騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

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山形戦はハイライトですが、続く新潟戦、大阪戦はしっかり描写します。


第六十八話 呪縛

ダークホース、優勝候補、大穴の大躍進。そして、優勝候補だった者たちのあがき。

 

混沌とするリーグジャパンにおいて明確だったのは大阪ガンナーズだった。

 

 

 

 

続く第八節。首位大阪は下位に沈む磐田を危なげなく撃破。首位をがっちりキープする。

 

 

2位ETUに価値ある勝ち点3を奪った甲府は、鹿島と対戦。中島の得点に絡む能力がいかんなく発揮し、中村とダニのゴールを演出。自身もゴールを決める等、強豪にして名門、オリジナル10の一角でもあった強豪クラブに競り勝つ大金星を挙げる。

 

この試合で今季8得点目を含む2ゴールを奪い、得点ランキングトップタイに躍り出た中島。夏での引き抜きもうわさされているが、国内のクラブには一切興味がないようだ。

 

 

——————地方の星、甲府が大金星!! 名門鹿島を破る!

 

 

—————全得点に絡む大活躍!! 中島1ゴール1アシスト&1起点!!

 

 

—————宮水最大のライバルが、得点王争いで一歩リード!!

 

 

変幻自在、甲府の宇宙人の勢いが止まらない。第七節、好調ETU相手に勝ち点3をもぎ取った甲府は、背番号10が躍動した。かつては守備の穴とさえ言われていた魔術師が、攻守で存在感を見せ、逞しい姿を見せている。

 東京V時代はその技術と切れ込むスタイルでファンを魅了して止まない「ボールを持った瞬間輝く」選手でもあった。しかしプロの壁にぶつかり、志半ばで甲府へとレンタルされることになる。

 以降、走るサッカーを志向する甲府でフィジカルを徹底的に鍛えられた彼は、スプリント回数も豊富で、試合終盤でも運動量が落ちないスタミナ自慢へと成長した。

 そのフィジカルの強化はスタミナだけではない。簡単に弾かれていた競り合いの弱さも克服しつつある彼は、ファウルを貰う回数が飛躍的に増えている。

 そのフィジカルの強化の最大の恩恵を受けているのは技術とパワーが合わさったミドルレンジからのシュート精度だ。彼の今期の8ゴールのうち、カットインやミドルレンジからのシュートは何と4ゴール。半分を占めているのだ。

 トップスピードに乗った状態でもコントロールが乱れない、なおかつ馬力を得た彼は、さながら小さな巨人と言える。

 強豪鹿島を撃破した彼らの次なる相手は、首位大阪G。果たして、首位をひた走るチームを相手に、中島は輝きを見せることが出来るのか。

 

 

そして、3位川崎は浦和と激突し、ルーキー鷹匠のゴールを含めた浦和の勢いに負け、競り負けたのだ。今期これで4得点目をたたき出した鷹匠は、浦和の絶対的エースとしての階段を上り始める。しかもこの試合の彼はアシストも記録しており、いよいよ適応が本格化し始めたと専門家たちをうならせる。

 

 

清水は調子を落としている名古屋と対戦するも、ブラジル人トリオが復調した攻撃陣に屈する。ペペがこの試合ハットトリックを達成するなど、名古屋が4発快勝。一方の清水は累積警告が溜まり、次節で主力の出場停止が相次いだ。

 

 

そしてついに広島が今シーズン初白星を神戸相手に達成。自慢の鉄壁守備陣とカウンター攻撃が冴え渡り、神戸を完封。

 

その他の試合でも動きがあり、順位の変動がみられるリーグジャパン。

 

 

 

一方、スタメンに復帰した宮水は、山形を蹂躙。先制点の場面では世良の今季5ゴール目をお膳立て。

 

その後、すっかり定例行事となった右サイドでの三人抜きからのキラーパスで、宮野が折り返し、そのボールに反応した世良がシュート。最後零れ球を逢沢が決めて2点目。

 

序盤で山形の牙を削ぎ落す邪悪ぶりを披露し、後半立ち上がりにカットインからの左足で一閃。

 

キーパーノーチャンスのミドルショットを叩き込み、山形が僅かに持ち得ていた勝機を完全に奪い去る極悪ぶりを披露する。

 

—————届かない!? 来るとわかっているのに!!

