 

—————しかもシュート上手い、フィジカル強い。シャリッチがタックルかましてよろめいた件について

 

—————化け物定期

 

————日本人じゃないだろ。ていうか、16歳じゃないだろ?

 

—————身長182cmにあのフィジカル。暫定で日本最速の俊足にアンクルブレイクを頻発させるドリブル。すぐに海外行ってどうぞ

 

————みんな宮水君さんに失礼やぞ、今日から崇めろ

 

————君さんって、どういうことなんだ

 

————宮水君さん。そういや、ピッチで指示を出していたな。16歳が出せる貫禄じゃない

 

————16歳の宮水君さん、かぁ

 

 

その後も逢沢、宮水論争が続いたが、ポジションが違うために共存は可能だという論調が大半となった。

 

なお、やはりウィングボランチ論争が再燃し、タレントが揃う二列目よりも心臓を任せたいと思う有識者の声も上がっていた。

 

 

 

 




東京Vをプレシーズンとはいえ撃破。

原作と違い、王子の負担が大幅に減ったので、自由にプレーできるようになっています。


開幕戦の相手は強豪ジャベリン磐田。続く二戦目は昨季最少失点の広島サンアロー。

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