—— ペティグリュー、ポーションはどうなってる?
* 順調です、帝王さま。あと三週間もすれば用意できます。
—— 三週間だと? もうのこり一週間になっているはずじゃないか?
* そう……だったんですが……一度目で少し失敗して、やり直しするハメになってしまったりしまして。
—— なんだと?!
* その……魔法薬学は昔から不得意でして……
—— 一度目に失敗したのはいつだ?
* 先週です。
—— なぜそのことを言わなかった?
* それは……お知らせしたかったんですが……いや本当に……でも新しい材料を集めるのに忙しくて……うっかり忘れちゃいました。
—— この……ばかもの! 信じられない……
* 申し訳ありません。申し訳ありません。
—— ……あのなあ……もういい……ポーションは順調なんだろう……ぼくがもうすぐ自由になれるなら、大したことじゃないし、怒ってはいない。
* 本当ですか?
—— 本当だ。ペティグリュー、今日はおまえのラッキーデーだ。ぼくはかなり気分がいいし、失敗を自分で穴埋めしようとしてくれたんだから、今回は見逃しておこう。
* ありがとうございます。ありがとうございます、帝王さま。さすが心が広い!
—— ペティグリュー?
* はい?
—— だまれ。
* はい。
—— この調合をやってくれてるのがスネイプだったら、ずっと気が楽なんだが。
……
トム、森にドラゴンがいた!
—— なにがいたって?
競技会の試練のひとつなんだって。わくわくするね!
—— 学校にドラゴンが連れこまれたっていうのか?
すごいから、あなたにも見せたかった。
—— 本当に学校にドラゴンが連れこまれたのか?
セストラルのえさやりの途中で見た。
—— 実物大の、火を吹いて、骨をかみくだくドラゴンを?
ジニーのお兄さんが飼育者だから、そのうちわたしも紹介してもらえることになってる。
—— 子どもたちでいっぱいの学校に?
ドラゴンのことは昔からずっと気になってたからね?
—— それにあきたらず、この学校は故意に三人の生徒を連れてきてドラゴンの邪魔をさせるというのか?
すごく立派だった。
—— こんなことが許されていいのか? リスクアセスメントすらしてないんじゃないのか?
セドリックのことは少し心配だけど。けがしないといいな。
—— 怪我しないといいだって? ドラゴンと戦わせられて? ダンブルドアやほかの教師たちに、故意にそう仕立てられて? 安全という概念はなくなったのか?
でもかなりわくわくすると思わない?
—— 狂気としか言いようがない! この学校がまだ閉鎖されないのが不思議だ。
でも戦うことになるのがわたしでなくてよかったけど。これって自分本位かな? かわいそうなセドリック……まあやるって言ったのは自分なんだろうけど……
—— あのな、ぼくは孤児院にいたころマグルの学校に通わせられていたんだが、安全性をたしかめるために政府の監査が入ってたのをはっきりとおぼえてる。どうして魔法学校はそうじゃないんだ。
トム、わたしの言う事聞いてる?
—— 理由が聞きたいか? もしこれが平常状態だとすれば、世界じゅうの魔法学校がすべて閉鎖されることになるからだよ! それ以外にない!
え?
—— そしてホグワーツはまっさきにそうなる。ダンブルドアはもはや生徒を守ろうという努力すらしていない。
それは言いすぎじゃないかな。生徒の安全を確保しようとはしてるよ。
—— ドラゴンを学校に連れこんだんだぞ。それにディメンターも、人狼も。それに殺人鬼がうろついてるあいだ、生徒が出歩くのを放置したことだってある!
まあ、これまでの実績はいまいちかな?
—— ぼくでもあの狂人よりはましに学校を運営できる!
ほんとにそう思う?
—— ああ、思う!
校長はトムに向いてる仕事だと思うよ。
—— いいか、ルーナ? ぼくは人間にもどったら本気でそうするぞ! これがぼくの新しい使命だ! あの変人を追いだして、魔法族の青少年がまともに世の中でやっていけるように育ててやる。
そうなったらおもしろそう。