騎士見習いの立志伝 ~超常の名乗り~   作:傍観者改め、介入者

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ブラン監督の後任ぐらいに順調なキャリアの西野監督。CVは鈴村健一さんか、富山敬さんです。

なお西野さんが代表監督に就任するためには、とある人物の会長職就任を阻止なければならないし、ブラン監督をアジアカップ優勝に導く必要があります。

(原作はなんだかんだ解任はなさそうですけど)




第八十五話 押し上げる者

各国の反応は極東の大躍進を大々的に報じている。新世代の若き日本代表は、必ずフル代表に食い込んでくることが半ば確定的だ。

 

海外で一人活躍している昨季のオランダ一部リーグ得点王で、日本の若きエース堂本貴史。

期待通りの、この世代の日本を背負い続けてきた男。

 

その彼の控えでありながら、二試合連続ハットトリックを決めた宮水青葉。進化する超常現象は、さらなる次元へと足を踏み入れている。

 

大会屈指、否、日本史上最高の可能性を秘めるFKの名手榎本文人。彼の距離であるならば、彼は必ず枠にボールをねじ込んでくるだろうと、海外サポーターたちは畏怖と敬意をもつようになっている。FKで簡単に点が入ると錯覚させる新規ファンを作り出す。

 

日本の最終ラインを束ねる若きラインの司令塔飛鳥亨。一対一でも磨きをかけ、海外のエースアタッカー相手に互角以上の結果を手にしている。

 

無尽蔵のスタミナと走力に加え、高速クロスボールを武器とする幕張健吾。二人の右サイドのエースとタッグを組むこととなり、戦術の幅が爆発的に広がっている。

 

今大会で急成長中のCFW、秋本直樹。単なるボールを落とすポストプレーに留まらない、次の攻撃につなげる機動力有のストライカー。

 

そして最後に、J3唯一の選出の工藤春雄。センターポジション全てを担い、人間離れしたフィジカルを持つ。実際、クロアチアの選手は二人掛りでプレスに行き、それを跳ね返す姿は圧巻だった。

 

クロアチアは、中盤で絶対的なフィジカルを持つ彼を抑えることが出来ず、右からの蹂躙に対してはさらに無抵抗だったのだ。

 

そんな選手層が空前絶後な日本は、比較的楽なローテを汲み、切り札を交互に使う余裕を持っていたことから、他チームよりも消耗は最小限に抑えられている。

 

そんな彼らを待つ試合数は残り2試合となり、次の組み合わせが決まる。

 

準決勝第一試合 ウクライナ対コスタリカ

 

準決勝第二試合 日本対ノルウェー

 

 

延長戦をいずれも経験しているノルウェーは、切り札の一人であるディミトリの戦線離脱が確定。ワントップのアーリングを中心に攻めてくるだろう。しかし、上手くローテを汲むことができておらず、中二日という日程でどうなるか。ノックアウトステージ初戦がポルトガルだったことも不運の一つだろう。

 

コスタリカはペルー、セネガルといったいわゆる格下相手に順当に90分で競り勝ち、日本に次いで消耗を抑えていると言える。可変システムは若年層でも採用されており、フル代表にもつながるだろう。タレント集団ではないが、それでも粒ぞろいでハードワークが信条のチームは、団結力が並大抵のものではない。

 

大会前から優勝候補筆頭と言われているウクライナは、UAE相手に快勝してベスト8に駒を進めると、続くベスト4をかけた戦いではオーストラリアを撃破。ツートップでプレスをかけるオーストラリアに対し、試合開始早々からボランチを一枚最終ラインに追加したことで、プレスを無効化。さらに出足の遅いオーストラリアに対し、中盤でセカンドボールを奪い放題のウクライナ。オーストラリアの戦術にとっては最悪の相性と化した彼らは無数の矢となって母国の英雄のようなプレーで蹂躙。

 

急いで中盤の数を増やしたオーストラリアだったが、ウクライナはそれにも即座に対応。出足の遅いオーストラリアの背後をとるサイドアタック中心となり、押し込まれる展開となる。こうなってはカウンターの手数も増えてしまい、戦術的に追い込まれてしまった。

