ルーナ・ラブグッドと闇の帝王の日記帳   作:ポット@翻訳

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63「真実」、64「待つ」

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63「真実」

 

—— ぼくはトムだ。きみのトムだよ、ルーナ。

 

でもあの人でもあるんじゃない?

 

—— それは見かたによって変わる。

 

どっちなのかはっきり言って!

 

—— 違うと言ったら信じてくれるのか?

 

ちがうって言いたいの?

 

—— 複雑なんだ。

 

じゃあ単純にしてよ。

 

—— ああ……じゃあ……ぼくはヴォルデモートだ。

 

じゃあ、そういうこと? それが真実?

 

—— ああ。

 

そう……

 

—— でも違うとも言える。

 

どういう意味?!

 

—— そう簡単じゃない。イエスとノーだけじゃない。

 

ほかになにがあるの?

 

—— ぼくはホークラックスなんだよ。ヴォルデモートでもあるが……その一部分でもある。

 

どういう部分?

 

—— そこなんだよ! そこが難しいんだが。ぼくは一番目の部分なんだ。

 

え?

 

—— ぼくは一番目のホークラックスだ。完全に人間だったころのヴォルデモートが作った唯一のホークラックスだ。彼の完全な魂の半分だ。

 

それはどういう意味?

 

—— つまり、ヴォルデモートが人間だったころの姿の最後のかけらだ。ぼくを作ったあとの人間がどうなったにしろ……それは壊れていた。その魂はあまりに分割されすぎて、ほとんどなにも残っていなかった。

 

ひどい。

 

—— ひどいな。当時ぼくは若かった。このホークラックスを作ったときのぼくは怒っていた。あらゆるものに怒っていて、いろいろ悪いことをした。ぼくの魂をふたつに分けさせるようなことをした。

 

殺人。

 

—— そうだ。ぼくは殺人をした。そして後悔している。とても後悔している。

 

なぜ?

 

—— ぼくは怒っていた。ぼくはバカだった。彼らの生命が重要だと思わず、目的のための手段として使って……ぼくは間違っていた。

 

ちがう。なぜ殺したかじゃなくて。なぜ後悔しているの? どうして、いま?

 

—— きみのおかげで……きみのおかげで……世界が……ちがって見えた。

 

ちがって見えた?

 

—— 明るく、いい世界に見えた。きみのおかげで世界がよく見える。はじめてのことだった。ぼくはそれまで、悪いほうばかりを見て憎んでいた……あらゆるものに怒りをぶつけたがっていた!

 

でももうそうじゃなくなった?

 

—— そうじゃなくなった。ぼくは……ぼくはいろいろなものを見たい。きみに見えている世界を見たい。きみはいつもいい面を見る。ぼくのなかにもいい面を見る。

 

それはおかしいの?

 

—— おかしくないと思う。ぼくも最初は信じなかった。自分でも化け物だと思っていた……でもその人間にはもうなりたくない。きみが見ていた人間になりたい。きみがこれまでずっと書いてきた相手になりたい。

 

わたしもその人になってほしいよ。

 

—— 助けてくれないか。その人になれるように。

 

だれと話してる? わたし以外に?

 

—— え?

 

あなたはだれかと話してた。だれと?

 

—— それは……

 

真実がほしい。あれであってたの? 人間にもどるのをだれかに助けてもらってる?

 

—— そ……そうだ。

 

だれに?

 

—— ピーター・ペティグリュー。

 

ネズミ?

 

—— そうだ。

 

いつから?

 

—— きみがブラックに誘拐されてから。ぼくが命じてペティグリューは学校から去った。

 

そうか。

 

—— ぼくは善意でやっているんだよ。ヴォルデモートとして知られている男は……ぼくじゃない……ぼくはずっと昔にあいつから離れた。ここにいるぼくはまだ若い。

 

そのあとの計画は? 人間にもどったあとの。

 

—— まえに言っただろう。人を助ける。魔法界の子どもたちを守りたい。未来を与えたい。

 

どういう未来?

 

—— いい未来だよ。きみのような。

 

どうやってそれを信じればいい?

 

—— なにをすれば信じてくれる?

