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ドラコ・マルフォイって邪悪で利己的でやりたいほうだい!
—— おもしろい。詳しく。
バックビークが彼に殺されちゃう!
—— バックビーク?
ハグリッドのヒッポグリフ。
—— ああそうか。思いだした。それでなぜ殺されるんだ?
あのバカな子が授業中にバックビークを侮辱して、小さいあざができた。それを攻撃されたんだって言いはったから、彼のお父さんがバックビークを殺せと訴えた。
—— そういうようなことが起きると言っておいただろう。
バックビークのせいじゃないのに! ほとんど触れてもいないのに。
—— どうしてわかる? きみはその場にいたのか?
いなかったけどジニーのお兄さんが友だちといっしょにそこにいた。あのハーマイオニーっていう子から聞いたんだけど、マルフォイはちょっとした傷だけなのに、マダム・ポンフリーに治癒してもらったあとも、けがのふりをしてる。
—— 不運だったな。あの巨人もそんな授業をしなければよかったと後悔しているだろう。
うるさいトム。だまって!
—— 礼儀がなってないぞ。
だからなに? 無実の生き物が死ぬんだよ! たまには気にかけるふりでもしてみたら!
—— いいだろう。なにをしてほしい?
わからない。
—— じゃあそもそもなぜぼくに話すんだ?
いらいらして、あいつが憎くてだれかに話さないといられなくて、あなたにはほかのひとに言えないことが言えるから。
—— たとえば?
あのいじめっ子がほんとうにいためつけられればよかったのにとか。身動きがとれなくなっていればよかったのに。死んでいればよかったのに! もしそうだったら、こうなってもしかたないって、あきらめもつくのに。
—— 本当にぼくの悪影響がおよんでいるみたいだな?
かもしれない。それか、わたしはまえからこうなのをあなたが知らなかっただけかも。みんな自分のなかに暗黒がある。これがわたしの暗黒。
—— 暗黒が多い人とそうでない人がいる。きみのは暗黒じゃないよ。影というほどでもない。ただ怒っているだけだ。
怒っているだけじゃない。憎い。あいつが憎い。
—— 教師のだれかに話したらどうだ? 怪我を誇張していると証言してくれる人もいるだろう。
それじゃたりないよ。彼のお父さんは影響力がありすぎる。みんなを賛成させて、確実にバックビークが罰せられるようにできるだけの影響力がある。
—— なにを根拠に言っている?
わたしのお父さんが去年魔法省の汚職の記事を書いた。
—— ほう。たわごと記事ばかりじゃなかったわけだ。
うるさいよ!
—— ほんとに怒ってるんだな?
激怒してる。
—— 真実薬はどうだ?
え?
—— なにかに混ぜて飲ませてやればいい。芝居だったと告白させろ。そうすればその生き物の弁護の役に立つんじゃないか?
役に立たなさそう。そもそも真実薬のつくりかたがわからない。
—— あの薬学クラブで訊いてみたりできないか?
真実薬をだまして飲ませるのは違法だよ。スネイプ先生が許さないと思う。
—— 今日のきみはあまり楽観的じゃないな?
立派な無実の生き物が理由もなくひどい目にあうっていうときに、なかなか楽観的にはなれるものじゃない。
—— ディメンターにかこまれたときになかなか楽観的になれるものじゃないが、きみはやってのけた。まず、殺されるというのはたしかか? 本当に命令がでたのか?
まだだけど、でるよ。ひどくみじめな感じの胸騒ぎがするから分かる。
—— その生き物を逃げさせたりできないか? 翼があるんだろう?
それでどこにいくの? 追われるだけじゃない!
—— 森のなかに隠すのは?
見つかるよ。バカなことを言わないで。ほしいのはまともな案だよ!
—— 努力はしているよ。ぼくにあたるのはやめてくれ。
あたってない。
—— あたっている。そもそもぼくがきみを助けるいわれはないだろ?
じゃあもういい!
—— そういうつもりじゃ……ルーナ? ……ルーナ、返事をしてくれ……ルーナ?
……
トム?
—— 話をしてくれる気になったか?
バックビークが裁判にかけられるっていう正式な通知がきた。もう時間の問題。
—— 残念だったな。
わたしもごめん。八つ当たりするつもりはなかった。
—— いいさ。
わたしはどうすればいい?
