ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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47「囚われ」

 


47「囚われ」

 

—— ペティグリュー……返事をしろネズミ野郎!

 

* はい。すみません。なにかお手つだいできることはございますか?

 

—— だまれ。媚びようとするな。新展開があった。おまえはいまどこにいる?

 

* イングランドとの境界をすぎたところです。

 

—— そこにとどまって今後の指示を待て。この学校にもどってきてもらう必要があるかもしれない。

 

* ですが帝王さま、そこはわたしにとって安全ではありません。

 

—— で? 帝王の手つだいをするために命をなげだすことはできないというのか?

 

* もちろんできます、でも……

 

—— 「でも」はなしだ。もどれと言われたらもどるんだ。それに、まだぼくは待てとしか言っていない。ここからどう転ぶか、まだわからない。

 

* そちらで帝王さまに関わるなにが起きているんですか?

 

—— おまえの知ったことじゃない! とにかくその場で指示を待て。

 

* はい。もちろんです、帝王さま。

 

—— もうだまれ!

 

……

 

トム、そこにいる?

 

—— いるに決まってる。ここ以外のどこにいるんだ? 散歩にでかけたりなんかできるはずないだろ?

 

そんな言いかたしないでよ。

 

—— わざとじゃない、ただいらいらしているだけだ。きみが誘拐されたんだぞ!

 

大丈夫だから落ちついて。

 

—— 大丈夫? 解放されたのか? きみはホグワーツにもどったのか?

 

ううん、まだ叫びの屋敷にいる。でもいいニュースとしては、ネビルもきた。

 

—— は?

 

ネビル・ロングボトム。まえに話してあげた。

 

—— わかってる。わからないのは、それのどこがいいニュースなのかだよ! なぜその子がそこに?

 

ミスター・ブラックがつれてきた。

 

—— なぜ?

 

たぶんわたしの話し相手として。

 

—— 話し相手?

 

そう。わたしがひとりでさみしくないように。思いやりがあるよね。

 

—— ああそうだな。一人誘拐するかわりに二人誘拐するなんて親切な人だ。

 

わたし一人だともっと怖かったと思う。話し相手がいるのはいい。

 

—— 話し相手ならぼくがいる。

 

うん、でもそのことは知られてない。

 

—— きみを怖がらせたくないならずっといい解決法がある……解放すればいいだろ!

 

いまはその選択肢はとれないと思ってるみたい。だれかを探すことにとても集中してる。それまではわたしを解放するリスクはとれないみたい。わたしが先生たちにこの場所を教えられることがわかってるから。

 

—— 教えないと約束してやればいいんじゃないか?

 

そう言っても信じてもらえなさそう。

 

—— セーターを縫ってあげると言えば?

 

試してみる。

 

—— 冗談だったんだが……ルーナ?

 

ありがたいけどいまは「あの卑怯なネズミ」をつかまえるまで待ってくれと言われた。かなり怒ってそう言ってた。だれを探してるんだろう?

 

—— きみは彼の目のまえでこれを書いているのか?

 

なにを書いてるかは知られてない。気を落ちつかせるために宿題をしてるんだと言っておいた。

 

—— それを信じてもらえたのか?

 

もちろん。わたしはレイブンクローだし、彼はグリフィンドールだから。わたしたちがすることといえばそれだけだと思ってるんだよ。

 

—— やっぱりグリフィンドールはバカだな。

 

そういう意味じゃないよ。

 

—— まあいい。そのネズミはもうホグワーツにいないと言ってやれ。

 

どうして?

 

—— そのネズミはもうホグワーツにいないからだ。

 

なぜわかるの?

 

—— わかるんだよ。

 

そのネズミはだれ?