 

試合終了間際、オズボーンが意地のロングシュートを叩き込むも、反撃が遅すぎたオーストラリア。

 

スコアは目を覆いたくなるような結果となり、彼のシュートも最後の悪あがき。長い笛が吹かれたとき、オーストラリアは4点差をつけられていた。

 

試合後、前半から試合終了まで終始ポストプレーをほとんど封じられていたオズボーンは号泣し、打倒欧州を誓ったとか。

 

 

アジア・オセアニア予選でトップを走るであろうサッカールーズの敗北。そして、新たな伝説を作り上げるだろう欧州の古豪の復活。それは、欧州に少なくない衝撃を与える。

 

彼の英雄以来となる躍進。勢力図の塗り替え。相も変わらず欧州戦線は混沌としている。

 

 

一方、アジア各国はオーストラリア大敗の報せを知り、アジアと世界の間にはとてつもない壁があることを改めて認識することとなった。

 

だが、韓国はオーストラリアの古き良きパワープレーの回数が減ったことで彼らの弱体化を指摘。同時に、足元の技術で一朝一夕では埋められないほどの差が存在する相手に対し、ポゼッションを選択したことこそが、彼らの最大の失敗と断じた。

 

 

神戸戦が迫る中、日程が加速度的に早い世界大会。いよいよ大舞台、ノルウェーとの決戦に臨む若きジャパンブルー。

 

GK  1番 真弓慎一郎(福岡)

RSB 2番 幕張健吾(湘南)

CB 14番 井口譲二(浦和)

CB  4番 城達哉 (讃岐)

LSB20番 赤間弓彦(讃岐)

CMF 7番 榎本文人(新潟)

CMF15番 安川走斗(千葉)

RMF 8番 堂本貴史(フローニンゲン)

LMF11番 小川知良(磐田)

OMF10番 石渡翔悟(仙台)

CFW 9番 鷹匠暎(浦和)

 

リザーブ

GK  23番 水野邦夫(名古屋)  22番 相馬元気(鳥栖)

CB  19番 本田マイケル(明治)   3番 飛鳥亨 (ETU)

RSB 16番 中条渉(岡山)

LSB 6番 沖名太陽(山形)

CMF 21番 清武周人(大阪C) 12番 工藤春雄(岐阜)

SH  22番 九鬼鉄心(大宮) 18番 宮水青葉(ETU) 12番 伊達直哉(仙台)

CFW 13番 秋本直樹(横浜)

 

この試合、青葉はベンチスタート。九鬼の方もクロアチア戦で先発した影響なのか、コンディションが上がらない。飛鳥も連戦でのフル出場が続き、先発から外れる。

 

だがこれは、西野監督のミスであることを思い知らされる結果となる。

 

 

前半10分過ぎ。それまで一貫してロングボールでのカウンターサッカーに徹しているノルウェー。ターゲットマンは勿論アーリング。

 

ノルウェーはこの試合4-4-2ではなく、3-4-2-1を採用。とにかく、アーリングにボールを当てて、シャドーでボールを拾う。その戦術に徹していたのだ。

 

だからこそ、瞬間的なセカンドボール争いで、CB2枚に対してワントップ、ツーシャドーの2枚になるノルウェー。

 

この試合シャドーで起用されたノイエ・ヴィッピアがその競り合いを制したのだ。アーリングで競り合いつり出された井口が空き、讃岐出身の城達哉が相手にする局面。

 

『ここは一対一! やられてはいけない場面!! あっとフェイクを入れて、シュートぉぉぉぉ!!!! 決められてしまった! ノルウェー先制!!』

 

切り返しにくいついてしまった城がシュートコースを開けてしまった。そしてそれを見逃すはずがない海外プレーヤー。あっさりとカウンターからのロングボールがきっかけでゴールを許してしまう。

 

西野監督ようやくシステム修正に入り、4-1-4-1でアンカーに最終ラインでのビルドアップに参加させ、榎本と石渡のダブルインサイドハーフで対応。半ばCMF的な立ち位置で、3枚で襲い掛かるプレッシングを回避。