 

 

————分かっているのに、止められないっ!!

 

山形の選手たちは青葉のカットインに対し、あまりにも無力だった。彼には左足だけではなく右足もある。迂闊に飛び込めば躱され、縦と横の両方でもゴールを奪い取れる彼に、個人の力で対抗できる選手がいないのだ。

 

つまり、このゴール前で青葉に「どちらの方法でゴールを奪われるのか」を選ぶだけの時間となっていた。

 

その絶望はサポーターに波及しているのか。完全に沈黙する山形サポーター。中には声を絞り出す者もいたが、その声はどこか弱弱しい。

 

 

 

—————荒木さんほどの技術はないけど、選手全てが荒木さん以上のフィジカルを持っているな

 

 

青葉の目から見て、荒木竜一に匹敵する技術の高さを感じられる選手がいなかった。プロとは一体と考えるように

なったのだが、2ゴール目を上げた瞬間に交代させられることになる。

 

それでも、荒木が未だにプロに声がかからない理由は、そのフィジカル能力が大きく起因するのだろうと感じる。

 

 

—————達海さんは次戦を見据えて俺を下げたのかな

 

 

「ナイスゴール、次節はもっと頼むぜ」

 

「はい」

 

次節の新潟戦後はついに首位大阪との大一番。ここで山形との試合で消耗をさせるわけにはいかないということなのだろう。

 

代わって入った赤崎は、終始仕掛けを見せていたが直接の得点には結びつかず、赤崎が起点になったカウンターのカウンター返しの際に宮野が敵陣を突破。

 

その際、インターセプトした椿からのラストパスに反応した彼は、そのままゴールを叩き込み、今期4ゴール目を手繰り寄せる。

 

圧倒的な攻勢を仕掛けているETUとそれを許す山形。その山形は最後までETUゴールを割ることが出来ず、4対0の完敗を喫することになり、11位に順位を落とすことになった。

 

山形の監督である佐倉は、そのあまりの攻撃力に驚きを隠せなかった。

 

————最悪失点は覚悟していたけど、こうも一方的になるなんて

 

宮水相手の失点は仕方ない。問題はずるずると引き摺ってしまうことだ。だが彼はこちらの思惑を超えている。

 

チーム一のディフェンス力を誇るメンデスが彼に簡単に振り切られるなど、若くして限りのない才能の持ち主であることは試合中に思い知らされた。そして天才選手特有のプレーの軽さがいい意味でなく、ディフェンスでは長年サイドバックをしてきたかのような貫禄すらあった。

 

他にも、椿、宮野、世良といった若い選手のスピードに圧倒された感がある山形。次節ではゴールをこじ開けられそうな予感がいくつかあったが、あの攻撃力を止めるのは至難の業だと再認識した。

 

————けど、そういう強いチームを倒してこそ、一部にいられる。次は負けませんよ、達海監督

 

かつて、自分のサッカー熱を呼び起こしたスーパースターに率いられる赤黒軍団に特別な感情を抱きつつ、スタジアムを後にするのだった。

 

 

 

 

 

そしてこの第八節の結果により、得点ランキングもめまぐるしく変化する。

 

 

1位 宮水青葉 (ETU) 8得点

1位 中島秀哉 (甲府)  8得点

1位 ペペ   (名古屋) 8得点

4位 逢沢   (ETU) 6得点

5位 持田   (東京V) 5得点

5位 世良   (ETU) 5得点

7位 レアンドロ(浦和)  4得点

 

 

得点ランキングは若手ひしめく大混戦。トップを走るのは、ゴールデンルーキーの一角宮水。代表戦などで離脱し、ここまで第八節を消化して5試合に先発出場しての8得点。驚異の決定力は日本代表監督ブランの目にどう映るのか。

 その宮水と鍔迫り合いをするのが、甲府に一昨年完全移籍を果たした22歳の中島。バルサの絶対的エースを彷彿とさせる俊敏なプレーと、甲府で鍛え上げられた走力を武器に、昨年から甲府の攻撃力の要となる。ここまでトップの宮水と同様、アシストも複数決める等、器用さも持ち合わせている。

 その中島と同等のゴールを奪い取ったのは、名古屋の新外国人ペペ。即戦力ストライカーの呼び声に偽りはなく、守備免除という特別待遇の中でこのゴール数を決めている。特に、ゴール前での迫力はリーグ屈指だろう。

