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—— ペティグリュー。
* なんでしょうか?
—— また元の方向に戻っていい。ロンドンに向かえ。問題は自然に解決した。
* 承知しました。ありがとうございます。帝王さま、ブラックは死にましたか?
—— いや。
* 捕まりましたか?
—— いや。
* ディメンターにキスされましたか?
—— いや。学校を脱出した。そういえば、おまえは人目につかないようにしたほうがいいだろうな。聞いたかぎりではあいつはおまえに恨みがあるようだ。
* でも……もし追いつかれたらどうします?
—— 知らん。おまえは有能なネズミなんだろ? なんとかしろ。
* それは……わかりました。
—— よし。じゃあ出発しろ。
……
ふう。やっと終わった。
—— なにが?
ミスター・ブラックの伝言をハリー・ポッターにとどけた。
—— ああ。どういう反応だった?
最初は信じてくれなかった。全体を何度かくりかえしたらやっと少しずつ分かってくれた。ネビルとルーピン先生がいま彼に話してる。
—— ずいぶん信じがたい話だろうな。
うん。いろいろミスター・ブラックについて悪い話を聞いて、とても怒ってたみたい。それが全部まちがいだったっていうのはすぐには納得できないよ。どういう気持ちになればいいか分からないんだと思う。
—— 一度落ちついて考えれば大丈夫だろう。
でも残念だね。せっかく直接会えるところだったのに。
—— 同情してやりたいのはやまやまだが、正直あのポッター野郎のことはあまり興味がない。ほかの話にしないか?
そうか……あ、わたしが新しく調べてるポーションのことを手つだってもらえるかな。
—— それならいい。
……
* さきほどロンドンに到着しました。
—— よし。安全な隠れ家があるからそこに行くんだ。今から住所を教えるからよく見ろ。
* わかりました。
……
フィリーウィットの群れが温室のよこの茂みのなかにいる。
—— よかったよかった。
え? なにが?
—— ルーナらしかったから。
どういう意味?
—— 人狼でも囚人でも誘拐でもディメンターでもない話だろ。いつものルーナ・ラブグッドのホラ話だ。日常がもどってきてうれしい。
侮辱されたのかほめられたのかよく分からない。
—— ルーナはそのままでいい。
—— 今年の夏はどこに行くんだ? ふらふらトッパーを探しにトランスシルバニアか?
どうして分かったの?
—— え?
ふらふらトッパーはトランスシルバニア原産で、そこに生える樹木のなかに住んでて、あと二週間で産卵する。そのゼリーを集めにいくよ。よくわかったね、すごい!
—— ぼくをからかってるんだろ?
もちろんそうだよ。だから生きものの名前を勝手に作るのはやめて。それやられるとイラッとする。
—— お ま え が 言 う な 。
どういう意味?
—— いつもそのとおりのことをきみがやってるじゃないか。
やってない。
—— きみはまだ質問に答えてないぞ。
スキャマンダー一家といっしょにモロッコに行く。去年会ったあとに、お父さんとわたしを招待してくれたから。
—— ほう、そうなってたのか?
だまってて!
—— それでロルフとは最近どうなんだ?
ふつう。
—— ちょっと待て、彼もホグワーツの生徒なんだろう? なぜきみたちは友だちじゃないんだ?
友だちだよ。
—— でも彼の話を一度もしてくれてないじゃないか!
あなたにはね。
—— なるほど。もうひとつの日記帳には話してるんだな?
嫉妬するのはやめて。
—— してない。
してる。
—— なぜボーイフレンドの話をぼくにしようとしないのかが分からないだけだ。
ボーイフレンドじゃないもん!
—— はいはいわかったよ。
だからトムにはロルフのことを話したくなかったんだよ。からかわれるのが分かってたから。
—— からかう? だれが?
子どもっぽいんだから。
—— ロルフのことはまだかっこいいと思ってるのか?
実際そうだし、トムよりずっと話が上手。
—— うっ。
それに頭もいいし、性格もいい。
—— きみは残酷な言いかたをするよな。
それに聞き上手。
—— ぼくはいつも聞いてあげてるじゃないか!
聞く以外の選択肢がないんでしょ。
—— なにが言いたいんだ?
あなたは……イラッとさせられる!
—— それがぼくの魅力の一部だ。
そんなこと……やっぱりイラッとする!
—— もうそれは聞いた。
だから二倍正しいんだよ!
—— ぼくのそういうところが気にいってるんだろ。
気にいってない。
—— そうに決まってる。口論する相手はだれにでも必要だ。楽しいから。
必要ない。
—— じゃあきみはなぜまだここにいる? 楽しんでないのなら書くのをやめて、ぼくをどこかにしまえばいい。
そうしたほうがいいかも!
—— ならどうぞ。
自業自得だよ!
—— ほら、なにをためらう……さあ、閉じればいい。
あなたをしまって何週間もほっといてもいいんだよ。
—— どうぞ。やれるならやってみろ。
やれる。
—— やらない。
そうしておいて、ロルフとジニーとネビルと話すだけでもいいし。そしたら、トムのことを忘れるかもしれない。
—— ぼくに会いたくなるぞ。
あなたのほうがわたしにもっと会いたくなる!
—— 多分な。
やっぱりイラッとさせられる。
—— おっしゃるとおり。