 

しかし、ノルウェーの監督もまたカードを切ってくる。この局面で5-3-2による5バックで中央を完全閉鎖。ボールを大きく跳ね返し、中々バイタルエリアにスペースが発生しにくい状況を作り出したのだ。しかも、ロングボール戦術では劣る日本が空中戦に勝てる確率は少ない。

 

そして、先ほどのカウンターからの失点という楔が、日本のラインを上げきれない心理的ストレスにもつながる。

 

 

そうなのだ。ディミトリには劣るが、こちらはなんと195cmの巨漢の選手がターゲットマンとなり、アーリングがフィニッシャーに徹し始めたのだ。アーリングは単独での個人技も光る。数的同数なら当然仕掛けてくる選手だ。

 

そんな後方に不安要素を抱えながら、日本は同点を狙わなければならない。

 

ピッチにいる堂本は、カットインへの警戒を最大限にされ、クロス精度が劣る弱みをさらけ出していた。

 

「くっ!!」

 

堂本にカットインは許すな。縦に進ませて追い込んでカウンター。ノルウェーの図式は明らかだ。だからこそ、苦し紛れのクロスボールが日本以上に屈強なCBに簡単に跳ね返されてしまう。

 

榎本も得意のFKを得ようと中盤で潰されたときにファウルをアピールするが、審判はそれを流してしまう。ファウルはない。早く立ちなさいと。

 

——————中央完全に閉じられて、クロスボールも跳ね返される、どうすれば‥‥

 

 

今までは、疲労した強豪、前に出てきた強豪と戦い続けてきた日本。当然それらに打ち勝ち、トーナメントを勝ち進んできたが、アンチフットボールともいわれかねない守備的サッカーを前に、攻めあぐねてしまうのだ。

 

だからこそ、日本は榎本にノープレッシャーでボールを渡す、その手段に奔走する。プレースキックの精度も含めて、コントロールの良い彼の足に期待するしかない。

 

堂本が縦突破を諦めてバックパス。バックパスと同時に中に入り、CBの目を釣るのだ。それを行った瞬間に今度は下がってきたボランチの前に入ろうとするが、それもさえぎられる。堂本へのパスコースが完全に消し去られたが、彼のランニングで榎本が空く。

 

『ここで榎本シュートぉぉぉぉ!!! キーパーファインセーブッ!!』

 

ダイレクトで巻いてくるようなシュート。しかし、キーパーがそれを片手一本で止める。零れたボールをセーフティに大きく蹴りだすノルウェー。

 

 

逆にそれが、日本のピンチを呼んだ。

 

『あっとアーリングにわたってしまった!! アーリング、城を躱す! 完全に抜け出した!! キーパー出られないっ、井口必死に戻る!!』

 

後ろからのボールを正面から入ってトラップ。背後の城に対してブーメラントラップで簡単に躱したのだ。城は前に釣りだされ、バランスを崩してしまう。しかしアーリングは逆にトップスピードに乗ってゴール前に迫る。味方のサポートはないが、数的にはやや不利なだけだ。彼がためらう理由はどこにもない。

 

『流し込んだぁ!!! 2点目‥‥‥っ  日本追加点を許します! 前半30分で苦しい展開です』

 

『前に出なければゴールは奪えない。かといって今みたいに球際でやられちゃうと取り返しがつかないんですよね』

 

しかし、ついに日本はバイタルエリアでFKのチャンスを得ることに成功。前半44分。アディショナルタイムはあまりないと判断できる中、榎本がボールをセットする。

 

既にボールをセットした時には45分を過ぎており、これが前半ラストプレー。

 

『さぁ、榎本文人! その左足からの正確なキックで、まずは点差を縮められるか!? 前半ラストプレーです』

 

『これ凄いプレッシャーですよ、0-2から1-2になれば後半分からなくなりますよ』

 

