ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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52「新しい日常」、53「からかう」

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52「新しい日常」

 

—— ペティグリュー。

 

* なんでしょうか?

 

—— また元の方向に戻っていい。ロンドンに向かえ。問題は自然に解決した。

 

* 承知しました。ありがとうございます。帝王さま、ブラックは死にましたか?

 

—— いや。

 

* 捕まりましたか?

 

—— いや。

 

* ディメンターにキスされましたか?

 

—— いや。学校を脱出した。そういえば、おまえは人目につかないようにしたほうがいいだろうな。聞いたかぎりではあいつはおまえに恨みがあるようだ。

 

* でも……もし追いつかれたらどうします?

 

—— 知らん。おまえは有能なネズミなんだろ? なんとかしろ。

 

* それは……わかりました。

 

—— よし。じゃあ出発しろ。

 

……

 

ふう。やっと終わった。

 

—— なにが?

 

ミスター・ブラックの伝言をハリー・ポッターにとどけた。

 

—— ああ。どういう反応だった?

 

最初は信じてくれなかった。全体を何度かくりかえしたらやっと少しずつ分かってくれた。ネビルとルーピン先生がいま彼に話してる。

 

—— ずいぶん信じがたい話だろうな。

 

うん。いろいろミスター・ブラックについて悪い話を聞いて、とても怒ってたみたい。それが全部まちがいだったっていうのはすぐには納得できないよ。どういう気持ちになればいいか分からないんだと思う。

 

—— 一度落ちついて考えれば大丈夫だろう。

 

でも残念だね。せっかく直接会えるところだったのに。

 

—— 同情してやりたいのはやまやまだが、正直あのポッター野郎のことはあまり興味がない。ほかの話にしないか?

 

そうか……あ、わたしが新しく調べてるポーションのことを手つだってもらえるかな。

 

—— それならいい。

 

……

 

* さきほどロンドンに到着しました。

 

—— よし。安全な隠れ家があるからそこに行くんだ。今から住所を教えるからよく見ろ。

 

* わかりました。

 

……

 

フィリーウィットの群れが温室のよこの茂みのなかにいる。

 

—— よかったよかった。

 

え? なにが?

 

—— ルーナらしかったから。

 

どういう意味?

 

—— 人狼でも囚人でも誘拐でもディメンターでもない話だろ。いつものルーナ・ラブグッドのホラ話だ。日常がもどってきてうれしい。

 

侮辱されたのかほめられたのかよく分からない。

 

—— ルーナはそのままでいい。

 


53「からかう」

 

—— 今年の夏はどこに行くんだ? ふらふらトッパーを探しにトランスシルバニアか?

 

どうして分かったの?

 

—— え?

 

ふらふらトッパーはトランスシルバニア原産で、そこに生える樹木のなかに住んでて、あと二週間で産卵する。そのゼリーを集めにいくよ。よくわかったね、すごい!

 

—— ぼくをからかってるんだろ?

 

もちろんそうだよ。だから生きものの名前を勝手に作るのはやめて。それやられるとイラッとする。

 

—— お ま え が 言 う な 。

 

どういう意味?

 

—— いつもそのとおりのことをきみがやってるじゃないか。

 

やってない。

 

—— きみはまだ質問に答えてないぞ。

 

スキャマンダー一家といっしょにモロッコに行く。去年会ったあとに、お父さんとわたしを招待してくれたから。

 

—— ほう、そうなってたのか?

 

だまってて!

 

—— それでロルフとは最近どうなんだ?

 

ふつう。

 

—— ちょっと待て、彼もホグワーツの生徒なんだろう? なぜきみたちは友だちじゃないんだ?

 

友だちだよ。

 

—— でも彼の話を一度もしてくれてないじゃないか!

 

あなたにはね。

 

—— なるほど。もうひとつの日記帳には話してるんだな?

 

嫉妬するのはやめて。

 

—— してない。

 

してる。

 

—— なぜボーイフレンドの話をぼくにしようとしないのかが分からないだけだ。

 

ボーイフレンドじゃないもん!

 

—— はいはいわかったよ。

 

だからトムにはロルフのことを話したくなかったんだよ。からかわれるのが分かってたから。

 

—— からかう? だれが?

 

子どもっぽいんだから。

 

—— ロルフのことはまだかっこいいと思ってるのか?

 

実際そうだし、トムよりずっと話が上手。

 

—— うっ。

 

それに頭もいいし、性格もいい。

 

—— きみは残酷な言いかたをするよな。

 

それに聞き上手。

 

—— ぼくはいつも聞いてあげてるじゃないか!

 

聞く以外の選択肢がないんでしょ。

 

—— なにが言いたいんだ?

 

あなたは……イラッとさせられる!

 

—— それがぼくの魅力の一部だ。

 

そんなこと……やっぱりイラッとする!

 

—— もうそれは聞いた。

 

だから二倍正しいんだよ!

 

—— ぼくのそういうところが気にいってるんだろ。

 

気にいってない。

 

—— そうに決まってる。口論する相手はだれにでも必要だ。楽しいから。

 

必要ない。

 

—— じゃあきみはなぜまだここにいる? 楽しんでないのなら書くのをやめて、ぼくをどこかにしまえばいい。

 

そうしたほうがいいかも!

 

—— ならどうぞ。

 

自業自得だよ!

 

—— ほら、なにをためらう……さあ、閉じればいい。

 

あなたをしまって何週間もほっといてもいいんだよ。

 

—— どうぞ。やれるならやってみろ。

 

やれる。

 

—— やらない。

 

そうしておいて、ロルフとジニーとネビルと話すだけでもいいし。そしたら、トムのことを忘れるかもしれない。

 

—— ぼくに会いたくなるぞ。

 

あなたのほうがわたしにもっと会いたくなる!

 

—— 多分な。

 

やっぱりイラッとさせられる。

 

—— おっしゃるとおり。

 

 


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