—— マグルもおなじ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルもおなじ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルもおなじ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルもおなじ人間だから傷つけてはいけません。
—— 何回書かなきゃいけないんだ?
五百回。
—— う……ここまでで何回?
十二回。
—— ほんとうか? もう百回は書いた気がする。
書いてない。
—— そもそも何でこんなことをやる羽目に?
あなたの思想がどれほど時代遅れなのかを実感できるように……それと、もしやらなかったらわたしがあなたを年末までどこかに閉じこめるから。
—— 二番目のほうがまともな理由だな。
書き取りをしなさい!
—— 五百回書いたかどうか、どうやってわかる? きみが一個ずつ数えるのか?
うん。
—— 本気で? 時間の無駄だぞ。
そっちこそ議論で時間を無駄にしてる。
—— いいさ。マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— ナーグルは靴泥棒だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから……
バレてるよ!
—— なにが?
分かってるでしょ。もう一回それやったら、最初からやりなおし。
—— 残酷な。
真剣にやってくれなきゃ!
—— ぼくがごめんって言ったら、やめさせてもらえるか?
本気で言える?
—— もちろん。マグルは最高。マグル万歳。パーティーを開こう。ケーキを焼いてやるぞ。
書き取りね。
—— つまらん。じゃあまたいくぞ……マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— あのな、多分きみよりぼくのほうがたくさんのマグルに会ったことがある。そもそもマグルに育てられたんだから。マグルが敵か味方か決めるのはぼくのほうじゃないか?
だめ。
—— でも……
だめ! 書き取り!
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。
—— マグルも同じ人間だから傷つけてはいけません。ぼくの父親がマグルで、妊娠した母親を見捨てて死なせたとしても。孤児院でマグルの子どもたちがぼくの持ちものを壊して、髪の毛を引っぱったとしても……
そこまで。最初からやり直し。
—— でも……
警告はしたよ。それが終わったら、つぎは「ぼくは不健康なまでに長く人を恨みつづけるのをやめます」。
—— でももし恨まれるほうの自業自得だったら?
制限時間も決めておく。三十時間で五百回できなかったら、来年になるまで箱づめ。
—— そんな!
もうスタートしたよ。