榎本は、初戦以来の苦しい空気を感じていた。日本の戦術を研究し、自分たちの出せるカードが少なくなっていく。ノルウェーは日本よりも苦しいコンディションだった。それなのに、今負けているのは日本だ。

 

——————この左足で、俺は成り上がる。新潟から世界に羽ばたくために。

 

いつものように、心を落ち着かせ、前を見る。風を読む。壁を見る。

 

 

『これはもう、榎本とノルウェーの勝負になっています』

 

 

深く、深く深呼吸する。そしてボールを見る、もう一度壁を見る。

 

しっかりと助走の前準備をする。しっかり自分は地面を踏みしめているのか。腰のひねりは違和感がないか。可動域が歪んでいないか。

 

—————うん、大丈夫だ。今日も俺は、問題ない。

 

体に問いかけて、榎本は確信する。全てのルーティンを終えて、イメージする。弾道を、キーパーの反応を、壁の動きを、止まっている現在から未来を予測する。

 

助走をつける。いつもの距離、いつもの歩幅。いつもの速度。体重のかかり始めも寸分たがわない。イメージ通りの始動。

 

『いつものように、榎本が助走をして——————』

 

インパクト。その直前のひねり。問題ない。全てがイメージと違わない。

 

—————俺は人事を尽くしている。そして、その未来を掴み取る準備は出来ている。

 

 

全ては榎本のイメージのまま、ボールが奇跡を描く。

 

 

——————高いっ、いや、揺れながら落ちるっ!?

 

キーパー反応できない。コースから外れたかに見えたボールの軌道が、悪魔的な変化を生む。

 

 

『縦に落としたァァァァァァ!!? 榎本の左足!! 榎本の左足です!! 新潟が生んだ、史上最高のプレースキッカーが!! 劣勢の日本に、追撃の得点をとってくれました!!!』

 

『凄みすら感じる貫禄。完ぺきなスピード、変化、コース。キーパーノーチャンスでしたね』

 

 

海外では、FKで4点目を奪った榎本への注目がとんでもないことになっていた。不発の堂本よりも、チャンスであると言われるほどに。

 

—————また榎本が決めやがった、なんてゴールだ

 

—————彼はまだ20歳なんだろう? いったいどこまでFKでゴールを奪い続けるんだ!?

 

——————彼のFKについて、語ることはない。なぜなら、結果が分かっているからだ。

 

—————クラック(名手)だ!! 彼はFKのクラックなんだ!!

 

——————何そんな当たり前のことを叫んでいるんだ!! この劣勢で決めきる力は凄い。今すぐうちの贔屓に来てくれ!!

 

 

劣勢の中、選手がまず自力で点を奪った。西野監督も手をこまねいているわけではない。

 

「—————————確かに、あの守備陣形は容易ではない」

 

しかし、突破口は見つけた。ノルウェーイレブンは、シャドーを除いて屈強なフィジカルを持っている。反応も悪くはない。だが、やはり展開力はないのだ。とくにSBのクロスボールは幕張に比べればひどいの一言だ。

 

ワイドCBの動きも、この前半で確認できた。堂本の不発に終わったカットイン、幕張が何度も繰り出したサイドチェンジのボール。簡単にクリアされたり、中を封鎖されて不発には終わったが、惜しい場面も全くなかったわけではない。

 

まずは西野監督、前半で小川を諦め、九鬼を投入する。

 

「狙うならば、ワイドCB。数的不利のまま、そのポジションに対して数秒でもいい。数的有利を作れ。他の者はいつでもボールを受けられるポジションを維持し、他ポジションをけん制」

 

「安川は引き続き、アンカーポジションで最終ラインの組み立てに参加。榎本は右にポジションを張り、二列目の石渡と九鬼は榎本のパスコースを作れ」

 

 

 

「はい!」

 

「うっす」

 

「石渡のボールが入った場合、榎本は常にワンツーのポジションに固定。相手のIHがしつこい場合、SB間でのサイドチェンジを狙い、相手を走らせる。中盤三枚のノルウェーは連戦で疲労している。後半からスライドは間に合わなくなるだろう」

 

 