 

あとどれくらいで人間にもどれそう?

 

—— もうすこしだ。その……ポーションができていて……適切な呪文を使えば、一カ月以内に復活できる。

 

そんなにはやく?

 

—— ああ。

 

どれくらい真剣に人間にもどりたいと思ってる?

 

—— とても真剣だ。待ちくたびれた。

 

もっと待つ気はある?

 

—— は?

 

わたしのために。あなたがうそをついていない、悪人じゃないと証明するために。その呪文を遅らせることができる?

 

—— いつまで?

 

さあ。わたしが納得できるまで。

 

—— わかった。

 

本気?

 

—— ああ。それできみの気がすむなら、待つ。

 

何日かあなたをかたづけさせてもらうよ。考えるのに時間がほしい。頭をすっきりさせるために。

 

—— もちろん。

 

あなたを……信用したいと思ってるよ。

 

—— ぼくもそうしてほしいと思ってるよ。そのために必要なことはする。

 

ありがとう。じゃあ……また。

 

—— じゃあ……ああそうだ、そのまえに……

 

なに?

 

—— ダンスを楽しむといい。

 

ありがとう。

 

……

 

—— ペティグリュー?

 

* はい?

 

—— 計画変更だ。あの呪文の開始を遅らせる。ポーションは瓶にいれておけ。必要になるまで保管しろ。

 

* 遅らせるんですか? でも……?

 

—— 「でも」じゃない! 再開する準備ができたら連絡する。

 

* どれくらいかかりますか?

 

—— 必要なだけ。

 


64「待つ」

 

—— ルーナ……いるのか? もう一週間たった。また話しかけてくれないのか?

 

……

 

—— まだ考えてるのか? 細かいことは言いたくないんだが、きみは数日と言っただろ。

 

……

 

—— ルーナ? 受けとめにくいことなのは分かるが、ぼくらは乗りこえていけると思う。

 

……

 

—— もしもし?

 

……

 

—— ぼくらはまだ友だちだよな?

 

……

 

—— ほら、こうやって話しはじめたころ、ぼくはきみにクラスメイトを拷問したり殺したりするようすすめただろう。それでもきみは話しかけるのをやめなかった。ぼくは最初から本心を隠して騙してたわけじゃないんだ。

 

……

 

—— 誤解のないように言っておくが、もうそれはぼくの本心じゃない。そういうのはやめた。親切な人になるから。人殺しじゃないトムになるから。いや本気で。

 

……

 

—— ナーグル狩りはどうなってる? うまくいったか?

 

……

 

—— フィリーフライは? まだ蔓延してるのか? カブのペーストの効果はどうだった?

 

……

 

—— ぼくが人間にもどったらああいう生き物を探すのを手つだうよ。興味ない?

 

……

 

—— ルーナ?

 

……

 

—— もしもーし。

 

……

 

—— ルーナ? 「だれ?」って言う番だぞ

 

……

 

—— ルーナ?

 

……

 

—— わかった。もういい。

 

……

 

—— 考えるのにもう少し時間がかかるんだろう。ヴォルデモートの魂の一部と友だちになってたことが分かったんだからな。ショックなのは分かる。

 

……

 

—— なかなか受けとめられるものじゃない。

 

……

 

—— だから考え終わるまではそっとしておく。

 

……

 

—— そのあいだぼくはここにいる。待っている。

 

……

 

—— 大人しく。

 

……

 

—— どうぞごゆっくり。

 

……

 

—— いや……途中のページに書いたものは気にしないでくれ。○×ゲームをしていただけだ。

 

……

 

—— ちなみに一人でやるのは難しいぞ。自分が勝ってるのか負けてるのかよく分からない。

 

……

 

—— ちょっとずるをしたかもしれない。ずるも一人でやるのはかなり難しい。

 

……

 

—— そのうち二人でやってみるか?

 

……

 

—— その……きみに準備ができたら……

 

……

 

—— さっきも言ったが、ぼくはここにいる。

 

……

 

—— 大人しく待っている。

 

……

 

—— おーい、ペティグリュー?

 

* なにかご用ですか?

 

—— ○×ゲームやらないか?

 

 


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