ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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45「ペティグリュー」、46「シリウス」

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45「ペティグリュー」

 

* 帝王さま?

 

—— ん? ルーナか?

 

* いえ。わたしです。

 

—— 的確な説明ありがとう。とっとと正体をあかせ、バカが。いったいだれだ?

 

* ピーター・ペティグリューです。わが君。帝王さまのもっとも忠実なしもべです。

 

—— その名前にはどこか聞きおぼえがある。

 

* ありがとうございます、わが君。ありがとうございます。光栄です。

 

—— お世辞はいい。いらいらする。ルーナはどこだ?

 

* 眠っています、わが君。わたしはその子のベッドの下にいます。

 

—— おまえがどこにいるって? この日記帳をどうやってみつけた? それに、どうやってこれがぼくだと知った?

 

* ずっとお探ししておりました。何年もまえになりますが、帝王さまが失踪する以前に日記帳がマルフォイの手に渡った、という話を聞いたもので。

 

—— おまえがこれの仕組みを理解しているのか、いまどのバージョンのぼくに話しかけていると思っているのか、いまいち分からない。

 

* 理解しております。どのバージョンの帝王さまもわが君です。

 

—— なるほど。まあ、おまえも完全に無価値ではないかもしれない。どうやってこれを見つけたかの答えをまだ聞いてないが。

 

* 申し訳ありません。去年になってやっと、ホグワーツのだれかがこの日記帳を所有しているという証拠をつかみました。それから生徒全員のかばんを調べていました。

 

—— 証拠というのは?

 

* わたしの潜伏先だった魔法使いの妹が日記帳のことをしゃべったんです。質問にこたえることができる、トムという名前の日記帳だと。バカな魔女でして、兄にその秘密を話しているのをわたしがきいた時点で、すでに日記帳をなくしてしまっていました。それで生徒のだれかがひろったんだろうと思って、捜索をはじめました。

 

—— 以前にぼくを所有した魔女はジネブラ・ウィーズリーだけだ。ウィーズリー家の子どもが死喰い人をかくまってホグワーツに侵入させたと本気で言っているのか?

 

* そうと知りながらではございません。わたしは動物もどきのすがたで、正体を知られずにあの家に隠れていました。

 

—— 動物もどきのすがただと?

 

* はい。

 

—— 何のために?

 

* 帝王さまが失踪なさった夜、わたしは自分を死んだようにみせかけました。逃げるしかありませんでした。このすがたで潜伏しつづけました。帝王さまがお帰りになったとわかれば、すぐに参上できるように。

 

—— それでジネブラの兄のペットとして所有されていたと?

 

* はい。

 

—— その動物もどきのすがたはネズミだったりしないだろうな?

 

* いえ、そうなんですが、なぜごぞんじなんですか?

 

—— ぼくにかみついて、小便をしたあのクソネズミか!?

 

* 申し訳ございません。申し訳ございません! お許しください。そんなつもりは……帝王さまだとはわからずにいたんです。不敬をはたらくつもりなど……ただ、ヴォルデモートさまの日記帳が紫色のスパンコールつきだとは思いもよらず……

 

—— なにがついてたって? ルーナのやつめ!

 

* あの子を処分しておきましょうか?

 

—— 処分?

 

* はい。トラブルのもとですから。あの子は帝王さまのことを知っています。日記帳の存在を証言するかもしれません。わたしたちがいなくなれば、ダンブルドアのところにいくかもしれません。逃亡に支障がでます。

 

—— いなくなる?

 

* もちろんです。こうやって帝王さまの居場所がわかったんですから、外におつれできます。あの女の子に邪魔をされる危険はありますが。あの子を外にさそいだして殺すこともできます。みんなブラックのせいだと思うでしょうし、パニックになればバレずに脱走できるでしょう。

 

—— ダメだ!

 

* は?

 

—— あの子を傷つけるな。

 

* なぜですか?

 

—— なぜだと? 主人の命令に口ごたえする気か?!

 

* いえ、帝王さま、申し訳ありません。そんなつもりは全然。

 

—— だまれ! おまえはルーナ・ラブグッドが生きている前提での計画があるんだとだけ知っておけばいい。

 

* はい、帝王さま。承知しました。

 

—— ここからはよく聞け。二度は言わない。

 

* はい。

 

—— まず、ぼくはおまえといっしょに出てはいかない。

 

* え? でも……

 

—— 静かにしろ。話に割りこむな!

 

* すみません

 

—— だ ま れ! 一文字も書くな。

 

* ……

 

—— よし……つづきだが……ぼくには計画がある。それだけじゃなく、おまえは動物もどきのすがたで脱出しようとしていたんじゃないか?

 

* ……

 

—— こたえろクズが!

 

* でもさっき……

 

—— さっきはそう言ったとも! だが質問されたらこたえるんだ!

 

* はい、帝王さま。

 

—— ネズミのすがたで脱出するつもりか? そうだな?

 

* はい。すばやく出ていく必要がありますが。ブラックが追ってきます。

 

—— ブラックはあのポッターを狙ってここにいるんじゃなかったのか?

 

* 彼はポッター夫妻の友人でした。わたしがあの二人への襲撃に加担したのを恨んで、わたしを殺そうとしています。

 

—— 加担?

 

* わたしは二人の秘密の守人(シークレット・キーパー)でした。ポッターの隠れ家の情報を帝王さまにおもちしたのがわたしです。

 

—— ぼくが死にかける原因を作ったのも。

 

* 申し訳ありません。まさかあんなことに……

 

—— だまれ。そのことは今はいい。とにかく、いつまでかかるかわからないのに、ネズミに引きずりまわされていく気はまったくない。ブラックがおまえを狙っているなら、同行するのは余計危険だ。

 

* それならかわりに……

 

—— だまれ!

