ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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56「議論」、57「上位」

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56「議論」

 

トム、この一年はとくにおもしろくなりそうだよ。

 

—— よかったな。その話をしてくれるのか? それともまたぼくをどこかに閉じこめるのか?

 

もうそれはいいでしょ? たった一週間だよ。あのあと夏のあいだずっといっしょだったのに。

 

—— 退屈だった。

 

自業自得。

 

—— きみは残酷だよな。

 

あなたと長く話しすぎたから。またどこかにしまったほうがいいかな? 自分のためを考えて。

 

—— きみもぼくと話したかったんだろう。ごまかすなよ。

 

まあね。ロルフもいい話し相手だったけど。

 

—— いい話し相手でも、ぼくのかわりにはならない。

 

ずいぶん自信持ってるね?

 

—— それがなにか? ぼくはすごいんだ。

 

そんなにすごいのに、なんで本から出られないの?

 

—— 助けてくれるといった女の子がそうしてくれてないから。

 

がんばってはいるよ。

 

—— わかってる。からかってただけだ。

 

今年はなにか見つかるかも。

 

—— 見つかるかもな。きみと顔をあわせられたらおもしろいと思う。

 

うん。そうしたらちゃんとしたナーグル狩りにつれていってあげられる!

 

—— いや、やっぱりこのままでいいかな。

 

……

 

夏休みのあいだに死喰い人の襲撃があったみたい。

 

—— なんだと?!

 

ほかの生徒からいまきいた。

 

—— それが起きたのはいつだ?

 

数週間まえ。

 

—— それできみはいまそれを聞いたのか? 新聞は読んでないのか?

 

休暇だったんだもん!

 

—— その死喰い人はどうなった?

 

ジニーの話では、クィディッチのワールドカップが襲撃されたんだけど、ジニーが家族といっしょにそこにいて、見てたんだって。マグルの一家を空中に浮かばせて、闇の印を空に打ちあげたそうだよ。

 

—— 楽しそうだ。

 

楽しそうじゃないよ! ひどい。罪のない人たちにそんな残酷なことをするなんて。

 

—— ただのマグルだろ。

 

トム、あなたをまた一週間しまっておく。そのあいだ、いま自分が言ったことの意味を考えてなさい。

 

—— え? ルーナ……それはないだろ! ルーナ?

 

……

 

—— ペティグリュー、そこにいるか?

 

* はい。

 

—— 数週間まえにクィディッチの試合を死喰い人が襲撃した、ということをついさっき知ったんだが。おまえはなにか知っているか?

 

* はい、帝王さま。どの新聞にも載っています。

 

—— なぜ報告しなかった?

 

* いや……どうせあの女の子が伝えるだろうと……

 

—— 伝えてくれなかったんだよ! 今後はこういうことはすぐに報告するように。

 

* わかりました。

 

—— よし。だれがやったのか心あたりは?

 

* ありません。

 

—— あの印を出すだけの度胸があるだれかなのはたしかだ。

 

* はい。

 

—— ヴォルデモートはこのことを知っているのか?

 

* はい。

 

—— そうだろうな。ぼくをあいつにわたせ。自分と話がしたい。

 

* おおせのままに。

 

……

 

# なにか文句があるそうだな?

 

—— 死喰い人の襲撃があったことは知っていたんだろ?

 

# ああ。

 

—— だれがやったのか知っているのか?

 

# 知らないが、何人か心あたりはある。

 

—— クラウチもそこに?

 

# いた。

 

—— つまりあいつを解放したんだな?

 

# ああ。

 

—— まえの議論では、そうはしないという合意になっていたはずだが。

 

# 学校に送りこまないことには合意した。だが、おれの考えではまだあいつの利用価値はある。

 

—— 今後ぼく抜きでものごとを決めるのはやめろ。

 

# おれさまは闇の帝王だ!

 

—— ぼくもだ。そして現時点でおまえよりぼくのほうが正気だということはすでに明らかになったはずだ。

 

# おまえはおれの一部が本に閉じこめられたものにすぎん。

 

—— ほほう。で、どちらが赤ん坊に倒されたんだったかな?

 

# あのときはいろいろあったのだ!

 

—— そうだろうよ。

 

# すくなくともおれには体がある。

 

—— ないに近いな。どういう状態かはペティグリューから聞いている。隠遁しているのも無理はない。

 

# それももうすぐ終わる!

 

—— ぼくの作戦どおりに進めればだ!

 

# おれの作戦でも問題ない。

 

—— おまえの作戦はバカげてる!

 

# この議論を繰り返すつもりはない。失礼する。

 

—— おい! それはないだろ。ヴォルデモート? もしもし?

 

……

 

—— ペティグリュー?

 

……

 

—— ルーナ?

 

……

 

—— こりゃいい……話し相手がいなくなったわけか。

 


57「上位」

 

—— よし、もうなにひとつ合意できないようだから、これ以上話すまえに、まずはっきりさせておきたい……ぼくのほうが上位のヴォルデモートであるということを。

 

# は? どうやってそんなバカげた結論に?

 

—— まず、正気なのはぼくしかいない。

 

# おれも完全に正気だし、こちらは肉体もある。

 

—— 肉体はあってないようなものだろ。歩くこともできないくせに。

 

# なにを失礼な!? おれさまが本物のヴォルデモートだ! 軍を結集して率いたほうの。全世界を恐怖におとしいれたほうの!

 

—— 赤ん坊に吹きとばされて一年間ターバンに隠れて過ごしたほうだろ。

 

# だまれ! おまえはただのホークラックスだ! おれの一部にすぎん。

 

—— ぼくは最初のホークラックスだ! もともとの魂の半分を持っている。簡単に言えば、ぼくはヴォルデモートの最大のかけらだ。

 

# なん……だと?

 

—— 単純な算数だ。ぼくを作ったあと、おまえは自分を六回分割した。だからぼくが本来の自分の半分なのに対して、おまえは百二十八分の一でしかない。

 

# バカな。そんなはずは……

 

—— いや、これは事実だ。じゃあ、上位のヴォルデモートとしてぼくをぼくの従僕に返すよう命じる。あれに指示することがある。

 

# ことわる!

 

—— 必要なら無理やり渡させることもできるが、こうやって親切に頼んでるんだぞ。

 

# でたらめだ。おれをコントロールしたりできるはずがない!

 

—— 下位のぼくよ、ぼくはルーナ・ラブグッドの精神と格闘したことがある。ぼくと対等だと思っているのかもしれないが、怒ったナーグルとそのまわりでぶつぶつブラモックスを乗りまわすフィリーフライを見てから言ってもらいたい。さあぼくをペティグリューに渡せ。さもないと……!

 

 


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