 

 

 

 

そんな新風吹き荒れるリーグジャパンの序盤戦。予想を大いに覆すETUの活躍に、とある一家が開幕から昔馴染みの知人たちを集めようと奔走していた。

 

 

「何と言っても宮水選手や逢沢選手だけじゃないんだよ!! 椿と宮野がいいところで活躍するんだよ!!」

 

田沼幸太はETUのジュニアユースに所属するアカデミー生である。ゆえに、最初は不審者と思っていた達海が監督であることをいち早く知ったり、練習で見る青葉の真剣な表情と、いい刺激を貰っている他のメンバーの様子も知っている。

 

「けど、やっぱり宮水だろ? なんかいるといないとじゃ、安心感が違うし」

 

「スタメンを見て、勝ったな、と思える選手ほどじゃないしなぁ」

 

「勝ち負けがそんな簡単に決まって何が面白いんだよ!! ワクワクしなきゃフットボールじゃないよ!!」

 

しかし、他のライト層は宮水にボールを預ければ勝てるとまで言う始末。幸太は11人そろってこそのサッカーだと説くが、なかなか受け入れてもらえない。みんなはもう代表への秒読みが始まっている彼ら二人にしか目が行っていない。

 

 

—————守備陣だって、前よりも前に出てボールを捕まえるシーンも増えたし、

 

変貌しつつあるETUのサッカー。幸太はそれを知っているが上手く言語化できない。

 

 

その父親である田沼吾郎は、少しずつではあるが馴染みの友人たちをかき集め、小さな応援団を作るに至っているが、まだまだスカルズに比べれば規模は小さい。

 

牧歌的な雰囲気だった昔とは違う。今は若者の勢いと時代背景がある。それに取り残された彼らはなかなか彼らと打ち解けずにいた。

 

地方の雄として期待をされている山形相手に4対0の完勝。

 

それだけではない。磐田、広島、浦和、横浜、清水、そして名古屋。これらの強豪チーム相手に完勝と言って差し支えない結果を見せてしまった。

 

 

青葉が出場すれば勝てる。青葉にボールを回せ。

 

 

サポーターとしてスカルズのメンバーに属する者、もしくは彼らの組に入る者たちは、他のメンバーの変化と成長を知っている。苦しい時もつらい時もともに歩いてきた者たちだからこそ、ETUが躍進する理由を知っている。

 

 

しかし、ライト層は違う。新監督達海。さらに宮水、逢沢の選手権制覇を成し遂げた中心選手の入団。それにすべてが向いてしまっている。

 

これでもし大阪ガンナーズさえ倒してしまえば、歪な形でのブームが起きるかもしれない。

 

————何か違う。モヤモヤする

 

 

 

そしてその幸太少年が抱く不明瞭な感情を、リーダーの羽田は強く感じていた。

 

 

—————勝てるようになったのはいい。だが、最近またライトなサポーターが好き勝手し始めた

 

 

少しのミスで選手を罵倒する輩。勝ち馬に乗りたいだけの層。後者はまだ許せる。少しずつサポーターに今後もなってくれるなら。

 

問題なのは、騒ぎたいだけの集団だ。選手を心から応援している人間があの中に何人いるのかと。それが彼には分からない。溝が出来ているのは承知しているが、彼らの言動や行動は、あまりにも目に付くモノだった。

 

————確かに称賛されるべきだ。宮水選手らが活躍するのは

 

控えメンバーを積極的に起用し、それでいて勝つという結果を出している。達海監督は優秀な監督なのだろう。しかし、彼がチームをかつて裏切り、出て行った経緯だけは許せない。

 

 

だが、そんなかつての達海と宮水青葉は重なるような気がした。中心選手になりかけている彼が、唯一苦言を呈したコメントが忘れられない。

 

 

——————達海監督と、昔のETUで何があったかはよく知っています。僕も、ETUのファンでしたから。だから、気持ちは凄い分かります。

 

 

それは、彼が初めてETUを訪れた時にも見せた表情だった。

 

 

——————それでも監督は今、ETUで僕らと一緒に勝利を目指しています。だから、今頑張っている監督のことをちゃんと見てください

 

 