「幕張、赤間。サイドチェンジのボールは滞空時間の長いボールを選択しろ。ギリギリまで相手を食いつかせる。ボールを奪われたとしても、ノルウェーにはセンターアタックしかなく、組み立てを出来るだけの余力もない。5-3-2で中盤の枚数も少ない。プレッシングすれば必ずロングボールを蹴ってくる」

 

「そして、堂本、九鬼はセンターの鷹匠が一対一に持ち込めるようワイドCBに付け。ダイレクトプレーを意識し、中でのプレーをするんだ。ワイドレーンはSBが担当する」

 

その後、さらに細かい守備の取りまとめが行われ、西野監督はイレブンに対してカツを入れる。

 

「我々は現在1点ビハインドだが、気にすることはない。要は長い笛が吹かれる瞬間に、勝っていればいいんだ。策は用意してあるから、思いっきりプレーしろ、以上だ」

 

スライドに強く、鉄壁の防御を前半で見せたノルウェーの守備陣形。

 

 

だが、西野監督の采配がそれを鮮やかに突破していく。

 

 

彼の言った通り、サポートに入ったボランチを捕まえることが出来ず、かといってつり出された場合、中盤の枚数の少ないボランチが明けたスペースを使われるのは、5-3-2の陣形の意味をなくすと同義である。

 

日本は高いポジションで攻撃の組み立てを行うことが出来、中盤の三枚は西野監督の予想に反し、後半立ち上がりからスライドについていけてなかった。

 

 

——————監督の言った通りだ、5-3-2の弱点をこれでもかと

 

 

榎本は完全にフリーでボールを持ち、中盤フリーで攻撃を組み立てることができる。プレスバッグするシャドーの2枚だが、CB2枚とアンカー1枚がそうなるとアーリング1枚で見る必要がある。

 

結果的に、ノルウェーは前線、中盤でのボールの狩り所を失い、運動量が増大していく。それは、ノルウェーが一番恐れていることで、疲労している選手たちの足が止まっていく未来が近づくということである。

 

後半4分。最初のチャンスが訪れた。

 

 

突破した石渡と榎本のワンツーで中盤のプレスを掻い潜り、中でプレーする堂本、九鬼が絶好のポジション。

 

石渡のパスを堂本が受けたリターン。そしてボールを受けに、サイドCBをつり出す。その刹那のタイミングを鷹匠と石渡は見逃さなかった。

 

サイドCBが空けた背後のスペースが致命的なほどに空いたのだ。

 

—————ここまで、戦術で変わるものなのかよ

 

鷹匠はフリーでボールを受ける。中央CBがつり出される。ワイドCBは堂本がクロスを受けようとするのを阻止する。だが、最終ラインの陣形が崩れた。

 

刹那の数的有利。

 

堂本のスライドに対応した中央CBが、一瞬だが中に切り込んだ九鬼を見てしまった。

 

————この時点で、勝負ありということか。

 

 

選手が連動して動き、相手が動いた背後を突く。西野監督の戦術は数的有利を作り、連動して崩す攻撃的サッカー。

 

 

鷹匠からの折り返し、堂本は横に流れながら九鬼へのラストパスのコースを作り、九鬼は背後から迫るワイドCBのファウルを受ける。

 

倒れる、そして笛が鳴る。ノルウェーは致命的なほどに守備を攻略されたのだ。

 

『あっと倒されたぁァァァ!!! 日本ペナルティキックを得ます!! 倒れた九鬼は、ボールを放しません』

 

『攻めあぐねた5バックを攻略して、中央突破ですか。凄いですよ、今の攻撃』

 

九鬼が難なく逆を突いてまず同点。後半6分。

 

 

中央攻撃での脅威を感じてしまったノルウェーは、スライドが鈍くなる。そして中盤でのボールを刈り取る必要があるとWBが高い位置を取り始める。だが、ワイドレーンで温存されていたSBがその運動量で悉く背後を突く。

 

幕張からの正確なクロスボールがフリーの状態で放たれるのだ。

 

