* 帝王さま! いらっしゃいますか?!
—— ペティグリューか? なにが起きた?
* バーティ・クラウチです。クラウチに見つかって……帝王さまが連れ去られました。
—— は?
* もう一人の……体のヴォルデモートのほうがです。クラウチがわれわれを追跡していて……隠れ家を見つけて……もう一人の帝王さまが屈服させられたのを知って……不服だったようです。
—— それでどうなった?
* 戦闘になって……わたしは何とか逃げ切りました。
—— それでヴォルデモートが連れて行かれたのか?
* はい。わたしはどうすれば?
—— それが起きてからどれくらい経った?
* まだあまり。一時間くらいです。止めようとはしたんですが……安全を確保する必要が……帝王さまにご報告しなくてはと……
—— 自分の身を守りたくて、だろう?
* いえ、そんなことは……
—— 黙れペティグリュー。今回はその臆病さもある意味で役に立った。報告はたしかに必要だったし、その行為はとがめない。
* わたしは帝王さまの忠実なしもべですから! ずっと。
—— もちろん。それでいい。言っておくが、こちらに協力している以上、もう一人のヴォルデモートが復活したら、おまえは恨まれる。おまえにはぼくが必要だ。あいつにやられるまえに、ぼくがあいつを止めてやる。
* それで、わたしはどうすれば?
—— おまえがやろうとしているとおりでいい。安全な場所に隠れろ。クラウチが追ってきたら、逃げろ。
* ありがとうございます。帝王さま。ありがとうございます。
—— もうひとりのぼくの行き先は、できるだけ追跡してみよう。今のところは屈服させることができているが、これを維持するのはだんだん難しくなる。あの呪文を完成させるには、あいつを取りもどす必要がある。
* どうやって取りもどすんですか?
—— まだ分からない……今のところ、使えるのはおまえだけだ。
* できることなら何でもします。
—— おまえにできることはたかが知れているがな。とはいえヴォルデモートにも、クラウチしかいない。
* わたしだけじゃありません。またお仕えする時を待っていた忠実な部下たちがいます!
—— いるだろうが、そいつらはぼくとあいつのどちらにつく? 一つ間違えれば、死喰い人の内ゲバになる。
* 部下たちはあなたさまの優位性にひれ伏します。きっと。
—— クラウチは違った。
* クラウチは頭がおかしいからです。
—— 一方、残りは模範的な真人間だと?
* そ……その……なかには、立派な魔女や魔法使いもいますよ。
—— 三人挙げてみろ。
* ルシウス・マルフォイ。
—— 臆病者だ。自分のことしか考えない。逃げ切れると思えば瞬く間に自己保身のために寝返る。
* ベラトリックス・レストレンジ。
—— クラウチ以上に狂っている。もう一人のぼくに従う可能性のほうがはるかに高い。
* カロー兄妹は?
—— 却下。
* なぜですか?
—— 狂ったサディストだ。多分娯楽のためにおまえを殺す。あの二人は信用できない。それに単に気持ち悪い。
* みんなそう言ってますね。
—— ほかには?
* スネイプとか?
—— セブルスか。その手はあるな。学校内で地位があるし、必要なら連絡もとりやすい。記憶の範囲では、よく協力してくれていた。仲間に引きこんでもいいかもしれないな?
* 本当に信用できますか? スネイプとはちょっといい思い出がないんですが。
—— おまえの子ども時代のことなど知るか。
* すみません。
—— だが一理ある。この十数年、あいつはホグワーツ教師として、ダンブルドアのすぐそばにいた。忠誠の相手を変えた可能性もある。慎重に計画する必要がありそうだ。
* はい。
—— しばらく隠れていろ。スネイプについては調べてみる。
……
—— ルーナ?
なに?
—— つぎに薬学クラブがあるのはいつだ?
あした。どうして?
—— 手つだってほしいことがある。