達海猛の過去に対する報道、週刊誌。そしてネットやスタジアムの空気。その全てに向けた抗議に最初は見えた。

 

 

しかし、サポーターの中で羽田を見つめた青葉の瞳に、怒りの感情はなかった。彼は記者たちやゴシップ記事を書くものなど眼中になかったとすぐに分かった。

 

 

青葉は彼らだけを見ていた。彼らに対してだけ、メッセージを伝えていたのだ。

 

 

 

彼の瞳にあったのは——————————

 

 

 

 

 

 

 

山形との試合後。青葉がいたら勝てて当然みたいな声が聞こえた。そのコメントに対し、諫めてくれるサポーターはいてくれた。しかし、そのサポーターに達海監督は恨まれている。

 

 

苦しいチーム事情の中、海外に去った彼を裏切り者と糾弾する感情も理解できなくはない。あのタイミングは当初、自分でも戸惑いを感じた。

 

 

——————だけど、俺は知っている

 

 

彼はその勘の鋭さで知ってしまった。そんな手遅れな状態のチームを応援して、今まで応援してくれたサポーターがいたからこそ、ETUがあることを理解している。そんな彼らだからこそ、達海を批判するのは悲しいし、達海を恨むのも理解できてしまう。

 

 

しかし、この事実は言えない。言えばきっと良くないことが起きる。あの時以上に良くないことが起きると青葉は予感していた。

 

 

 

だからこそ、彼らの存在を理解したいのに、二の足を踏んでいる自分がいた。

 

 

 

——————青葉がいれば勝てる。なんで赤崎を使っているんだ?

 

 

——————青葉一人に負担をかける気かよ。長丁場でのチームの総合力がリーグ優勝を手繰り寄せるんだよ!

 

 

 

———————ボランチやらせろよ。青葉がいれば後ろは安定するし

 

 

—————それを決めるのは監督だろ。新入りがいきなり采配にケチをつけるな!

 

 

——————青葉4人いれば勝てるくない? 分裂しないかなぁ

 

 

—————凄い、宮水選手凄いし、みんな凄く前を向いてる! 最前線の世良選手、ファンになっちゃおうかな!

 

 

————椿選手の突撃は、なんか凄い応援したくなるよなぁ!

 

 

————石神の動き良くない? よくない?

 

 

混沌だった。求めている声もあったし、求めているものとは違う声もあった。

 

 

 

—————頑張れ、椿君! 今の君は最高に輝いているよ!

 

 

——————ちょ、え、えぇ!? えっ、ちょっ、まっ!

 

 

——————バッキー顔真っ赤だねぇ!

 

 

見知った顔の、認識するのが恥ずかしくなるような光景もそこにあった。

 

 

 

 

——————けど、補強が上手くいったからだろ。それか、選手が頑張っているからチームは勝っているんだ。

 

 

————采配で勝った試合だってありますよ。一人で勝てるほどサッカーは甘くないって、青葉も言っていたし。

 

 

————そ、それは————まあ、嬢ちゃんに言われたら強くは言えねぇな

 

 

—————それでも、譲れない。達海があの時チームをめちゃくちゃにしたんだ。

 

 

—————みなさん……

 

応援しに来てくれる自分の身内には強く言えない彼ら。それでも、彼らの意志を曲げることにはつながらない。

 

 

—————ルーキーたちが想像を超えて頑張っているのはわかる。他の選手も今年はいい動きをしている。達海はいい指導者なんだろう。だが、認められないんだよっ

 

 

——————達海はチームが苦しい時、どこで何をしてたんだ! すぐに、なんでもっと早く帰ってきてくれなかったんだよ! そしたら、水城選手や、橋本選手も———ッ

 

 

 

——————クリさんが一度もタイトルを獲れなかったなんて嘘だ。あの人は、もっと、もっと報われなきゃいけなかったのに!

 

 

——————前田副GMや、後藤GMはすぐに帰ってきてくれた。前田さんはこのクラブを変えてくれた。あいつは、浮き始めた船に乗っているだけだ!