ワイドCBは何をしている? いや、中に入り込んだサイドハーフを見ている。ボランチはどうしているのか? ダメだ、日本のボランチのポジショニングに手を焼いている。

 

西野の眼力が、ノルウェーをさらけ出す。

 

 

だからこそ、鷹匠のニアサイドへの基本的な抜け出しに、一対一、常に不利な状況で勝負を強いられる中央のCBが後手に回る。

 

『鷹匠飛び込んだぁぁっぁ!! 日本勝ち越し!! 決めたのはFWの鷹匠!! 3対2となりました!!』

 

 

 

続けざまに得点を決め、勢いに乗る日本。攻撃的にWBをあげてもだめ、5バックは先ほど攻略された。4バックでの守備に不安があったからこそ、当初の戦術をくみ上げた。

 

ダメだ、打つ手がない。時間が過ぎ去っていく。

 

後半18分、日本は2枚目のカードを切る。得点を決めた鷹匠が下がり、秋本直樹。

 

フレッシュでポストプレーを得意とする秋本が前線で違いを見せる。彼は中央CBとワイドCBを釘付けにし、ダイレクトフライスルーパスで石渡からの縦パスを芸術的なアシストに変身させたのだ。

 

後半21分。鮮やかなそのラストパスに反応するのは、前半封じられていた日本のエース。

 

『ダイレクトだァァァァァァ!!! 堂本が目覚めた!! 日本のエースがついに目覚めた!! 後半21分!! 鮮やかなダイレクトプレー2連発で、最後は堂本貴史!! キーパー足を延ばしましたが、及びませんでした!!』

 

その後、鮮やかな逆転劇を世界に見せつけた日本代表。そのまま時間の針は進み、後半38分。集中力のキレたノルウェーが、危険なエリアでFKを献上してしまう。

 

 

『キーパー反応しましたが、やはり決めました!! 榎本2点目! FKで連発です!! この神業FKは、やはり普通ではない!!』

 

決定的な5点目を決め、日本はそのまま勝利。ノルウェーは、エースアーリングを封じられ、戦術的にも攻略され、見どころのない敗戦となった。

 

この試合、宮水青葉に出番はなかった。彼は攻撃的ポジションだけではなく、中盤も出来るだろう。しかし敢えて、西野は彼を出場させなかった。

 

—————彼は、今日ピッチに立った誰よりも、究極の個を持つ存在だ。ピッチではわからない、この視野の広さを、彼が持つことが出来れば

 

 

最高の状態で、決勝に勝ち進んだ日本代表。反対ブロックのウクライナもまた、

コスタリカを下し、決勝に進んでいる。こちらも監督の采配で勝ち進んできたのだが、やはり、FKが得点源になるとんでも選手や、超常現象、オランダリーグのトップスコアラー、スペイン一部濃厚のWGほどの選手はいない。

 

この世界大会で、日本はそのファイナリスト相手にタレントで勝ることを証明した。

 

長らく、アジアは欧州、南米の後塵を拝んできた。だが、中東の国家プロジェクト、中国の巨額の投資、今年からアジアに参画する新たな風、ニュージーランドの存在。

 

ここから、この世代から始まる、アジアの逆襲。若き日本代表は、西野監督は、その証を世界に刻み付けることができるのか。

 

 




可能性世界では”彼”が会長職に就任してしまい、青葉(当時20歳。アーセナル所属の絶対エース、無敗優勝の立役者)がサッカー以外のことで多大な労力を使い、何とか腐敗を摘出することに成功。

しかし、青葉は自ら責任をとって代表引退に追い込まれてしまうという誰も救われない結果になりました。


その後、サポーターからの熱い代表復帰の嘆願と、協会が混乱している直後に中継ぎ扱いで就任した西野監督の三顧の礼によって2022年本番に間に合いました。




この世界線でも”彼”は存在するので、力を持つ切っ掛けになるブランのアジアカップベスト4敗退を阻止する必要があります。


後は改心した城之内記者(エリアの騎士に登場)と愉快な仲間たちがあの野郎を何とかしてくれるでしょう。(ちょこっとだけ、小話や記事ぐらいで描くかも)


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