 

—— だれかはどうでもいい。

 

それじゃ納得できない。ネビルも納得できないと思う。

 

—— わかった。そのネズミは死喰い人で、これまで学校に隠れていた。言えるのはそこまでだ。

 

どうしてそんなことがわかるの? スネイプ先生のことじゃないの? むかし先生が死喰い人だったことは知ってるし、ミスター・ブラックが先生を狙ってるんなら嫌だな。最近はいろいろよくしてもらったから。薬学クラブのことは話したっけ? おもしろいことがあったよ。

 

—— いまはそんな話をすべきときじゃない。それと、スネイプじゃない。

 

わかった。あとで話す。それと、よかった。

 

—— ブラックには言ったか?

 

言った。どうやって知ったのか知りたいって言われた。

 

—— どうこたえた?

 

肩をすくめた。そしたら、解放されたいばかりにわたしがでっちあげをしたと思われた。

 

—— そりゃすごい。

 

どう言えばよかったの?

 

—— さあ。ぼくもそこまで考えなかった。

 

ミスター・ブラックがまたとても親切になってる。わたしにもネビルにもけがはさせないし、できるだけはやく学校にかえすと約束してくれた。一連のできごとでかなり憔悴してるみたい。

 

—— ロングボトムはどこにいる?

 

ネビルはとなりで眠ってる。眠れてよかった。睡眠が必要そうだったから。さっきまではわたしのために勇敢にしようとしてくれてたけど、どうみても怖がってた。巻きこんじゃったのが申し訳ないよ。わたしはひとりでも大丈夫だったのに。

 

—— ロングボトムが二人目に選ばれた理由はなにかあるのか?

 

さらいやすかっただけだと思う。寝室の合言葉が毎回変えられてて、それがわからなくて外で立ち往生してたんだって。

 

—— ダンブルドアがいかに献身的かつ効果的に生徒たちの安全を守っているかがわかる一例だな。

 

ミスター・ブラックがまたでていった。

 

—— あのネズミをさがしにだろうな。

 

そしてそのネズミはここにいない。

 

—— そうだ。

 

わたしたちはしばらくこのままになりそう。

 

……

 

—— ペティグリュー

 

* 何でしょうか?

 

—— スコットランドに引きかえしてこの学校のほうに来い。まだ中には入るな。近くにだけ来るんだ。

 

* はい。おおせのままに。

 

……

 

* あの?

 

—— 何だ?

 

* ブラックにわたしがやられてもいいとか思ってないですよね?

 

—— いいからだまって命令を待ってろ

 

……

 

ここに連れてこられてからもう丸一日。ミスター・ブラックはシリウスと呼んでくれと言ってる。シリウスとネビルは二人とも眠ってる。シリウスは自分は殺人鬼じゃないし裏切り者でもないと言ってる。ピーターという名前の人に罠をかけられただけで、そのピーターがいまホグワーツにいる。シリウスの目的は、その人をみつけてハリー・ポッターを守って自分の冤罪を晴らすこと。

 

—— よくまとまった要約だ。

 

ありがとう。

 

—— ピーターはホグワーツにいない。

 

それはもう聞いた。どうやって知ったのかきいてみてもムダ?

 

—— 無駄。

 

いつか話してくれる?

 

—— ああ。いつか。

 

わたしはどうすればいい?

 

—— まだ縛られているんだろう?

 

うん。

 

—— それならあまりできることはない。なにか変化があったらすぐに教えろ。緊急時には×とだけ書くか、インクを垂らせ。そうすればぼくはできるかぎりのことをする。もしブラックに危害をくわえられそうになったら、あのネズミを渡してやると言え。

 

わたすって、わたしが?

 

—— ぼくはできる。

 

どうやって?

 

—— あとで話すよ。

 

そもそもどうして危害をくわえたりするの? トム自身、死喰い人じゃないんだって言ったよね?

 

—— アズカバンで十年を過ごした男だ。もともと無実だったとしても今は不安定な状態かもしれない。

 

そうか。ピーターはもどってくると思う?

 

—— もどってくることはわかっている。必要なら。

 

どういう意味?

 

—— あとで……

 

話す、か。最近変だよ。

 

—— それで? ルーナはいつも変だがぼくは文句を言っていない。

 

言ってたよ。いつも。それに、それがわたしらしいところだから。トムには似合わない。

 

—— 一本とられた。

 

 


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