—— ヒッポグリフについては何ともいえないが、なぐさめになるのなら、きみがいないあいだにいろいろ考えて、羽を生えさせる呪文をつくっておいた。そのマルフォイの子に使えばいい。多少の罰則はうけることになると思うが、この呪文でつけた羽はちょっと特別だから、もぎとる以外の対処法はない。
罰則をうける価値はある。
—— じゃあ詳しく聞きたいんだな?
うん。
—— いい子だ。復讐はとてもやりがいがあるぞ。これには多少複雑な杖のうごかしかたが必要だから、メモしなさい。
わかった。
……
うまくいった。あいつはいま羽をもがれてるところ。わたしは二カ月罰則をうけた。
—— 気分はよくなったか?
すこし。ハーマイオニーがハグしてくれて、フレッドとジョージがまた金髪になってくれた。
—— まだのぞみはあるさ、ルーナ。判決はでてないんだから。
ありがとう、トム。
わたしが列車でパトローナスの呪文をつかったのがルーピン先生につたわって、ディメンターを撃退する方法をハリー・ポッターに教えるのを手つだってほしいって言われた。
—— なぜ?
ハリーはディメンターの悪影響を受けやすいんだって。列車でたおれたっていう話をジニーに聞いた。
—— なぜポッターがそれを教わりたいかはわかる。なぜルーピンがきみに手つだいを頼むんだ? 防衛術の教師は彼だ。なぜ生徒の手つだいが必要になる?
ハリーの気を楽にしたいんだと思う。ほかの生徒があの呪文をつかえるところを見せてあげて、能力の限界を超えたものじゃないとわかるように。
—— 超えているのかもしれない。ポッターがどの程度の能力か知ってるのか?
知らないけど、ぜんぜん才能がないとは思えない。
—— グリフィンドールだからな。あまり期待するな。
ひねくれたこと言わないで。
—— 現実的に言っているだけだ。グリフィンドールはバカで有名だ。
そんなことない。四つの寮のあいだで知性に差があるという証拠はないんだよ。
—— そんなバカな! レイブンクローがほかの寮より頭がいいことはだれでも知ってる。きみの寮はそのためにあるんじゃないのか? それにもちろん、スリザリンは有能だ。
レイブンクローは勉強熱心で、スリザリンは野心がある。だから成績も高くなることが多いけど、実際の知性に関しては、才能ある人はどの寮にもいる。
—— 見解の相違だな。
検証ずみの事実だよ。グリフィンドールにもとても知的な人がいる。ダンブルドアはグリフィンドールだった。
—— あの老いぼれが一番ましな例なら、なにも言うことはない。
もっと例がほしいの? マクゴナガル先生、ルーピン先生、ジニーのお兄さんのうち何人かはとても成功していてかしこくて全員グリフィンドールだった。それにハーマイオニー。前に話した子だけどレイブンクローの大半より成績が上なんだって。
—— 本当に?
うん、上級生が何人か文句を言ってるのをきいた。あ、それに……
—— もういい。言いたいことはわかった。グリフィンドールはグズばかりじゃない。ほとんどはそうだが全員ではない。
じゃあわたしの勝ち?
—— そうは言ってない。
しずかに……これから勝利の余韻を味わうから。
—— ははは、おもしろい。まあいずれにしろ、あの少年がどれくらいのものかはもうすぐわかるだろう。
少年?
—— ポッター。
ああそうだ。もともとその話だったっけ。それで思いだしたけど、十分後に最初のレッスンをしに集まるんだった。またあとで。
……
こんばんはトム。
—— レッスンはどうだった?
うまくいった。あの子は完全なパトローナスはつくれなかったけど、そこそこの防壁はできた。
—— 下手くそだな。
まだ一回目だったんだから。
—— それがどうした? ルーナはディメンターにかこまれながら一度で完全なパトローナスをつくった。だから期待はずれになると言ったじゃないか。
わたしはあれで上出来だと思う。
—— きみは甘すぎる。
あなたはきびしすぎる。
—— そいつが役立たずなのはぼくのせいじゃない。
役立たずじゃない。
—— 魔法世界の救世主と言われるわりにはたいしたことがない。
十三才だし。みんなあの子に期待をかけすぎてる。
—— そうやって期待していたのが間違いだったということだな。
みんなそうやってハリーを頼りにしようとするのをやめて、あの子もふつうの子どもだと認めて、ほかのだれともおなじように欠点があっておかしくないと思えばいいんじゃないかな。
—— つまりポッターは大したことがない、と認めるのか?
そうは言ってない。
—— しずかに……これから勝利の余韻を味わうから。
子どもっぽいね。