 

 

事実だった。紛れもない事実だった。その現実を知るからこそ、彼らの下へは行き辛かった。

 

 

栗澤は、それを達海のせいだとは認めず、単純に自分たちの力が足りなかったと割り切っていたのが、逆にしんどかった。栗澤は自分以上に達海を信じていた。それがファンと仲間である差なのだろうと感じた。

 

—————あいつが、お前らがサッカーしやすい環境を作る。それが今の俺たちの仕事だからな。

 

曇りなき表情で、栗澤は言ってくれた。前田副GMも、後藤GMも同じ意思だったからこそ、余計に達海とサポーターが救われない。青葉はやるせなさを感じていた。

 

 

 

色々な感情が見えるゴール裏。サポーターがいる観客席。アマチュアの時には感じなかった感情がいくつも芽生えてくる。

 

 

匿名だから、顔を出さない卑怯者の言葉なんてどうでもいいと感じていた。今もその通りだし、気にする必要性すらなかった。

 

しかし、実際に顔をさらけ出している人たちは違った。何よりも本気でクラブを応援して、深く、深くクラブを愛してくれている彼らが、達海を嫌う理由を理解でき、その悪意を感じながらプレーするのは苦痛だった。

 

彼らのことは嫌いになれない。彼らが何を感じているのかがわかるから。

 

 

 

だから、辛かった。

 

 

 

—————これだけ勝っても、まだ恨みは消えないんだな。

 

 

称賛の声はある。しかし、達海を認める声は少数だった。

 

 

—————もっと、監督のことを知ってほしいのに、知ってほしくないことがあるのは、苦しいな

 

 

 

サポーターに気休め程度に挨拶を行った後、バスの隣の席に座っていた村越に宣言する青葉。

 

 

「コシさん。俺、もっと頑張りますよ」

 

 

「ん? ああ、今日も凄かったな、青葉。やはり、お前の存在は、人をいい意味で巻き込むのだろうな」

 

村越は、何のタイミングもなくいきなり宣言する青葉に違和感を覚えつつも、会話を続ける。

 

「自信をもってみなプレーをしている。本来ならお前が出られなかったときでも、自分を見失わず、プレーできていなければならなかった。お前に責任を感じさせる結果を残すのは、やはり悔しいものだ」

 

村越は、自分が出ていない試合で敗戦してしまったチームを見て、責任を感じているのだと考えていた。

 

「もっとこのチームは成長しなければならない。達海さんに依存していた昔のチームのようではなく、もっと“それぞれが個性を出す”必要があるんだ」

 

 

「—————————」

その言葉を聞いた瞬間、青葉の口元は緩んだ。

 

 

「ん? 何かおかしなことを言ったか? 俺もやはり硬すぎると若手にはよく言われるのだが—————」

 

 

「いえ、まったくもってその通りだと思ったので。キャプテンが常にそう考えてくれるから、気が楽ですね。色々救われます」

 

「そ、そうか。ならいい。スーパールーキーと言っても、まだ未成年だ。気負い過ぎず、自分を見失わず、地に足を付けてくれよ」

 

 

村越と固い会話をしているのを聞いていた駆と飛鳥、赤崎は青葉に対して違和感を覚えていた。

 

「なんか、今日の青葉変じゃない? 時々観客席を見ているし、ちょっと集中きれていたような気がする」

駆も、何か寂しそうな背中が青葉から感じられることに驚きを覚えていた。

 

「噂の姉が来ていたんじゃないか? まあ、シスコンと噂の青葉だしな」

 

赤崎は、あの強心臓ルーキーがそんなことでメンタルが不安定になるとは思えないと言い放つ。

 

「ところで、ハマの奴、甲府との試合以降やばくないか。ありゃあ相手が悪すぎッていうか」

清川が、現在進行形で意気消沈している石浜について話題を振る。

 

「レギュラーを獲ったら格上とのマッチアップはこの先いくらでもありますよ。これで伸び悩むならそれまでっすよ。そうでなくても、俺は青葉とスタメン争いなんすから、他人事どころではないんですけど」

 

赤崎はそんな余裕はないと言い切る。

 

「そうですね。僕含めて二列目の争いはし烈になっているし、甲府戦の後は悔しくて眠れませんでしたよ。だから、ハマが悔しさを覚えているなら心配ないと思います」

宮野は当時を振り返り、拳を強く握りしめる。

 

「——————コシさん含めて、本当にすさまじい光景でした。あれは青葉並のドリブルテクニックですよ。まあ、スピードに関しては宮野さんよりかなり劣りますし、青葉に比べれば、比べることすら烏滸がましいです」