 

* ……

 

—— いい子だ。わかってきたな。

 

* ありがとうございます。

 

—— わかってきてなかったか。とにかく、まだぼくはここでやることがある。おまえは一人でいけ。まかせたい任務がある。

 

* 何なりとお申しつけください。

 

—— よし。じゃあ、ぼくの後ろのほうからページを一枚ちぎれ。

 

* 帝王さま?

 

—— いいからやるんだ!

 

* ……

 

—— よし。これで離れても通信ができる。あとで指令をおくる。おまえは口ごたえせずそれに従う。いいな?

 

* はい。

 

—— それでいい。つぎは、ぼくをもとの場所にもどして、おまえはすみやかにこの学校から出ろ。ロンドンの方向に南下しろ。しかるべき時期がきたら、また連絡する。

 

* はい。お手つだいできて光栄です。

 

—— だまれ、とっとと消えろ。

 


46「シリウス」

 

トム? そこにいる? トム?

 

—— いるが、どうした?

 

ちょっと問題がおきた。

 

—— ナースにたのめるようなことか?

 

そういう種類の問題じゃないよ。

 

—— じゃあ何だ?

 

怒らないでね。

 

—— 何だと? なにが起こったんだ?

 

わたしは……ちょっと……その……シリウス・ブラックに誘拐されたみたい。

 

——  は ?

 

大丈夫……だと思う。いまのところ、けっこういい人だった。

 

—— おまえは狂ったのか? どうしてそんなことに?

 

バックビークの話をしようとしてハグリッドのところにいったら留守だった。

 

—— で?

 

ちかくで音がきこえて、ハグリッドかもしれないと思って見にいったら、バックビークしかいなかった。

 

—— それで?

 

それで、セストラルが何匹かいるのが見えて、しばらく見にいってないなと思って、すこし森にはいって見にいった。

 

—— しばらく見にいってないのがなぜか忘れたのか? これだよ。これがまさにその理由だよ!

 

ちょっとあいさつしようと思っただけ。

 

—— 脱走犯に誘拐されておいて!

 

いい人みたいなんだって。

 

—— きみの言うことは今は信じられない。

 

でもこの話はつづきがあるんだよ。

 

—— 結末はわかってる! 誘拐されるんだろ。

 

セストラルのところにいったら、だれかが痛がってるようなうめき声がきこえて、その方向にいった。

 

—— そして誘拐された!

 

そしてミスター・ブラックがいて、けがをしてるみたいだったから、大丈夫かきいた。

 

—— 大丈夫かだって? 本気で殺人鬼に話しかけたのか? なぜ逃げなかった?

 

具合が悪そうだったから。かなり苦しそうだった。

 

—— 知ったことじゃないだろ?

 

わたしが見えたら彼はパニックになってわたしをつかまえて、それでわたしは先生を呼べなくなった。

 

—— おどろきだな!

 

ごめんって言ってた。誘拐したくはないって。

 

—— それなら安心だな!

 

おちついて。

 

—— 落ちつけ? ぼくに落ちつけと言ってるのか?

 

うん。誘拐されたのはわたしだよ。

 

—— そうだよ! きみは誘拐された。ひどく危険かもしれない人物に。

 

それはわからない。いい人みたいだって言ったでしょ。

 

—— へえ? 脱走犯がいい人に見えるって? それはすてきな人なんだろうよ!

 

そういう態度をとるならもう話してあげない。

 

—— いや……待て。どうやってぼくに話している? ブラックはどこにいる?

 

外にいった。

 

—— きみはどこにいる?

 

家のなか。ホグズミードの叫びの屋敷だと思う。

 

—— そいつはきみをおいて出ていったのか?

 

うん。

 

—— じゃあなぜきみはぼくに話しかけてるんだ? なぜ逃げようとしないんだよ!

 

縄でしばられて杖をとられた。でも腕は自由にしてくれて、鞄はのこしてくれた。

 

—— ブラックに縛られたのか?

 

うん。

 

—— 自分を誘拐して幽霊屋敷にいれて縄で縛ってきた相手を、いい人みたいだと思うのか?

 

うん。

 

—— きみはどうかしたんじゃないのか?

 

わたしはいつも相手のいい面をさがすことにしてる。

 

—— きみは騙されている。

 

失礼なこと言わないで。

 

—— 本当に逃げられそうにないのか?

 

縄に魔法がかかっててほどけない。腕をうごかして楽にはできるけど、それだけ。

 

—— ブラックがいなくなったのはいつだ?

 

だいたい三十分まえ。たぶん食べものを調達にいったんだと思う。

 

—— そいつは死喰い人じゃなかった。

 

え?

 

—— きみをどうやって助けられるかわからないが、これは言える。ブラックは死喰い人じゃなかったし、狙っているのはあのポッターじゃない……別のだれかだと思う。

 

知ってるよ。本人からおなじことをきかされた。あなたはどうして知ってるの?

 

—— どうやってかは教えられない。とにかく知っている。

 

これが終わったら、そのへんの話をさせてもらうよ。

 

—— わかった。

 

もどってきた。だれかいっしょにいるみたい。声がきこえる。

 

—— だれだ?

 

わからない。そろそろ書くのをやめないと。

 

—— 気をつけるんだぞ。

 

 


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