 

緩急が上手い。相手を崩すことに長けている。逢沢は地方クラブにあれほどの男がいることに驚愕していた。

 

 

「——————後半戦で、リベンジを果たさないといけない相手だ。それまで優勝争いから脱落せず、今の順位を少しでも上げる努力をしなければならないな」

 

飛鳥も、自分が参加しなかった試合でクラブが蹂躙される試合展開は、やはり悔しいものだ。無理をさせないという監督の方針は理解できる。しかし、もどかしさはあった。

 

—————世界のDFの動きを採用し続けた。けど、青葉クラスを確実に止める方法はまだない。

 

この先世界と戦うのなら、青葉レベルを常に想定した動きとそのマッチアップでの安定感を実現しないといけない。

 

——————もっと青葉とマッチアップをする。それだけではだめだ。

 

“青葉”を含めた攻撃陣のカウンター、例えば椿と宮野を含めたクラブ内屈指の俊足を揃えた高速カウンターに自らを晒す必要がある。

 

さらには、ジーノと駆を含めたトリッキーな攻撃手段に対抗するためにはもっと回数をこなす必要がある。

 

飛鳥は練習内容に関して、もっと脅威を感じさせる相手であることが、クラブ内のディフェンダーたちを鍛える一番の近道であると感じていた。

 

自らをどんどん追い込むことで、選択肢を増やし続ける。飛鳥は、そうすることで成長してきたし、世代別の代表にも選ばれた。

 

だが、そんな経験を積んだ自分も、さらにフィジカル的にパワーアップする必要があるのだ。

 

—————もっと速く走り、もっと強い体を手に入れる。

 

スピードの中での強さと、球際の強さ。飛鳥は中島という存在を知ることで、新たな境地へと至ろうとしていた。

 

 

 

 

クラブハウスに到着し、解散となった夜。ETUの守備の要が思案したように、攻撃の要もまたその在り方を変革させるべく動いていた。

 

 

青葉もまた対中島という至上命題を与えられたことで、ディフェンス力の向上を迫られることになっていたのだ。

 

 

あの村越が躱され、複数人を突破した彼の突破は脅威だ。

 

 

——————世界最高のディフェンダーと、中盤からヒントはないだろうか。

 

世界ではトップクラスと称賛されつつも、世界で最も嫌われていたのではないかと思われるほど荒々しい選手のプレー記録。

 

さらには、あらゆるドリブラーとマッチアップし、自らの間合いでその悉くを止めた。

 

青葉が思う最強のアンカー。

 

 

 

彼らに共通するのは執念だ。ボールへの執念が違うのだ。そのキーワードは踏み込みと前を向かせない積極守備と戻りながらの守備の使い分け。

 

青葉はその日から、攻撃力を磨くだけではなく、対人守備とその応用にも手を出し始めた。

 

 

今まではドリブル技術の副産物としての知識と、身体能力でそれを身に付けてきた。サイドハーフに求められるポジショニングも世界から取り込んだ。

 

しかし、相手エースとぶつかることが既定路線なら、入念に自分をアップグレードさせる必要がある。今の自分では中島秀哉を止められない。

 

なら、今までの経験を更新し、新たな戦術を取り入れた自分ならどうか。

 

より完全無欠を求める怪物が、更なる歩みを始める。攻撃としての牙だけではなく、堅牢な番人としての強さを求めた時、今までの怪物の在り方を叩き壊す存在になるかもしれない。

 

過去のフットボール界の怪物、天才と評された選手たちとも違い、青葉が求めたのは現代フットボールの怪物。

 

 

ポリバレントを求められる現代で、その頂点に存在する選手はどんな選手なのか。

 

 

 

旧態フットボール、その“最後の怪物”だった“もう一人の自分”、その可能性の限界を知り、宮水青葉はさらなる未来を求める。

 

 

 

 





誰が悪いというわけではない。これが、原作を読んだ私の意見です。

お金を儲けることも必要ですし、選手を守ることも必要。タイミングもやっぱり重要だった。

そんな泥沼が過去から続いて、今の青葉を苦しめる要因となっています。

そんな彼がどうなるのか。

まあ、原作27巻まで青葉が精神的に無事かどうかは筆者の匙加減ですが。

それに、30巻はそのままだとトラウマになりそうですね・・・

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